概要
派閥争い
ルフィが絶大な影響力を持つと知ると、彼女に取り入ろうとする者が次々と現れ、それらは
ルフィ派という巨大な派閥となった。
そのほとんどが、これといった能力を持たず、単に彼女の機嫌をとることだけに長けた者たちであったが、それは逆に後先を考えず、どんな無茶なことでもするという危険な派閥の誕生でもあった。
特に、事あるごとに
ルフィの行為を糾弾していた
シルヴァスや
バイアラスたち武官との衝突は激しく、時には暗殺者が彼らの元に送られることすらあった。
当時の
ルフィの蛮行を残すエピソードが残っている。
彼女は生粋のサディストであったが、
リディと
ルフィ付きの女官であった
シルに対して、特に冷たく当たっていた。
ある記録によると、宴会の席で
シルが運んできた飲み物をこぼしたことがあるが、
ルフィは笑顔で一切咎めなかった。
ところが、その席から
ヴェリアが退室した途端、突如
シルにグラスを投げつけ、呆然としている彼女に早くそのグラスを拾う様に命令する。
シルが言われたとおりにすると、今度は「私に床に落ちたグラスで飲み物を飲めというのか」と、叱りつけ折檻したという。
そういった光景を日ごろから見ていたこともあり、
バイアラスは、
リディに加えて、本来なら将軍でもない
シルも自分たちの派閥に誘ったという。
一月の別離酒
706年1月1日、例年通り新年の宴が行われていたが、この時
ヴェリアは、これまでの乱れた生活が祟って宴の最中体調を崩し、
ルフィに寄り添われて席を立つ。
その姿を見た
バイアラスは一つの決意を胸に秘め、1月4日、自宅に
シルヴァス、
グローリヴァス、
リディ、
ザロといった個人的に友誼のある有力将軍を招いた。
表向きは新年の宴であったが、これが後に「
一月の別離酒」と呼ばれる事件となる。
これまで、彼らの出国の原因は
ヴェリアの堕落にあったと言われていたが、近年の研究では
ヴェリアの智謀はいまだ衰えておらず、むしろ
ルフィが作り出した派閥争いによって自分たちの発言力が日に日になくなっていたことへの焦燥が最大の原因ともいわれている。
ベルザフィリス国にて
その
ルーディアが、
バイアラスと
リディを突如自宅に招く。
降伏を認められ、
ベルザフィリス国の将となっていた彼らだが、何しろ彼らほど名の通った人材の突然の帰順に、「降伏は偽りであり、すべては
ヴェリアの奇策では?」と警戒する者は多く、未だ猜疑の目で見られる日々を送っていた。
互いの存在だけが唯一の支えとなっていた
バイアラスと
リディは、この招きに応じて
ルーディアの元へと赴く。
僅かな供と山奥の館に静かに暮らしていた
ルーディアは、二人を手料理もてなすと、昔話に花を添えた。
直接関わったことはなくとも、同じ時代を生きた者同士、
バルディゴス討伐連合軍から
ディースの戦いまで、それぞれ違う立場で、その戦いをどう見ていたのか、話は盛り上がっていた。
ルーディアの影響力はいまだ絶大であり、「
ルーディアが認めたのならば」と、諸将も、次々と
バイアラス達への警戒を解いていく。
なお、この時
ルーディアは、もし
ガイヴェルドに将来皇帝となるべき器があれば彼を補佐してほしい、しかし権力という波に飲み込まれる様な器なら、息子を殺してほしいと二人に告げたというが、これは後世の創作説もある。
それぞれの理由
彼らが亡命を決意した理由は、以下の様に推測されている。
- バイアラス
- 前述の通り、ラディアの仇であるロッド国と戦う為であるが、近年の研究ではルフィが作り出した派閥争いによって自分たちの発言力が日に日になくなっていたことへの焦燥ともいわれている。
- リディ
- この頃、ルフィの矛先は、リディにも向けられていた。彼女の無表情さがルフィを苛立たせ、私用といえる不条理な命令を何度もされていた。彼女自身はそれに耐え続けていたが、バイアラスが見かねて何度か守っていた為、ルフィはバイアラスも敵視、このままでは彼に危害が及ぶと考えたリディは、バイアラスの直属隠密になることで、「貴方が国を出るのなら、無条件で自分もついていく」という状況を作り出した。
- グローリヴァス
- ザロ
- バイアラスの直属の部下を長い間務めていたこともあり、いつしか彼女も国ではなく、バイアラス個人を忠誠の対象としていた。
- シルヴァス
- ルフィが国内で作りつつあった派閥と、シルヴァス達武官派は、水面下で激しい派閥争いを行っていた。ルフィによる武官派の追い落としは日に日に増し、彼自身の立場も苦しくなっていた。
なお、
ミリフォンも
シルヴァスと友誼があったことから、この亡命に誘われたが、この国を見捨ててはいけないと断ったという。
忠臣の亡命
この時代の
ロンドーナ大陸東部における特徴として、「元々同じ国だったものが分裂している」という考えがある。
その為「国」を名乗っておきながら、「文化も歴史も違う他国」ではなく、「同じ国の別の区」という考えがこの大陸の人々の心の底に根付いていた。
バルドの国替えがその一例で、国替えといいながら移動したのは
ボルゾックを代表とする上の人間だけであり、民衆はそのまま動くことがなく、民からすれば、あくまでも「行政官が入れ替わった」という感覚に近かったという。
また、
サリーアや
フィリスといった国主が簡単に国を託しているのも、彼らにとっては他国に併合されるというより、同じ国内における「都市合併」に近い感覚があった為である。
ベルザフィリス国は、
ルディック帝国の区ではなかったものの、この思想は大陸そのものに根付いていた為、彼らの亡命は、他の時代、他の大陸でいう「亡命」とは、若干意味合いが異なる。
だが、
バイアラス達が後世において人気が出てしまったため、
ヴェリアと
ルフィを必要以上に悪人として描き、彼らの出奔を「仕方がなかった美談」にすり替えたに過ぎず、実際は単なる裏切り行為だったのではないか、という指摘も僅かながら存在する。
関連項目
最終更新:2024年08月09日 20:01