【種別】
紅世の徒” 、通称

【初出】
VII巻(真名のみ、登場はXIII巻)

【解説】
紅世の王”。真名は“壊刃”(かいじん)。の色は茜色。
数多のフレイムヘイズを葬ってきた強大なる“王”。傭兵とされ、いずれの組織に属する事もなく、依頼を受けて標的を討つ、正しい意味での『殺し屋』。標的の殺害だけでなく、自在式の打ち込みや護衛などの依頼も引き受けでいた。
顕現した容貌は、幾重にも巻いたマフラー状の布で顔を隠す、硬い長髪と暗がりに溶け込むような黒マントが特徴的な背の高い男。人化してもほとんど姿は変わらず、赤い両目が人間の目に変わる程度であった。
マントの下は厚手の皮つなぎとプロテクターで覆われており、肌は一切露出していない。マントの内側に、多数の剣を吊っていた。
かなりの不平屋だが怒る事はほとんどない。長々と独り言を言う癖があり、頭の中でも長々と物を考える。『陰に籠もる』タイプで、マルコシアス曰く『ブツクサ野郎』。
自身の本質を体現する欲望や熱意を持たず、現代まで依頼を達成する快感を求めて活動していたようだ。殺し屋をしているのも、自らの在り様がたまたまそれに向いていたからに過ぎなかった。
刀剣収集家で、依頼への報酬も刀剣。人間の町で自ら購入することもあり、宝具か否かを問わず、数多くの刀剣を所有していた。ただし、刀剣は彼にとって単なる嗜好品に過ぎず、使い潰すことにも躊躇いを覚えなかった。

【戦闘スタイル】
最初に強力無比な不意打ちを放った後、標的が生き残っているのならばサブラク自身が剣と炎を操り敵を討つという戦い方を基本としていた。
この最初に放たれる不意打ちは、無数の剣を混ぜた炎の怒涛による大威力の攻撃かつ“徒”やフレイムヘイズにさえ事前に察知不可能な完全な不意打ちであり、広範囲・複数箇所で同時に行うことができた。
この不意打ちにより、並の者ならば即死。生き残れる強者であっても、その圧倒的な威力の不意打ちには無傷では済まず、剣で傷つけた傷口を広げ治癒を封じる自在法スティグマ』により体力を削られ、初撃の後に現れるサブラクに追われ斃されるという、非常に強力かつ厄介な戦法であった。
また、サブラク本人も戦技無双を謳われる『万条の仕手ヴィルヘルミナでさえ四半分間違えれば死に至るほどの優れた剣士であり、加えて初撃と同等以上の津波を思わせる、無数の剣を抱え込んだ炎の怒濤を自在に操る大攻撃力を誇る、圧倒的戦闘力の持ち主であった。
周囲に「傷を負わなかった」とさえ錯覚させるほどの異常な耐久力も備えており、例え串刺しにされようと、ビルの倒壊に巻き込まれ炎弾の直撃を受けようと、次の瞬間にはすでに無傷の状態で現れた。
“糜砕の裂眥”バラルをして、彼と出くわした際の一番の対策は、逃げの一手とまで言わしめた。

とはいえサブラクにも欠点がない訳ではなく、一度現れた場所からは遠く離れず居座わり、広域にその力の影響を及ぼす“紅世の王”としては珍しく単一個人レベルの視野しか持たないため、遠距離からの大規模な不意打ちはあらかじめ攻撃地点を定めておいた初撃に限られた。
前述の理由から「目標に不意打ちとその後のサブラクの攻撃を凌げるだけの実力があれば」、逃げるだけなら容易という奇妙な性質を持つ。

また、殺し屋としての特性から、場所を定めない広域・大規模な戦闘には不向きであった。

【正体】
サブラクの正体は、街の一角を覆うほどの巨大な身体を持ちながら、身体の制御を行う感覚は個人レベルでしかないという非常にアンバランスな“徒”であった。巨大な身体は、広範囲に拡散させ周囲の土地などに浸透させていた。
強大な力を持ちながら、たとえ付近に潜んでいたとしても目の前に現れるまで探知する事ができないのは、身体を広範囲に浸透させることで気配が薄く分散しているからであった(探知能力に優れたものならばモヤモヤした奇妙に薄い違和感程度は感じた)。また、この浸透する力の応用で、“徒”に浸透し操ることも可能であった。

異常な耐久力・回復力は、『初撃の後に実体として現れるサブラク』の身体が、意思総体こそ宿しているものの、サブラクの身体全体のほんの一部をそれらしい形にしただけの人形に過ぎないことによる。
人間サイズの欠損ではサブラク全体には意味を成さず、人形が消えたり破壊されると同時に周囲に浸透・人形と触れ合っている身体が即座に意思総体を宿す人形に新しく成り変わる、もしくは人形の身体の欠損部分に供給・取り込まれ人形の身体となるので、『修復』というレベルの問題ではない異常な速度で、何度でも人形を作り直すことが可能であった(XIV巻エピローグの描写では痛覚を持っていたが、身体を拡散させていないからなのか、元から人形とはいえ一応の痛覚があるのかは不明)。
まともに倒すには、その巨体(=自身を浸透させた周辺地域そのもの)を大規模に破壊するしかないので、からくりを看破したところで耐久性が異常であることに何の変わりもない。

ただし、人形がサブラクの一部に過ぎなくとも、意思総体や五感を宿した「本体」には違いなく、人形そのものや人形を中心とした狭い範囲の空間を全体と切り離してしまえば、その切り離された部分しか制御下におけず、その部分のみしか「本体」の身体にすることが出来なくなるため、大幅に弱体化する。しかし、「本体」だけ切り離されても、討滅されない限り元の状態に戻ることは可能である。
力を取り戻すのにどの程度の時間がかかるかは不明。御崎市での事実上の敗北で大幅に本体を切り捨てさせられたはずだが、約一月後の新たな依頼に臨む時点では、誰ひとり彼の損耗に不安を感じている様子がないので、この時点で完全に力を取り戻していたと思われる。そのために大量の人間を喰らったのか、“存在の力”の受け渡しが行われたのかは不明である。

大規模かつ完全な不意打ち攻撃が出来るのが初撃に限定され、またその攻撃が大雑把で、初撃で生き残った者に対してサブラク自身が一人一人出向いて戦う必要があるのは、知覚能力は単一個人レベルでしかなく、巨体を持ちながらも人形の視界外のことに精密な対処ができないことと、身体が周囲の物に浸透している関係上、一定地域から離れられないため。
ただし、視界外でも巨体は人間を喰らうくらいは出来るので、戦闘中に“存在の力”を補充することは可能であった。
なお、気配の察知能力は一般的なレベルにあるようで、中央アジアのような周囲に何もない場所では、地平線の彼方にいる目標に刀剣を射出して攻撃することもできた。通常の市街地でそれが出来ないのは、人間の気配が入り混じったり、障害物が多く投射攻撃が遮られたりするからであろう。


【活動】
かつて『輝爍の撒き手レベッカ・リードと交戦経験があった。勝敗は不明だが両者共に存命。本人の弁によると「歯応えがあった」ようだ。

100年ほど前には、日本人僧侶の本多恵隆井上弘円とともに、カシュガルの街を訪れたことがあった。

本編開始の二年あまり前から、[仮装舞踏会]の依頼を受けて、フィレスヨーハンを追っていた。
彼らを狙い潜伏していた所にヴィルヘルミナと他の“徒”がかかり、彼らと間違えて初撃を使ってしまう。それを助けに現れた二人を狙うも逃げられた。
そのすぐ後に、カシュガル近郊で“戯睡郷”メアを討滅しようとしていた『燿暉の選り手』デデを、『約束の二人』を取り逃がした腹いせに殺害した。また続いて消息を絶ったデデを(またはデデを殺した仇を)捜索していた『露刃の巻き手』劉陽とカシュガルの街で遭遇し、三十分足らずで殺害した。
その後しばらくは粗末な短剣を報酬として、メアと共に旅を続けていた(ただし“粗末”とは受け取りを拒むためにサブラクが一方的に言ったものであり、実際にメアの短剣より価値の劣りそうな土産物のナイフをメアの前でまとめ買いしたりもしている。サブラクは依頼への報酬として刀剣を受け取ることを旨としており、何も依頼されていないメアからは受け取りを拒んでいた)。
そして、数年に渡る『約束の二人』への度重なる襲撃の末、『零時迷子』の循環部、ヨーハンを構成する部分に『大命詩篇』を打ち込むことに成功した。その直後に『ミストラル』で、フィレスごと黒海へと飛ばされた。

上記の依頼の遂行後、少なくとも教授が御崎市を実験場所に選ぶまでは、教授に護衛として雇われていたが、愛剣『ヒュストリクス』を無断でドォーリルに改造された件で怒り、決別。
その後、どこかで教授を探すベルペオルと行き会っており、彼の行方をベルペオルに教えた。
また、ベルペオルから聞いた『零時迷子』とその“ミステス”の情報をメアに教え、彼女が“ミステス”の寄生に成功した暁には、日本で落ち合う約束だったようだ。

その後ベルペオルから、再び『零時迷子』に関わる一連の依頼を受けて、御崎市に来襲した。
大規模な不意打ちで優位を得るも、ヴィルヘルミナに『スティグマ』を封じられ、坂井悠二に正体を見破られ、フレイムヘイズ三人の協力攻撃により、あわや討滅されかけた。
しかし、ビフロンスが所有していた『非常手段』を使って離脱しており、真の目的である「坂井悠二への『大命詩篇』の最後の式の打ち込み」も初撃の時点で完遂していた。
XV巻時点で、[仮装舞踏会]の食客となっていた。あくまでも[仮装舞踏会]外の“徒”であり、『盟主』のことは儀礼の上で拝しているが、臣下として仕える気はなかった。

大命』第二段階において、久遠の陥穽に向かう『盟主』“祭礼の蛇”坂井悠二らの護衛として同行した。そして、盟主たちとは離れて『詣道』の途中に一人留まり、『詣道』に侵入してくるフレイムヘイズたちを待ち構えた。その際、メアの形見の短剣を見つめながら、シャナたちとの再戦およびメアを討滅したことへの復讐を誓った。

そしてやって来たシャナたちを奇襲し、追撃してきたフレイムヘイズたちのうちシャナは取り逃がすが、カムシン、ヴィルヘルミナ、レベッカらを足止めし、『スティグマ』の改良版として新たに編み上げた自在法『スティグマータ』と、『詣道』の不安定さを逆手に取って意思総体の隔離を阻む戦術で、三人を相手に優勢に戦いを進めた。
だが、『詣道』の奥から驀進してきた“祭礼の蛇”神体を目撃して、これまでに感じたことのない絶大な力を持つ他者への畏怖の念と、メアが自分にそれを感じていたと気付いたことから戦意を失い、カムシンたちの総攻撃をまともに喰らってしまい、助けようとするベルペオルのも腕ごと断ち切って、崩壊する『詣道』から両界の狭間へと落ちて消滅した。

なお、何故メアのことが気になるのか、サブラク本人はわかっていなかったが、最期の時には「愛しの小さき蝶」とつぶやいた。

アニメ版
基本的に同じだが、襲撃時期が異なったり、修復のスピードが遅い、シャナの止めの一撃を受ける際に絶叫していたり、ビフロンスを操って最後の保険にしていなかったりと、微妙に弱体化。何故生きていたかは描写されていないため不明。
止めの一撃の際、どう見ても本体周辺の土地が表面しか破壊されておらず(原作ではヴィルヘルミナかマージョーリーのどちらか、もしくは両方によりシャナの炎は隔離した球の中で循環・増幅され、隔離された範囲を土地ごと全て燃やし尽くしている)、あれではサブラクを倒しきれないはずだが、そこがツッコみどころなのかは謎である。
アニメ第3期では原作通りの末路となった。
彼の所有する剣は、収集品である以上、本来同じデザインのものはほとんど無いはずであるが、アニメで同じデザインの剣ばかり出てくるのは作画の都合であろうか。

【由来・元ネタ考察】
名前の元ネタは、ソロモンの72柱の悪魔 ”堕落の侯爵”サブノック(Sabnock)の呼び方の一つ、サブラク(Sabrac)であると思われる。
序列43番の悪魔で、蒼白の騎馬に乗り、獅子頭の獰猛なる戦士の姿で現れる言う。
召喚の際には、あらゆる武器や城砦を与え戦術を授け、彼が負わせた傷は化膿し蛆を涌かせると言う。

「壊」はそのまま壊すことを意味するが、この場合特に壊すものに対する制限は付いておらず、とにかく何かを壊すという意味のみで用いられている。自在法『スティグマ』の効果から、「壊死」の意味も含まれているだろう。
そして「刃」は刀などの刃やそれで切りつけることを意味し、上記の「壊」によって修飾される。
真名の意味は、「全てを破壊する刃による斬撃」もしくは「刃に与えられる全てを破壊する力」という意味だと思われる。
数多の剣と炎の怒涛で全てを破壊し尽くし、自在法『スティグマ』によって人体をもじわじわと破壊する彼の特性を表した真名だと思う。

【コメント】
☆植物の茜は、花言葉として「傷」の意味を持つが、炎の色はまさかそこから来ているのか?
☆アニメから入った人は「怪人」だと勘違いすることがあったらしい。
☆まあ見た目からしてそれっぽかったけどな。
☆単純に強大、技巧もある、搦め手も使える。真っ向から戦って勝てる奴どれぐらいいるんだろう?
フェコルーなら、『マグネシア』で防御を展開と同時に地面を潰していけば勝てるかも。あとはシュドナイが巨大化して辺りを破壊しまくるとか。フレイムヘイズは、破壊力だけならカムシンだけど、儀装を封じられるからなぁ。他に勝てそうな討ち手は思いつかない……。
☆↑その方法ですら正体を見抜いて初めて取れるレベル。単純に真っ向勝負だと規格外のアラストールアシズ、“祭礼の蛇”の神体ぐらいしか勝てないかもしれない。
☆フェコルーで引き分け(サブラクでも『マグネシア』の突破は無理と思われる)、シュドナイでも『スティグマ』が積み重なるとやばそう。やっぱり、勝てるのは規格外連中だけかな。“祭礼の蛇”の神体に対しては畏怖してたわけだし。
☆全てを問答無用で吹き飛ばせる[とむらいの鐘]のメリヒム、攻撃が通じなさそうなイルヤンカの『両翼』二名も勝つ(か引き分ける)ことはできそうだ。モレクソカルも『ラビリントス』、『碑堅陣』で浸透したサブラク本体を追い出し、意志総体を隔離することが可能であるなら勝機はある(モレクは攻撃手段出てないから単体では無理かも)
☆↑『儀装』が妨害された事を考えると『ラビリントス』、『碑堅陣』は逆に使用できない可能性がある。強化した塔で貫けるイルヤンカは苦戦しそうではあるが、勝てない事も無い気がする。正体を看破できるか分からないメリヒムも根本的な対処が苦しいので、接近戦になれば純粋に剣技の戦いになるだろう
☆アシズなら、規格外の強大さに加えて隔離空間を作り出す『清なる棺』を扱える点が大きい。この術なら、サブラクの意志総体を容易に隔離できると思われる。
☆使用する自在法の関係で、『棺の織手』との相性は最悪と思われる。不意打ちで仕留めきれないと『清なる棺』で隔離、討滅でどうしようもない。
☆ちなみに彼の操る炎の怒涛は、イメージ的には洗濯機に刃物をぶち込んで動かした時の内部みたいな感じらしい。
☆それって、炎に巻かれたらもう勝ち目はないってことだよな。刃が通らない防御力があればともかく。
センターヒルと戦ってたらどうなってただろうな。
☆結局、イーストエッジくらいしか単独で勝てそうなフレイムヘイズがいないという始末。まったくもって反則である。
☆『大地の四神』との戦いを考えてみた。
  • イーストエッジ…相性最悪。攻撃力もさることながら「燃やされる」点が厄介。下手をすれば一撃で本体に引火する。初撃の不意打ちで決めなければ勝ち目はない。
  • ウェストショア…防御力が高いので初撃でもダメージは微妙か。『スティグマ』の効果はあるが、意思総体を水で包まれてしまうと討滅もありえるのでやや不利。
  • センターヒル…『トラロカン』と『スティグマ』の相性による。最悪の場合、『スティグマ』による傷の深化が無効化されたり、刀剣に付加された『スティグマ』が解除される可能性がある。そうでなくとも、強化の自在法は解除されるので、宝具以外の刀剣は使い物にならなくなり、攻撃力は大幅に低下する。倒すのは難しいが、センターヒルも決め手に欠けるので引き分けだと思われる。
  • サウスバレイ…初撃をしのがれた場合は、物量vs耐久の戦いとなる。サブラクの技量ではサウスバレイは補給がほとんどできず、初撃の不意打ちと『スティグマ』もあるのでやや有利。
☆いずれにしても初撃だけで倒せる相手ではなく、逃げに転じた場合は対処できないので、暗殺を成功させるのは難しかったと思われる。
☆↑サブラクの正体を見破れるか、あるいは知ってるかによるんじゃないのかな?分かってさえいれば『四神』のことだから、なんやかんやで優位に立ちそうであった。
☆[巌楹院]や[とむらいの鐘]の『九垓天秤ウルリクムミチェルノボーグフワワニヌルタや[宝石の一味]のコヨーテフックスとも絡んでいたら面白そうだったのにな。
☆番外編『かぐやひめのしゃな』では、11話の花咲か爺さんで花咲か爺さんとして登場している。
☆番外編『おじょうさまのしゃな』では、招待客の一人として登場している。
☆番外編『さんじゅうしのしゃな』では、サブラク・ロシュフォール伯爵として登場している。
最終更新:2020年07月23日 07:52