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禍々しい装置が佇む、男性器と女性器を象った内観が印象的な薄暗い一室。
その中央に座す装置の片側には、年端もいかない巫女服の少女。
反対側には、液体と固体の中間のようにどろどろと蠢き、たまらないほどの異臭を放つ存在。
少女はギロリと男を睨みながらも、その筒の中でじっとしている。
その中央に座す装置の片側には、年端もいかない巫女服の少女。
反対側には、液体と固体の中間のようにどろどろと蠢き、たまらないほどの異臭を放つ存在。
少女はギロリと男を睨みながらも、その筒の中でじっとしている。
「がぁっ、ああぁっ、あがあああぁぁぁっ!!」
筒の中に何かが満ち始めると同時に、身を焼かれるような痛みが彼女を襲う。
激痛から来る悲痛な叫び声が、筒の中で何重にも反響する。
そして自分の体がドロドロと融けだしていき、やがて分子分解のごとく砕かれる。
そして、筒は何もなかったかのように"何か"を飲み込んでいく。
激痛から来る悲痛な叫び声が、筒の中で何重にも反響する。
そして自分の体がドロドロと融けだしていき、やがて分子分解のごとく砕かれる。
そして、筒は何もなかったかのように"何か"を飲み込んでいく。
禁忌の邪術を執り行う施設、邪教の館に存在するはずのそれが行うものは、一つ。
悪魔を混ぜ合わせることで新たな命を生み出していく邪法、悪魔合体である。
悪魔を混ぜ合わせることで新たな命を生み出していく邪法、悪魔合体である。
その最中、俗に"素材"と呼ばれる悪魔たちは、筒の向こうで激痛に身を捩りながら、この世の物とは思えない断末魔を上げて行くのだという。
そして"自分"であった証を全て失い、新たな命へと転成していくのだ。
そして"自分"であった証を全て失い、新たな命へと転成していくのだ。
やがて、筒の中央に座す六芒星が、柔らかく光り始める。
そして一呼吸置いた後に、まばゆい光の柱が立ち上っていく。
瞬間的な輝きがじわりじわりと薄れゆく中、ゆっくりと現れる一人の陰。
そして一呼吸置いた後に、まばゆい光の柱が立ち上っていく。
瞬間的な輝きがじわりじわりと薄れゆく中、ゆっくりと現れる一人の陰。
それは、つい先ほど"融けた"はずの少女だった。
……悪魔合体には、特殊な例がある。
そのうちの一つに、固形と液体の中間を彷徨う物質、俗に言う"スライム"との合体がある。
通常の合体は、ニ体ないし三体の悪魔の分子(のようなものだと考えてもらっていい)が融合しあい、新たな生命となる。
だが、スライムとの合体の場合はそれがない。
スライムの分子が、もう一方の肉体に吸い込まれていくだけなのだ。
故に、スライムと合体した悪魔は姿をそのままにすることが出来る。
一見、意味がないように見えるが、体力の回復及び一時的な上昇など恩恵はある。
まあ、これを突き詰めると話が長くなるのだが……。
ともかく、スライムと合体すると"そのままの姿でいられる"ということだけ覚えておいてほしい。
そのうちの一つに、固形と液体の中間を彷徨う物質、俗に言う"スライム"との合体がある。
通常の合体は、ニ体ないし三体の悪魔の分子(のようなものだと考えてもらっていい)が融合しあい、新たな生命となる。
だが、スライムとの合体の場合はそれがない。
スライムの分子が、もう一方の肉体に吸い込まれていくだけなのだ。
故に、スライムと合体した悪魔は姿をそのままにすることが出来る。
一見、意味がないように見えるが、体力の回復及び一時的な上昇など恩恵はある。
まあ、これを突き詰めると話が長くなるのだが……。
ともかく、スライムと合体すると"そのままの姿でいられる"ということだけ覚えておいてほしい。
話を戻そう。
悪魔合体において、素材となる悪魔は言葉にできない"激痛"に襲われる。
この点をふまえて、先ほどの"スライム合体"を考慮した場合、どうなるか。
もう、おわかりだろう。
羽入は、先ほどの反抗的な態度に目を付けられ、矢継ぎ早に生まれていくスライムとの合体を強要され、激痛をたたき込まれているのだ。
それも、一度や二度ではない。
スライムが生まれる度に、COMPの空きを作るために"合体"させられている。
合体の度に襲い来る"激痛"、体が無くなっていく感覚が鮮明に残っている記憶、そして強制的に拭われる疲労感。
ただ、痛みだけを植え付けられる"拷問"が、この殺し合いの裏で何度も何度も何度も続いていたのだ。
悪魔合体において、素材となる悪魔は言葉にできない"激痛"に襲われる。
この点をふまえて、先ほどの"スライム合体"を考慮した場合、どうなるか。
もう、おわかりだろう。
羽入は、先ほどの反抗的な態度に目を付けられ、矢継ぎ早に生まれていくスライムとの合体を強要され、激痛をたたき込まれているのだ。
それも、一度や二度ではない。
スライムが生まれる度に、COMPの空きを作るために"合体"させられている。
合体の度に襲い来る"激痛"、体が無くなっていく感覚が鮮明に残っている記憶、そして強制的に拭われる疲労感。
ただ、痛みだけを植え付けられる"拷問"が、この殺し合いの裏で何度も何度も何度も続いていたのだ。
そして、数えるのもバカらしくなってきた頃。
同じように筒に放り込まれ、激痛を与えられ、鮮明な記憶を植え付けられ、疲労を拭われていく。
今回、唯一違ったのは隣に志々雄がいるということぐらいか。
それでも羽入は屈することなく、光の柱から現れると同時に観柳を睨みつける。
同じように筒に放り込まれ、激痛を与えられ、鮮明な記憶を植え付けられ、疲労を拭われていく。
今回、唯一違ったのは隣に志々雄がいるということぐらいか。
それでも羽入は屈することなく、光の柱から現れると同時に観柳を睨みつける。
「悪魔合体ってのは、悪趣味なもんだな」
未だに屈する様子を見せない羽入に、観柳は若干の苛立ちを見せていたが、志々雄の前と言うことで少し押さえる。
当の志々雄に関しては、つまらなさそうに悪魔合体を見つめている。
興味本位で見に来たはいいものの、観柳の言う通り成功率は低い。
魔ッ貨と呼ばれる金を使い、狭間の作り上げた擬似魔界空間の悪魔を従え、即合体にぶち込む。
それでも出来上がるのは大半がスライム、滅多にまともな物はできやしない。
志々雄がこの部屋に来てからの合体は全てスライムになっていた。
焦った観柳が、成功の一例としてスライム合体を見せたのだが……志々雄のリアクションは渋い。
当の志々雄に関しては、つまらなさそうに悪魔合体を見つめている。
興味本位で見に来たはいいものの、観柳の言う通り成功率は低い。
魔ッ貨と呼ばれる金を使い、狭間の作り上げた擬似魔界空間の悪魔を従え、即合体にぶち込む。
それでも出来上がるのは大半がスライム、滅多にまともな物はできやしない。
志々雄がこの部屋に来てからの合体は全てスライムになっていた。
焦った観柳が、成功の一例としてスライム合体を見せたのだが……志々雄のリアクションは渋い。
「まぁ、これは躾の一環ですな」
「躾?」
「躾?」
いかにも退屈そうにしている志々雄に向けて、観柳は笑顔のまま語りかける。
そう、少しでも反抗の気配を見せる者の心は、徹底的に折っておかねばならない。
あの時と同じ事を繰返してはいけない。
自分の手札だと思っていた"物"に、反旗を翻されるなど、あってはいけない。
もう、失敗は出来ないのだから。
そう、少しでも反抗の気配を見せる者の心は、徹底的に折っておかねばならない。
あの時と同じ事を繰返してはいけない。
自分の手札だと思っていた"物"に、反旗を翻されるなど、あってはいけない。
もう、失敗は出来ないのだから。
「飼い犬の躾はしっかりしておかないと、手を噛まれますからな」
「は、飼い犬に手を噛まれる程度の飼い主ってことだろ」
「は、飼い犬に手を噛まれる程度の飼い主ってことだろ」
笑顔を保ったまま語り続けていた観柳に、志々雄は含み笑いで答える。
一瞬表情が凍りついたのを見た上でのことか、それとも本心からか。
そのまま志々雄は部屋から立ち去ろうとする。
一瞬表情が凍りついたのを見た上でのことか、それとも本心からか。
そのまま志々雄は部屋から立ち去ろうとする。
「どこへ?」
「散歩だよ。フラフラ歩けんのも、今の内だろ。ま、せいぜい頑張れよ」
「散歩だよ。フラフラ歩けんのも、今の内だろ。ま、せいぜい頑張れよ」
そうして、志々雄は悪魔合体の間から立ち去って行った。
その背中を、観柳はじっと見つめながら。
その背中を、観柳はじっと見つめながら。
「糞がァ! 舐めやがって!!」
振るい所の無い拳を羽入にぶつけ、そのまま羽入を再び装置へとぶち込んでいった。
フゥ、と冷静な溜息をつきながら、志々雄は廊下を歩く。
"金"で望みのものを手に入れ続けてきた者が粋がったところで、"力"で何かを手に入れられるわけも無い。
あの虐待劇をいくら続けたところで、観柳が彼女を"手に入れる"事は無いだろう。
それどころか、自分の無力さを見せびらかすだけだ。
飼い犬を躾けているつもりが、逆に飼い犬に隙を見せていることに気づいていない。
「所詮商人は商人、か」
もう一度皮肉めいたセリフを吐いた後に、前方に人影が映る。
「おいおい、どうしたってんだよ」
音を立てるように一歩一歩を踏みしめて歩く少女、古手梨花に軽く声をかけていく。
「うるさいわね、ほっといてよ!!」
「ギャーギャー喚くなよ、女が腐るぜ?」
涙を浮かべながら、ぶっきらぼうに怒りを露にしていく梨花に、志々雄は思わず両手を前に広げてしまう。
だが、それに押されるわけではなく、淡々と話を続ける。
「そうだ、てめェに聞きてェことがある」
ぴたり、と梨花の足が止まり、そのままくるりと振向いていく。
「……何?」
精一杯の威圧をする梨花に対し、志々雄は笑うでもなく言葉を続ける。
「気になってんだ、てめェが"残る"っつった時からよ」
そしてカバンから一振りの刀を抜き出し、梨花の目に留まらぬ速度でそれを振るう。
丁度真横、垂直に突き刺さる刀、僅かに頬を伝う赤い血。
「てめェ、何がしたい? どうしたい? その手に何を掴もうとしてんだ?」
驚愕に目を見開く梨花をよそに、志々雄は黙々と言葉を続ける。
「まさか力が無いのを言い訳に、黙って見てるだけか?」
従わない、見届ける、そんな言葉を聞いてはいたものの、志々雄は梨花がこれといって動くところを見ていない。
ただの少女である彼女が何をするのか、僅かながらに興味はあった。
だが、待てども待てども彼女は行動を起こさない。
抗うだけの力が無いからか? それは言い訳にしか過ぎない。
「……とはいえ、ポンと力が沸いて出て来る訳も無ぇ。難しい話だな」
まあ、それは別の話として。
志々雄が梨花に抱いているのは、純粋な興味。
梨花は今、あの日の宗次郎のように、この上なく力を欲している。
ならばもし、力を手にすることで"変われる"のならば。
「だが……"お友達"は助けてやれるかも知れねぇぜ」
"それ"を少しだけ、見て見たいと思う。
志々雄が梨花に見出したのはそれだけであり、それが全てだ。
「ここを真っ直ぐ行って、右に曲がった突き当りの部屋」
だから、エサを撒く。
餓えた獣から、"力"を引き出すために。
「そこで、面白いモンが見れるかもな」
楽しいものが見れるかもしれないから、志々雄は動く。
退屈に参加者を待つよりは、少しエキサイティングな方が良い。
「そいつは持ってけ、餞別だ」
そこまで一息に言い切り、志々雄は歯を見せて笑う。
「……何が狙い?」
あからさまに怪しい志々雄の動きに、梨花は睨みながら問い返す。
「そう怖い顔すんな、どうってことはねぇよ。ただ――――」
その言葉に、フッと笑ってから志々雄は上を向き。
「俺は戦うために地獄だろうと前向いてるヤツの方が、好きだからな」
最高の"笑顔"を作って、梨花に答えた。
"金"で望みのものを手に入れ続けてきた者が粋がったところで、"力"で何かを手に入れられるわけも無い。
あの虐待劇をいくら続けたところで、観柳が彼女を"手に入れる"事は無いだろう。
それどころか、自分の無力さを見せびらかすだけだ。
飼い犬を躾けているつもりが、逆に飼い犬に隙を見せていることに気づいていない。
「所詮商人は商人、か」
もう一度皮肉めいたセリフを吐いた後に、前方に人影が映る。
「おいおい、どうしたってんだよ」
音を立てるように一歩一歩を踏みしめて歩く少女、古手梨花に軽く声をかけていく。
「うるさいわね、ほっといてよ!!」
「ギャーギャー喚くなよ、女が腐るぜ?」
涙を浮かべながら、ぶっきらぼうに怒りを露にしていく梨花に、志々雄は思わず両手を前に広げてしまう。
だが、それに押されるわけではなく、淡々と話を続ける。
「そうだ、てめェに聞きてェことがある」
ぴたり、と梨花の足が止まり、そのままくるりと振向いていく。
「……何?」
精一杯の威圧をする梨花に対し、志々雄は笑うでもなく言葉を続ける。
「気になってんだ、てめェが"残る"っつった時からよ」
そしてカバンから一振りの刀を抜き出し、梨花の目に留まらぬ速度でそれを振るう。
丁度真横、垂直に突き刺さる刀、僅かに頬を伝う赤い血。
「てめェ、何がしたい? どうしたい? その手に何を掴もうとしてんだ?」
驚愕に目を見開く梨花をよそに、志々雄は黙々と言葉を続ける。
「まさか力が無いのを言い訳に、黙って見てるだけか?」
従わない、見届ける、そんな言葉を聞いてはいたものの、志々雄は梨花がこれといって動くところを見ていない。
ただの少女である彼女が何をするのか、僅かながらに興味はあった。
だが、待てども待てども彼女は行動を起こさない。
抗うだけの力が無いからか? それは言い訳にしか過ぎない。
「……とはいえ、ポンと力が沸いて出て来る訳も無ぇ。難しい話だな」
まあ、それは別の話として。
志々雄が梨花に抱いているのは、純粋な興味。
梨花は今、あの日の宗次郎のように、この上なく力を欲している。
ならばもし、力を手にすることで"変われる"のならば。
「だが……"お友達"は助けてやれるかも知れねぇぜ」
"それ"を少しだけ、見て見たいと思う。
志々雄が梨花に見出したのはそれだけであり、それが全てだ。
「ここを真っ直ぐ行って、右に曲がった突き当りの部屋」
だから、エサを撒く。
餓えた獣から、"力"を引き出すために。
「そこで、面白いモンが見れるかもな」
楽しいものが見れるかもしれないから、志々雄は動く。
退屈に参加者を待つよりは、少しエキサイティングな方が良い。
「そいつは持ってけ、餞別だ」
そこまで一息に言い切り、志々雄は歯を見せて笑う。
「……何が狙い?」
あからさまに怪しい志々雄の動きに、梨花は睨みながら問い返す。
「そう怖い顔すんな、どうってことはねぇよ。ただ――――」
その言葉に、フッと笑ってから志々雄は上を向き。
「俺は戦うために地獄だろうと前向いてるヤツの方が、好きだからな」
最高の"笑顔"を作って、梨花に答えた。
刃向かっても勝てるわけが無い、それは梨花本人が分かりきっている。
何より、武器を渡しても勝てるという自信が志々雄にはある。
だからこそ、梨花に武器を渡そうとしているのだ。
何のため? 簡単な話、己の愉悦のため。
手の平で踊らされているとは分かっているものの。
何より、武器を渡しても勝てるという自信が志々雄にはある。
だからこそ、梨花に武器を渡そうとしているのだ。
何のため? 簡単な話、己の愉悦のため。
手の平で踊らされているとは分かっているものの。
二度と来ないかもしれないチャンスを、ふいには出来ない。
「ありがたく、借りるわ」
地面に突き刺さっていた刀を一息に引き抜き、言われた方角へと走り出していく。
「おう、がんばれよ」
背中を見せ、一気に駆け出していく梨花の姿を。
取りだした林檎を齧り、歯をむき出しにするように笑い、志々雄はその姿を見送った。
取りだした林檎を齧り、歯をむき出しにするように笑い、志々雄はその姿を見送った。
「うあ"っ、あががが、いぎっ、がっ、あ"ぁああっ!!」
筒の中で叫びが反響し、耳に突き刺さる。
同時に、体を蝕んでいく激痛。
常人ならとっくのとうに気が狂っていてもおかしくはない痛みに、彼女はまだ耐え続けている。
同時に、体を蝕んでいく激痛。
常人ならとっくのとうに気が狂っていてもおかしくはない痛みに、彼女はまだ耐え続けている。
いや、彼女が耐えられるのは肉体的な"痛み"だからか。
ここに至るまでほとんど、スライムと合体させられ続けるだけ、言ってしまえばそれだけである。
手が届くのに届かない場所で仲間が死んでいく梨花の痛みを考えれば、この程度の痛みなどどうという事はない。
だから、羽入は観柳に屈さない。
身を焼く痛みに何度包まれようと、不快感が体を包み込もうと、絶対に屈さない。
ここに至るまでほとんど、スライムと合体させられ続けるだけ、言ってしまえばそれだけである。
手が届くのに届かない場所で仲間が死んでいく梨花の痛みを考えれば、この程度の痛みなどどうという事はない。
だから、羽入は観柳に屈さない。
身を焼く痛みに何度包まれようと、不快感が体を包み込もうと、絶対に屈さない。
一方の観柳は、平常心でいられるわけもなかった。
莫大な金と未知の技術、その全てをつぎ込んだ結晶は、瞬く間に砕け散っていった。
そして未だに反抗的な態度を続ける羽入、皮肉の混じった志々雄の台詞。
観柳から平常心を奪うには、十分すぎる要素が揃っていた。
COMPにはそこそこの悪魔が揃っているが、まだ足りない。もっと強い悪魔を我が手に納めておかねば、あの連中と渡り合うことなど出来ない。
もっと強い、圧倒的な悪魔を求めねば。この世の全てを蹂躙するような、悪魔を我が手にしなければ。
そんな焦りが、彼に襲い掛かる。
だから、COMPの無駄なスライムを、次々に合体させていく。
ここに居るべきなのはスライムではなく、強い悪魔なのだから。
莫大な金と未知の技術、その全てをつぎ込んだ結晶は、瞬く間に砕け散っていった。
そして未だに反抗的な態度を続ける羽入、皮肉の混じった志々雄の台詞。
観柳から平常心を奪うには、十分すぎる要素が揃っていた。
COMPにはそこそこの悪魔が揃っているが、まだ足りない。もっと強い悪魔を我が手に納めておかねば、あの連中と渡り合うことなど出来ない。
もっと強い、圧倒的な悪魔を求めねば。この世の全てを蹂躙するような、悪魔を我が手にしなければ。
そんな焦りが、彼に襲い掛かる。
だから、COMPの無駄なスライムを、次々に合体させていく。
ここに居るべきなのはスライムではなく、強い悪魔なのだから。
ふと、そのとき部屋のドアが開く音がする。
志々雄が戻ってきたのか、はたまたV.V.が何かを告げにきたか、もしくは薔薇水晶か。
「おや、どうしまし――――」
クルリと振り向き、観柳はニコニコと笑顔を作って応対する。
が、振り向いた先にいたのはその誰でもなかった。
「これはこれは、珍しい客人が来たものですな」
水色の長髪の少女、古手梨花が目を見開いて前を見る。
「何やってるの……」
焦点を合わせるのは、手前にいる観柳ではなく、奥の合体装置。
左の巨大な筒の中に放り込まれている、羽入の姿。
「何、と申しますと悪魔合体としか」
淡々と告げる観柳、筒の中から筒を叩き何かを訴え続ける羽入の姿。
言葉は一切伝わらなくても、観柳が何をしているかはだいたい予想がつく。
「お前ッ……」
「まぁ落ち着きましょうや、これから楽しいモンが始まるんですから」
怒りと悲しみの混じった声の梨花に、観柳は笑顔のまま語りかけ、一つのボタンを押す。
その瞬間に"何か"が筒を満たしていき、筒を叩く羽入の動きが激しくなる。
まるで痛みと苦しみにもだえるように、形振りをかまわずに筒の中で大暴れてしていく。
だが、筒の中を満たしていく"何か"が広がるにつれてその動きは弱まっていき、ついには羽入ごと砕けて消えた。
思わず、息をのむ。
あの筒の中で一体何が起こっているのか、想像することは難しくはない。
「お前ッ!!」
大体を理解したからこそ身丈よりも大きな刀を手に、梨花は観柳へ飛びかかっていく。
「そう慌てなさんな」
怒りをむき出しにして飛びかかる梨花の軌道を読むのは、観柳でも容易い事だ。
振りかざした刀は観柳を傷つけることなく空を切り、梨花の体は地面を擦っていく。
同時に、光の柱が立つ。
薄くなっていく光の中央に立っているのは、ほかの誰でもない羽入だった。
『梨花……』
梨花と羽入の目が合う。
羽入の目は少し濁っていて、それでも前を見続けている。
梨花は改めて"ここ"で、何があったのかを悟る。
『にげ』
「余計なこと喋んじゃねぇぞ」
何かを喋ろうとした羽入の姿は、観柳の言葉と同時にかき消えていく。
COMPによるRETURN命令、契約している身である羽入は、COMPの命令に逆らうことが出来ない。
吸い込まれるように、COMPの中へと戻っていく。
だが、それは梨花にとっては羽入が"奪われた"ようにしか見えなかった。
「どういうことなの」
「悪魔召還プログラムですよ。
彼女を有効に使わせてもらってますよ、まだまだ私の言うことを聞いてくれませんがね」
これ見よがしにCOMPを見せびらかす観柳の姿は、梨花の目には入らない。
「使……う?」
観柳の言葉に、ずっと引っかかり続けていたから。
焦点が微妙に合わない目のまま、震えた声で観柳へと問う。
「じゃあ、羽入は"モノ"だとでも言いたいの」
「お察しがいい」
ぷつん。
梨花の中で何かが切れ。
「ふざけるなァァァッ!!」
ここ一番の怒号が、部屋中に響いた。
刀を両手で握り、力の限りに全力で駆け抜けていく。
もう少しで刀が届く、と分かったとき。
軽い破裂音のような音が、一発鳴り響いた。
志々雄が戻ってきたのか、はたまたV.V.が何かを告げにきたか、もしくは薔薇水晶か。
「おや、どうしまし――――」
クルリと振り向き、観柳はニコニコと笑顔を作って応対する。
が、振り向いた先にいたのはその誰でもなかった。
「これはこれは、珍しい客人が来たものですな」
水色の長髪の少女、古手梨花が目を見開いて前を見る。
「何やってるの……」
焦点を合わせるのは、手前にいる観柳ではなく、奥の合体装置。
左の巨大な筒の中に放り込まれている、羽入の姿。
「何、と申しますと悪魔合体としか」
淡々と告げる観柳、筒の中から筒を叩き何かを訴え続ける羽入の姿。
言葉は一切伝わらなくても、観柳が何をしているかはだいたい予想がつく。
「お前ッ……」
「まぁ落ち着きましょうや、これから楽しいモンが始まるんですから」
怒りと悲しみの混じった声の梨花に、観柳は笑顔のまま語りかけ、一つのボタンを押す。
その瞬間に"何か"が筒を満たしていき、筒を叩く羽入の動きが激しくなる。
まるで痛みと苦しみにもだえるように、形振りをかまわずに筒の中で大暴れてしていく。
だが、筒の中を満たしていく"何か"が広がるにつれてその動きは弱まっていき、ついには羽入ごと砕けて消えた。
思わず、息をのむ。
あの筒の中で一体何が起こっているのか、想像することは難しくはない。
「お前ッ!!」
大体を理解したからこそ身丈よりも大きな刀を手に、梨花は観柳へ飛びかかっていく。
「そう慌てなさんな」
怒りをむき出しにして飛びかかる梨花の軌道を読むのは、観柳でも容易い事だ。
振りかざした刀は観柳を傷つけることなく空を切り、梨花の体は地面を擦っていく。
同時に、光の柱が立つ。
薄くなっていく光の中央に立っているのは、ほかの誰でもない羽入だった。
『梨花……』
梨花と羽入の目が合う。
羽入の目は少し濁っていて、それでも前を見続けている。
梨花は改めて"ここ"で、何があったのかを悟る。
『にげ』
「余計なこと喋んじゃねぇぞ」
何かを喋ろうとした羽入の姿は、観柳の言葉と同時にかき消えていく。
COMPによるRETURN命令、契約している身である羽入は、COMPの命令に逆らうことが出来ない。
吸い込まれるように、COMPの中へと戻っていく。
だが、それは梨花にとっては羽入が"奪われた"ようにしか見えなかった。
「どういうことなの」
「悪魔召還プログラムですよ。
彼女を有効に使わせてもらってますよ、まだまだ私の言うことを聞いてくれませんがね」
これ見よがしにCOMPを見せびらかす観柳の姿は、梨花の目には入らない。
「使……う?」
観柳の言葉に、ずっと引っかかり続けていたから。
焦点が微妙に合わない目のまま、震えた声で観柳へと問う。
「じゃあ、羽入は"モノ"だとでも言いたいの」
「お察しがいい」
ぷつん。
梨花の中で何かが切れ。
「ふざけるなァァァッ!!」
ここ一番の怒号が、部屋中に響いた。
刀を両手で握り、力の限りに全力で駆け抜けていく。
もう少しで刀が届く、と分かったとき。
軽い破裂音のような音が、一発鳴り響いた。
「ん~んっ~、回転式機関砲とは違って単発銃には単発銃の良さがある。
その上、威力も精度良い、更に塗装が黄金と来りゃあ、文句なしですなあ」
一瞬の浮遊間と共に、梨花の体は大きく後ろに吹き飛ぶ。
煙の臭いをかぎとると同時に、大きな血の固まりを吐き出す。
腹部を大きくえぐられた所為で、起きあがろうにも力がうまく入らない。
じたばたしている間に、観柳が自分の側まで近づいてくる。
「何、殺しゃあしない……が、ちょいと"実験"につき合ってもらう」
がしりと梨花の頭をつかみ、そのまま荒々しく引きずる。
観柳が立ち止まった瞬間、何かに放り込まれるようにぶつかる。
周りを見渡せば、薄いガラスのような壁。
先ほど羽入が飲み込まれていた、装置の中だった。
「悪魔に応じ、新たな未知の悪魔が生まれるという人体合体!!
その実験台になってもらうぜェ! うっひょほほほっほ~~!!
この際だぁ! 贅沢に生意気な神様も使っちまうかァ!」
観柳は下卑た笑いを浮かべながら、COMPを忙しく操る。
梨花と丁度向かい合うように現れるのは、羽入の姿。
「喜べ! 新たなる生を受けた暁には、この観柳帝国首領の観柳様の右腕としてコキ使ってやるぜぇ!!」
声を上げる間もなく、始まっていく。
満ちていく"それ"、羽入は幾度となく経験し、梨花は初めて経験するもの。
全身がぼろぼろと崩れ落ちていくような感覚、ワンクッション置いてから始まる痛み。
のた打ち回ろうにも、逃げようにも、何も出来ない。
ただただ、激痛を味わうしかない。
其々の筒の中で響き渡る叫び声。
その上、威力も精度良い、更に塗装が黄金と来りゃあ、文句なしですなあ」
一瞬の浮遊間と共に、梨花の体は大きく後ろに吹き飛ぶ。
煙の臭いをかぎとると同時に、大きな血の固まりを吐き出す。
腹部を大きくえぐられた所為で、起きあがろうにも力がうまく入らない。
じたばたしている間に、観柳が自分の側まで近づいてくる。
「何、殺しゃあしない……が、ちょいと"実験"につき合ってもらう」
がしりと梨花の頭をつかみ、そのまま荒々しく引きずる。
観柳が立ち止まった瞬間、何かに放り込まれるようにぶつかる。
周りを見渡せば、薄いガラスのような壁。
先ほど羽入が飲み込まれていた、装置の中だった。
「悪魔に応じ、新たな未知の悪魔が生まれるという人体合体!!
その実験台になってもらうぜェ! うっひょほほほっほ~~!!
この際だぁ! 贅沢に生意気な神様も使っちまうかァ!」
観柳は下卑た笑いを浮かべながら、COMPを忙しく操る。
梨花と丁度向かい合うように現れるのは、羽入の姿。
「喜べ! 新たなる生を受けた暁には、この観柳帝国首領の観柳様の右腕としてコキ使ってやるぜぇ!!」
声を上げる間もなく、始まっていく。
満ちていく"それ"、羽入は幾度となく経験し、梨花は初めて経験するもの。
全身がぼろぼろと崩れ落ちていくような感覚、ワンクッション置いてから始まる痛み。
のた打ち回ろうにも、逃げようにも、何も出来ない。
ただただ、激痛を味わうしかない。
其々の筒の中で響き渡る叫び声。
そのどちらも、男には届かない。
――――ああ、聳え立つ光の柱が天を貫く。
「……はっ」
息を取り戻す、という表現がピッタリなくらいに飛び起きる。
慌てて辺りを見るが、見覚えのない景色が広がっている。
と、いうより、ここは"現世"なのだろうか。
時を越える経験を幾度となくして来た梨花だから、ここがそうではない事はなんとなく分かる。
謎の虹色空間で考え込んでいる内に、梨花の目の前をあるものが通り過ぎる。
慌てて辺りを見るが、見覚えのない景色が広がっている。
と、いうより、ここは"現世"なのだろうか。
時を越える経験を幾度となくして来た梨花だから、ここがそうではない事はなんとなく分かる。
謎の虹色空間で考え込んでいる内に、梨花の目の前をあるものが通り過ぎる。
それは、無数のシャボン玉。
大きなものから小さなものまで、それは群をなしてふわふわと梨花に迫ってくる。
手を伸ばせば届くような距離になった時、梨花は"それ"に驚いた。
大きなものから小さなものまで、それは群をなしてふわふわと梨花に迫ってくる。
手を伸ばせば届くような距離になった時、梨花は"それ"に驚いた。
まるで映画のフィルムを落とし込んだかのように。
大小問わず全てのシャボン玉には見覚えのある光景が映っていた。
「これは……」
上を向く、めらめらと燃え上がる魅音が居る。
その上を見る、幸せそうに笑う沙都子が居る。
少しだけ下を向く、何かに照れている悟史が居る。
もっと下を見る、珍しく少し悲しそうな顔を浮かべる圭一が居る。
ぐるりと左を見る、しっかりと前を見据え、未来へ向かおうとする詩音がいる。
そのまま右へと流れる、おーもーちーかーえーりー!! モードと化したレナが居る。
いや、最後のはどうなんだろう、と突っ込んでみながらも、梨花はそのまま左を見て、右を見る。
あれもこれもそれも、どれも。
見覚えのあるどころではない、梨花が過ごしてきた"世界"が映っていた。
大小問わず全てのシャボン玉には見覚えのある光景が映っていた。
「これは……」
上を向く、めらめらと燃え上がる魅音が居る。
その上を見る、幸せそうに笑う沙都子が居る。
少しだけ下を向く、何かに照れている悟史が居る。
もっと下を見る、珍しく少し悲しそうな顔を浮かべる圭一が居る。
ぐるりと左を見る、しっかりと前を見据え、未来へ向かおうとする詩音がいる。
そのまま右へと流れる、おーもーちーかーえーりー!! モードと化したレナが居る。
いや、最後のはどうなんだろう、と突っ込んでみながらも、梨花はそのまま左を見て、右を見る。
あれもこれもそれも、どれも。
見覚えのあるどころではない、梨花が過ごしてきた"世界"が映っていた。
「一体、これは……」
そのうちの一つに触れようとしたとき、シャボン達は急激に加速する。
「待って、待って!!」
全てが梨花の隣を過ぎ去った時、遠くに人影のようなものが見えた。
少しだけ不審に思いながら、その人影に近寄ろうともがいてみる。
だが、ちっとも前に進まない。
海で溺れる子供のように手足をバタバタさせても、その影には近づけやしない。
「待って、待って!!」
全てが梨花の隣を過ぎ去った時、遠くに人影のようなものが見えた。
少しだけ不審に思いながら、その人影に近寄ろうともがいてみる。
だが、ちっとも前に進まない。
海で溺れる子供のように手足をバタバタさせても、その影には近づけやしない。
「わわっ!!」
それでももがき続けていると、今度は世界が動く。
一部の空間が圧縮されたかのように、先ほどまで遠くに居たはずの影が今は目の前にいる。
突然のことに驚く梨花だが、さらに驚くことが待っていた。
一部の空間が圧縮されたかのように、先ほどまで遠くに居たはずの影が今は目の前にいる。
突然のことに驚く梨花だが、さらに驚くことが待っていた。
人影、いや"影"は"人"ではなかった。
燃え上がる炎のように揺れる頭部。
鎧のようなラインを所々に見せる黒い体。
白の左腕、黒の右腕。
そして、顔は"人"であり、"人"ではなかった。
燃え上がる炎のように揺れる頭部。
鎧のようなラインを所々に見せる黒い体。
白の左腕、黒の右腕。
そして、顔は"人"であり、"人"ではなかった。
「……違う」
何を聞かれたわけでもないのに、梨花は否定する。
「私は、力が欲しい」
何を聞かれたわけでもないのに、梨花はそれに語りかける。
「この状況を覆せるだけの、運命を変える力が!!」
ただただ、それは黙って梨花の叫びを聞いている。
「あの時、みんな一緒になって変えた運命のように!!」
ただただ、梨花は言葉をぶつけていく。
「今は、力が欲しい!!」
少し、間を置いて。
それは、手を差し伸べてきた。
動いたことに驚いているのか、梨花は少しだけ息を呑む。
それは手を伸ばしたまま動かず、じっと梨花を見つめている。
梨花は、その伸ばされた手を。
それは、手を差し伸べてきた。
動いたことに驚いているのか、梨花は少しだけ息を呑む。
それは手を伸ばしたまま動かず、じっと梨花を見つめている。
梨花は、その伸ばされた手を。
しっかりと、掴んだ。
暗転する。
暗い暗い闇の中に落ちていく。
即座に切り替わるように黒が白へと染まっていく。
目を開けては居られないほどに視界が光に包まれていく。
やがて、ゆっくりゆっくりと視力を失っていくように。
ガラガラと音を立てて、崩壊するように。
世界が"無くなって"行った。
暗い暗い闇の中に落ちていく。
即座に切り替わるように黒が白へと染まっていく。
目を開けては居られないほどに視界が光に包まれていく。
やがて、ゆっくりゆっくりと視力を失っていくように。
ガラガラと音を立てて、崩壊するように。
世界が"無くなって"行った。
目が、覚める。
「よお」
挨拶。
「……君はやっぱり、"お話"が上手いね」
褒。
「僕は君のように話を振っても、僕は拒まれてばっかり。ついさっき、フラれてしまったばっかりさ」
皮肉。
「ハッ、まだまだ男が磨き足りてねえってことだな」
返答。
「返す言葉もないよ」
沈黙。
「……ところで、どういう心境の変化?」
問。
「見たくねぇか」
問。
「人間が、覚悟を決める所をよ」
笑。
「そうだね」
同意。
「僕としては、梨花が自分で道を選んでくれたのがとても嬉しいよ」
本心。
「いいのか?」
疑問。
「問題ないよ、彼が欠けた所で大局に影響は無い」
事実。
「どうやら、彼は僕達を"利用"できる気でいたらしいからねぇ」
笑。
「ハッ、力のない犬ほど、よく吠えるって言うぜ」
笑。
「まあね」
汗が、流れる。
ありえない、ありえない、ありえない。
脳味噌が爆発しそうになるくらいに処理を重ね、否定をしていく。
それでも事実は書き換わらない、目から入ってくる情報は変わらない。
何故、何故何故何故何故。
野良の狂信者を合体にぶち込んだときは悪魔になったと言うのに。
おかしい、こんなことは、バカな。
あの時と同じように「悪魔」と「人間」を合体させたと言うのに。
どうして、なんで、わからない。
ありえない、ありえない、ありえない。
脳味噌が爆発しそうになるくらいに処理を重ね、否定をしていく。
それでも事実は書き換わらない、目から入ってくる情報は変わらない。
何故、何故何故何故何故。
野良の狂信者を合体にぶち込んだときは悪魔になったと言うのに。
おかしい、こんなことは、バカな。
あの時と同じように「悪魔」と「人間」を合体させたと言うのに。
どうして、なんで、わからない。
"古手梨花"がそこに立っているのか。
「……まさか、傷まで治ってるとはね」
声がする。
間違いなく、それは古手梨花の声。
否定に否定をしても、耳から入ってきた情報は書き換わらない。
でもありえない、だって悪魔が生まれるはずなのに。
何故"人間"がそこに平気な顔をして立っていられると言うのか。
間違いなく、それは古手梨花の声。
否定に否定をしても、耳から入ってきた情報は書き換わらない。
でもありえない、だって悪魔が生まれるはずなのに。
何故"人間"がそこに平気な顔をして立っていられると言うのか。
いや、落ち着け。
こういうこともあるのだろう。
装置から生まれた以上、ヤツは悪魔であるはずだ。
COMPには逆らえない、そう思ってCOMPから命令を送る。
こういうこともあるのだろう。
装置から生まれた以上、ヤツは悪魔であるはずだ。
COMPには逆らえない、そう思ってCOMPから命令を送る。
エラー、エラー、エラー。
RETURNもLEAVEも、それどころかSUMMONすら効かない、そう、もはやLEAVEしていると言わんばかりに。
RETURNもLEAVEも、それどころかSUMMONすら効かない、そう、もはやLEAVEしていると言わんばかりに。
それもその筈。
起こったのは悪魔合体であり、悪魔合体ではない。
悪魔の力を手にするほどの強力な意志を持った人間を用いた合体は、"人間"が生まれる。
悪魔をその身に宿した人間を、COMPでどうこうできるわけがない。
起こったのは悪魔合体であり、悪魔合体ではない。
悪魔の力を手にするほどの強力な意志を持った人間を用いた合体は、"人間"が生まれる。
悪魔をその身に宿した人間を、COMPでどうこうできるわけがない。
人間を用いた合体は何度も行ってきたが、金で釣られるような人間にそんな強固な意志の持ち主などいるわけもない。
だから観柳はそれを知らない、知るはずもない。
だから観柳はそれを知らない、知るはずもない。
いや、もう一度落ち着け。
ここは人間だと言うことを認めよう。
だが、ヤツがそのまま戻ってきたところでただの少女じゃないか。
悪魔の手を使うまでもない、自分ひとりで十分だ。
ここは人間だと言うことを認めよう。
だが、ヤツがそのまま戻ってきたところでただの少女じゃないか。
悪魔の手を使うまでもない、自分ひとりで十分だ。
黄金に光輝く銃を持ち、狙いを定め。
引き金を、引く。
「"Alter"」
言霊を呟く。
梨花の周りの物質が姿を変え、虹色の粒子が舞う。
それは瞬く間に、梨花の周りへと集まり。
何かが、出来上がっていく。
梨花の周りの物質が姿を変え、虹色の粒子が舞う。
それは瞬く間に、梨花の周りへと集まり。
何かが、出来上がっていく。
金属と金属がぶつかり合う音が、する。
観柳は、今度こそ己の目を疑った。
メガネが割れたか? いやメガネは正常だ。
脳が狂ったか? 阿片は売っても吸っては居ない。
では、目の前に映るのは何だというのか。
メガネが割れたか? いやメガネは正常だ。
脳が狂ったか? 阿片は売っても吸っては居ない。
では、目の前に映るのは何だというのか。
中心に立つ、古手梨花。
うっすらと巫女服の少女の姿が、重なっているように見える。
うっすらと巫女服の少女の姿が、重なっているように見える。
梨花のすぐ隣。
一人目、金髪のショートヘアが特徴的な少女が笑っている。
一人目、金髪のショートヘアが特徴的な少女が笑っている。
一歩か二歩ほど置いて、梨花の前に立ちはだかるように立つ二人の人間。
二人目、金属バットを持った白いシャツの少年が自分を睨んでいる。
三人目、巨大な鉈を持ったセーラー服の少女が自分を睨んでいる。
交差しているバットと鉈が、先ほど打ち出した銃弾を弾いていた。
二人目、金属バットを持った白いシャツの少年が自分を睨んでいる。
三人目、巨大な鉈を持ったセーラー服の少女が自分を睨んでいる。
交差しているバットと鉈が、先ほど打ち出した銃弾を弾いていた。
その二人の少し後ろ。
四人目、白いタートルネックの服に括らずに伸ばしたロングストレートヘアの少女。
五人目、長い髪をポニーテールにした手前の少女とは違う制服の少女。
共通するのは緑の髪、すらっとしたボディライン、そして構えた散弾銃。
四人目、白いタートルネックの服に括らずに伸ばしたロングストレートヘアの少女。
五人目、長い髪をポニーテールにした手前の少女とは違う制服の少女。
共通するのは緑の髪、すらっとしたボディライン、そして構えた散弾銃。
そう、この五人は今、観柳の目の前に。
「突然現れた」のだ。
ガタガタと震える観柳は、慌ててCOMPを操る。
無意識の内に、集めておいた悪魔達をこの場に呼び寄せていく。
そんな姿には目もくれず、梨花はとことこと歩いて落ちていた刀を拾う。
無意識の内に、集めておいた悪魔達をこの場に呼び寄せていく。
そんな姿には目もくれず、梨花はとことこと歩いて落ちていた刀を拾う。
「羽入」
そして、告げる。
他人には精々気配を感じることしか出来ない存在に。
彼女だけが見る事が出来る存在に。
まさか悪魔合体、なんて方法で再び共になるとは思っていなかったが。
他人には精々気配を感じることしか出来ない存在に。
彼女だけが見る事が出来る存在に。
まさか悪魔合体、なんて方法で再び共になるとは思っていなかったが。
「行くわよ。私たちの思い出を、彼らの事を"笑う"奴等を叩きのめしに行くわよ」
その一言と同時に、すっと刀を構えていく。
見据えるのは、一点。
未来と言う、前だけ。
見据えるのは、一点。
未来と言う、前だけ。
「"みんな"と!!」
【二日目/早朝/???】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×4、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、確認済み支給品0~4(武器ではない)、林檎×7@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
マハブフストーン×4@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、首輪解除に関するメモ
逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ、
鷹野のデイパック(魔力の香@真・女神転生if...、体力の香@真・女神転生if...、???@???、その他不明支給品))
[状態]:各部に軽度の裂傷、首輪解除済み
[思考・行動]
1:ぶいつぅの掌の上にいる。(飽きるまで)
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
3:翠星石の中のキングストーンが欲しい。
4:間引く。
[備考]
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。ギアスとコードについて情報を得ました。
※さざなみの笛@真・女神転生if...はV.V.が回収しました。(効果は持続中)
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×4、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、確認済み支給品0~4(武器ではない)、林檎×7@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
マハブフストーン×4@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、首輪解除に関するメモ
逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ、
鷹野のデイパック(魔力の香@真・女神転生if...、体力の香@真・女神転生if...、???@???、その他不明支給品))
[状態]:各部に軽度の裂傷、首輪解除済み
[思考・行動]
1:ぶいつぅの掌の上にいる。(飽きるまで)
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
3:翠星石の中のキングストーンが欲しい。
4:間引く。
[備考]
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。ギアスとコードについて情報を得ました。
※さざなみの笛@真・女神転生if...はV.V.が回収しました。(効果は持続中)
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[装備]菊一文字則宗@るろうに剣心
[所持品]ワイン
[状態]健康、羽入憑依
[思考・行動]
1:"みんな"と奴等をぶっ飛ばす
[備考]
※銀髪の少年により『鷹野三四に従え』というギアスをかけられていますが、三四が死亡したことで効力をほぼ失っています。
※悪魔合体を経て羽入を取り戻しました、常人には不可視の存在に戻っている(?)ようです
※さらに発生した合体事故により、辿り着いた向こう側にてアルター結晶体と接触したことで、自身の記憶を元にしたアルター能力"雛見沢"に目覚めました。
常夏三姉妹のような自立稼動型のアルター五体(圭一型、レナ型、魅音型、詩音型、沙都子型)が扱えます。
詳細能力など、喋れるかどうかなどは不明ですが、祭囃し編をベースに構成されているようです。
[装備]菊一文字則宗@るろうに剣心
[所持品]ワイン
[状態]健康、羽入憑依
[思考・行動]
1:"みんな"と奴等をぶっ飛ばす
[備考]
※銀髪の少年により『鷹野三四に従え』というギアスをかけられていますが、三四が死亡したことで効力をほぼ失っています。
※悪魔合体を経て羽入を取り戻しました、常人には不可視の存在に戻っている(?)ようです
※さらに発生した合体事故により、辿り着いた向こう側にてアルター結晶体と接触したことで、自身の記憶を元にしたアルター能力"雛見沢"に目覚めました。
常夏三姉妹のような自立稼動型のアルター五体(圭一型、レナ型、魅音型、詩音型、沙都子型)が扱えます。
詳細能力など、喋れるかどうかなどは不明ですが、祭囃し編をベースに構成されているようです。
【武田観柳@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-】
[装備]黄金銃@真・女神転生if...、COMP(ハンドベルトコンピュータ)@真・女神転生if...
[所持品]
[状態]焦り
[思考・行動]
1:梨花に対処
[備考]
※たまんないことになってしまいました
※使役している悪魔については不明です
[装備]黄金銃@真・女神転生if...、COMP(ハンドベルトコンピュータ)@真・女神転生if...
[所持品]
[状態]焦り
[思考・行動]
1:梨花に対処
[備考]
※たまんないことになってしまいました
※使役している悪魔については不明です
【黄金銃@真・女神転生if..】
黄金の輝きを持つ銃。弾丸を装備するタイプの銃の中では最強の全体銃である。
モデルは元ネタの007と同じ「ワルサーPPK」だと思われる。
黄金の輝きを持つ銃。弾丸を装備するタイプの銃の中では最強の全体銃である。
モデルは元ネタの007と同じ「ワルサーPPK」だと思われる。
/*ここからは余談だが、真・女神転生if..では中盤以降のボスはガン無効があたりまえなので、専らザコ掃討用の武器になりがちである。
*よって、終盤は回数の多い銃より、敵全体に一発ずつ撃ち込める銃の方が使いやすい。
*攻撃力の数値上ではメギドファイヤ及びピースメーカーがあるが、これらの銃は弾丸を装備することが出来ない。(しかもアキラ編しか手に入らない)
*ifは弾丸の追加効果が非常に強力なため、弾丸を装備できるかつ全体を攻撃できる黄金銃を最後まで愛用するプレイヤーが多い。
*眠りに耐性の無い悪魔は神経弾で一発SLEEPだし、アキラ編では「メデューサの弾」というクッソ頭おかしい弾丸が簡単に手に入る。
*終盤の悪魔でも耐性を持つ悪魔が少ないSTONEで、あとは煮るなり焼くなり状態である。
*そんなこんなで、事実上のif...最強銃の名を欲しいままにしている。
*/
*よって、終盤は回数の多い銃より、敵全体に一発ずつ撃ち込める銃の方が使いやすい。
*攻撃力の数値上ではメギドファイヤ及びピースメーカーがあるが、これらの銃は弾丸を装備することが出来ない。(しかもアキラ編しか手に入らない)
*ifは弾丸の追加効果が非常に強力なため、弾丸を装備できるかつ全体を攻撃できる黄金銃を最後まで愛用するプレイヤーが多い。
*眠りに耐性の無い悪魔は神経弾で一発SLEEPだし、アキラ編では「メデューサの弾」というクッソ頭おかしい弾丸が簡単に手に入る。
*終盤の悪魔でも耐性を持つ悪魔が少ないSTONEで、あとは煮るなり焼くなり状態である。
*そんなこんなで、事実上のif...最強銃の名を欲しいままにしている。
*/
Q.
禁忌:人体を用いた合体とは?
禁忌:人体を用いた合体とは?
A.
悪魔と人間は、相容れぬ存在だ。
通常の悪魔合体では悪魔と悪魔の分子(のようなもの)が溶け合い、互いに反応しあうことで法則どおりの悪魔が誕生する。
だが、人間の分子は悪魔であり悪魔では無いという微妙な存在である。
これにより通常の悪魔合体法則が無視され、合体の度に融合分子が変わるので結果が分からないと言うことになる。
この結果を予測できるようになるまで、おおよそ20年はかかると言われている。
なお、誕生する悪魔は合体に使われる悪魔に依存すると言われている。
これが「ごく一般的な人間を悪魔合体に用いた場合」、定説である。
悪魔と人間は、相容れぬ存在だ。
通常の悪魔合体では悪魔と悪魔の分子(のようなもの)が溶け合い、互いに反応しあうことで法則どおりの悪魔が誕生する。
だが、人間の分子は悪魔であり悪魔では無いという微妙な存在である。
これにより通常の悪魔合体法則が無視され、合体の度に融合分子が変わるので結果が分からないと言うことになる。
この結果を予測できるようになるまで、おおよそ20年はかかると言われている。
なお、誕生する悪魔は合体に使われる悪魔に依存すると言われている。
これが「ごく一般的な人間を悪魔合体に用いた場合」、定説である。
Q.
では、例外が?
では、例外が?
A.
存在する。
「ごく一般的な人間ではない場合」だ。
詳しい事は分かっていないが、合体に使われる人間の意志が尋常では無い時。
悪魔の力を取り込んだ人間が生まれるのだと言う。
さらに、記憶も何もかもがそのままだと言う話らしい。
悪魔合体の際には激痛が走るといわれているが、それすらをも乗り越えられるという自信のある方は試してみてはいかがか。
勿論、筆者には無い。
存在する。
「ごく一般的な人間ではない場合」だ。
詳しい事は分かっていないが、合体に使われる人間の意志が尋常では無い時。
悪魔の力を取り込んだ人間が生まれるのだと言う。
さらに、記憶も何もかもがそのままだと言う話らしい。
悪魔合体の際には激痛が走るといわれているが、それすらをも乗り越えられるという自信のある方は試してみてはいかがか。
勿論、筆者には無い。
Q.
合体事故ってなんで起こるの?
合体事故ってなんで起こるの?
A.
その時不思議な事が起こった、と言わんばかりに発生する事故。
筆者も経験がある、必死の思いで作った魔王がスライムになったときは泣いてしまう。
それはさておき、合体事故が起こる理由としては諸説ある。
一番有力な説としては、悪魔合体自体が行われているのは実は現世ではなく。
現世でもない魔界でもない、人工的に作られたかのような擬似空間で融合しているからだと言う説だ。
詳しいことが分かっていないが故に、想定もしていないタイミングで合体事故が起こるのだという。
しかし、近年この擬似空間に外部から一方的に干渉することが出来る、ということが判明した。
近年では任意に合体事故を起こすことも、未然に合体事故を防ぐこともできるのだと言う。
その時不思議な事が起こった、と言わんばかりに発生する事故。
筆者も経験がある、必死の思いで作った魔王がスライムになったときは泣いてしまう。
それはさておき、合体事故が起こる理由としては諸説ある。
一番有力な説としては、悪魔合体自体が行われているのは実は現世ではなく。
現世でもない魔界でもない、人工的に作られたかのような擬似空間で融合しているからだと言う説だ。
詳しいことが分かっていないが故に、想定もしていないタイミングで合体事故が起こるのだという。
しかし、近年この擬似空間に外部から一方的に干渉することが出来る、ということが判明した。
近年では任意に合体事故を起こすことも、未然に合体事故を防ぐこともできるのだと言う。
この空間についてだが、呼び名は各地によって異なる。
「紅世」、「ミラーワールド」、「nのフィールド」、または「向こう側」などと呼ばれているらしい。
その他の地域では謎の世界征服を目論む組織が居るとか、死神たちが彷徨う世界だとかいう可能性もあるのだとか。
「紅世」、「ミラーワールド」、「nのフィールド」、または「向こう側」などと呼ばれているらしい。
その他の地域では謎の世界征服を目論む組織が居るとか、死神たちが彷徨う世界だとかいう可能性もあるのだとか。
まあ、これらはただの一説に過ぎない。
可能性として頭の隅に置いておく程度で良いだろう。
可能性として頭の隅に置いておく程度で良いだろう。
混・沌喝兇執/狼栖王子・賛 著 グーペ社 より引用。
時系列順で読む
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165:HELL ON EARTH(後編) | 志々雄真実 | 169:第五回放送 |
V.V. | ||
武田観柳 | 170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅰ | |
古手梨花 | ||
羽入 | 梨花と悪魔合体 |