月の残光

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月の残光  ◆EboujAWlRA



白のカッタシャツと黒のズボンを着た少年、前原圭一は図書館で『北条悟史』を探していた。
圭一は悟史の容姿を全く知らない。
知らないが、兄妹なのだから妹の北条沙都子に似ているのだろうと漠然に考えていた。
そして、悟史に会って雛見沢の謎と、どうして悟史が雛見沢から姿を消したのかを聞こうと思っていた。
だから、圭一は臆病に思えるほど慎重にではあるが歩きまわっていた。
最初に病院を大雑把にではあるが見回り、悟史が居ないと分かると次は近い施設の図書館へと向かっていた。
警察でも教会でもなく、図書館を選んだのは一番慣れ親しんでいる場所だったからだろう。
結果的には遊園地からの煙が上がった様子が見えたことから、その行動は正解だったと圭一は胸を撫で下ろした。

だが、今はどっちに行っても同じだったかもしれないと思い始めていた。
その原因は探索を始めた図書館の一隅から漂ってくる、異様な悪臭。
鉄が酸化した際に生じる、鼻の奥どころか脳にまでツンと来るような刺激的な悪臭に溢れていた。
なんとなく、その先にあるものが圭一にも想像が着き始めた。
得てして嫌な推測というものは簡単に浮かぶものである。

「うっ……!」

そして、その想像通り圭一は死体を発見した。
テンガロンハットと大きめのコートを身に纏った中年の男性の死体だ。
仰向けに倒れた身体と、切り落とされた首。
それはちょうど最初の不思議な場所で見た、小さな女の子と同じだった。
いや、あの時はこれほど近くで見てはいなかっただけに、今回の方が何倍も不気味で恐ろしい。

「うっ……! あ、ぁぁあ!」

その恐怖と驚愕と、首のとれた女の子の姿を思い出してしまい吐き気が込み上げてくる。
堪えようとして上を向くが、目の前の死体から漂う刺激臭が鼻から脳へと昇ってきて吐き気をより増進させる。

「くぅ、は、はあ、はあ……」

だが、それをなんとか堪える。
死体を見るのはこれで四度目ということもあったし、そして嘔吐物で死体を汚すのは躊躇われたからだ。
死んでから遺体に汚物をかけられる、もし圭一が遺体なら耐えられないだろう。
一度死んだと思った圭一だからからこそ、そんなことを思ったのかもしれない。
とにもかくにも腹の奥から込み上げてくる吐き気を圭一は堪えた。

「と、とにかく、この近くに人がいるってことか? それも殺し合いに乗った?」

この島に来てから、いや殺し合いに連れてこられてからまだそれほどの時間は経っていない。
精々が二時間程度であり、その僅かな間で人が死んでいるのだ。
恐らく死んだのはこの人だけではない。もっともっと多くの人間が死んでいる。
見れば、この男だって銃を持っている。
男だって殺し合いに乗っていて、それが逆に襲おうとした人間に殺されただけだ。

そうだ、誰が殺し合いに乗っているかなんてわからない。
ずっと仲間だと思っていたレナや魅音だって、殺し合いでない普通の日常で圭一を殺そうとしたのだ。
恐らく殺し合いに乗っている人間は圭一が考えているよりも多い。
それも殺されている人間の中にも殺し合いに乗った人間も居る。
戦わなければ生き残れない、そんな言葉が圭一の頭に浮かびあがる。
そして死体の傍にある銃を眺めて、鼻を押さえながら屈んで銃を拾う。
これで圭一は鉄パイプ以上の戦うための力を、殺すための暴力を手に入れた。

「どうする? これで、どうするってんだよ?」

何度目かになる独り言をつぶやく。
思わず拾ってしまったが、これを持ってどうするのだ。
人を殺すのか、レナや魅音たちにしたように。ノートにレナや魅音の名前を書いたように。
襲ってくる人間でなく、怯えている人間も殺すのか。

「とにかく、悟史を探すか……」

圭一は銃をベルトに差し込んで、その答えを先延ばしにする。
とにかく、まず最優先で悟史と会うと決めた。
一年前に雛見沢に何が起こったのか、そして悟史は何故居なくなってしまったのか。
悟史に出会ってそれを調べなければいけない。

そこまで考えて、ふと不吉な考えが頭によぎる。

「でも、もし悟史も殺し合いに……」

だが、その言葉を最後まで言い切ることなく、飲み込む形で打ち切る。
それを最後まで言ってしまえば、悟史と対面する勇気すらなくなってしまうような気がしたから。
今は悟史を探そう、全てはそれからだ。
だが、その最中に他の人間を見つければ……殺すことも考えなければいけないかもしれない。
圭一は人を殺したくたくてしょうがないわけではないが、何より死にたくないのだ。
そのためには無茶な接触は避けるべきだろう。
幸いと言うべきか拳銃を見つけた。
その強力な武器を手に入れたことで、ある程度ではあるが心にゆとりが出来た。
これで具体的にどうするか、という答えは出ていないがとにかく強力な武器を手に入れたのだ。

「気は抜けないな」

僅かに振りむき、死体を横目で眺める。
圭一もいつああなってしまうかは分からない、ここは殺し合いの会場なのだから。
逃げ回る形になってでも、慎重に行かなければ。
死体の傍に会ったデイパックを拾っておく。
そして汚れていないことを確認すると、デイパックを手元に手繰り寄せる。
中身に手をやってそのままになっていることを確認する。
ひょっとするとこの男を殺した人間が戻ってくるかもしれない。
ゆっくりはしていられない、デイパックに全てを移しかえるとすぐに圭一は図書館から立ち去った。


   ◆   ◆   ◆


「……ひでえことしやがる」

短く刈り込んだ髪を弄りながらジャケットを着こんだ体格のいい男、亀山薫はポツリと呟いた。
軽く振り返ると、セーラー服を身にまとった切り揃えた髪が特徴的な少女、稲田瑞穂が何とも言えない表情でこちらを眺めている。
遠目からだが人が死んでいることを察したのだろう。
棚に隠れているとはいえ、死体の放つ存在感とは異様に目立つものだ。

前原圭一が図書館から出てからおよそ十数分後、入れ替わりになる形で亀山薫と稲田瑞穂が図書館へと足を踏み入れた。
山道と整備された街道、瑞穂による襲撃と情報交換。
この二つが原因で圭一と亀山たちに時間差が出来たのだ。
若干錯乱した圭一と出会わなかったのは二人にとって幸運だった。
圭一が出る時に裏口から出たことも幸いして、行きあわなかったのだ。
そして、二人は安心して人が居るか居ないかを確かめる程度の軽い探索。
それを初めてからほどなくして亀山が死体を見つけた。

亀山は眉をしかめながら、その床に転がった死体を眺める。
亀山も刑事、解剖医ほどではないが死体なら見慣れている。
だが、目の前の転がった死体の惨状にはかける言葉が見つからなかった。
とにかくひどい、こんな単純な言葉が出てこない。

その死体は首を『捩じ切られて』いた。

まるで電車に引かれたかのように、見事に捩じ切られている。
こんな狭い場所では車は使えない。
精々バイクぐらいだが、どちらにせよ床に何かしらの痕跡が残るはずだ。
それがないとは、なんとも不思議な状況だ。
この手のトリックを考えるのは見慣れているが、明らかにするのが得意なわけではない。
考えすぎても仕方がない。

しかし、これはとんでもない痛みだったはずだ。
正当防衛としても過剰だ、明らかにこの男は被害者の側。
さらに、デイパックが周囲に見当たらないことから追剥ぎまでされたようだ。
亀山はそう思うと、自然と目を閉じて両手を合わせる。

(墓すら作れなくてすいませんね。せめて、人として安らかに眠ってください)

首を持ち上げ身体にくっつけるように置き、遺体の瞼を閉じさせる。
そして、カーテンをちぎって死体の上にかけてその姿が人目に触れないようにした。
何の意味もない行動だとは思うが、ゴミのように横たわった姿ではなく人らしい姿で眠らせてやりたかった。

ここに稲田瑞穂を置いて行くのは、あまりよくないだろう。
死体の傍でいつ戻ってくるかも分らない亀山をこんな惨死体と一緒に待つなど大の大人でも頭がおかしくなる。
しかも、先ほど南東の方向に煙が上がっていたのが見えた。
あの騒ぎを避けた人間がこちらに向かってくるかもしれない。
面倒ではあるが、別の腰を落ち着けれる場所を探した方がいいだろう。

「ここにあるのは、その、なんだよ、死体だけだ。別の所に行こう」
「……そうですね。本を読むなんてゆっくりするわけにもいきませんし、長居をする理由もありません」

亀山のその言葉に瑞穂は丁寧な言葉遣いで答えた。
僅かに動揺はしているようだが、目に見えて怯えているわけではない。
思ったよりも体力があるし、この異常事態にも動じていない。
ただ、死体を見ても驚かないのはプログラムとやらで死体を見慣れた結果か、とも思うと空しくなる。
実感は湧かないが、プログラムとやらは良くできた話だしこの状況に動揺しないことと酷似し過ぎている。
瑞穂が思春期特有の特別意識からの妄想にしては、身勝手な行動が少なくしっかりし過ぎている。
それに加えて向こうの意思次第で爆破出来る首輪やランダムに武器を配るなど、V.V.の殺し合いの進行に手慣れている。
瑞穂の言うプログラムとやらを模倣した可能性が高いと亀山は考えていた。
オリジナルのプログラムとの大きな相違点は対象が中学生だけではなく老若男女問わなくなったことか。
このことから全くのデタラメと切り捨てるのは躊躇われる。

相変わらず謎は多いし、パズルのピースも揃いきっていない。
それでもこのままここで蹲っているわけにはいかない。
今、亀山が優先すべきことは杉下右京との合流、その際に手土産になるパズルのピース。
ある意味ではこの瑞穂は重要参考人、パズルの重要なピースである。
重要参考人にして守るべき一般人、その存在が亀山の気合いをより強くしていた。

と、そんな時に瑞穂が亀山に話しかけてきた。

「……悔しいんですか?」
「何が、だ?」
「人が死んで、悔しいんですか? 悲しいんですか?」

反応を窺うような、疑心に満ちた目で瑞穂は亀山を見つめてくる。
最初に警察だと名乗った割には、あまりにも信頼は薄いようだ。
そう言えばあの時から妙に怯えたような、それでいて汚いものを見るような眼になっていた。
「事件を解いた」という亀山の発言の後に「探偵?」と尋ねた。
普通は事件を解いたと聞けば、探偵よりも先に警察が頭に浮かぶはずだ。
ひょっとすると、何か警察に嫌な思いがあるのかもしれない。

「当たり前だ、俺は絶対に許せないことがあるから警察官になった。
 ……警察を絶対に信用しろとは言わない。ただ警察でなく俺を信じてくれ、今だけでいい。
 右京さんと合流出来りゃ絶対なんとかなる、出来なくても君を守ってみせる」

心の中で「俺は刑事だからな」と付け加えておく、瑞穂が警察に。
亀山は瑞穂に向ってあやす様に言い聞かす。
警察に信頼を抱いていなくてもいいが、そのあまり身勝手な行動をとられては困る。
亀山が困るのではなく、瑞穂が危険になるのだ。

その言葉を虚を衝かれたように目を丸くしたが、すぐに落ち着いた目へと戻る。
ただ気のせいかもしれないが、少し亀山を見る目が柔らかくなったように見える。
それでもまだ距離を取ったまま近寄ろうとはしないが。

「じゃあ、行くか。何時までもぼさっとしているわけにもいかないしな」
「ええ、水の戦士・マウンテンカメール。光の加護の下で闇を討つために動きましょう」

……ただ、このあだ名だけは止めてほしい、と言うのが亀山の本音ではあった。

【一日目黎明/F-7 図書館周辺】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]:鉄パイプ@現実、ベレッタM92F(12/15)@バトルロワイアル(小説)
[所持品]:支給品一式×2 デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン4本(60発)
    雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0~2(銭型に支給されたもの)
[状態]:健康、雛見沢症候群L3
[思考・行動]
1:どんな手段を駆使してでもこのゲームを生き残る。
2:悟史に会う。
3:悟史以外のひぐらしメンバーを警戒、他の人間も信用ならない。
4:デスノートについては半信半疑だが、どちらかといえば信じている。
[備考]
参戦時期は鬼隠し編終了後です。
※C120はあくまで雛見沢症候群の症状を抑えるだけで、完治させることは不可能です。
ちなみに健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こすとされています。


【一日目黎明/F-7 図書館内】
【亀山薫@相棒(実写)】
[装備]:なし
[支給品]:三味線糸@バトル・ロワイアル、小型液晶テレビ入りポテチ@DEATH NOTE、タオル@現実、支給品一式
[状態]:左腕に打撲
[思考・行動]
1:民間人を保護しながら何とか右京と合流し、この事件の解決を図る。
[備考]
※瑞穂に『水の戦士マウンテンカメール(仮)』と一先ずの真名を与えられました。

【稲田瑞穂@バトルロワイアル(小説)】
[装備]:模擬刀@現実
[支給品]:シアン化カリウム@バトル・ロワイアル、本人確認済み支給品×2、支給品一式
[状態]:健康。アフラ・マズダ様のお声が聞けないため若干落ち着かない(´・ω・`)
[思考・行動]
1:神秘の水晶を奪還し、アフラ・マズダ様と再び交信する。
2:悪は討つ。
3:亀山は……悪い人間では、ないかもしれない?
4:右京と言う人間は……?

※遊園地の火柱と煙を三人とも目撃しました。


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022:光と亀 亀山薫 070:Blood bath(前編)
稲田瑞穂
026:一晩の悲劇 前原圭一 076:寝・逃・げでリセット!



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