【初出】
I巻
【解説】
フレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』
シャナの所持する大太刀型宝具。現代より数百年前、“
紅世の徒”の強さに魅入られた人間の刀匠が、“
紅世の王”を相槌に据え、自身の存在を“
ミステス”に変化させるほどの“
存在の力”を捧げて鍛え上げた。
刀匠が強者に刀を託すために変化した史上最悪の“ミステス”・“
天目一個”の核となっていた宝具だったが、本編開始の数年前にシャナが彼を倒して手に入れた。
シャナの身の丈ほどもある抜き身の大太刀。寸法は、全長約130cm、刃渡り約108.3cm、柄約21.7cm。
鞘は元から存在せず(挿絵では橙色の袋に包まれた状態で描かれたことがあった)、“天目一個”は抜き身で持ち歩き、シャナは『
夜笠』の中に収納していた。
刃渡りは優美な反りを持ち、切っ先は刃の広い大帽子。刀身は細くも分厚く、そして刀身の皮金と刃の皮金は波紋も見えないほどに銀色に溶け合う。また、柄は刃渡りに対して異常に短く、鈍色の重い木瓜型の鍔を持つ。全く質実簡素な作りであるが、一つの刀としても十分に業物と呼べる逸品である。
この刀は、自らに対する
自在法を含めたあらゆる力の干渉を受け付けないという驚異的な特性を備え、絶対に破壊されることが無い。
更にその切れ味も刀剣系の宝具としては最高級で、特性と併せて「神通無比の大業物」とも呼ばれた。
その切れ味は、尋常の力では傷すらつかず自在法でも干渉不能な
創造神“
祭礼の蛇”
伏羲制作の宝具『
タルタロス』の強靱さを一部だけとはいえ上回り、容易く断ち切った。これもまた、「あらゆる自在法の干渉を受け付けない」という『贄殿遮那』の特質故であった。
一個の武器系宝具としては極上だが、その持ち味を生かすには相手に接近するしかなく、しかもその干渉不可能特性が適用されるのは刀本体だけなので、遣い手の体への特殊な防御効果は一切期待できない。また、宝具の特性によって遣い手の力量が底上げされることはなく、遣い手の力量があってこそ優れた刀となる。
基本的に「折れず曲がらずよく斬れる」刀というだけであるので、相性の悪い宝具(『
バブルルート』、『
吸血鬼』など)と交戦する場合には、かなりの不利を強いられた。
どの程度高度かは不明だが宝具自身に意思が存在し、この刀を打った刀匠の自我と共に、“天目一個”の自我を構築していた。シャナがかつて“天目一個”を分解しようとした時は部分的に現われていた。
1月初頭にシャナが“祭礼の蛇”
坂井悠二に敗れた後、『
星黎殿』内の宝物庫に収蔵されていたが、シャナの求めに応じて“ミステス”“天目一個”として再び形を取り、自身をシャナに届けさせた。
御崎市決戦では、
吉田一美の首にかけられた『タルタロス』の一部を、シャナが一美の求めに応じて『贄殿遮那』で断ち切った。
【元ネタ・由来】
「贄殿」は美作一ノ宮の
中山神社(祭神は天目一箇神)近くの谷の名前で、大太刀の刀匠はこの近辺に住んでいた。一般名詞としては、大嘗祭での神への供物を納める建物。転じて、身分の高い人物の屋敷の食物貯蔵庫や、調理場を意味するようになった。
「遮那」とは東大寺の大仏として知られる毘盧遮那仏、つまり太陽神・大日如来のことである。
概ね「贄殿で作った凄い物」という意味になる。また字面から「でかい神をも捧げてしまう贄殿」、つまり「何者であってもぶち殺せ」という気概が連想される。
最終更新:2024年12月26日 07:55