【初出】
X巻
【解説】
“
紅世の王”。
真名は“大擁炉”(だいようろ)。
炎の色は黄色。
[
とむらいの鐘]最高幹部である『
九垓天秤』の一角。役柄は宰相で、『九垓天秤』の実質的なリーダー。その明晰な頭脳と的確な采配で、首領“
棺の織手”
アシズに代わって組織全体の運営にあたる。強者としてではなく賢者として
討ち手らに恐れられた、数少ない“王”。
あだ名は『牛骨の賢者』。
外見は、礼服をまとった直立する牛骨。ただし、手の骨格は人間のものに近い。異常な規模の力の持ち主で、自分の体をもって、要塞ひとつを飲み込む規模の迷宮を構成する
自在法『
ラビリントス』を構成し、[とむらいの鐘]を守り抜いてきた。
その地位と力に反して重度の臆病者で、何かと気弱な台詞を吐いてはカタカタ震えている。仲間の諍いの際には、自身の骨体を砕かせて鬱憤を晴らさせることもあった。貫禄はまるでないが、臆病さ、小心さは危険の正確な認識と慎重さの表出である。
下僚の輩にすら敬語を使うほど礼儀正しく、同胞には寛容だが、人間に対しては「自分達と同じ精神を持つが決定的に弱い種族」と断じる冷徹な面も持ち合わせている。
役職柄、前線に出ることはまずないが、戦術戦略に暗いわけではなく、彼の『机上の空論』はその正しさによって、“焚塵の関”
ソカルや“天凍の倶”
ニヌルタら前線で兵を直卒する将をも説き伏せるものであった。
平時は自軍の戦力増強と敵の弱体化に努め、有能きわまりない働きを見せていた。
中世の『
大戦』終局において、『
壮挙』までの時間稼ぎとして『ラビリントス』を展開するも、
マティルダと『
万条の仕手』
ヴィルヘルミナによって迷宮を破壊され、討滅された。
主たる
アシズには心の底から感服しており、その死に様も忠臣として相応しいものだった。また、“闇の雫”
チェルノボーグから寄せられていた思慕の念には、最後まで気付かないままだった。
【由来・元ネタ】
名前の元ネタはソロモンの72柱の悪魔 "博識伯"モラックス(Marax)の別名モロク(Molech)と思われる。序列21番の悪魔で、牡牛の頭をした人間、または人間の顔を持つ牡牛の姿であると言う。
召喚の際は、召喚者に天文学・占星術や宝石・薬草に関する知識を授け、使い魔を貸し与えてくれると言う。
モロクはアンモン人の主神であり、牛頭人身のその姿は青銅製の炉として表現される。この神像(炉)には、子供が生贄として投げ込まれた。
「擁」には助ける、守る、取り囲んで遮る、塞ぐという意味があり、「炉」は彼の通称である悪魔モロクの神像が炉であったことから付けられたと思われる(また真名と通称の関係が逆だが)。
真名全体で「味方を護り敵を閉じ込める巨大な炉」という意味だと思われる。
その真名通りの役割に使われる「
ラビリントス」は彼のこの本質に由来する
自在法だと思われる。
「宰相」とは、君主の宮廷において国政を補佐する官吏の最高位である。「内閣の首席」である首相と異なり、君主から任じられている点が特徴。
最終更新:2025年08月17日 21:33