乱(みだれ)後… ◆KKid85tGwY
――――雨の中泣いている子供が居た。
――――子供は泣いているのかと尋ねられる。
――――でもその子供は笑いながらいいえと答えるんだ。
――――そうだ……この子供は僕だったんだ。
――――子供は泣いているのかと尋ねられる。
――――でもその子供は笑いながらいいえと答えるんだ。
――――そうだ……この子供は僕だったんだ。
まだ深夜の冷たい潮風に晒されながら、海岸線で白い着物姿の青年は何をするともなく水平線を見つめている。
青年、瀬田宗次郎は自分に起きた現象が良く飲み込めずに居た。
明治政府転覆を計画する志々雄真実の腹心で、多くの人間を殺害してきた宗次郎は
つい先刻まで志々雄に敵対する、緋村剣心と戦っていた筈が
気が付けば別の場所に居て殺し合いをしろと命じられて、また次の瞬間には別の場所に移動していた。
それだけでも理解を超えた現象だが、宗次郎が拘泥している『不可解』はそれに留まらない。
青年、瀬田宗次郎は自分に起きた現象が良く飲み込めずに居た。
明治政府転覆を計画する志々雄真実の腹心で、多くの人間を殺害してきた宗次郎は
つい先刻まで志々雄に敵対する、緋村剣心と戦っていた筈が
気が付けば別の場所に居て殺し合いをしろと命じられて、また次の瞬間には別の場所に移動していた。
それだけでも理解を超えた現象だが、宗次郎が拘泥している『不可解』はそれに留まらない。
(訳が分からないなァ…………せっかく、後少しで緋村さんを殺せる所だったのに
これじゃあ、余計いらいらする……………………)
これじゃあ、余計いらいらする……………………)
宗次郎は元来、喜怒哀楽の内楽以外の感情が欠落している。
しかし剣心との戦いの中で、その無い筈の感情が顔を出した。
抑えようの無い程強い苛立ち。
しかし剣心との戦いの中で、その無い筈の感情が顔を出した。
抑えようの無い程強い苛立ち。
(不殺とか弱い者を守るだとか、緋村さんは言ってる事もやってる事も間違ってるんですよ。
だってもしあの人が間違っていないなら、あの時僕を守ってくれたはずなんだから…………)
だってもしあの人が間違っていないなら、あの時僕を守ってくれたはずなんだから…………)
――――思い出されるのは、過去の記憶
――――雨の中佇む、幼い自分
――――雨の中佇む、幼い自分
(『所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ』
あの時僕を守ってくれたのは、志々雄さんが教えてくれたこの真実とただ一振りの脇差……だから正しいのは志々雄さんの方なんだ!!
宗次郎には珍しく眼光を鋭くし、剣呑な気配を表に出す。
(…………そう言えば、今の僕は『殺し合い』に参加してるんだったっけ。
首輪が有る以上逃げられないみたいだし、憂さ晴らしにはちょうどいいかな)
哀の感情も知らず、強さ以外の価値も教えられず生きてきた宗次郎の中には
多くの人がそうと自覚しない程自然に身につける、殺人への禁忌すら存在しない。
決意。
そう呼ぶには余りに軽い調子で、宗次郎は殺し合いに乗ると決める。
あの時僕を守ってくれたのは、志々雄さんが教えてくれたこの真実とただ一振りの脇差……だから正しいのは志々雄さんの方なんだ!!
宗次郎には珍しく眼光を鋭くし、剣呑な気配を表に出す。
(…………そう言えば、今の僕は『殺し合い』に参加してるんだったっけ。
首輪が有る以上逃げられないみたいだし、憂さ晴らしにはちょうどいいかな)
哀の感情も知らず、強さ以外の価値も教えられず生きてきた宗次郎の中には
多くの人がそうと自覚しない程自然に身につける、殺人への禁忌すら存在しない。
決意。
そう呼ぶには余りに軽い調子で、宗次郎は殺し合いに乗ると決める。
足下に有ったデイパックを探り、名簿を確認する。
名簿に有る名前を信用するなら、憶えのある名前は3人。
「何だ、緋村さんも参加してるんだ。じゃあ、こっちで決着を付ければ良いや。後は斎藤さんと…………志々雄さんか」
宗次郎にとって剣心と斎藤は敵であるから、殺す方針で問題は無い。
しかし志々雄は、自分の主に当たる人物。
しかも恩人とあっては、宗次郎とて単純に殺せば済むと割り切れるものでも無い。
「……ま、志々雄さんの事は後で考えればいいか。どーせ志々雄さんなら、放って置いても死ぬ訳無いし」
そしてどうしても考えが進まない事に、何時までも拘る宗次郎では無かった。
名簿に有る名前を信用するなら、憶えのある名前は3人。
「何だ、緋村さんも参加してるんだ。じゃあ、こっちで決着を付ければ良いや。後は斎藤さんと…………志々雄さんか」
宗次郎にとって剣心と斎藤は敵であるから、殺す方針で問題は無い。
しかし志々雄は、自分の主に当たる人物。
しかも恩人とあっては、宗次郎とて単純に殺せば済むと割り切れるものでも無い。
「……ま、志々雄さんの事は後で考えればいいか。どーせ志々雄さんなら、放って置いても死ぬ訳無いし」
そしてどうしても考えが進まない事に、何時までも拘る宗次郎では無かった。
他にデイパック内の荷物は地図、コンパス、筆記用具、水、食料、時計、ランタン。
鉛筆やら水を容れるペットボトルやらに、一通り驚いて見せた後
宗次郎は遂にお目当ての武器に至った。
説明書にはイングラムM10と名前が記された、黒い金属製の箱の様な銃器サブマシンガン。
もっとも明治に生きる宗次郎は、サブマシンガンがどういう物かは知らない。
説明書き通りに銃口を向け、照準を定め、引き金を引き、近くの石を狙い撃ってみる。
思いの他の反動で銃身がぶれ、目標周りの砂利を盛大に跳ね上げた。
「凄いなこれ、携行用の回転式機関砲(ガトリングガン)って所か。
アハハ、でも僕にこんな強力な武器を支給しちゃったら殺し合いにならないや」
新しい玩具を手に入れた子供の様な、邪気の無い様子で荷物を纏めた宗次郎は
遠方に見える巨大な建物へ向けて、出発し始めた。
「それにしても何の建物か知らないけど大きいなァ、窓の数で見ても10階建て以上有りそうだ……」
鉛筆やら水を容れるペットボトルやらに、一通り驚いて見せた後
宗次郎は遂にお目当ての武器に至った。
説明書にはイングラムM10と名前が記された、黒い金属製の箱の様な銃器サブマシンガン。
もっとも明治に生きる宗次郎は、サブマシンガンがどういう物かは知らない。
説明書き通りに銃口を向け、照準を定め、引き金を引き、近くの石を狙い撃ってみる。
思いの他の反動で銃身がぶれ、目標周りの砂利を盛大に跳ね上げた。
「凄いなこれ、携行用の回転式機関砲(ガトリングガン)って所か。
アハハ、でも僕にこんな強力な武器を支給しちゃったら殺し合いにならないや」
新しい玩具を手に入れた子供の様な、邪気の無い様子で荷物を纏めた宗次郎は
遠方に見える巨大な建物へ向けて、出発し始めた。
「それにしても何の建物か知らないけど大きいなァ、窓の数で見ても10階建て以上有りそうだ……」
◇ ◇ ◇
自動ドアを潜ってホテルに入った泉新一は、ロビーの照明も消えフロントの中まで誰も居ないのを確認すると
フロントに設置してある電話で、自宅の番号に掛けてみるが呼び出し音さえならない。
後藤との戦いが終わった夜に父から教えてもらった宿の番号にも掛けてみるが、やはり反応は無い。
(電話回線は繋がっていないのか……まあ、考えてみればこんなでかい殺し合いの会場を用意する様な奴だし
そう簡単に、外と連絡を取れるようにはしとかないよな…………)
新一は受話器を置き、当初の予定通り休みを取る事とした。
今居る面がガラス張りのロビーでは無く、何処かの部屋を黙って借りようかとも考えたが
少し悩んで、結局ロビーの如何にも高級そうな大型ソファーに座り込む。
新一の右腕に寄生している寄生生物(パラサイト)、ミギーは現在眠っている為他の寄生生物を探知する能力が使えない。
故にホテルの部屋の様な、狭く逃げ道の少ない場所に居ては
一方的にこちらを探知出来る、後藤や田村令子等寄生生物の急襲を受ける危険が有る。
それならば外から見付かる危険は有っても、こちらからも外を見張れるロビーの方を選んだ。
それにガラス張りで外から見えると言っても、夜の照明が落ちたロビー内は闇に覆われほとんど見通しは効かない。
フロントに設置してある電話で、自宅の番号に掛けてみるが呼び出し音さえならない。
後藤との戦いが終わった夜に父から教えてもらった宿の番号にも掛けてみるが、やはり反応は無い。
(電話回線は繋がっていないのか……まあ、考えてみればこんなでかい殺し合いの会場を用意する様な奴だし
そう簡単に、外と連絡を取れるようにはしとかないよな…………)
新一は受話器を置き、当初の予定通り休みを取る事とした。
今居る面がガラス張りのロビーでは無く、何処かの部屋を黙って借りようかとも考えたが
少し悩んで、結局ロビーの如何にも高級そうな大型ソファーに座り込む。
新一の右腕に寄生している寄生生物(パラサイト)、ミギーは現在眠っている為他の寄生生物を探知する能力が使えない。
故にホテルの部屋の様な、狭く逃げ道の少ない場所に居ては
一方的にこちらを探知出来る、後藤や田村令子等寄生生物の急襲を受ける危険が有る。
それならば外から見付かる危険は有っても、こちらからも外を見張れるロビーの方を選んだ。
それにガラス張りで外から見えると言っても、夜の照明が落ちたロビー内は闇に覆われほとんど見通しは効かない。
ソファーに深く身を沈め、左手で胸のシャツの胸部分を握り締め深呼吸。
新一にはほとんど習慣となった、精神安定の方法。
それを2、3回続けると新一は普段の落ち着きを取り戻す。
(爆弾入りの首輪嵌められて殺し合いをしろって言われてる状況でも、気持ちだけはすぐ落ち着く
……俺の心はそういうふうになってんだよな)
しかし幾ら気持ちが落ち着いた所で、実際は状況が好転した訳ではない。
「おいミギー! 何時まで寝てんだ、起きろよ!!」
右腕を叩いて反応を見るが、変化は無い。
ミギーは以前に起こした体質変化に拠って、1日の内4時間は外へのアンテナが無い完全な睡眠を余儀無くさせられていた。
どうやらミギーは、その完全な睡眠に入っているらしい。
「ちぇっ、こんな時でも呑気に寝てられるんだからな。ミギーは」
睡眠がミギーの意思によるものでは無いと理解していても
殺し合いの中で一方的に眠りにつかれ1人にされた新一には、ミギーに見放された様な憤りを覚える。
(これから4時間は、俺1人で凌ぐしかないか…………。
でもその4時間を乗り切ったら、ミギーと見張りを交代する形で俺が眠る事も出来るな)
新一はとにかくミギー無しの4時間を凌ぐべく、気持ちを切り替える。
新一にはほとんど習慣となった、精神安定の方法。
それを2、3回続けると新一は普段の落ち着きを取り戻す。
(爆弾入りの首輪嵌められて殺し合いをしろって言われてる状況でも、気持ちだけはすぐ落ち着く
……俺の心はそういうふうになってんだよな)
しかし幾ら気持ちが落ち着いた所で、実際は状況が好転した訳ではない。
「おいミギー! 何時まで寝てんだ、起きろよ!!」
右腕を叩いて反応を見るが、変化は無い。
ミギーは以前に起こした体質変化に拠って、1日の内4時間は外へのアンテナが無い完全な睡眠を余儀無くさせられていた。
どうやらミギーは、その完全な睡眠に入っているらしい。
「ちぇっ、こんな時でも呑気に寝てられるんだからな。ミギーは」
睡眠がミギーの意思によるものでは無いと理解していても
殺し合いの中で一方的に眠りにつかれ1人にされた新一には、ミギーに見放された様な憤りを覚える。
(これから4時間は、俺1人で凌ぐしかないか…………。
でもその4時間を乗り切ったら、ミギーと見張りを交代する形で俺が眠る事も出来るな)
新一はとにかくミギー無しの4時間を凌ぐべく、気持ちを切り替える。
身体を休め気持ちを落ち着かせ、それでも眠れないという時間が数分ほど過ぎると
殺し合いの緊迫も何処か虚ろになり、手持ち無沙汰になる。
そして支給武器を確認していなかった事に気付いた新一は、デイパックを探り始めた。
まずメガホン型の拡声器が見付かった。
(武器じゃ無いだろ、これは!! しかもご丁寧に、使い方の説明書付きって! もしかして馬鹿にされてんのか?)
新一なりに使い道を考えてみても、ほとんど闇雲に仲間を募るか停戦を呼び掛ける位しか思い付かない。
余り効果が期待出来ないメリットに比べ、危険を呼び込むリスクが大き過ぎる代物だ。
他に支給武器と考えられそうな物は、カセットテープが備え付けられたCDの再生も出来るラジオカセットレコーダー。
これも武器として使うとすれば、せいぜいその重量で殴打する位しか思い浮かばない。
残るは全身を覆える大きさをした、黒いマント。
説明書に拠れば、『ゼロ』が愛用していたとの事。
(そのゼロってのが何かを説明しろって! ……かあ、支給武器はどれも外れかよ…………)
支給武器がどれも期待外れであった為、新一は落胆のままソファーの背もたれに沈み込み大きく息を吐き出した。
その視界遠くに、白い着物を着た新一と同年代位の青年が映る。
殺し合いの緊迫も何処か虚ろになり、手持ち無沙汰になる。
そして支給武器を確認していなかった事に気付いた新一は、デイパックを探り始めた。
まずメガホン型の拡声器が見付かった。
(武器じゃ無いだろ、これは!! しかもご丁寧に、使い方の説明書付きって! もしかして馬鹿にされてんのか?)
新一なりに使い道を考えてみても、ほとんど闇雲に仲間を募るか停戦を呼び掛ける位しか思い付かない。
余り効果が期待出来ないメリットに比べ、危険を呼び込むリスクが大き過ぎる代物だ。
他に支給武器と考えられそうな物は、カセットテープが備え付けられたCDの再生も出来るラジオカセットレコーダー。
これも武器として使うとすれば、せいぜいその重量で殴打する位しか思い浮かばない。
残るは全身を覆える大きさをした、黒いマント。
説明書に拠れば、『ゼロ』が愛用していたとの事。
(そのゼロってのが何かを説明しろって! ……かあ、支給武器はどれも外れかよ…………)
支給武器がどれも期待外れであった為、新一は落胆のままソファーの背もたれに沈み込み大きく息を吐き出した。
その視界遠くに、白い着物を着た新一と同年代位の青年が映る。
「……!!」
草むらに立っている青年は、身体をホテルに向けたまま動きが無い。
その右手には機関銃と思しき、銃火器が握られている。
(見付かった!? でもここからは100m近く有るから、この暗さじゃ寄生生物でも見えないんじゃ……
いや、どっちにしろホテルには来るだろうから…………!!)
爆発の如くに地面を穿つ踏み込みで、凄まじい速さで青年が真っ直ぐ新一へ向け駆け出す。
新一ですら反応出来ない速度で、青年との距離は半分近くまで縮められた。
それだけの運動をしながら張り付いた様な笑顔のままの青年に、新一に寒気にも似た恐怖を覚えた。
(こいつ寄生生物か!? それにしたって速過ぎるって!!)
速度を落とさないまま、青年は軽々と機関銃を上げ銃口を新一に向ける。
連続した高い銃声と共に、ガラス壁に穴と皹が入る刹那
新一は咄嗟にソファーから立ち上がり、テーブルの陰へ横っ飛びに移動した。
右脛に切り裂かれた様な痛みが走り、新一の座っていたソファーの羽毛が舞い散る。
青年が銃痕で脆くなったガラス壁を、蹴破って飛び込んできた。
ロビーから走って逃げ出そうとした新一だが、右脛に激痛が走り前のめりに倒れる。
(弾丸は体内に残ってないみたいだけど、これじゃほとんどまともに走れない!)
草むらに立っている青年は、身体をホテルに向けたまま動きが無い。
その右手には機関銃と思しき、銃火器が握られている。
(見付かった!? でもここからは100m近く有るから、この暗さじゃ寄生生物でも見えないんじゃ……
いや、どっちにしろホテルには来るだろうから…………!!)
爆発の如くに地面を穿つ踏み込みで、凄まじい速さで青年が真っ直ぐ新一へ向け駆け出す。
新一ですら反応出来ない速度で、青年との距離は半分近くまで縮められた。
それだけの運動をしながら張り付いた様な笑顔のままの青年に、新一に寒気にも似た恐怖を覚えた。
(こいつ寄生生物か!? それにしたって速過ぎるって!!)
速度を落とさないまま、青年は軽々と機関銃を上げ銃口を新一に向ける。
連続した高い銃声と共に、ガラス壁に穴と皹が入る刹那
新一は咄嗟にソファーから立ち上がり、テーブルの陰へ横っ飛びに移動した。
右脛に切り裂かれた様な痛みが走り、新一の座っていたソファーの羽毛が舞い散る。
青年が銃痕で脆くなったガラス壁を、蹴破って飛び込んできた。
ロビーから走って逃げ出そうとした新一だが、右脛に激痛が走り前のめりに倒れる。
(弾丸は体内に残ってないみたいだけど、これじゃほとんどまともに走れない!)
「へえ……中まで変わってるんだ、この建物」
何故か青年はロビーを見渡して、しきりに感心している。
(何だこいつ? 俺を見失ったのか?)
青年は新一を放置して、まるで幼児の如くホテルの内装を見渡し続けた。
「それともここは西欧で、西欧ではこれが普通なのかな? あなたは何か知ってますか?」
およそ邪気の読みとれない張り付いた笑顔のまま、感情の無い冷たい視線だけを新一に送って来た。
次の瞬間には機関銃の照準が、新一に合う。
全体重を乗せた左脚のばねだけで、柱の陰に飛び移る。
何故か青年はロビーを見渡して、しきりに感心している。
(何だこいつ? 俺を見失ったのか?)
青年は新一を放置して、まるで幼児の如くホテルの内装を見渡し続けた。
「それともここは西欧で、西欧ではこれが普通なのかな? あなたは何か知ってますか?」
およそ邪気の読みとれない張り付いた笑顔のまま、感情の無い冷たい視線だけを新一に送って来た。
次の瞬間には機関銃の照準が、新一に合う。
全体重を乗せた左脚のばねだけで、柱の陰に飛び移る。
笑みを絶やさないまま躊躇も、狂気も、高揚すら一切感じさせず機械の様な平静さで襲い来る青年に
新一はかつて自分が戦った寄生生物、豊かな表情で自分を殺しに掛かってきた三木を思い出す。
そして確信する。青年が寄生生物である事を。
明らかに人間を超えた脚力に、何より殺し合いに全く動揺が見れない事からも間違い無い。
(くそっ! よりによってミギーの寝てる時に、マシンガンを持った寄生生物(パラサイト)に襲われるなんて!!)
右脚の負傷した状態で、平時でも自分より速いであろう寄生生物に狙われている。
自身の不可避の死が、新一の脳裏から離れない。
状況を思い返すだけで、窒息しそうな程に息苦しくなり
思わず右手で、自分の着るシャツ胸部分を握り締める。
癖と言ってもいい行動の筈が、奇妙な違和感を覚えた。
(……そうか、何時もは左手でやっていたから…………)
無意識に右手を動かした事を自覚し、新一はミギーの存在を思い出した。
(…………厳しくても、ここは俺1人で切り抜けるしかない…………!
俺は自分1人の命じゃなく、こいつの命も預かってるんだからな)
1度深く呼吸。先程までの息苦しさは、もう無い。
新一はかつて自分が戦った寄生生物、豊かな表情で自分を殺しに掛かってきた三木を思い出す。
そして確信する。青年が寄生生物である事を。
明らかに人間を超えた脚力に、何より殺し合いに全く動揺が見れない事からも間違い無い。
(くそっ! よりによってミギーの寝てる時に、マシンガンを持った寄生生物(パラサイト)に襲われるなんて!!)
右脚の負傷した状態で、平時でも自分より速いであろう寄生生物に狙われている。
自身の不可避の死が、新一の脳裏から離れない。
状況を思い返すだけで、窒息しそうな程に息苦しくなり
思わず右手で、自分の着るシャツ胸部分を握り締める。
癖と言ってもいい行動の筈が、奇妙な違和感を覚えた。
(……そうか、何時もは左手でやっていたから…………)
無意識に右手を動かした事を自覚し、新一はミギーの存在を思い出した。
(…………厳しくても、ここは俺1人で切り抜けるしかない…………!
俺は自分1人の命じゃなく、こいつの命も預かってるんだからな)
1度深く呼吸。先程までの息苦しさは、もう無い。
何時までも追撃をして来ない青年の様子を、新一は覗き見る。
足下の銃撃を受け羽毛が飛び出したソファーに、感心が行っている様だ。
機動力、戦闘力共に青年が新一を大きく上回り余裕が有るとはいえ
戦闘中とは思えない程、弛緩した態度だ。
右脚に力を込める。
相変わらず痛みは強いが、多少遅くなるとはいえ走れないと言う訳ではない様だ。
(あいつにはAみたいな油断が有る。Aの時も戦力的な劣勢を覆して勝てたんだ。
戦える! ヤケにならずちゃんと作戦を立てりゃ戦えるぞ!!)
足下の銃撃を受け羽毛が飛び出したソファーに、感心が行っている様だ。
機動力、戦闘力共に青年が新一を大きく上回り余裕が有るとはいえ
戦闘中とは思えない程、弛緩した態度だ。
右脚に力を込める。
相変わらず痛みは強いが、多少遅くなるとはいえ走れないと言う訳ではない様だ。
(あいつにはAみたいな油断が有る。Aの時も戦力的な劣勢を覆して勝てたんだ。
戦える! ヤケにならずちゃんと作戦を立てりゃ戦えるぞ!!)
一通りロビーの内装を見回していた宗次郎は、動きの無い新一に意識を戻す。
(じっとしている所を見ると、鬼ごっこもかくれんぼも無駄だと悟ったかな?)
新一は脚の負傷で、素早い動きが出来ない。
それでも単純な運動能力だけで、並の武人よりは遥かに速いが
例え負傷していないとしても、縮地を使える宗次郎からは逃げられないであろう。
これまで向こうから何も仕掛けてこない事からも、警戒すべき武器も持ってはいない様だ。
イングラムの銃口を向け、新一が隠れる柱に悠々と近付いていく。
(じっとしている所を見ると、鬼ごっこもかくれんぼも無駄だと悟ったかな?)
新一は脚の負傷で、素早い動きが出来ない。
それでも単純な運動能力だけで、並の武人よりは遥かに速いが
例え負傷していないとしても、縮地を使える宗次郎からは逃げられないであろう。
これまで向こうから何も仕掛けてこない事からも、警戒すべき武器も持ってはいない様だ。
イングラムの銃口を向け、新一が隠れる柱に悠々と近付いていく。
突如宗次郎の視界の暗がりに、柱の陰から更に濃い黒が広がった。
宗次郎の高い視力がちょうど首元が巻き付けられた状態になった、黒いマントが翻り迫り来るのを確認する。
慌てて黒マントの胸部を銃撃。中から水が、弾ける様に零れ出した。
宗次郎が訝しがる内に、イングラムがカチャッと言う音をたて弾丸の発射を止める。
弾丸切れ。
重火器を扱い慣れていない為、直ぐにそうだと気付かなかった宗次郎の視線が沈黙したイングラムに落ちたその刹那
黒いマントを払い除け、新一が飛び出した。
宗次郎の高い視力がちょうど首元が巻き付けられた状態になった、黒いマントが翻り迫り来るのを確認する。
慌てて黒マントの胸部を銃撃。中から水が、弾ける様に零れ出した。
宗次郎が訝しがる内に、イングラムがカチャッと言う音をたて弾丸の発射を止める。
弾丸切れ。
重火器を扱い慣れていない為、直ぐにそうだと気付かなかった宗次郎の視線が沈黙したイングラムに落ちたその刹那
黒いマントを払い除け、新一が飛び出した。
新一は銃火器に精通している訳ではないが、それでも明治に生きる宗次郎よりはサブマシンガンに馴染みが有る。
宗次郎の様にフルオートで撃ち続ければ、弾丸切れは早いと予想出来た。
そして弾丸切れの瞬間はよほど銃撃戦に熟練してでもなくば、どうしても意識は銃に奪われる。
その隙を突いて一気に間合いを詰め、イングラムを持ちこちらに伸ばす手を掴み
力任せに、宗次郎を床へ投げ飛ばす。
(頭が変形しない!?)
何故か寄生部分で有る筈の頭部を武器に変え攻撃して来ないが、今の新一にそれを気にする余裕は無い。
(今から頭部を変形させても、俺の方が早く奴の心臓を攻撃出来る!!)
仰向けに叩きつけられた体勢から、即座に宗次郎が立ち上がろうとするも
新一が未だ掴んでいる腕を捻り、阻止する。
その痛みで宗次郎の表情が、始めて歪みを見せた。
宗次郎の様にフルオートで撃ち続ければ、弾丸切れは早いと予想出来た。
そして弾丸切れの瞬間はよほど銃撃戦に熟練してでもなくば、どうしても意識は銃に奪われる。
その隙を突いて一気に間合いを詰め、イングラムを持ちこちらに伸ばす手を掴み
力任せに、宗次郎を床へ投げ飛ばす。
(頭が変形しない!?)
何故か寄生部分で有る筈の頭部を武器に変え攻撃して来ないが、今の新一にそれを気にする余裕は無い。
(今から頭部を変形させても、俺の方が早く奴の心臓を攻撃出来る!!)
仰向けに叩きつけられた体勢から、即座に宗次郎が立ち上がろうとするも
新一が未だ掴んでいる腕を捻り、阻止する。
その痛みで宗次郎の表情が、始めて歪みを見せた。
(――――痛みを感じている!!?)
空いている手で宗次郎の心臓、寄生生物最大の弱点部分に直接攻撃しようとしていた新一に違和感が走る。
寄生生物に痛覚が有るか否かを新一は知らないが、それに対する反応は無い事を知っていた。
だが宗次郎が見せた表情は、とても演技とは思えない。
痛みに呻き、接近戦でも頭部を変形させない――――
寄生生物に痛覚が有るか否かを新一は知らないが、それに対する反応は無い事を知っていた。
だが宗次郎が見せた表情は、とても演技とは思えない。
痛みに呻き、接近戦でも頭部を変形させない――――
(――――こいつは寄生生物じゃない!!)
思考に拘泥し動きの止まった新一の身体が、突如腹部に衝撃を受け吹き飛ばされた。
剣心の神速を超える高速移動術、縮地を可能にする宗次郎の脚力は格闘戦では強力な武器にもなれる。
仰向けの体勢からでも、新一を蹴り飛ばす事が出来た。
新一は空中で身を翻し、両手と左脚を使って着地。
やはり純粋な運動能力が、尋常ではない事が窺える。
仰向けの体勢からでも、新一を蹴り飛ばす事が出来た。
新一は空中で身を翻し、両手と左脚を使って着地。
やはり純粋な運動能力が、尋常ではない事が窺える。
「お前、人間だったのかよ!!?」
先程まで居た柱の陰に隠れながら、新一が半ば叫ぶ様に問い掛けて来る。
その質問が余りに頓狂な為、イングラムのマガジンを装填しながら聞いていた宗次郎は笑いを堪える事が出来ない。
「あっはっは! 僕が服を着た猿にでも見えたんですか?」
「同じ人間を、何で殺そうとするんだ!?」
瞬間宗次郎の笑いが途絶え、先刻まで存在しなかった剣呑な気配が初めて表れる。
(いやだなァ、またイライラしてきた……)
「殺し合いなんだから当然でしょう。それとも、あなたも不殺(ころさず)とか言うつもりですか?」
「当たりめぇだろ! 人の命ってのは尊いんだよ!」
宗次郎は思う。こいつも剣心と一緒だ。
弱肉強食と言う真理から眼を背け、間違った理念に生きる愚者。
「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ。あなたの言ってる事は、間違ってるんですよ」
声に冷たさと鋭さが混じっている事に、自分でも気付く。
「どっちが間違いだ! 人間なら弱肉強食で、命のやり取りを片付けるな!!」
苛立ちが強まる。
何故どいつもこいつも、明々白々な真理を否定しようとするのか?
「あの時、誰も僕を守ってくれなかった」
この世を支配する理は1つ、それは絶対のもの。
でなければ僕は――――
「あなたが間違っていないなら、あの時僕を守ってくれた筈じゃないですか」
先程まで居た柱の陰に隠れながら、新一が半ば叫ぶ様に問い掛けて来る。
その質問が余りに頓狂な為、イングラムのマガジンを装填しながら聞いていた宗次郎は笑いを堪える事が出来ない。
「あっはっは! 僕が服を着た猿にでも見えたんですか?」
「同じ人間を、何で殺そうとするんだ!?」
瞬間宗次郎の笑いが途絶え、先刻まで存在しなかった剣呑な気配が初めて表れる。
(いやだなァ、またイライラしてきた……)
「殺し合いなんだから当然でしょう。それとも、あなたも不殺(ころさず)とか言うつもりですか?」
「当たりめぇだろ! 人の命ってのは尊いんだよ!」
宗次郎は思う。こいつも剣心と一緒だ。
弱肉強食と言う真理から眼を背け、間違った理念に生きる愚者。
「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ。あなたの言ってる事は、間違ってるんですよ」
声に冷たさと鋭さが混じっている事に、自分でも気付く。
「どっちが間違いだ! 人間なら弱肉強食で、命のやり取りを片付けるな!!」
苛立ちが強まる。
何故どいつもこいつも、明々白々な真理を否定しようとするのか?
「あの時、誰も僕を守ってくれなかった」
この世を支配する理は1つ、それは絶対のもの。
でなければ僕は――――
「あなたが間違っていないなら、あの時僕を守ってくれた筈じゃないですか」
「…………ちぇ、いきなり出てきて何かと思えば……てめぇなんか何処にでも居る只の人間じゃねぇか」
「……何です?」
「……何です?」
新一には、今の自分が窮地だと言う自覚が有る。
それでも何故か、宗次郎の話を聞いている内に突然
先程までの切迫した心持が、馬鹿馬鹿しく思え出した。
宗次郎が話している内容は、新一には全く理解が出来ていないが
冷徹な殺戮機械に思えていた宗次郎が、有り触れた只の青年にしか見えなくなった。
もっとも、それで戦力的な劣勢が覆った訳でも無い。
宗次郎が人間であっても、脅威である事には何ら変わりは無い上
奇襲を失敗した事によって、もう先刻の様な油断は期待出来ないであろう。
つまり勝利条件は、より厳しくなったのだ。
微かに右手を見つめる。
(もう1度……いや、勝てるまで何度でも綱渡りをしてやるぜ。なあミギー)
返事は無くとも確かに戦友がそこに居ると確認しただけで、新一には心強かった。
それでも何故か、宗次郎の話を聞いている内に突然
先程までの切迫した心持が、馬鹿馬鹿しく思え出した。
宗次郎が話している内容は、新一には全く理解が出来ていないが
冷徹な殺戮機械に思えていた宗次郎が、有り触れた只の青年にしか見えなくなった。
もっとも、それで戦力的な劣勢が覆った訳でも無い。
宗次郎が人間であっても、脅威である事には何ら変わりは無い上
奇襲を失敗した事によって、もう先刻の様な油断は期待出来ないであろう。
つまり勝利条件は、より厳しくなったのだ。
微かに右手を見つめる。
(もう1度……いや、勝てるまで何度でも綱渡りをしてやるぜ。なあミギー)
返事は無くとも確かに戦友がそこに居ると確認しただけで、新一には心強かった。
「てめぇなんか、寄生生物に比べりゃ紙細工だって言ってんだよ」
「やっぱり意味が分からないなァ、あなたの話は。……聞いていると、イライラする」
「良く言うぜ。さっきまで、訳の分からない事言ってたのはどっちだ」
「やっぱり意味が分からないなァ、あなたの話は。……聞いていると、イライラする」
「良く言うぜ。さっきまで、訳の分からない事言ってたのはどっちだ」
宗次郎は自分の声よりも新一のそれの方が落ち着いている事に気付き、更に苛立ちを増す。
そして動揺する宗次郎を尻目に、新一が柱からロビーの出口へ走り去っていく。
(逃げた!? もうそんなに回復したのか……だけどそっちは、建物の奥の方ですよ)
追いかけっこなら望む所だ。
そう思いながら、新一の足音を追う。
ロビーの出口から廊下に出て、左右に視線を走らせる。
廊下の先にある部屋へ駆け込む新一を視認出来た。
それから数秒と間を置かず、宗次郎は新一が逃げ込んだ部屋の入り口に移動していた。
部屋をぐるりと見渡す。
そこは部屋の1辺が50m以上は有りそうな空間に、白いテーブルクロスが床の近くまで覆っている丸テーブルを幾つも置いている
パーティー会場と思しき部屋だと分かった。宗次郎はパーティー会場と言う言葉は知らないが。
新一の姿は視界には無い。
他の出入り口が部屋の隅に有るが、新一の足ではそこまで逃げる時間は無かった筈だ。
つまり新一は、何れかの丸テーブルの下に居るという事になる。
そして動揺する宗次郎を尻目に、新一が柱からロビーの出口へ走り去っていく。
(逃げた!? もうそんなに回復したのか……だけどそっちは、建物の奥の方ですよ)
追いかけっこなら望む所だ。
そう思いながら、新一の足音を追う。
ロビーの出口から廊下に出て、左右に視線を走らせる。
廊下の先にある部屋へ駆け込む新一を視認出来た。
それから数秒と間を置かず、宗次郎は新一が逃げ込んだ部屋の入り口に移動していた。
部屋をぐるりと見渡す。
そこは部屋の1辺が50m以上は有りそうな空間に、白いテーブルクロスが床の近くまで覆っている丸テーブルを幾つも置いている
パーティー会場と思しき部屋だと分かった。宗次郎はパーティー会場と言う言葉は知らないが。
新一の姿は視界には無い。
他の出入り口が部屋の隅に有るが、新一の足ではそこまで逃げる時間は無かった筈だ。
つまり新一は、何れかの丸テーブルの下に居るという事になる。
「偉そうな事言っておいて、結局かくれんぼしか出来ないんですか?」
床に伏せテーブルの下を1度に見渡そうとするが、部屋が暗過ぎてそれは適わなかった。
照明を付けようにも、宗次郎には方法が分からない。
面倒だと思いつつ、1つずつテーブルを捜して行くしかないかと観念する。
「それでは時間稼ぎにしかなりませんよ。僕にはこれが有りますから」
イングラムで1番近くのテーブルを銃撃。
幾つもの銃弾を受けテーブルクロスの布が、そしてテーブルの木材が舞い散る。
銃弾のシャワーを浴びたテーブルには、人が無事に隠れていられる空間は残されていない。
そして弾切れになったイングラムのマガジンを、手早く装填する。
サブマシンガンを使う要領は掴めた。もう隙は見せない。
これだけ分かり易く威嚇されれば、自分が助からないのが理解出来る筈だ。
そう。かつて自分が雨の中で米蔵の下に追い詰められたときの様に――――
床に伏せテーブルの下を1度に見渡そうとするが、部屋が暗過ぎてそれは適わなかった。
照明を付けようにも、宗次郎には方法が分からない。
面倒だと思いつつ、1つずつテーブルを捜して行くしかないかと観念する。
「それでは時間稼ぎにしかなりませんよ。僕にはこれが有りますから」
イングラムで1番近くのテーブルを銃撃。
幾つもの銃弾を受けテーブルクロスの布が、そしてテーブルの木材が舞い散る。
銃弾のシャワーを浴びたテーブルには、人が無事に隠れていられる空間は残されていない。
そして弾切れになったイングラムのマガジンを、手早く装填する。
サブマシンガンを使う要領は掴めた。もう隙は見せない。
これだけ分かり易く威嚇されれば、自分が助からないのが理解出来る筈だ。
そう。かつて自分が雨の中で米蔵の下に追い詰められたときの様に――――
「俺は本当に『弱肉強食』を生きている、人食いの化け物を知ってるんだ」
なのに何故まだ減らず口を叩ける?
何故声色に動揺が見えない?
新一の声は、何処までも宗次郎を苛立たせる。
(けどあなたはやはり、どうしょうもない馬鹿だ! 声を上げたおかげで、おおよその位置が掴めましたよ)
なのに何故まだ減らず口を叩ける?
何故声色に動揺が見えない?
新一の声は、何処までも宗次郎を苛立たせる。
(けどあなたはやはり、どうしょうもない馬鹿だ! 声を上げたおかげで、おおよその位置が掴めましたよ)
「そいつらはお前みたいに弱肉強食だのなんだの、言い訳をしなかったぜ!」
「言い訳? 僕が何で言い訳をしなければならないんですか?」
思わず聞き返す。
聞き返す必要なんて何処にも無いのに。
あいつは弱肉強食の真理に従って、もうすぐ死ぬのだから。
テーブルクロスの1つが翻るのを視界の端で捉えた。
間髪入れずイングラムで銃撃。
「自分に嘘をついて言い訳する。これは人間にしか出来ないもんな」
まだ死んでいない。何処までイライラさせるんだ。
「自分を騙して、他人を傷付ける。それで弱肉強食? 笑わせんなよ」
それが僕の事だっていうのか?
僕の事を何も知らない癖に、知った風な口を聞く。
あの時……僕を守ってくれなかった癖に!!
「言い訳? 僕が何で言い訳をしなければならないんですか?」
思わず聞き返す。
聞き返す必要なんて何処にも無いのに。
あいつは弱肉強食の真理に従って、もうすぐ死ぬのだから。
テーブルクロスの1つが翻るのを視界の端で捉えた。
間髪入れずイングラムで銃撃。
「自分に嘘をついて言い訳する。これは人間にしか出来ないもんな」
まだ死んでいない。何処までイライラさせるんだ。
「自分を騙して、他人を傷付ける。それで弱肉強食? 笑わせんなよ」
それが僕の事だっていうのか?
僕の事を何も知らない癖に、知った風な口を聞く。
あの時……僕を守ってくれなかった癖に!!
またテーブルクロスの翻りを捉えた。
しかも影がテーブルの下に潜り込むのも同時に。
「お前は弱肉強食に、本当には納得してないって事だろ?」
声はそのテーブルからのものだと、はっきり確認出来た。
そのテーブルは、宗次郎から見て壁を背にしている為
宗次郎の眼を盗んで、他のテーブルに移るのは不可能である。
つまり何処にも逃げ場が無い事になる。
しかも影がテーブルの下に潜り込むのも同時に。
「お前は弱肉強食に、本当には納得してないって事だろ?」
声はそのテーブルからのものだと、はっきり確認出来た。
そのテーブルは、宗次郎から見て壁を背にしている為
宗次郎の眼を盗んで、他のテーブルに移るのは不可能である。
つまり何処にも逃げ場が無い事になる。
宗次郎が笑みを浮かべる。何時に無く獰猛な眼光で。
「かくれんぼの最中に調子に乗って無駄話するから、鬼の僕に居場所を悟られましたよ」
笑いながらイングラムの銃弾を撃ち込む。
フルオートの為直ぐに弾切れになったが、即座にマガジンを再装填して撃ち続けた。
テーブルは原型を留めない程に破壊され
テーブルクロスは穴だらけ
背後の壁にも無数の銃痕がついた。
「かくれんぼの最中に調子に乗って無駄話するから、鬼の僕に居場所を悟られましたよ」
笑いながらイングラムの銃弾を撃ち込む。
フルオートの為直ぐに弾切れになったが、即座にマガジンを再装填して撃ち続けた。
テーブルは原型を留めない程に破壊され
テーブルクロスは穴だらけ
背後の壁にも無数の銃痕がついた。
次の弾切れが来た時には、破壊されつくしたテーブルの残骸が残された。
これでは隠れていた人間も生きては居まい。
生き残れる筈が無いのだ。
どう足掻こうと、力の無い者は死ぬしかない。
何者も弱肉強食の真理には抗えない。
これでは隠れていた人間も生きては居まい。
生き残れる筈が無いのだ。
どう足掻こうと、力の無い者は死ぬしかない。
何者も弱肉強食の真理には抗えない。
(一応死体の確認をした方がいいかな……)
残骸に近付き、ぼろぼろのテーブルクロスを乱暴に取り去る。
中には無残な残骸と化した、丸テーブルと奇妙な機械が有った。
(……………………何これ?)
宗次郎は知らないが機械の方は俗にラジカセとも呼ばれる、音声を記録及び再生出来る装置だ。
しかし宗次郎にはそんな事より、疑問にするべき事が有った。
有るべき筈の物が無いのである。
(…………死体が無い)
残骸に近付き、ぼろぼろのテーブルクロスを乱暴に取り去る。
中には無残な残骸と化した、丸テーブルと奇妙な機械が有った。
(……………………何これ?)
宗次郎は知らないが機械の方は俗にラジカセとも呼ばれる、音声を記録及び再生出来る装置だ。
しかし宗次郎にはそんな事より、疑問にするべき事が有った。
有るべき筈の物が無いのである。
(…………死体が無い)
背後から衝撃。
完全に不意を打たれて、宗次郎は壁に叩き付けられる。
身体を捻り後ろを見る。
今しがた殺した筈の男の姿が有った。
感情が無い筈の宗次郎の心が、驚愕に染まる。
男はまるで野球の投手の様に、半身で右腕を大きく振りかぶり
溜めた力で以って、右拳を宗次郎の胴へ向け振る。
崩れた体勢に、壁に叩きつけられたダメージが抜けない状態では回避は不可能。
腹を殴られ宗次郎の意識は、電源が切れた如くにブラックアウトした。
完全に不意を打たれて、宗次郎は壁に叩き付けられる。
身体を捻り後ろを見る。
今しがた殺した筈の男の姿が有った。
感情が無い筈の宗次郎の心が、驚愕に染まる。
男はまるで野球の投手の様に、半身で右腕を大きく振りかぶり
溜めた力で以って、右拳を宗次郎の胴へ向け振る。
崩れた体勢に、壁に叩きつけられたダメージが抜けない状態では回避は不可能。
腹を殴られ宗次郎の意識は、電源が切れた如くにブラックアウトした。
◇ ◇ ◇
明らかに動揺が見て取れる宗次郎を挑発して、隙を窺いつつ
ラジカセに声を録音してテーブルの下に投げ込み、大音量で再生して宗次郎の銃撃を誘い
弾切れした所を奇襲する。
新一の立てた作戦は単純と言えば単純。
偶然見付けたパーティー会場という地理的条件や、宗次郎の動揺等の
多くの条件が揃わなければ成立しなかった、ほとんど賭けに近い作戦だった。
それに新一は決して頭が悪い訳では無いが、弁が立つ訳でも無い。
宗次郎を引き付ける為に必死で言葉を紡いで、慣れない挑発等と言う真似をしたが
同じ真似を違う人間相手にやれと言われても、とても無理だろう。
そういう意味でもこの作戦は、博打だった訳である。
ラジカセに声を録音してテーブルの下に投げ込み、大音量で再生して宗次郎の銃撃を誘い
弾切れした所を奇襲する。
新一の立てた作戦は単純と言えば単純。
偶然見付けたパーティー会場という地理的条件や、宗次郎の動揺等の
多くの条件が揃わなければ成立しなかった、ほとんど賭けに近い作戦だった。
それに新一は決して頭が悪い訳では無いが、弁が立つ訳でも無い。
宗次郎を引き付ける為に必死で言葉を紡いで、慣れない挑発等と言う真似をしたが
同じ真似を違う人間相手にやれと言われても、とても無理だろう。
そういう意味でもこの作戦は、博打だった訳である。
「さてと、こいつだけど…………」
宗次郎が人間である以上、新一には殺す事は出来ない。
だからと言って放置すればいずれまた、今度は自分でなく人を襲うかも知れない。
そうなると、とりあえず自分が監視しなければならない様だ。
宗次郎を肩に担いでロビーに戻る。
ゼロのマント――支給された水の入ったペットボトルに巻き付けた為水浸しになった――を回収し、デイパックに戻す。
無事だったソファーに腰を下ろして、宗次郎を隣に寝かせた。
デイパックとイングラムは取り上げる。
宗次郎が人間である以上、新一には殺す事は出来ない。
だからと言って放置すればいずれまた、今度は自分でなく人を襲うかも知れない。
そうなると、とりあえず自分が監視しなければならない様だ。
宗次郎を肩に担いでロビーに戻る。
ゼロのマント――支給された水の入ったペットボトルに巻き付けた為水浸しになった――を回収し、デイパックに戻す。
無事だったソファーに腰を下ろして、宗次郎を隣に寝かせた。
デイパックとイングラムは取り上げる。
宗次郎の寝顔を見ると、まるで童子の様にあどけない。
自分と同年代に見えるこの青年が、何故ああも冷徹に人を殺そうと出来たのか。
そして宗次郎が言っていた、『あの時』や『助けてくれなかった』とはどういう意味なのか。
まるで自分には無関係としか思えない事が、新一にはどうしても気に掛かる。
「…………やっぱり、ほっとけ無いよなあ……。でもミギーにはこいつの事、何て説明しよう…………」
疲れた身体をソファーに沈めながらも、新一の気はしばらく休まりそうに無い。
自分と同年代に見えるこの青年が、何故ああも冷徹に人を殺そうと出来たのか。
そして宗次郎が言っていた、『あの時』や『助けてくれなかった』とはどういう意味なのか。
まるで自分には無関係としか思えない事が、新一にはどうしても気に掛かる。
「…………やっぱり、ほっとけ無いよなあ……。でもミギーにはこいつの事、何て説明しよう…………」
疲れた身体をソファーに沈めながらも、新一の気はしばらく休まりそうに無い。
【一日目深夜/B-1 ホテルのロビー】
【泉新一@寄生獣(漫画)】
[装備]イングラムM10(残弾0)@バトルロワイアル(漫画)
[支給品]支給品一式×2(水のみ1人分)、未確認(0~2)、拡声器(現実)、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)
イングラムM10の弾装×1@バトルロワイアル(漫画)
[状態]疲労(中)
[思考・行動]
1.とりあえず休みたい。
2.宗次郎を監視。起きれば事情を聞く。
3.生き残る。
※ミギーは後数時間は完全な睡眠状態にあります。
【泉新一@寄生獣(漫画)】
[装備]イングラムM10(残弾0)@バトルロワイアル(漫画)
[支給品]支給品一式×2(水のみ1人分)、未確認(0~2)、拡声器(現実)、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)
イングラムM10の弾装×1@バトルロワイアル(漫画)
[状態]疲労(中)
[思考・行動]
1.とりあえず休みたい。
2.宗次郎を監視。起きれば事情を聞く。
3.生き残る。
※ミギーは後数時間は完全な睡眠状態にあります。
【瀬田宗次郎@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]なし
[支給品]なし
[状態]気絶、全身打撲
[思考・行動]
1.気絶中に付き思考停止。
2.新一にイライラ。
3.弱肉強食に乗っ取り参加者を殺す。志々雄に関しては保留。
[装備]なし
[支給品]なし
[状態]気絶、全身打撲
[思考・行動]
1.気絶中に付き思考停止。
2.新一にイライラ。
3.弱肉強食に乗っ取り参加者を殺す。志々雄に関しては保留。
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