トリオ TS-120/TS-130シリーズで電波を出そうの会

Day27 - 28MHz 100W化改造とファイナルの話 (2)

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ts-120s

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「FILTER UNIT」を触ることになる。


英語サービスマニュアルと回路図を総合すると、FILTER UNITのALC周りは多分こんな感じ。
  • ALC電圧(3.5-21MHz帯) - CMカップラーでサンプリングした進行波を整流し、電圧を引っ張ってきて、VR3をかましQ3に入力される。Q3で増幅してALC電圧を作っている。
  • ALC電圧(28MHz帯) Q2は、そのQ3のエミッタ抵抗をオンオフするスイッチ。28MHz帯だけQ3に制御電圧が入り、Q2エミッタ電圧を調整している。つまりQ2を動作させALC電圧を50W出力相当に落としている。
  • Q3で吐かれたALC電圧は「IF UNIT」に行き、IFアンプ(3SK74)のゲインを落とすという制御となっている。
  • サービスマニュアルには、ALCによる出力調整の記載があり、FILTER UNITのVR3で14MHz帯を95Wを調整した後、28MHz帯をVR2で75Wに合わせなさいとある。

従い、オールバンド100W化を一発で達成できるジャンパー・ダイオードなどはない。
「周辺部品を外し28MHzでもQ3を働かせないよう改造する」か、「VR2でなるべく出力を上げる」かのどちらかとなるだろう。

余談だが、CMカップラの部分、不自然に「ダイオードと抵抗」が直列にかまされているのは、トンデモ負荷をつないだときのファイナル保護用らしい。*1

VR2上げによる28MHz 100Wを試みた。

100Wまではいかないまでも、~85Wぐらいは出力が出ることを確認した。
しかしそもそも家主は28MHzにQRVしないので、実用的意味がなく、元の50Wに戻しておいた。



結論から申し上げると、28MHz 100W化は「おすすめしない」。

VR2を回して出力を上げれば、海外モデル相当にはなるだろう。それでも75Wである。

TS-120Sの米国市場向けflyerを掲載している方を見つけた。

http://www.wb4hfn.com/KENWOOD/SALES-FLYERS/TS-120S-FLYER.pdf
Flyerには
"200watts PEP (160watts DC) input on 80-15 meters, 160watts PEP (140watts DC) input on 10 meters. LSB, USB, and CW."
と記載がある。
つまり海外向けモデルも28MHz 100Wではなかったようなのだ。おそらく80Wぐらいが定格なのだろう。

海外向け製品の場合、意図的に10mだけデチューンしたとも思えない。
実情は、12V駆動オールソリッドステート機の回路技術や実装技術が、従来の真空管ファイナルに比べるとまだこなれていなくて、10mは下の方のバンドよりやや低めの出力しか出なかったのかもしれない。

ファイナルに使われたデバイス:東芝製2SC2290の話。

TS-120S/TS-130Sの終段石である東芝2SC2290は、ハイパワー用途としては初期世代の、「SSB用高周波電力増幅トランジスタ」である。
アマチュア無線機としては、70年代末ごろから上市された12V駆動ソリッドステート100W機に使われていた。他にこの石が使われてた機種は、トリオ(ケンウッド)ではTS-430Sぐらいだ。八重洲ではFT-107やFT-707あたり。

この2SC2290、スペック(Pc 175W, Po 60W)からして、プッシュプルで100Wを吐くには全く余力がない石である。データシートを観た感じでは、IMDもよくない。

120に話を戻すと、2SC2290ppファイナルであるTS-120Sで、調子に乗ってパワーを絞り出そうとしようものなら、リニアリティ不足の奇音SSBを全国放送して周囲にドン引きされた挙句、虎の子のファイナルを飛ばすことにもなりかねない。



というわけで、おだやかに使いましょう。

そんなこともあり、ゲインを上げムリに絞りだすような使いかたはしないほうがいいと思います。

いまさらTS-120Sを100W連続で力いっぱい使おうとする方もいないとは思う。
とはいえ石は相応に経年劣化しているだろうし、放熱グリースの固化などによって放熱効果は落ちている可能性が高い。ファイナルまわりはいったんばらしてオーバーホールし、かつ軽く使ってやるのがいいのではないかな?

余談:TS-120Sのオールバンド50W化(移動局仕様)

日本語取説に記載がある通り、FILTER UNITのP.D.端子*2をジャンパーすれば、TS-120Sの50W化はできます。


これはFILTER UNIT回路図における、PDという不自然なジャンパーに相当する。
つまりバンド情報入力にかかわらず常時Q2を動作させることで、28MHz相当のALC電圧が出るようになる模様。

じつのところ、御老体な120Sは、50W化し軽くつかってあげればよいのではと思っている。
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注釈

*1 発売当時、TS-120SのALCをいじって(VR3)出力をガンガンに上げるバカ改造が流行り、トリオのサービスに「ファイナル飛ばした!」としこたま持ち込まれたため、途中のロットから加えられた・・・という話を昔どこかで聞いた。

*2 パワーダウン端子のことらしいです