概要
戦闘に至るまでの背景
▲692年8月における勢力図
戦闘に至るまでの背景
両軍の戦力
前哨戦
謀略戦
ヴェリアは次に、弁舌に優れた
レイアス将軍を呼ぶと、書状を持たせて
カルディスの元へ派遣する。
その書状は
ロゥズからの書状という形で、決戦時における反乱の打ち合わせについてだった。
一度はこれを偽書状と見破った
カルディスだが、
レイアスの命を賭けた説得によって心が傾き始め、更にその瞬間を狙った絶妙なタイミングで、もう1通の書状が
カルディスの元に届く。
それは、
レイディックから降伏を促した書状であり、これに怒り狂った
カルディスは、
レイアスの説得を鵜呑みにする。
こうして虚虚実実の謀略戦が続く8月21日、もはや用済みとなった
ロゥズに、
ヴェリアは最後の仕上げを仕掛ける。
帰参を証明するため、最前線を偵察する様に
ヴェリアに伝えられた
ロゥズは、
ロー・レアルス国から共につれて来た兵を率いて最前線へ送られる。
しかし、
ヴェリアに命じられた場所に哨戒中の猛将
ゼノスが現れ、彼に見つかった
ロゥズは、瞬く間に討たれる。
ロー・レアルス国からつれて来た兵を同士討ちさせ、裏切り者
ロゥズを処断し、また
カルディスに、
ロードレア国軍はうかつな行動をしているという印象を与える
ヴェリアの策であった。
こうして水面下の謀略戦から、決戦の8月22日を迎えようとしていた。
戦闘経緯 1日目
レザベリアス平原を舞台に配置された両軍。
ヴェリアは、
アレスにムゥルの森に火を付ける様に指示する。
ロー・レアルス国軍が火を避けて
レザベリアス平原に移動したところを待ち伏せする為であるが、それは見せかけであり、
カルディスがこちらの意図を読むことを見据え、真の目的は更に次の段階にあった。
ヴェリアは、謀略による前哨戦の段階から、とにかく
カルディスに「自分は相手の策をことごとく見破っている」と思わせ、
カルディスが自分こそ戦場の主導権を握っていると思わせた形で戦いを進めていく様に仕向けていた。
見破られることを前提にしながら、その罠が簡単すぎても疑念を招くため、
カルディスの器を測った上で絶妙のさじ加減の策を
ヴェリアは見事にやり遂げていた。
8月22日、
アレスが望む風がなかなか吹かず、予定より遅れながらも、火攻め部隊がムゥルの森に火をつける。
この炎が
ロー・レアルス国軍の後方を襲うが、
カルディスは瞬時にして待ち伏せを見抜き、
ゼノス部隊に逆に突撃を命じた。
この突撃で、待ち伏せ部隊を「演じていた」
アリガル部隊が予定通り演技の後退、これに呼応して
ロードレア国軍が全軍守備を固める。
必要以上の深追いを避けた
ゼノスだが、初戦の戦果としては十分であり、
カルディスも全軍を押し上げ、
ロードレア国軍は逆に徐々に後退し、ローザメナス山地へと布陣していく。
戦闘経緯 2日目
互いの布陣は大きくその配置を変えていた。
一言で言うならば
ロードレア国軍はローザメナス山地まで押し込まれ、
ロー・レアルス国軍は追い詰めたという形となる。
しかし、地形は
ロードレア国軍がはるかに優勢な上、全ては
ヴェリアの仕掛けた罠であったことに、勝ちに乗っていた
ロー・レアルス国軍はまだ気づいていない。
決戦2日目の朝、
カルディスは
ゾイに先陣を任せると、彼を
ロードレア本陣に、
ゼノス部隊を
ラディア部隊へと出陣させた。
この戦いでは、
ゼノスが自ら名乗り出て、
ラディアに一騎討ちを要求する。
2ヶ月前の戦いで敗れた遺恨を晴らすための独断行動だが、この時代、名乗りを上げての一騎討ちは合戦の華だったこともあり、特に珍しい光景ではなかった。
ゼノスの猛攻には、さすがの
ラディアも支えきれず、勝負はあったかと思われたが、これを
バイアラスが救出。
ゼノスは自らの武勇に絶対の自信を持ち、二人同時に相手をすると宣言し、実際に互角に戦ってみせた。
この壮絶な戦いを合図に各地で交戦が開始され、一騎討ちを終えそれぞれの軍勢指揮に戻った
ラディア、
バイアラスは、今度は軍勢をもって
ゼノスと正面から激突する。
しばらく戦った後、
ヴェリアの策により、
ラディア、
バイアラス部隊は後退し、追撃してきた
ゼノスを山道に誘い込み、仕掛けておいた石の下敷きにして打ち破る。
ラディアは、一騎打ちを繰り広げた相手に対して「軍師の策でなければこんな戦いは絶対したくなかった」とつぶやいたという。
しかし、
ゼノス本人は不死身とも見紛う生命力でこの罠を掻い潜り、
バイアラスがこれを食い止める為踏みとどまり、両軍は泥沼の戦いへともつれ込む。
(
ゼノスはこの戦いで一時生死不明となり、
メファイザスの政変後に再び姿を現すこととなる)
ロードレア国軍本陣に一気に迫る
ゾイだが、ここまで守りに徹していた
ロードレア国軍が突如として反撃、
ゾイ部隊を完全に包囲して壊滅させる。
この戦いで、建国時代から苦楽を共にした
ゾイを失った
カルディスは、彼にしては珍しく取り乱し、戦死の報告を信じようとしなかった。
しかし、
ロードレア国軍が更に後退したと聞かされると、今度は復讐の表情を見せ、
ゾイの弔いも兼ねた追撃を命じる。
この時、
ゾイ部隊所属の副将の一人だった
ドゥバが部隊を引き継ぐこととなるが、それまで無名だった彼は、この後
ゾイを凌ぐ名将として名をあげていくこととなる。
ロードレア国軍は徐々に押し込まれていくが、それらはすべて敵軍をローザメナス山に誘い込む芝居でもあった。
ただし、
ロー・レアルス国軍の猛攻は凄まじく、芝居といえないほど追い詰められ、
エルジレア、
ボゥルは戦死を遂げている。
戦闘経緯 6日目
これまでの動から、一転して静の戦いが始まる。
山頂に陣を構えた
ロードレア国軍は、完全に守りの体勢をとり、
カルディスも容易に手が出せなくなった。
そんな中、山頂から出陣の合図である鬨の声が上がり、これに対して
ロー・レアルス国軍はすぐさま迎撃の準備をとる。
しかし、一向に
ロードレア国軍は動かず、鬨の声の発生位置を探ろうにも、山々に木霊した声はどこから発せられているのか見当もつかず、結局
ロー・レアルス国軍は姿の見えない敵を警戒したまま時間だけが過ぎる。
こんなことが三日三晩続き、山頂から見下ろされた
ロー・レアルス国軍は徐々に疲労を蓄積していった。
将兵の疲れに決戦を焦った
カルディスは、自ら敵陣を視察するが、山の地形を見事に利用した布陣から正面からの攻撃を断念すると、ローザメナス山脈の名前の由来ともなっているローザメナス山に目をつけた。
8月27日、篝火、キャンプ、旗を残したまま、全軍を3ルートにわけ、闇夜に乗じて密かに移動した
カルディスだが、見渡しのいい高地に到着した
カルディスは、そこで信じられないものを見せられる事となる。
大木を使って作られた「墓」であり、そこには
カルディスの名が刻まれていた。
この時、すべては自分をここにおびき寄せる策だったと
カルディスは悟ったが、次の瞬間には草むらから次々と姿を現す伏兵が、一斉に火矢を放った。
8月27日深夜、
カルディスはこの地で完全包囲され、炎の中で壮絶な戦死を遂げる。
レザベリアスの戦いの特徴は、両軍あわせて数十万という大合戦だったにも関わらず、
ヴェリアは袋の中の石からたった一つの玉を掴むかの様に、
カルディス本隊だけを最初からターゲットとしていた。
ロー・レアルス国は
カルディス個人の強烈な個性によって保たれた部分がある。
彼さえ討てば、あとは
ロー・レアルス国は内紛を起こし弱体するというのが
ヴェリアの狙いであった。
巨大な国を正面から討つより、分裂させて各個撃破するという、次の段階を見据えた
ヴェリアの策であったが、この策だけはもう一人の「先を見据えた男」
メファイザスによって実現を妨げられる事となる。
戦いの結末
次に
ロー・レアルス国の新たなる国主探しが始まる。
カルディスの叔父
ブウゲイドが候補として上がるが、叔父とはいっても養子に出されていた彼は
カルディスと直接の面識もなく、最近では
カルディスの叔父という立場すら捏造だったのではないかと言われている。
ともかく、彼を国主として担ぎ出した一派がいた事は確かであり、その中心人物が
ゾルドと
リィドであったが、
ブウゲイドを招いたまさにその日、突如城に潜入した兵士達によって彼らは討ち取られる。
そこに姿を現したのは、
カルディスの軍師を務めた
メファイザスであった。
彼は色めき立つ他の将を制して、自らが
ロー・レアルス国を継ぐと宣言する。
ブウゲイドを平民として一応の礼節をもって軟禁、既に多くの将に根回しがされていた
メファイザスのクーデターは思いのほか簡単に成功することとなる。
翌年の1月3日には、レザベリアスの戦いで戦死したと思われていた
ゼノスが奇跡の生還を果たし、
メファイザスの元へ姿を現す。
カルディス信望者でもあった彼は、
メファイザスの裏切りともとれるこの行為を許せるはずもなく、早速彼に面談する。
だが、その問いを待つより早く
メファイザスは、彼に逆に問いかけた。
「
カルディスの望みは一族の繁栄か、それとも乱世の終結か、一族の繁栄を目指すなら血族である
ブウゲイドを立てて私を討つがよい。乱世の終結ならば私と共に
カルディスの遺志を継ぐがよい……」と。
そう言われると、
ゼノスは熟慮の末、
メファイザスの旗下に入るしかなかった。
まさに
ゼノスの直情的かつ人情家な性格を熟慮した上での
メファイザスの説得術であった。
そもそも乱世では血統より実力が重視されているため、
メファイザスが国主となることを望む将が多かった事も事実であった。
最終更新:2024年07月20日 03:07