トリオ TS-120/TS-130シリーズで電波を出そうの会

Day28 - 受信系オプションを加える (3)

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ts-120s

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そもそもTS-120Sは、夜のローバンドで使えないリグである。

フルサイズダイポールクラスのアンテナをつなぎ、TS-120Sで夜の40mや80mを受信してみると、バンド内は「怪信号だらけ」になる。
しかも一部はAMをSSBで受信したような不審な信号。
それ以降の世代の無線機で聴くとそうはならないので、完全に120の受信部のせいである。

主な原因は、フロントエンドのハムバンド用バンドパスフィルタが甘々、加えてダイナミックレンジが狭いこと。

ローバンドでは夜になると、ハムバンド上下の周波数帯で強力に入感する短波放送が、バンド内の信号と一緒に受信機に飛び込んでくる。

ただでさえ性能的に弱っちい当時のRFアンプ~初段ミキサ*1が飽和し、歪みまくって加算・減算されたあらぬ信号をバンド内に出現させることになる。

TS-120Sのサービスマニュアルには、RF UNITの送受信兼用BPF特性の記載がある。


見ての通り、BPF特性は「500kHzのバンドフルカバー」だ。
7MHz帯の特性は16.08±0.25MHzに調整せよとある。IF 8.83MHzなのでパスバンドは実質7.25±0.25MHz。

真空管終段機と違って、無調整のトランジスタ終段機には受信機にプリセレクタが備わっていない。これでは放送波やらバンド内の強力な信号やら、初段のミキサーに目一杯飛び込んでくることだろう。

ハムフェア2015のJAIAプレゼンでは

JVCケンウッドの無線機開発の神様・鳥井氏が、「受信機のダイナミックレンジ」についてやさしく解説していた。
夜のローバンドをTS-120Sで受信する際に起こることは、そこに登場する「コンテスト中、TS-520Xで運用していたら変な信号が聞こえた!」と似たような状況だ。


きっとコリンズタイプ・スーパーヘテロダインのTS-520シリーズほどは悪くはないだろう。とはいえ上記の通り、初段BPFがブロードバンド、しかも感度アゲアゲなシングルコンバージョン・スーパーヘテロダインであるTS-120シリーズも、大概だ。*2

受信機に大改造を加えずにこれを防ぐには、「受信機に急峻なBPFを入れ、受信周波数前後の信号を削ってやる」か、ないしは「受信機に飛び込む信号を全体に落とすべく、ATTを入れてやる」が定石だ。


Day25で作った受信アクセサリBOXで遊ぶ。

https://w.atwiki.jp/ts-120s/pages/35.html
前置きが長くてすまない。
さて、ようやくこの話に戻ってきました。

「定本・トロイダルコア活用百科」に掲載されている7MHz用2ポールバンドパスフィルタ(以下BPF)を作成し、先日作った受信アクセサリBOXにつないでみた。
回路・定数は同書p433のほぼそのままなので、ここに掲載はしない。

ちょうどいいテストの日。

2024 CQ WW DX SSBコンテストの週末、晩の7MHz帯でテストしてみた。
アンテナはフルサイズのダイポールをつないだ。

よく同調したアンテナへは、ただでさえ40mバンドの上下で放送波など突入してくるというのに、その夜は世界最大級のメジャーコンテストだけあって、バンド内にも国内外の超強力な信号が居並ぶ。受信機にとってかなり過酷な条件の夜だろう。

アクセサリBOXに上記BPFをつなぎこみ、受信時にオンオフさせてみた。

BPF挿入効果が確認できた。


7168kHzでは、S9+の強力な「ゴー」信号が聞こえっぱなし。マスキングされ、オンフレの信号はなにも了解できない。
しかし「Through→BPF ON→Through→BPF ON」と切り替えると、「ゴー」がほぼ消えCQを出す「C21某局」の信号が浮いてくるのがわかるだろう。

夜の無線機(謎)としても使えそうだ。

ダイナミックレンジ的にダメダメだったTS-120Sも、外部にBPFを加えてやることで夜の実用性(謎)アップだ。

今更この無線機でWW DXに参戦する方もそうおるまい。
しかしまあ、夜の三半ラグチューぐらいには十分使えたりするんじゃないかな?
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注釈

*1 70年代末時点のデバイス性能・回路技術だから仕方ないが

*2 ネタレベルの評価だけど、なぜかTS-120Sの受信性能評価はされてて、実際TS-520とドべのデッドヒート状態である。 https://www.w1vd.com/BAdynamicrange.pdf