概要

ディースの戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ701年2月、ロードレア国と、ベルザフィリス国軍の間に起きた戦いである。
両国が、はじめて真正面から激突した戦いである。


戦闘に至るまでの背景


▲700年6月における勢力図

ヴェリアロードレアの新たなる国主となってからも、戦いはそれまでと変わることなく激しく続いていた。
ロードレア国、ロッド国、フェルスデッド国、ロー・レアルス国、ベルザフィリス国、時には結び、時には戦う五国の乱戦は各地で一進一退の攻防を続け、701年を迎えていた。

シャリアル国が滅亡し、ロッド国も大きな脅威とはならなくなった為、それまで極力直接対決を避けていたベルザフィリス国とロードレア国が、ついに国境を挟んで直接対峙することとなる。

ルーディア包囲網が敷かれていた時代には、ルーディアロードレア国は、共通の敵の前に協力体制を結んでいたが、それも既に過去のものとなり、両国の対決は必至と思われていた。
だが、ルーディアロードレア国と戦う事に積極的ではなかった。
ディルセアガイヴェルドの説得にも首を縦に振らず、決断を後延ばしにするルーディアに対して、ガイヴェルドに「弱気になった」と指摘する。
ルーディアは、既に決戦に向かって高揚している将兵の士気も考え、結局出陣を決意する。
ここに、ロードレア国とベルザフィリス国が始めて互いの意志をもって戦場で合間見えることとなる。


両軍の戦力

攻撃側 守備側

ベルザフィリス国軍
軍勢
ロードレア国軍
総兵力68000 兵力 総兵力64000
ルーディア 総指揮 ヴェリア
ディルセア 軍師 アレス
主要参戦者

ルーディア

ディルセア

レニィラ

ガイヴェルド

ラゴベザス

ヴェリア

アレス

バイアラス

ナッシュ

グローリヴァス

デイロード

ヴィルガス

シレン

レガード

リッシンバー

レイバード

リューズ

ザロ

ファリア


戦闘経緯


2月6日、国境に迫るベルザフィリス国軍を迎撃するため、ディース高原に布陣したロードレア国軍であったが、その総大将ヴェリアには大きな悩みがあった。
領土の拡大により、ロードレア国は、この時唯一他四国全てと国境を接している国であった。
ベルザフィリス国の他にもロッド国、ロー・レアルス国、フェルスデッド国の全ての方面に、指揮官として信頼できる将を派遣しなければならなくなった為、この戦いに動員できた将が彼のかつての構想より小粒となっていたのである。

ヴェリアは、この陣営で五舞将と互角に戦えるのはアレスバイアラスグローリヴァスくらいしかいない事を自覚した上で作戦を立てなければなたなかった。
おそらく、この時ヴェリアの脳裏には、ラディアアリガルに先陣を任せ、そして総大将にレイディックを据えるという夢想の布陣が交錯していたであろう。

対照的に、人材に関しては年々増強されているベルザフィリス国は、ディルセアの采配によって、デイロードシレンレガードといった、猪突に傾きがちな将を最前線で自由に動かし、ラゴベザスヴィルガスといった他者のカバーができる将を第二陣に控えさせ、戦局に応じて投入するという万全の態勢をとることができた。


2月8日、両軍は障害物のない見晴らしのよいディース高原にて激突。
ヴェリアの予測通り、五舞将と互角に戦える将はロードレア軍にはもはや限られていた。
デイロードガイヴェルドの突撃により、レイバードナッシュ部隊はおされ、ロードレア軍は大きく後退、それでも戦線を維持できたのは、バイアラスグローリヴァス部隊が、シレンラゴベザスと互角以上に奮戦し、別の局面ではベルザフィリス国軍を押していた為である。

ヴィルガスレニィラが、おされつつある東戦線への援軍に向かい、ディルセアリッシンバーが逆に攻勢が続く西戦線を更に押し上げるため前進した一瞬の隙を見逃さず、普段冷静なアレスが、この時誰も想像しない行動にでた。


アレスは、自ら騎馬に跨ると、部隊を率いて最前線へと突撃を仕掛けたのである。
この予期せぬ突撃は、ガイヴェルドデイロード部隊の間を突破し、急いで引き返そうとしたディルセア部隊、レニィラ部隊を突破し、ついにルーディア本陣へと辿り着く。

知略に生きるアレスが、何故このような蛮勇ともとれる行動に走ったのか。
それは、彼女自身もこの決戦において勝ち目が少ないということが見えていたため、来るべき敗北の結末を覆すには、誰もが想像しない行動をとり、そこに活路を見出すしかないと考えた為である。

アレスの鬼神に憑かれた突撃によりルーディア本陣の旗は倒れ、激しい乱戦の末ルーディア自身までもが流れ矢で負傷する。
だが、一時の混乱から立ち直った本陣に加え、レニィラディルセア部隊がアレス部隊を包囲し、今度はアレス自身が左肩を斬られる。
もはやこれ以上の突撃は不可能と悟ったアレスの副将である親衛白牙団が、自らの命を犠牲にして彼女を後退させた。
この混乱に乗じて両軍共に一旦陣を退き、再び対峙することとなる。

しかし、2月10日、突如ヴェリアが陣を引き払って本国へ撤退。
殿軍にバイアラスを配備、追撃に出ようとするベルザフィリス国軍を牽制し、本隊の後退を成功させた。
その撤退の素早さと正確さにベルザフィリス国軍師ディルセアは、罠の危険性を考慮してそれ以上の追撃は命じなかった。
そして、ディルセア自身も、もしラディアアリガルが存命していれば、この地を放棄したのは自分たちであっただろうと洩らしたという。

なおラゴベザスは、自分とヴィルガスを同時に相手にしながら一歩も引かなかったバイアラスの敵ながら見事な戦いぶりに惚れ、帰還中の彼に使者を送って酒を渡し、これを受け取ったバイアラスも、毒酒を警戒する副官のザロに対し「戦場で槍を交わすことでわかることもある」と語り、笑って飲み干したという逸話がある。


戦いの結末

ディースの戦いは、ベルザフィリス国軍が一応の勝利を飾ったが、ロードレア国軍は決して崩壊したわけではなく、戦線を維持したままであり、国境こそ譲ったが、更に守りやすい地にて再布陣して待ち構えているという状況であり、ベルザフィリス国は、勝利の実感を一切もてなかった。

そして、アレス部隊の特攻により負傷したルーディア
この一本の流れ矢が、ベルザフィリス国の運命を大きく揺さぶろうとしていた。

ルーディアは、帰国した直後の2月24日に、突如国主の座から引退することを発表。
その地位を養子のガイヴェルドへ譲ると宣言した。
周囲の者は当然反対したが、ルーディアの決意は固かった。
彼女は元々好戦的な人物ではなかったが、先王ディアルの遺志を継ぐ為にあえて自らを修羅と化して戦っていた。
強靭な精神力で支えてきたその仮初の姿も、一本の矢によって簡単に断ち切られ、自らの精神力の限界を感じたのである。
ルーディアの説得を諦めた諸将は、彼女の決意を尊重し、2月26日、ベルザフィリス国国主はガイヴェルドへと受け継がれた。

だが、ベルザフィリス国ではなく、ルーディア個人にほれ込み、独眼竜だからこそ忠誠を誓ったと豪語する五舞将デイロードシレン
彼らは、昨日まで同格であったガイヴェルドに頭を下げるつもりはないと、この後継に真っ向から反対し、3月1日に2人は挙兵する。

ここに五舞将は真っ二つに分かれ、一枚岩を誇っていたベルザフィリス国で始めての大規模な内乱となる「血の16日間」がはじまった。


最終更新:2024年07月28日 14:31