&font(#6495ED){登録日}:2011/07/07(木) 01:33:36 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 6 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){ 知 現 明 架 す こ. れ 実 日 空 べ の. な か 起 の て 物. い も る も 語. の は. で . あ . る . が . } #center(){ 手 す わ 押 そ し. を べ れ し れ か. つ て ら と を し. な が め . い よ . で う . ・ ! . ・ . ・ . } 「&font(#ff0000){世界大戦争}」とは、1961年10月8日に公開された東宝の特撮映画である。 昭和36年芸術賞受賞作品。 #openclose(show=▽目次){ #contents() } *【概要】 本作は冷戦による第三次世界大戦、そして核戦争の危機が身近に迫っているとされた時期の作品である。 翌年にはあの[[キューバ危機]]が起こっている。まさに緊張はピークであった。 本作のプロデューサーは東宝特撮の田中氏と、若大将シリーズや文芸路線の藤本氏が共同プロデュースした数少ない作品である。 また、製作の森岩雄氏が熱心に関わっており、予算も通常の4倍の社を挙げた作品であった。 監督には戦争大作やサラリーマン物で高い実績を上げた松林宗恵氏、特撮は[[円谷英二]]氏、音楽は団伊玖磨氏と戦記物の黄金トリオで製作された。 本作は上記の非常に緊張感のある時期に製作され、無駄な刺激を与えないように資本主義陣営は連合国、社会主義陣営は同盟国とされた。 そして、10数回に渡って行われた改稿により、無常感を込めたとされるストーリーが完成した。 また、架空の戦争を扱い、世界が破滅に向かう筋書きでありながら、主人公はあくまで市民であり、戦後勝ち取った幸せ、そしてこれから得るはずの幸せが無常に焼き尽くされるラストには胸が打たれるだろう。 現在の目で見れば、今は身近に感じにくい核戦争の恐怖等、思い入れしにくいかもしれない。 しかし、当時トラウマを量産した映画であり、当時の世界情勢を知れば製作者の思いを知ることが出来るだろう。 過去の映画評論(大特撮)で「善人だらけの薄いドラマ」と書かれる等、登場人物は善性で占められており(連邦、同盟のミサイル基地幹部も戦争を欲していない)、誰が戦争を欲して物語のような展開になったのか分かり辛い部分もあるが、物語中茂吉が朝鮮半島等各地の紛争ぼっ発を投資のチャンスと情報収集している様が繰り返し描かれており、戦争は決して国家権力者のエゴで起こるのではなく、人間一人一人の「戦争で利益を得てやろう」というほんの小さな欲望の集合が雪だるま式に戦争の道へと突き進む事を示唆している。考えようによっては、権力者・軍人のエゴが戦争を引き起こすという展開より冷徹とも言えるだろう。 *【あらすじ】 戦後16年、復興する東京で田村茂吉は記者クラブの運転手をしながら株で小金を稼ぎ、年頃の娘の結婚に悩む一般市民だった。 しかし、そんな世の中で世界では同盟国と連合国による核戦争=第三次世界大戦が迫っていた。 そして、朝鮮半島にて小型の核兵器を使った小規模な紛争が勃発する。また、各国で核ミサイルの誤射や爆発事故が起きそうになる。 しかし、各国の良識ある人間の努力等で危機は一旦回避される。 その頃田村家では娘の冴子と下宿で船乗りの高野が婚約し、ささやかな幸せを得ようとしていた。 しかし、ベーリング海で再度核を使用した武力衝突が発生、世界は大戦へと突入していく。 また、田村家では高野が出航で家を離れることになり、冴子と高野が初めて結ばれる。 そして、東京にも核ミサイルが落ちる確率が高まり東京中がパニックに陥る中、アマチュア無線を習得したての冴子は高野と最後の交信をする。 田村家では最後の晩餐が行われ、そしてその夜、東京に核ミサイルが発射された… *【特撮場面】 本作では円谷特撮も大いに腕を振るい、各地の紛争描写や、最後の東京や世界の都市が破壊れるシーンは素晴らしい。 核ミサイルで爆発する東京は逆さにセットを作り、舞い上がる瓦礫を演出した。また、高圧ボンベで吹き飛ばされる都市を描き、これらのシーンは多数の東宝、円谷プロ作品で使われた。 核兵器で焼き尽くされた東京は『[[空の大怪獣 ラドン>空の大怪獣ラドン]]』でも使われた溶鉱炉の溶鉄を使って撮影された。 また、ニューヨークの都市は粉々に爆発させるため、ウエハースでミニチュアを作成している。 [[ネズミ]]に食べられたりして大変だったらしい。 **◆本作のシーンが使われた主な作品 『[[惑星大戦争]]』 『[[ウルトラセブン]]』最終話「史上最大の侵略」 『[[ゴジラVSデストロイア]]』 *【登場人物】 ◆田中茂吉(演:フランキー堺) 外国人記者クラブの運転手を勤めており、株で小金稼ぎをしている。一家を守り、日々の幸せを守るべく暮らしている。 「母ちゃんには別荘を建ててやるんだ!冴子には凄い婚礼をさせてやるんだ!春江はスチュワーデスにするんだ!一郎は大学に行かせてやるんだ!俺の行けなかった大学に…………」 ◆お由(演:乙羽信子) 茂吉の妻。気が利く良い奥さんだが、体調を崩している。 茂吉との間には長女の冴子、長男の一郎、次女の春江がいる。 ◆高野(演:宝田明) 笠置丸の船員で田中家で下宿している。冴子とは恋仲である。最後は焼き尽くされた東京に戻ることを決める。 「サエコ・サエコ・コウフクダッタネ」 ◆冴子(演:星由里子) 田中家の長女。高野と恋仲で作中で両親に結婚を認められ結ばれるが、高野は出航してしまい、そのまま……… 「タカノサン・アリガトウ」 ◆江原(演:笠智衆) 笠置丸の料理長で高野とは仲がよい。病気療養していたが回復し復帰するが…… 保母をしている娘がいる。 演じた笠智衆はよく小津安二郎作品に出ていた名優である。 ◆桃井総理(演:山村聡) 日本の総理。病身に鞭打って大戦回避の外交に尽力し、世界の良心を最期まで信じるが…… ◆ワトキンス(演:ジェリー伊藤) 日本駐在の記者で茂吉の自動車をよく利用していた。朝鮮の紛争を取材に行ったまま出番が終了。 ◆笠置丸船長(演:東野英治郎) 笠置丸の船長で、船が出航したため核兵器から逃れたが、最後は船員の意志を汲んで東京へ戻る。 *【DVD】 オーコメは監督の松林氏。松林氏はすでに亡くなられたため、貴重な証言である。 外国人の登場人物のほとんどが素人なため、演出は苦労をしていたらしい。 逆に主演のフランキー堺氏の演技を誉めていた他、星由里子さんを美しいと連呼していた。 尚、松林氏は戦記物中心なため、怪獣やSF系のファンに馴染みが薄いかもしれないが、元海軍人で僧侶で戦記物の監督で、『帰ってきたウルトラマン』の監督もした凄い方である。 *【余談】 本家Wikiによると、絵コンテにはうしおそうじ氏、小松崎茂氏が担当したらしい。 作中の絵本に『二匹の子ヤギ』が出てくる。二匹で渡ると落ちる橋を、お互いに譲り合って解決する話しで、監督の平和論であるらしい。 没案として各国が相手を恐れるあまり互いに先制攻撃に走ってしまい、また茂吉も金にがめつい小悪党な面がある市民という、人物描写が正反対な案もあった。 国内版予告編は現存しておらず、DVDには海外版予告編が収録されている。 ちなみに本作の世界の末路であるが[[多分…>汚物は消毒だ~!!]] 核戦争を防止したい方は追記・修正をお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,7) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 全盛期の東宝特撮の中ではこの作品がいちばん好き。エリート層、一般層それぞれの目線から見た世界滅亡の様子が描かれているが、特に主人公一家の世界滅亡が目前に迫ったときのやり取りが本当に切なくて泣ける。 -- 名無しさん (2013-11-18 01:03:36) - ↑同感。見たことはないけど、Wikiとか某サイトでのあらすじを読んだだけで目頭が熱くなる(つ_; -- 名無しさん (2014-01-05 14:59:02) - 嗚呼、この物語が今、現実のものと化そうとしている……。 -- 名無しさん (2016-01-29 21:37:26) - 「花の街」や「ぞうさん」の作曲者、團伊玖磨が音楽を担当しているのを知って驚愕した。テーマ曲が素晴らしい。内容も言わずもがな。 -- 名無しさん (2016-07-02 08:14:24) - この映画の恐ろしい所は、平和な日常が突然理不尽な戦火に踏みにじられる所ではなく、ほんの小さな「戦争を利用してやろう」という心が戦争という巨大な暴力に繋がるという所。田村は確かに戦争の被害者ではあるが、加害者でもある -- 名無しさん (2022-05-03 06:03:08) #comment #areaedit(end) }