C'MON STRANGE POWER

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C'MON STRANGE POWER ◆Wv2FAxNIf.



 これは僕の遺書だ。
 そのページは、そんな書き出しで始まっていた。


 上田次郎は銀髪の少年が遺した手紙を丁寧に折り畳み、デイパックの中ににしまい込んだ。
 これからどうするか。
 上田はまず、自らの置かれた状況を整理する事にする。

 不思議な声が聞こえたかと思えば、気が付くとこの部屋にいた。
 普段なら「うっかりうたた寝をしてしまい、その間に何者かに運ばれた」と思っていたはずだ。
 しかしここまでの事を加味すると、上田の知らない世界で理論付けられた何かが起きたと考えられる。
 ワープなどと言うと夢物語に近いものがあるが、過電粒子砲が実用化されている世界があるぐらいだ。
 超常現象でもホラーでもオカルトでもチープなトリックでもなく、進んだ科学技術によってここまで運ばれたのだろう。
 そしてワープ技術の存在を肯定するなら、首輪が無くなっている事もさほど不思議ではない。
 ホラー現象とはホラに過ぎず、物理学的見地に立てば全てが解決される。
 天才はこのように、ただ頭の回転が速いだけではなく柔軟な思考も兼ね備えているのである。

 続けて考える――ここはどこなのか。
 手紙を読んだ限り、この少年は主催者に利用されていたようだ。
 薔薇水晶とは様子が違うものの、主催側の人間である事に変わりはない。
 よってこの部屋はこの少年を幽閉する為にあてがわれた、主催者達がいる建物の一室だと推測出来る。
 全ての元凶であるV.V.は、この建物のどこかにいるに違いない。
 上田は武者震いで全身をガタガタと揺らした。

 しかし幽閉というイメージとは裏腹に、扉に鍵は掛かっていなかった。
 頑丈な扉の外側の南京錠は、役目を忘れたようにだらりとだらしなくぶら下がっている。
 初めから掛かっていなかったのか、様子を見にきた者が死体を見てそのまま開け放して行ったのか。
 詳細は分からないが、閉じ込められずに済んだ上田は運が良かったと言えるだろう。
 普段の行いの良さ、人間の器というものはこういったところに表れるのだ。

 とは言え部屋の外に出ていくのには躊躇いがあった。
 人類の英知の結晶たる上田が死ぬ事は、人類にとって大きすぎる損失だ。
 日本経済や世界情勢に悪影響を及ぼすだけでなく、他の世界にまで損害をもたらしかねない。
 わざわざ危険に飛び込む事は天才としての責務を放棄するに等しいのだ。
 「責任感が服を着て歩いている」とも形容される上田次郎には、そんな無謀な真似は出来ない。
 ここで助けが来るまで待つのが賢い、天才にふさわしい選択と言えよう。

 だがここで上田は気付く。
 そもそも上田以外の者達はどうなったのか。
 順当に考えれば上田とは別の場所へ運ばれたはずだが、運ばれるのを見たわけではない。
 上田が神に愛された存在だからこそこうしていられるのであって、他の不運な仲間達は違うのかも知れない。
 あの時、皆があのまま会場内で死んでしまった可能性は、ゼロとは言い切れなかった。
 そして無事だったとしても、彼らが精神的指導者である上田を失って烏合の衆と化していないか心配だ。
 決して心細くなったというわけではなく、飽くまで仲間達の精神的或いは肉体的安否が気懸かりなのである。

 上田は部屋の中をうろうろと落ち着きなく歩き回る、もとい独自の運動方法によって思考を纏め直す。
 数十分、熟慮に熟慮を重ねた末に、上田は部屋の外へと踏み出した。


 長過ぎる廊下を壁沿いに歩く。
 より正確には壁に背を密着させ、きょろきょろとせわしなく前後の安全を確認しながら進んでいた。
 天才はただ歩くだけの事であっても油断をしない。
 敵など通信教育免許皆伝の空手の腕前によって撃退出来るという自信はあるものの、それで驕るような真似はせずに銃を手にしている。

 長い廊下――建物自体は広いようだが、窓がないせいで閉塞感があった。
 それなりに歩いているにも関わらず部屋は一つも見当たらない。
 人の気配はなく、足音を控えめにしていても僅かな靴音や衣擦れの音が反響する。
 知らない場所であるという事を差し引いても不気味で、馬鹿馬鹿しさに思わず自主的に居眠りを始めてしまいそうな程だった。

 静寂と不気味さに支配され、上田は自分が独りである事を身に染みて感じていた。
 思えば、この催しに巻き込まれてから単独行動を取るのは初めてだ。
 数分ばかり一人になる事はあっても、それ以外はいつでも誰かと一緒にいた。
 溢れるカリスマによって常に人々が引き寄せられ、上田を頼り、指示を求めてきていた。
 出会った人々の顔を思い浮かべ、そしてその内の大半が既に亡くなっている事を思い出すのだった。

 らしくない、感傷的になってしまった。
 緊張ばかりでなく気分転換も必要だ。
 学生時代の論文「ブルース・リー映画撮影時におけるハイキックの衝撃伝導率とベルヌーイの定理の相似性」について再考し始める。
――それが半ばで中断されたのは、遂に新たな部屋を発見したからである。

 無機質な白い扉――の下に広がる、赤い水溜まり。
 すっかり見慣れる羽目になってしまったその色に、上田はその場で横になって眠りこけそうになった。
 傾いだ体を何とか支え、気を取り直して改めて観察する。
 鉄の臭いを発する赤黒いそれは、どう見ても血液だ。
 天才でなくても嫌な予感しかしない空間。
 耳をドアに当ててみるが物音もない。
 散々逡巡した挙げ句、上田は銃を構えて勢い良く扉を開け放った。

 血の海だった。
 屍の山だった。
 上田は気絶した。


 上田は十分という驚異的な速度で復帰した。
 倒れた際に血が服にべったりと染みてしまい、それを見て泣きそうになりながら部屋全体に視線を遣る。
 壁に二十台のコンピューターが並んだパソコンルーム。
 部屋の一番奥には立派なデスクが設置され、そこにもパソコンが一台置かれていた。
 床には白衣を着込んだ、パソコンと同じぐらいの数の男女の死体が転がっている。
 死体は折り重なっている為、パッと見ただけでは正確な人数は分からない。
 各人の体には無数の銃痕があり、それが死因となったと見て間違いないだろう。
 部屋の片隅には残弾のないマシンガンがあった。

 死体の中で一人だけ、白衣ではなく軍服を身につけた初老の男性がいた。
 恰幅が良く、髪は禿げ上がり、傍らには血の付いたモノクルが落ちている。
 白衣の者達とは違う立場にいたのかも知れないが、今は確かめる手段がなかった。

 彼らは何者なのか、それを知る為にも上田はパソコンに注目した。
 幸いどれも被弾する事なく無傷のまま起動しているようだ。
 上田はデスクのパソコンに目を付け、椅子を引いて着席。
 すると丁度手に、机上に置かれていたスティック状の機械が当たった。
 USB――記憶デバイス。
 目を凝らすと「Jeremiah Gottwald」という綴りが印字されている。

「うん……?」

 上田に閃くものがあった。
 中身は開いてみなければ分からないが、もしや参加者全員分があるのではないか。
 机の上に手を這わせ、引き出しを漁り、大きい図体を縮めて机の下に潜る。
 そして机の脇にあったアタッシュケースを開けてみれば、上田の読み通りUSBが整然と並んでいた。
 論理的思考の勝利である。

 ケースの上下の緩衝材には合わせて六十五の窪みがあった。
 そのうちUSBが填められているのが五十七ヶ所、ジェレミアの分も填めれば五十八ヶ所になる。
 名前をあらためていくと、ここに名がないのは上田、狭間、シャドームーン、クーガー、つかさ、北岡、ヴァンの七人。
 最後まで生き残った者達という共通点はあるが、そうなると翠星石と志々雄が含まれていないのは何故か。
 USBの中身を見れば分かるだろうか。
 上田はマウスに触れ、パソコンのスリープモードを解除した。

 真っ暗な画面から一転、はしない。
 暗いままだった。
 開かれていたページの背景が真っ黒だったからだ。
 宵闇の如く黒い背景、血のような赤と人骨のように白の文字が踊るサイト。
 上田がそれを直に見るのは初めてだが、狭間から話には聞いていた『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページだ。
 開かれているのはトップページであり、上田はメニューの一番上の『目的』の項目に目を向ける。
 狭間の話では、サイト管理者のみが閲覧出来る設定だったらしい。
 クリックしてもパスワード入力画面が表示されるだけだ。

「如何に私が天才であっても、ログイン用パスワードが分からなければ手の打ちようがない……」


 言いつつ、試しにクリックしてみる。

 長文が表示された。


「ドゥワッ!!?」

 なんということか! 上田は己も知らぬ間に管理者名とパスワードを解析、入力、ログインしていたのだ!
 これが天才物理学者の本領発揮というものである。コワイ!

「参ったな……天才がまた伝説を打ち立ててしまっ、」

 当然、そんなはずはない。
 上田もすぐに少し冷静になった。
 表示された内容を見て冷静にならざるを得なかったとも言える。

 これは僕の遺書だ。
 そのページは、そんな書き出しで始まっていた。


 これは僕の遺書だ。
 誰がいつこれを読んでいるのかは分からないけど、『目的』を期待してこのページを開いたのだとしたら残念だったね。
 管理者にしか見えない設定にしていたけど、初めからこのページは白紙だ。
 僕が気紛れに作っておいただけのページで、こうして活用しているのもただの思いつきだよ。

 君は、バトルロワイアルの最中にこれを読んでいるのかな。
 だとしたら随分暇なんだね……僕としては嬉しいことだけど。
 もし優勝者が決まれば、きっとこの文面は自在法によって改変されてしまうからね。
 或いはこのページ自体もなかったことにされてしまうかも知れない。
 全てが終わる前に、参加者の誰かに読んでもらえているよう願うよ。

 もう少しで第五回放送の時間だ。
 進行は僕が思っていた以上に速い。
 この期に及んで高みの見物をしていられるほど、僕はアルターやキングストーンを軽視していない。
 全てを見届けるまでに殺されたくはないけど、残念ながら僕自身の力は微々たるものだ。
 参加者と直接接触して戦いになれば、恐らく生き残れないだろう。

 だから掃除をしておいた。
 このバトルロワイアルの音声・映像データの収集と整理を手伝っていた彼らには死んでもらった。
 残りのデータ収集はパソコンに任せておける段階に入って、彼らはもう役目を終えたからね。
 そんな彼らに余計な手出しをされるわけにはいかないよ。
 鷹野や薔薇水晶、それにライのような『選択』をしてくれればいいけど、彼らは少し知り過ぎていた。
 特にバトレーは、C.C.やジェレミアが死んで随分憔悴していたようだし。
 バトルロワイアルを台無しにしてしまうかも知れない要素として、排除することにした。

 君は僕を嫌悪しているかい?
 でも、信じて貰えないかも知れないけど、僕自身は君たちのことが嫌いじゃなかったよ。
 だからこそ僕は君たちの選択の先にあるものを見たかったんだ。
 見たかった……それに例え見られなかったとしても、君たちのことをできる限り長く見ていたいと思っている。

 だから、これを読んでいる君。
 もし僕が死んでしまったら、どうか代わりにこの戦いを見届けておくれ。
 最後の瞬間に立ち会って、六十五人の参加者の全ての選択の結果を記憶して欲しい。

 無理にとは言わないよ。
 そもそもどうしても誰かにこれを伝えたいなら、僕だってもっと確実な方法を取ってる。
 別に誰にも読んでもらえないならそれでいいんだ。

 君だって死んでしまうかも知れないんだから。
 或いは優勝して、他の六十四人の存在を忘れてしまうかも知れないんだから。

 それでも……僕は、これが無駄だとは思わない。
 僕やラプラスが見る為に開いた殺し合いが、僕やラプラスに見えないところで終わったとしても、きっと無駄ではない。
 だから誰かに見届けてもらいたい、きっと意味があるはずだから。
 バトルロワイアルが始まった頃の僕はそう考えていなかったけど、少なくとも今の僕はそう思っているんだ。
 僕も少しだけ、君たちに感化されてしまったのかも知れない。
 君の、君たちの幸運を祈っているよ……僕なりにね。


 読み終わった。
 時折不可解な単語や文が出てきたものの、おおよその事情は察する事が出来た。

 履歴を見てみると、更新時間はページに記されていた通り第五回放送前――六時前だった。
 V.V.はここにいた者達を殺害した後、このパソコンからログインして白紙だった『目的』のページを編集。
 そしてログアウトせず、ログイン状態を保持したままこの場を離れたようだ。
 たまたま上田がこの部屋を訪れ、このパソコンから接続したから読めた遺書。
 「誰にも読んでもらえないならそれでいい」というのは本心なのだろう。

 パソコンをつけただけで思わぬ収穫を得たが、USBの中身はまだ分かっていない。
 上田は試しにジェレミアのUSBを挿してみる事にする。
 他のUSBでも良かったのだが、ケースにきっちりと収まったものを抜くのは気が引けたのだ。

 フォルダを開くと十五個の音声ファイルが入っていた。
 ファイル名は「0~2時」「2~4時」といった風に並んでいる。
 「0~2時」のファイルを開いて再生を開始――するが、数分経っても何も聞こえてこない。
 パソコン本体のスピーカー音量を上げつつ、スクロールバーを動かして先へ進んでみる。

『それほどでも……ただの超天才マジシャンですよ』

 聞き慣れてしまっていた声に、椅子から転がり落ちそうになった。
 まさかこの声をこのタイミングで聞く事になるとは思っていなかったという驚き。
 胸が貧しく卑しい女の自惚れた台詞への呆れ。
 上田は結局再会出来なかったが、山田奈緒子は殺し合いの場に放り込まれても山田奈緒子のままであったらしい。

 この台詞の前後を改めて聞いてみると、どうやらジェレミアとの会話中にこれを言い放ったようだ。
 ジェレミアの声は大きく、奈緒子の声は少し小さく聞こえた。
 恐らくこの音声が、首輪の中の盗聴器に録音されていたものだからだ。
 首輪からの盗聴の可能性は、三村信史という少年の情報がクーガーらを経由して上田の耳にも入っていた。
 六十五のUSB全てにこうした会話が保存されているのだろう。

 これで志々雄と翠星石のUSBが既にケースに収められていた理由も分かる。
 上田が聞いた話では、この二人は総合病院で一早く首輪を解除していたはずだ。
 つまり死亡するか首輪が解除されるか――首輪の機能が停止した者のUSBから順にケースに入れられていたのだ。
 ジェレミアのUSBだけ机の上にあったのも、何ら不思議な事はない。
 ジェレミアの死は第五回放送前。
 このデスクの所有者がジェレミアのUSBをケースにしまおうしたタイミングで、V.V.が凶行に走ったと考えればいい。
 冴え渡る推理。
 勿論USBを開く前から天才上田次郎は全てを察していたわけだが、これで上田の考えの正しさが証明されたのだ。
 褒め称えてくれる人間がこの場に一人もいないのがとても残念だった。

 上田が席を立って他のパソコンを調べてみると、残る七人のUSBも見付かった。
 首輪が壊れたのか対象が死亡したのかの区別はつかないものの、音声データの保存は既に終わっていた。
 上田はUSBを全て抜き、ケースの窪みに慎重に填めていく。
 その途中で幾つかの外付けハードディスクを発見した。
 こちらには会場中に仕掛けられた監視カメラの映像ファイルが入っているようで、USBと同じく保存は終了している。
 上田はUSBを収めたアタッシュケースと共に、それらのハードディスクを自分のデイパックに放り込んだ。

 更にデスクに戻り『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページの中を巡る。
 管理者としてログインしている間なら、他にも新しい情報が得られるのではないかと考えたのだ。
 パソコンは上田が知るものより数段上のスペックではあったが、天才の順応速度は目覚ましい。
 クリックとブラウザバックを繰り返し、奮闘しているうちに外部サイトと繋がる――どうやらバックアップサポートを行うサイトのようだ。
 ホームページ内の文章を全てテキストファイルとして保存出来るらしい。
 上田は慌てて机の中を漁り、表面に何も書かれていないUSBをパソコンに接続した。
 幸い新品のようで、中は空っぽだ。
 ダウンロード先としてこのUSBを選び、保存。
 画像のバックアップまでは取れないようなので、詳細プロフィールに貼られた写真は全て手作業で同じUSB内に保存する。
 これで参加者の動向や詳細な経歴も手に入れる事が出来た。

 上田はその後も暫くデスクのパソコンに触れ、一応他のパソコンからも操作してみたが、大きな収穫はなかった。
 そしてこれ以上血の臭いにむせ返りそうになる部屋に居続ける気にはならず、ここを離れる決意をする。

 部屋を出る前に、上田は二十人の死体を移動させた。
 幸い死後硬直は始まっていなかったので、一人ずつ仰向けに横たわらせて胸の前で手を組ませる。
 そして全員を並べ終えると額の汗を拭い、手を合わせて深々と腰を折った。

 上田はジェレミアのUSBの音声ファイルを他にも幾つか開いてみていた。
 そこではアイゼルも交えて三人で会話しており、三人共緊張しながらもそれなりに楽しんでいるように聞こえた。
 上田も思い返してみれば、例えば沙都子やかなみにフライングボードの乗り方や原理を講義して感謝された時は確かに楽しかった。
 この催しでは多くの悲劇が生まれ、五十人以上の死者を出す最悪の結果となったが、しかしそれだけではなかったはずなのだ。
 これらのUSBには、こうした「ただの殺し合いではなかった瞬間」が散りばめられている。
 一緒に会話したり、食事をしたり、そうしたささいなやり取りも全て収められているのだ。

 この部屋で死んでいるのは殺し合いに荷担した者達、そう思えば恨んで然るべきなのかも知れない。
 しかし彼らが丁寧に保存作業を行っていたお陰で、上田は記憶デバイスを手にする事が出来た。
 その事を、やはり感謝せねばならないと思った。
 如何に天才と言えど一人で生きているわけではなく、他者への感謝を忘れるようでは真の天才とは呼べまい。
 そしてUSBの入ったデイパックを胸の高さまで持ち上げ、語りかける。

「これらは私が責任をもって持ち帰る。
 安心するといい」

 上田が会場で多くの出会いを経験したとは言え、中には会話をする間もなく別れてしまった者やそもそも出会えなかった者もいる。
 しかしこれらの情報があれば、知る事が出来る。
 この殺し合いに関わらなかった者達にも伝える事が出来る。
 彼らの人となりを、彼らの生きた証を残す事が出来る。

――或いは優勝して、他の六十四人の存在を忘れてしまうかも知れないんだから。

 V.V.はそんな事を書いていたが、上田に言わせてみればくだらない話だった。
 例え上田がこのまま誰とも再会出来ず、たった一人で生還する事になってしまったとしても、忘れるはずがない。
 誰よりも優れ秀でた脳を持った上田が、あんなにも濃い個性をした者達をどうして忘れられるというのか。

「YOU達もそう思うだろう?
 ハッハッハ」

 わざとらしく笑い、拳を天井に向かって突き上げて高らかに宣言する。

 どーんと来ーい。

 誰も応えてくれない呼び掛けはやはり虚しかった。
 冷ややかな視線でも、無いよりずっといい。
 早く誰かと合流しようと思った。


【二日目/午前/???(パソコンルーム)】
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]ニンテンドーDS型探知機、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
    雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(0~2)、
    上田次郎人形@TRICK、ファサリナの三節棍@ガン×ソード、倭刀@るろうに剣心、USB収納済みアタッシュケース、大容量記憶ハードディスク、
    バックアップデータ入りUSB、ライの遺書
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:誰かと合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※ホームページ内の情報を一通り閲覧しました。


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170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅲ 上田次郎 174:終幕――死せる英雄達の戦い



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