F-111

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F-111 - (2014/09/06 (土) 17:15:26) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2014/09/6(土)
更新日:2024/02/04 Sun 08:34:25
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とある米国の土豚(アードバーク)

F-111とは、ジェネラル・ダイナミクス社が開発した戦闘爆撃機の事である。前にも後にもF-111という名前はこれしか出てこない。分類によってはセンチュリーシリーズに数えられることもある。

開発までの経緯

当時、アメリカでは空軍と海軍が共通の戦闘機を使えば軍事費を抑えられるのではという意見が飛び交っていた。この機体が開発された60年代は冷戦たけなわの時代であり陸軍・海軍・空軍は対ソ戦に向けた装備の開発・戦力化を行っていた。例によって2014年8月現在他国に輸出されていないF-106やF-102といった迎撃戦闘機やB-52やB-47といった戦略爆撃機がそうである。が、さすがに大量の戦力を揃えるのは容易ではなくなり、いつしか海軍と空軍で共通化した機体を使えば共食いが出来て予算も減らせるのはという意見が出た。で、これに食いついたのは当時のアメリカの国防長官であったロバート・マクナマラである。どんな感じかと言えば・・・・。

マクナマラ「なんとか海軍と空軍が使える機体を作るべきだ。是非とも作ろう。これ程楽なことはない。」
空軍関係者「空軍機なんだから滑走路から飛べる機体にするんだぞ。あと、爆弾を大量に積めて複座で長距離侵攻が可能な奴。」
海軍関係者「なにを言うか、空軍に巨大空母の建造案持って行かれたというのに空軍の意見など無視してしまえ。この機体は海軍機なんだから空母から飛べるようにするんだぞ。」
マクナマラ「」

当然、海と空では飛行機も大きく仕様が異なる。当然ながらまず空軍の意見が採用され大容量の爆弾層と無数のハードポイントを備えた機体が登場した。更に、空軍機がいきなり空母に降り立つ展開はまず無かろうということで空軍機に後から空母へ降り立つ機能が付与されることになる。もちろんそのときは空対艦ミサイルを装備してである。原機初飛行は1964年と東京オリンピック開幕の年であった。が、後述するが空軍仕様だけが実用化され海軍仕様は少数の試験のみで終わった。

特徴

この機体は当時としては革新的なシステムを数多く導入しており、ある意味現代まで続く軍用機の基礎を築いた大御所であろう。どんなシステムが導入されたかと言えば次の通り。

可変翼
本機最大の特徴であり、初めての可動式の翼である。これ以前にXF10Fジャガーといった機体が開発されているがこちらは先駆者の宿命か性能上操縦性が翼の向きを変えただけでおかしくなるという問題が浮き彫りになったので少数の機体が完成したのみで没にされてしまった。が、F-111にあたって可変翼を装備する際に翼を動かす際にコントロール増強システム(CAS)を追加して、当時は最先端だったコンピュータ制御によって操縦特性を補正する手法が実現したため無事に搭載できた。なお、可変翼の機構はその後様々な国で実用化され、ソ連のMiG-23 Su-17 Su-24 フランスのミラージュGなどの機体に使われている。日本では可変翼が超時空要塞マクロスに登場するロボットに採用されているがこちらはフィクションの存在である。

爆弾層
これは海軍が要求したものであり、実際に巨大な胴体の中に爆弾や空対艦ミサイルを搭載できる。このタイプの兵器庫を採用したのはこれが初めて。ただ、海軍機は諸事情で爆弾を搭載して水平爆撃とか長射程から撃ちっぱなしで回避するとかそういうことはしなかったが、このシステムは効果的とされ様々な後継機に使われることになる

モジュール式脱出装置
ある意味本機が最初で最後では無かろうか。なぜかパラシュートから颯爽と飛び降りればいいものをこんな型式の射出座席を採用してしまった。並列複座であるF-111は非常時にはコクピットもろとも発射され2人とも無事に生存できるという固定概念から生まれた物であるが、並列複座の機体はごく少数しか採用されなかっただけでなく維持費がややかかるということでこの機体のみになった。

地形追随レーダー
空軍の要求で搭載されたシステムである。爆撃機以外で採用されたのはこれが最初。このシステムは地形に沿って飛行するために必須であり空間失調症への有効な対策だった。

海軍型の顛末

さて、海軍と空軍の双方の意見を繋げて作られたF-111は・・・・残念ながら海軍仕様機は実用化されなかった。いざ、アメリカの空母に着陸させたところ重量過大とのこと。なぜそんな理由でキャンセルしたかは不明。なぜならこの当時の空母ではA-3やA-5、試験的な要素のC-130と艦上戦闘機より重い大型機の離着艦が当たり前のように行われていたからである。別に重いからと言って拒絶するのは不愉快ではないだろうか。一番有力的な説と言えば、F-8やF-4と比較して空戦能力に大きな課題を残すという日本でいえばガルーダのような問題が挙げられたとも言われている。この問題が後々F-14を生み出すとは想像もつかなかっただろう

実戦での成果はというと

実戦は意外にも早く訪れた。ベトナム戦争である。北ベトナム軍は当時この様な戦闘爆撃機を装備していなかったのでアメリカ側に有利な展開をもたらした。が、ある問題が起きた。

「翼が折れました。」

最大の売りであるはずの可変翼がなぜか動作不良を起こして折れてしまうと言う事態が発生した。そのため、せっかく出向いてきたF-111は一時期飛行停止処分を受けることに。が、当時は風雲急を告げる事態だったためすぐに部品の回収が行われ前線復帰が実現した。再投入された時期は北爆再開時であり、その際は4,000回を越える出撃を行うも、損失は7機と非常に高い運用成績を示した。なぜこんな機体があったのに勝てなかったのかと言えば・・・・当時の国情だ。

湾岸戦争で、はA-10やF-16よりも爆弾をイラク軍に目一杯投下して凱歌をあげているが、地形追随レーダーを使った飛行が災いしてか空中給油機と会合することが困難であり作戦に支障を来したと言う。ところが、あまりの信頼性の高さに重宝されておりイラク軍が作ったシェルターを搭載しているベイブウェイで粉々に吹き飛ばすなど荒技もやってのけている。当時、同系列でありパクリではないかと言われたSu-24との対決が予想されたが、イラク空軍では当機で出撃して戦えるパイロットが一組しかいなかったため全機イランに逃亡しており戦うことはなかった。どれぐらい使えたかと言えば次の言葉が残されている。

「破壊したいものがある?F-111に任せろ。」
「F-16やF/A-18を飛ばすな!塵が舞ってF-111の離陸に支障が出るじゃないか!!」

登場作品

が、ここまで実力行使した機体であるのにも関わらずアクション映画はおろかアニメですらほとんど扱われていない。ベトナム戦争から湾岸戦争と同じく戦いに参加した機体ではF-14 F-8 F-4 SH-3といった機体が次々と映画やアニメに出ているのにF-111はある意味影が薄い。日本的に言えばあの赤座あかり並みといえばどれぐらい存在感がないかおわかりだろう。有名なのは「007オクトパシー」だが、実戦と言うよりは基地に配備されていたのが偶々写っただけ。「ファイヤーフォックス」ではやはり基地にあったのが偶々写るだけという戦闘シーンが皆無である。日本のアニメでは出すべき作品が山ほどあるのに出てこないという不遇。


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