【種別】
紅世の徒”、通称

【初出】
III巻

【解説】
紅世の王”。真名は“千変”(せんぺん)。は濁った紫色。かつての中国での通称は蚩尤。
仮装舞踏会]の『三柱臣』の一角たる『将軍』の立場にある、最強とされる強大極まる“紅世の王”。
創造神祭礼の蛇”の眷属として作られた特殊な“徒”であり、主や仲間たちの護衛役としての役割を持つ。
その役割ゆえに、「他者を守る」という“徒”としては特殊な欲求を持っていた。

『将軍』としての仕事に対して不真面目で、護衛の依頼をしてきた他の“徒”をフレイムヘイズから守るという「道楽」にかまけて、『三柱臣』として自らが果たすべき仕事を(IV巻終了時点までは)一つもこなしていなかった。
しかし、依頼を遂行する際にはプロ意識や仕事人気質を発揮する、変わりものの“王”。
彼が依頼に没頭するのは、依頼によって他者を守るという行為が、己の使命や存在の在り様の代替行為だからであった。
大命』遂行時のみ使用を許される宝具は、剛槍『神鉄如意』。

『巫女』ヘカテーと同じく、死亡しても完全に消滅するわけではなく、創造神とともに眠りにつき、創造神の目覚めの先触れとして新生したヘカテーが「守ってほしい」と望めば、シュドナイも新生するようだ。SIII巻で、神威召喚のために生贄を供すことを憚った太古の“徒”たちが創造神に願った結果、創造神が『眷属』という存在を世界法則に組み込んだ結果であり、シュドナイたち『三柱臣』が新生されるのは彼らの存在が世界法則の一環として組み込まれているからだということが判明した。
より正確にはヘカテーの「守ってほしい」という願いから呼び出されるらしく、それ故にか彼女に対して深い愛情を抱き度々「俺のヘカテー」と呼び言い寄っているが、全く相手にされていない(むしろ「私はあなたのものではありません」という台詞でいつも軽くあしらわれているなど距離を置かれていた)。しかし全く懲りていない。
ちなみに「そういう趣味」でヘカテーが好きなわけではないとの事。
一方で、ベルペオルに対しては「ババア」呼ばわりで、嫌っているわけではないが、お互いに反りが合わない。

性格は豪胆で、部下にも寛大。友(ソカルなど)も多いが、ことが愛するヘカテーの身の危険に及ぶと怒り狂い、敵味方ほぼ関係なく攻撃するという、極端に激しい気性の持ち主でもあった。
シュドナイの狂乱は、多くの“徒”や“王”を屠っており、あのベルペオルやフェコルーですら恐れるほど。ダンタリオン教授もその対象であったはずだが、これは上手く逃げ延びている模様。
“徒”にしては珍しく、フレイムヘイズに対しても付き合いの長い者、侮れない者に対してはある種の敬意や親しみに近い態度で接する場合があった。

現代では普段、プラチナブロンドの髪をオールバックに決め、スーツを着こなし、サングラスをトレードマークとした長身の男の姿を取っていた。
煙草を嗜み、いつも濁った紫の火を灯して吸っていた。煙草に関しては、愛するヘカテーに言われても止められない程好んでいたようだ。
十六世紀の『大戦』に参戦した際には、漆黒の鎧に身を包んだ騎士の格好をしていた。

通常“徒”は一度とった姿を滅多に変えないのだが、シュドナイは例外的に、真名の通り姿をいくらでも変える本質を持っており、必要と感じたら身体を望むままに『変化』させた。
自在に身体を巨大化させたり、手や口を様々な場所に複数作ったり、様々な動物の身体へと姿を変転させたり、建造物の内部一面を覆い尽くしたりしたことが確認されていた。
姿をコロコロ変えるので具体的な本性は不明だが、変化した姿は虎が比較的多かった。

ここ百年あまり[仮装舞踏会]にはさっぱり寄り付かないでいたようだが、中世の頃には『大戦』に出陣するなどそれなりに真面目に働いていた模様。
また、シュドナイ自身の戦闘力も全く衰えておらず、そのためいまだに下部構成員からの信頼は篤く、有事の際にはストラスオロバスレライエなど、数千規模の“徒”の軍勢を従え戦う。
通常の状態でも圧倒的な戦闘力を誇るが、『神鉄如意』を使用した際の戦闘力はさらに凄まじく、かつての『大戦』では『極光の射手カール・ベルワルドを相手の油断もあったとはいえ一蹴・殺害し、現代では欧州で『愁夢の吹き手』ドレル・クーベリックを彼の主催するドレル・パーティーと共に滅ぼし、上海会戦では『剣花の薙ぎ手』虞軒を容易く討ち果たしていた。
現代でのフレイムヘイズ兵団との戦争においては、覚醒を果たしマティルダと同等の力を得たシャナヴィルヘルミナセンターヒルまで加えた最強格の討ち手三人を同時に相手取って、互角どころか優に凌駕し、常に優勢に戦いを運び、その後はセンターヒルを一騎討ちにて十分程度で葬るなど、兵の扱いだけでなく、単独での戦闘においても一騎当千の形容すら生ぬるい、異常なまでに飛び抜けた戦闘力を誇った。
また、異常なほど高い耐久力も持ちあわせており、討滅するにはフレイムヘイズ数万人以上の“存在の力”が必要とされた。
兵を無駄に殺すことを嫌う性格と、彼単独で戦況を容易く激変させられるその凄まじいまでの強さゆえに、彼が指揮を取る際は強敵相手には部下に手出しをさせず、一人で敵を殲滅することも多かった。

1930年代には“穿徹の洞”アナベルグの護衛として、ニューヨークで『弔詞の詠み手』と戦火を交えた。

現代になって、“愛染の兄妹”(ソラトティリエル)を護衛する過程で、香港で『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルと遭遇するも、無用な衝突を好まないため、回避していた。その後、御崎市で『零時迷子』を発見し、それ以降、急に本腰を入れて、『大命』遂行のための活動を開始した。
[仮装舞踏会]軍勢の指揮を執り、秘密裏に兵力を収容して回ったり、各地の重要な外界宿を襲撃、殲滅したりしていた。彼に殲滅された外界宿は、欧州の『ドレル・パーティー』、東アジアの『傀輪会』など数多に上り、それと共に幾十人もの名高いフレイムヘイズを殺害していた。
こうして世界各地から集結させた兵力を『星黎殿』に収容して、不在の間の軍の統括をデカラビアに任せた後、『大命』第二段階を完遂するために『盟主』らと共に『久遠の陥穽』に向かった。
最古のフレイムヘイズの成れの果てたちを退けながら『詣道』を踏破して、最奥部である『祭殿』にて“祭礼の蛇”神体の復活と覚醒に立ち会い、歓喜を露わにする。そして、『詣道』を遡る途中で追いついて来たシャナたちの妨害をものともせず、“祭礼の蛇”神体と共にこの世に還幸した。

この世に帰還した時点で、実質的に[仮装舞踏会]全軍の指揮権を掌握した。
要塞守備兵と直衛軍の再編成を行いながら北方からの援軍を待つ間に、要塞内に潜伏した敵残党や新たな侵入者の捜索のため『星黎殿』内の巡回を行った。それら要塞内の余事を片づけた後、到着した北方からの援軍を掃討部隊として直率し、壊乱し戦場に散らばったフレイムヘイズ兵団の包囲殲滅戦を展開した。
兵を無駄に殺さぬように、掃討部隊には手を出させずに実質単独でフレイムヘイズを狩っていた。捜索の内、彼を足止めするために待ち構えていたシャナとヴィルヘルミナのコンビと遭遇し、交戦。先代とのコンビにも負けぬ二人の最強格のフレイムヘイズを相手に全く引かずに優勢に戦い、その後、センターヒルまでも加わった最強格の討ち手ら三人を同時に相手にしてもまるで問題にしなかった。
しかし、マージョリーの仕掛けた偽『天道宮』の罠にかかり一時封印され、三分かからずに破壊したものの、直後に救出に駆け付けたキアラの不意打ち・撹乱を受けてシャナ、ヴィルヘルミナ、マージョリーらを取り逃がす。その後、シュドナイの足止めのために残ったセンターヒルを十分程度で葬った。
結果的には兵団の大半を叩き潰し、『大地の四神』の一角を討ち取り、兵団の重鎮ザムエルも掃討部隊の手で殺害するなど、多くの戦果を挙げたが、戦いの終盤の主導権を奪われてしまったことなど、本人としては画竜点睛を欠いてしまった感が拭えなかった。

御崎市決戦では、生贄となるヘカテーを見送ったあと、攻め込んできたシャナとヴィルヘルミナを“祭礼の蛇”坂井悠二とともに迎撃。激しい戦闘を繰り広げた。
カムシンによって『真宰社』が倒壊の危機に陥った際には、巨大化させた『神鉄如意』で塔の中心を貫き芯柱とすることで倒壊を防いだ。
ヴィルヘルミナが『約束の二人』を追っていった後は、マージョリーを相手に戦うこととなった。
新世界『無何有鏡』の創造が完了し、“祭礼の蛇”が眠りにつき、ベルペオルを初めとする“徒”達が新世界に旅立っていく中、一人だけ“ミステス”坂井悠二と共に御崎市に残ることを選んだ。
引き続き御崎大橋でマージョリーと戦いを繰り広げ、フレイムヘイズ数万人分以上の力を込めた全周火炎攻撃を受け続けた末に遂に討滅され、ヘカテーと共に一時の眠りについた(本人曰く、討滅されたことは「そのつもりだった」らしく、マージョリーは御崎市に満ちていた莫大な“存在の力”を取り込んで戦っていたが、シュドナイは自分一人の力だけで互角に戦っており、半ば自殺だった)。

アニメ版
ヴィルヘルミナと並び戦闘面に関して大きく改変されたキャラである。
基本的に神鉄如意を持った状態でも神鉄如意での攻撃を中心に戦うことはせず、炎弾による攻撃が多い(『神鉄如意』を巨大化、分裂などさせる場面も大きく減少している)
また、“千変”と呼べるような変化のバリエーションも少ない。戦闘時に変化する姿は額に一本角を生やした、蝙蝠の翼を持つ獅子のような怪物となることが多いが、4つ首の海龍になることもある。また、原作に準じて、逃げるときに蛇になったり、依頼者を守るときに岩のような巨大な甲羅になったりもしている。
アニメオリジナル展開の第一期、第二期ラストは大命に関する戦いだが、ストーリーの都合上、弱体化させられている。
第一期では、『星黎殿』の襲撃の際、悠二の拉致を担当。
最終決戦ではマージョリーとやりあうも、暴走したヘカテーの悲鳴を聞いて戦線離脱、
虚脱状態になった彼女を抱えて、劫火に燃える『星黎殿』を後にした。
第二期では、原作に準じて外界宿殲滅のため活動し、“敖の立像”の「護衛」も行った。
アニメ第3期では原作通りに行動し、最期も原作通りだった。

【由来・元ネタ】
名前の元ネタは、ソロモンの72柱の悪魔 ”剣の王”アスモダイ(Asmoday)の別名シュドナイ(Sydonay)と思われる。元は天界の熾天使で、七大罪の色欲を司るという。
序列32番の悪魔で、人間の体に雄牛・人間・牡羊の頭を持ち、尾は蛇、足はガチョウ、手には軍旗と毒槍を持ち地獄の龍に跨って現れると言う。
召喚の際は、幾何学、算術、天文学、工芸術を教えるが、乙女を淫乱にして新婚者を離反させると言う。

『旧約聖書』続編「トビト記」3章7節~17節には、アスモダイ――アスモデウスが資産家の娘であるサラという少女に憑りついた一件の顛末が語られている。
この時、彼女は繰り返し7回も結婚相手を初夜に絞殺し続けるが、実際に殺害を実行していたのはサラに取り憑いたアスモデウスであった。
特筆すべきは、アスモデウスはサラ自身には指一本触れていないこと。
手段は兎も角、深窓の令嬢を望まぬ婚礼から守っていた騎士といえなくもない。ヘカテーの守護を担うのはこの辺りの伝承によるのだろう。
このエピソードでは、四大天使の一角ラファエルの加護を受けた人間トビアによって追い払われることとなる。

古い通称「蚩尤」は、中国神話における天帝への反逆者。獣身銅頭に鉄の額とも、四目六臂で人身牛蹄とも頭に角を持つとも言われる。
濃霧を起こして敵を苦しめたが、ついに捕らえられ、黄帝(別名・帝鴻氏)によって処刑された。
戦の神として、全ての優れた武器を作ったとも言われる。

「千変」は千変万化、さまざまに変化することで、必要に応じて身体を自在に変化させる彼の本質を表している。

【コメント】
☆これまでのシュドナイの雇い主は、“愛染の兄妹”やアナベルグと、いずれも“徒”の気配を隠蔽する能力の持ち主だった。ただ、それが彼を雇う際の条件なのかは最後まで不明であった。
☆↑この二組は(兄妹は仕掛けがないときの)直接的な戦闘能力が低いから、目的を達成(もしくは仕掛けの設置)するまでフレイムヘイズと出遭った時に代わりに戦闘or迎撃、足止めする”徒(王)”が必要だから護衛を請け負ってるシュドナイを雇ってたんじゃないか?
☆中国南西部での決戦(つまりXX巻あたり)のときに背中に目を開こうとしてたけど、服も自分で作ってたか、服の形状を変えたのか?まさか、透視なんてできないだろうしな。
☆↑服ごと形状を変えてまた服戻して~なんてことは初登場時からやってるから、服まで含めて変化の能力の対象なんだろう。
☆↑そうなのか・・・なら力の消費量は微々たる物なのかな。
☆↑↑つまりシュドナイ始め“徒”達は裸同然なのか?!
☆完全に討滅するためには平均レベルだと万人単位のフレイムヘイズが必要というチート具合。『四神』全員=シュドナイくらいの力かな?
☆↑ようやく倒せても、ヘカテーが存在していれば(すぐにかはわからないが)この世に出現できるらしい反則具合。汚い、さすが眷属きたない。
☆最後の戦いは、「もうヘカテーも“蛇”もいないから、思う存分暴れて討滅されて、ヘカテーのところへ行こう」という自滅的な行動に思える。
☆↑単純に悠二を気に入った、という理由もあるだろうと思われる。
☆最終巻で文章中に最強の“徒”と書かれていたことから、神など規格外の存在を除けばやはり作中最強キャラなのだろう。
☆単体で肩を並べられそうなのは『都喰らい』後のアシズぐらいだろうか。
☆アシズも規格外扱いじゃなかったか?
リベザル一番乗りの際のシーンを見るあたり、ただ寛大なだけでなく部下の心情まで推し量って細やかな心配りができることが分かる。ヘカテー絡みでブチ切れさえしなければ理想の上司かもしれなかった。
☆最終決戦の軽口を見る限り、悠二にIV巻でハッタリを掛けられたことも軽くからかってそうだな。ハッタリから肩を並べて戦ってる因果とかな。
☆[宝石の一味]のコヨーテフックストンサーイイナンナや[革正団]のサラカエルドゥーグとも絡んでいたら面白そうだったのにな。
☆番外編『しんでれらのしゃな』では、三重臣の一人として登場している。
☆番外編『かぐやひめのしゃな』では、天人将軍として登場している。
☆番外編『おじょうさまのしゃな』では、軍人らしき男として登場している。
☆番外編『さんじゅうしのしゃな』では、三銃士のシュドナイ・ポルトスとして登場している。
最終更新:2020年11月03日 04:55