概要

グルファ城の戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ696年10月、ロードレア国軍とロッド国軍の間に起きた戦いである。


戦闘に至るまでの背景


▲694年2月における勢力図

ラディアの仇を討つべく、ロッド国への進軍を計画していたロードレア国だが、ロー・レアルス国、シャリアル国、リューグ国との攻防が激化したこともあり、出陣は先送りになっていた。

ヴェリアが危険人物と目を付けていたベルザウスガザ刺殺事件で封じ込め、ロー・レアルス国との国境をシルヴァスに任せることで、ようやくロッド国への進軍準備に取り掛かるロードレア軍。
この時、アリガルバイアラスが、いまだに本気でラディアの敵討ちを考えているのに対して、ヴェリアアレスは冷静であった。
シャリアル国やアル国は、ベルザフィリス国を相手にしているため、これらの国が後背にまで手を回す可能性は低く、ロッド国を討つには今が好機であった。
いわば軍師たちの冷静な判断と、猛将たちの熱い感情が、同じ目標で一致していたのだ。

ロッド国との国境最前線基地となっていたグルファ城には、きたるべき決戦のため、ロードレア四天王の一人アリガルが先発して派遣され、守備を固めていた。
四天王ラディア、そしてレイディックの妹シルフィーナの死から、アリガルロッド国へ対する怒りは激しく、彼は守備だけではなく、グルファ城付近に陣を張っていたロッド国の先発部隊を次々と撃破し、周辺の小城まで占拠する。

アリガルの猛攻に耐え切れず、ロッド国の部隊から降伏の使者がやってくるが、アリガルはこれを受け入れず使者を追い返す。
本来アリガルは猪武者ではあるものの、人情家で情けに熱く、相手が降参すればそれを承諾する男であった。
その彼をもってしても、ロッド国への怒りは抑えられなかったのである。

ロッド国残存部隊は軍勢を後退させるが、そこで本国からシーヴァスギザイアの本隊が到着する。

ギザイアには、自分の後継者と認める人材が何人かいたが、その一人がシーヴァスである。
彼は、弟子の試験を兼ねて自らは後方に陣を張り、シーヴァスアリガル討伐の全権を委ねた。


両軍の戦力

攻撃側 守備側

ロッド国軍
軍勢
ロードレア国軍
総兵力9600 兵力 総兵力6200
ギザイア 総指揮 アリガル
軍師
主要参戦者

ギザイア

シーヴァス

ロミ

ペスト

フリージア

アリガル

ロザグ

ミルナス




戦闘経緯


ロッド国の陣を悉く平らげたアリガルだが、ギザイアシーヴァスの後続部隊接近の情報を知ると、一旦グルファ城へと後退した。

8月11日、シーヴァス部隊が出陣し、グルファ城を包囲する。
シーヴァスは智謀で現在の地位を手に入れた自信から、アリガルの様な猪武者は挑発すればすぐ野戦に打って出るだろうと最初からなめていた。
しかし、アリガルは挑発に乗ることもなく、城から一向に打って出てこようとしない。
彼は、出陣前にアレスから状況に応じて封を切る様にと渡された何枚かの封筒をもっていた。
その中の一通に、「敵地に深入りし、包囲された時は決して相手の挑発に乗らない事」と書かれていた為、それを忠実に守っていたのだ。
ギザイアに大口を叩いた手前、籠城したまま打って出てこない戦況に、シーヴァスは焦っていた。


8月17日、ようやく挑発に乗ったアリガルが城外に布陣する。
歓喜したシーヴァスは、アリガル部隊を完全に包囲する陣を敷いた。
自分の想像通りアリガルは猪武者、何の考えもなく挑発によって出陣してきたと信じるシーヴァスは、五部隊にわけた軍勢をもってアリガル部隊を徐々に包囲していく。

だが、これもまたアレスアリガルに授けた策のうちであった。
アリガルは、自分の部隊も相手に合わせて五部隊にわけると、包囲しているシーヴァスの両翼に少数部隊を派遣、包囲することに拘ったシーヴァス部隊は、これを包み込もうと陣を広げていく。
アリガルの別働隊は最初からこの両翼の機能を停止させるためであり、薄くなった敵陣をアリガル本隊が一気に突撃する。


自らの策が、力押ししかできないと侮っていた相手によってやぶられたシーヴァス
その怒りは並大抵のものではなかった。
流れ矢を受けながら自ら剣を振るい戦うが、アリガルによってついに陣を崩され撤退していく。

殿軍として戦場に残ったペストの犠牲により、かろうじて後方へ下がったシーヴァスは、まずギザイアに何故見ているだけで援軍を出さなかった、アリガルが野戦に出た時点でギザイアも軍勢を動かせば、例え包囲網が崩壊しても数で押し切ることが出来たはずと食って掛かった。
ギザイアは、最初からシーヴァスが自分の後継者に相応しいかの「試験」をしていたに過ぎなかったため、このシーヴァスの怒りを軽く受け流すと、彼を後方へ置き、次は自らがアリガル討伐に踏み出した。


アリガルの死

8月23日、ギザイアは、アリガルとの戦いに兵馬を使わず、まず矢文を打ちかけた。
矢文は二枚かさなったまま、外壁守備隊長ロザグの元に届いた。
一枚はありきたりな「グルファ城は包囲している、降伏せよ」であり、もう一枚はロザグ個人宛の「内通すれば将来の出世を約束する」というものであった。
ロザグは小心な将であった為、この自分宛の文からいらぬ疑いをかけられることを恐れ、降伏勧告の文だけをアリガルに提出したが、不審な態度から他の将に疑われ、この矢文を発見されてしまう。

アリガルは、ロザグが裏切る程の度量がないことを承知していた為、あえてロザグに内応したふりをしてギザイアに返事を出す様に仕向けた。
ヴェリアレザベリアスの戦いで使った策を、アリガルは応用したのである。

こうしてロザグは、ギザイアに内応したふりをして連絡を取り合う。
26日の夜、今度はロザグ経由でミルナス宛にギザイアからの文が届く。
「外壁守備隊長ロザグは既に内応を約束している、8月28日の夜、外から総攻撃を仕掛ける、そこでロザグミルナスが同時に内側から城内を混乱させれば勝利は間違いない」という内容であった。

ミルナスという将は、一年前の国境小競り合いで、ギザイアに戦場で見捨てられ、以後その器量をアリガルに買われて、ロードレア国の将となり、周辺の道案内を務めた男である。
ロッド国の将だったという事でギザイアは彼に内応話を持ちかけていた。
アリガルは、ロザグ同様、ミルナスにも内応したふりをしてギザイアを信じ込ませる様に命じ、戦場でギザイアに見捨てられた私怨をもつミルナスもこれに応じた。

だが、その日の夜、ミルナスアリガルの寝室に忍び込むと、寝込みを襲いアリガルを刺殺し、その足で城外に出る。
既に内応の芝居に取り掛かっていた諸将は、ミルナスの脱出も、連絡を取り合う芝居と誰も疑わなかった。

このミルナスこそが、シーヴァスと並ぶもう一人のギザイアの後継者候補であった。
ヴェリアが埋伏将軍イルを使いベルザウスを陥れたのと同様に、ギザイアミルナスロードレアとの国境に一年前から伏せていた。
そして、シーヴァスアリガルに敗れ、ミルナスは任務を果たしてアリガルを討った。
彼らは、ロードレア国と戦いながら、ギザイアの後継者という座を狙って、味方同士でも水面下の戦いを続けていた。

翌日、グルファ城シーヴァス部隊の総攻撃を受けて落城。
シーヴァスは、アリガルに敗れた怒りから、城兵を悉く討ち取り、捕虜を残酷に処刑した。
だが、その姿はミルナスに敗北した者の八つ当たりとしかギザイアの目には映る事はなかった。

なお、先述したアレスの書状の中に、「謀略戦だけは決して仕掛けないように」と書かれた一通があったという。


戦いの結末

ラディアに続いて、アリガルまでも奪われたレイディック
彼の怒りは頂点に達し、自ら精鋭を率いてのロッド国進軍を決意、戦いは第2次グルファ城の戦いへとなだれ込むこととなる。


最終更新:2024年08月08日 21:51