概要
戦闘に至るまでの背景
▲692年11月における勢力図
アル国を継いだ
ザグルスの暴政は、日増しに増加していった。
この時
アル国は新造艦隊「
ルッダリザ艦隊」を建造中であったにも関わらず、首都の城を改築する為に膨大な金を消費し、国庫が底をつくと民衆に更なる重税をかけ、歴代国主の陵墓を荒らしてその財宝にすら手を出した。
これに忠臣
エリィンが真正面から諫言するが、その場で
ザグルスに殺害された。
なお、この時合流地点に向かって行軍を進める
シャリアル国軍は、エクレナ山地に差し掛かったが、濃霧によって足止めを受けてしまう。
このままでは
バルド国軍との合流予定日に遅れると考えた
メスローは、麓の村に火をつけて見通しをよくさせた。
国主として、というより人としてもはや常軌を逸した行動ではあるが、生まれた時から権力者であった
メスローには、自らの領土の民の苦しみなど目に留まらなかった。
両軍の戦力
戦闘経緯
レニィラの策を見破ったとはいえ、状況が不利なことは何も変わっていなかった。
連合軍は二倍以上の兵力をもって高地を奪っていた為、
ベルザフィリス国軍は、
ルーディアの指揮の元、一か八かの勝負に出た。
誰もが
ベルザフィリス国軍は慎重になり、守りを固めると思ったこの状況下において、
ベルザフィリス国軍が連合軍に対して夜襲を仕掛けたのである。
まずは
ヴィルガス部隊が一直線にニィロゥ山の
ボルゾック本陣に突撃。
これを
デイル部隊が妨害するが、
ヴィルガスの突撃によって崩壊、さすがの
ヴィルガスも、短時間で敵陣を突破することは難しかったが、
デイルを挑発して自分に挑ませると一太刀で討ち取り、敵軍を一時的に混乱させる。
しかし、所詮は一部隊の特攻、冷静になった連合軍が三方から
ヴィルガスを包囲しようとするが、そこまで計算の上で突撃した
ヴィルガスは、
ボルゾック本陣に目もくれずそのまま北東方向へと駆け抜けていく。
ヴィルガスを包囲するため、一瞬とはいえボルス山地に隙を見せた連合軍、そこに間髪をいれず
ザガ部隊が現れ、
ボルス山の陣地を奪う。
陣を奪われたことで焦った
シャリアル国の部隊が、山岳の陣を奪い返そうと攻めあがるが、二重に伏せていた
ガイヴェルド部隊によって挟撃されて
ケーズ部隊が壊滅する。
しかも、全軍の目が
ボルス山に向かった隙に、ニィロゥ山では、駆け抜けたと思っていた
ヴィルガス部隊がそのまま反転、再突撃を仕掛けてくる。
この突撃を食い止めるべく、
ガズドが勝負を挑むが、
ヴィルガスはこれを難なく討ち取り、かつて
ゼノスとも互角に渡り合ったその武勇がまったく衰えていない事を証明させた。
ベルザフィリス国軍の、緻密に計算され連動した動きに完全に浮き足立った連合軍本陣は、部隊を集結させるべく一旦後退する。
その瞬間、再び伏兵となっていた
ザガ部隊が姿を現し、今度はニィロゥ山を占拠する。
実際は少数の部隊であり、攻撃されればひとたまりもないが、山頂の旗を塗り替えた事実は連合軍の将兵に心理的衝撃を与えた。
なお、後に
ザガは「まるで空き巣泥棒だった」とこの戦いを振り返ったという。
ところが11月26日、
ベルザフィリス国軍は、せっかく奪ったニィロゥ山、ボルス山地の軍勢を全て退かせて、
エィディス平原に全軍を集結させる。
苦労して奪った敵陣を簡単に放棄した事に、連合軍は
ベルザフィリス国軍の罠を警戒して、陣の奪還は行わなかった。
更に翌日の27日、
ベルザフィリス国は、利害で手を結んだ
バルド国、
シャリアル国の間に信頼関係など存在しないことから、両国の離間にとりかかった。
既に山地を巡っての戦いに敗れた事から、
メスロー、
ボルゾックは互いに責任を擦り付け合い、本陣をそれぞれ別々の場所に配備した。
そんな情勢で、
ルーディアから
ボルゾックへの書状を携えた密偵が送られるが、これが
シャリアル国軍の網にかかって囚われる。
発見された書状は、特別かわったことのない季節の挨拶文であったが、わざわざ交戦相手にこの様な書状を送る不自然さから、何らかの合図ではないかと
メスローは勘ぐり始める。
同時刻、
バルド国軍にも
ルーディアから
メスロー宛の書状が発見されていた。
バルド国軍師
デスレーダは、これを
ルーディアの離間の策と看破するものの、
メスローを信じきれない部分もあり、
シャリアル国が突如裏切っても対処できる様に軍勢の布陣を移動させた。
この移動が逆に
メスローに不信感を抱かせ、結局二国は疑心暗鬼の渦に飲み込まれていった。
もはや互いに連携をとれず、それどころかいつ相手が背後を襲ってくるか不安になった二国に、
ベルザフィリス国軍は真正面から突撃を仕掛ける。
数では未だ連合軍が倍の兵力を誇っていたが、だからこそこの無謀ともとれる正面からの突撃に、
バルド国も
シャリアル国も、「相手国がこのタイミングで裏切るのでは?そうなれば
ベルザフィリス国と挟撃される」という疑問も生じ、いつお互いが後背を襲ってくるのかと警戒する。
デスレーダや
ケリスの様な冷静な軍師もいたが、もともと優柔不断で用心深い
ボルゾックと、人を裏切ることに躊躇がないからこそ、自身も裏切られるのではと疑心暗鬼に陥った
メスローを説得するには至らなかった。
その結果、兵力の差を生かすことができずに
ベルザフィリス国の猛攻撃を受け、連合軍は撤退していく。
ルーディアは、この戦いでは完全勝利をおさめたものの、元来の兵力差は覆せるものでもなく、撤退する両国の軍勢を追撃するほどの余力はなかった。
戦いの結末
この戦いは防衛戦だったこともあり、追撃のできない
ベルザフィリス国軍が得るものは少なかった。
だが、倍以上の連合軍を完膚なきまでに叩いた
ルーディアの勇名は、
独眼竜という異名と共に大陸中に鳴り響き、これ以後の対外関係に大きな影響を与えることとなる。
なお、エィディスの戦いを終えて帰還する最中、盗賊団がメード村を襲っているという報告を受けた
ルーディアは、
ヴィルガスを派遣して盗賊団の撃退を命じる。
しかし、彼が目にしたのはメード村の農民
ラゴベザスと
デイロードの二人が、鬼神の如き戦いを見せて盗賊団を撃退している姿であった。
二人は
ルーディアの説得により、そのまま
ベルザフィリス国の将軍として仕える事となり、やがて
五舞将として
ベルザフィリス国の中心を担う将へと育っていく。
最終更新:2024年07月21日 19:31