0系新幹線電車

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0系新幹線電車 - (2017/08/26 (土) 00:13:29) のソース

&font(#6495ED){登録日}:2017/08/25 Fri 21:22:01
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0系新幹線電車とは、旧日本国有鉄道が開発・製造し運用した新幹線電車である。
ある一定以降の世代の方、もしくはそれ以外の方でも「新幹線」と聞いたら[[500系>500系新幹線電車]]、100系と並び最初に思い浮かぶ車両かも知れない。
何しろ海外でも「Shinkansen」といえばこの車両が上がるくらいである。

*概要
旧国鉄が[[東海道新幹線]]用に開発・製造した新幹線電車。
量産型としては史上初の高速鉄道専用車両として1964年より製造が開始され、1986年までに述べ3216両が製造された。
但し後年では「新しい0系で古い0系を置き換える」ということが行われていたため、全ての編成が顔を合わせたということはない。

航空機に似ていると言われる、丸みのある前面は「世界初の200km/h超の営業運転」と合わせて新幹線のイメージを形作った。
まあ似ているも何も、前面のデザインは旧日本軍の爆撃機「銀河」などが参考になっているわけだが。

*仕様
基本仕様

編成 4/6/8/12/16両(全電動車方式)
車体 普通鋼製
電気方式 AC25000V 60Hz
制御方式 低圧タップ制御
主電動機 MT200型 直流直巻電動機 定格出力185kW / MT200B 直流直巻電動機 定格出力225kW
制動装置 発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ
保安装置 ATC-1
駆動方式 WN駆動
歯車比 1:2.17
起動加速度 1.0km/h/s→1.2km/h/s
最高運転速度 210km/h→220km/h
定格速度 167km/h
平坦線均衡速度 約235km/h
速度種別 A96(10パーミル上り勾配における均衡速度196km/h)
減速度 2.84km/h/s(常用) / 3.9km/h/s(非常)

「世界初の200km/h超で営業運転を行う鉄道及び列車」として内外に衝撃を与えた0系だが、
&bold(){実は未経験の技術は一切使われていない。}
設計にあたっては、「未経験の新技術は使わず、実証済みのもののみを組み合わせる」「将来に改良の余地を残す」という2つのコンセプトで設計が行われている。
例えば動力系に関しては&bold(){、実は[[(旧)営団地下鉄丸ノ内線>東京メトロ丸ノ内線]]で使用された500形のものを拡大発展させたものとも言え}(高速直流電動機とWN駆動の組み合わせ)、
電気系統に関しても交流電気機関車のノウハウが用いられている。
車体すら(さすがに軽量化は行われているとはいえ)普通鋼製である。
&bold(){冒険など全くせずに「当時手元にある技術」だけを組み合わせ、世界最速の電車を作ってしまったのだ。}
もっと言ってしまえば「200km/h超」という数字も、実は当時の国鉄からすればそこまで無茶な数値ではなかった。
新幹線のためのデータ取りで行われた高速試験では、東海道線上で小田急3000形ロマンスカーが145km/hを叩き出し、その後に「こだま形」こと[[151系>151系特急形電車]]が163km/hを記録。そしてその後に旧型国電界の最終兵器・クモヤ93形が175km/hを記録している。
え、全然200km/hに到達していない?…いや、これは1067mm軌間の「東海道本線」での記録、&bold(){これを1435mm軌間に"拡大"すれば、200~250km/hの「営業運転」は余裕を持って可能な数値であったのだ。}

さて、ここからが本題、つまり仕様に関して。
車体は全長25m級・幅3380mmとかなりの大型車体である。
客室の床面高さも1300mmと高めになっているが、これは見晴らしなどを狙ったわけではなく、高速安定性のある大型の台車を採用したことや、直径910mmという大型の車輪を採用((一般的な在来線電車の車輪は860mm))したことに起因している。
車体のデザインは空力性能を重視して設計されており、先述の通り爆撃機「銀河」や[[DC-8]]旅客機などが参考とされている。
運転台は高い位置に設けられており、高速走行時の視界確保を行っている。また窓は防弾ガラスを使用し、バードストライク対策も行われている。
「鼻先」には救援用の連結器が収められているが、当初はこの中に蛍光灯も仕込まれており暗闇で発光するようになっていた。このため「光前頭部」の呼び名で呼ばれている。

先頭車の床下には障害物をはねのけるためのスカートが装着されている。6枚の鋼板で構成されており、ちょっとした岩くらいならこれで弾き飛ばせる。
またこのスカートは障害物対策以外にも、ダウンフォースにより高速走行時に車体を路面に押し付ける作用もある。
運転台の上にあるL字型のアンテナは「静電アンテナ」という、架線に電気が流れているかどうかを検知するためのセンサーである。

座席は普通車は当初は(乗車時間が少ないだろうと割り切ったため)転換式クロスシートを採用していたが、アコモデーションの向上に伴いリクライニングシートに変更された。ちなみに座席交換による発生品の転換式シートはJR東海だとキハ82系なんかに転用されている。
一方のグリーン車は当初から回転式リクライニングシート。

制御装置は「低圧タップ方式」という、あまり聞き慣れないかも知れないシステムを採用している。
これは要するに、トランスの出力側の巻線を切り替えることで必要な電圧を得るというシステムである。
抵抗制御のように余分な電気エネルギーを「削り取る」のではなく、いわば「最初から必要なエネルギーしか取り入れない」というシステムなので省エネルギーであり、なおかつトランスの巻線を切り替えるだけというシンプルな動作で信頼性も高い。但しその性格上、交流電化でしか使えない制御方式だが。
主電動機はMT200形。定格出力185kWの直流直巻電動機。
実はこのモーターも丸ノ内線の500形のそれの拡大発展版とも言われており(設計はどちらも[[三菱電機]])、こちらも未経験の技術は使われていない。このモーターでWN継手を介し、車輪を駆動する。
台車はミンデンドイツ式((軸箱を前後に伸ばした板バネで支える))を元としたIS式。この構造も[[東武鉄道]]などの私鉄系で(原型のミンデンドイツ式が)実証済みである。
ブレーキ装置は、200km/hから機械ブレーキだけで止まってたんじゃブレーキの消耗が残念なことになるってなわけで、高速域では発電ブレーキで減速・50km/hを切ったら機械ブレーキに切り替えという二段構え。これも既に国鉄私鉄問わず多数採用されていたシステムである。
パンタグラフは小型の下枠交差形であるPS200形を使用。
ちなみに歴代新幹線電車で最もパンタグラフの使用数が多い車両(16両編成において8台)…だが、&bold(){このパンタの多さ故風切り音やスパークなどで騒音もなかなかのものであり}、訴訟沙汰になったほどである。
このため後の新幹線電車ではパンタの使用数を減らす方向になっている。風切り音がするってことはそれだけ空気抵抗も発生しているってことでエネルギー消費も多くなっているってことだしね。

*去就
初代新幹線車両として初期車の置き換え分まで含めて延べ3200両以上が製造され、全盛期には2300両以上が在籍した0系だが、
100系以降の加速力・最高速度に優れた新型車が登場すると、特に過密ダイヤの東海道新幹線においてはダイヤ上の足かせとなっていった。
東海道新幹線においては1995年度の[[300系>300系新幹線電車]]の5、6次車の登場により、まず「ひかり」専用編成であるNH編成が全編成引退。その後は「こだま」用のYK編成が数を減らしていき、浜松工場では1997年9月をもって0系の定期検査を終了。その後は検査切れの編成から順に姿を消していった。
0系が経験した最後のダイヤ改正となった、1999年3月の改正ではついに6編成のみが残存となる。
同年の夏休み期間にはリバイバル運転として0系による「ひかり」が復活。
1999年9月18日の「こだま473号」をもって、東海道新幹線から0系が引退することとなった。

一方の山陽新幹線では(運営会社たる[[JR西日本>西日本旅客鉄道]]の財政難などもあって)暫く残っていたが、連日の高速運転などで車体の老朽化は進行していた。
当初JR西日本は「N700系の実戦投入開始まで0系を使う」と発表していたが、2007年9月にN700系の増備により「のぞみ」運用を退いた[[500系>500系新幹線電車]]を「こだま」に回し、0系に関しては2008年11月いっぱいをもって運用終了し全廃すると発表した。
同年2月27日には、当時使用されていた%%三井住友カラー%%緑基調のカラーリングから、往年の白と青に戻された。但し塗料が当時と異なるものを使用していたので、色合いはほんの少し異なっていたが。
車内放送用のチャイムも、「[[いい日旅立ち]]」からかつての東海道新幹線のチャイムに戻された。
&bold(){2008年12月14日の「ひかり340号」をもって、0系新幹線電車という車両は遂に営業運転を退いた。}

*0系が与えた影響
最初に書いたとおり、「新幹線」と聞いて真っ先に上がる車両の一つはこの0系だろう。
世界初の200km/h超の営業運転で世界に日本の復興と技術力を示し、さら&bold(){に海外の鉄道関係者には「鉄道はもっと速くできる」「速くできれば自動車や飛行機にも対抗できる」と希望を与えた。}
実際、フランスは鉄道先進国の威信をかけ、0系ひいては日本の新幹線を超えるために&bold(){超特急[[TGV]]}を作り上げているし、アメリカも日本の新幹線に刺激されて東海岸を200km/hで爆走する超特急&bold(){「メトロライナー」}を作り上げた。
ドイツも「電車方式の超特急」に触発され、&bold(){403系特急電車}を作り上げ、さらに0系の直系の子孫たる100系の二階建て車両を参考に超特急&bold(){ICE}の車体寸法を決めたとも言われている。
イタリアでも振り子特急ペンドリーノ&bold(){「ETR450形」}のデザインが、0系に影響されていると言われている。
そして鉄道発祥の地であるイギリスでは、ヨーク鉄道博物館のコレクションに0系の22-141号車が加わっている。&bold(){鉄道発祥国の博物館の展示物にも加わったのだ。}
そうでなくとも、海外でも「Shinkansen」やら「Bullet Train」と言えば、まず最初に上がる車両の一つでもあろう。
&bold(){チャド共和国に至っては自国の切手のデザインに、富士山をバックに疾走する0系を採用したことがある。}

海外だけでなく我々日本人にも大きな影響を与えている。
駅のピクトグラムで「新幹線乗り場」を表すサインといえば0系という時代は長かったし、
漫画で、アニメで、映画で、「新幹線」と言えば0系という時代も長かった。
子供文化においては絵本で出てくる「新幹線」といえばまず真っ先に0系が上がるし、
お子様ランチの皿のモチーフとしては[[ジャンボジェット>ボーイング747]]や[[スペースシャトル]]と並ぶ人気の題材。
[[屋上遊園地]]のコインライドや豆汽車のモチーフとしても大人気の形式。
[[サンリオ]]の「しんかんせん」シリーズにももちろん登場している。
ここまで人気の理由は単に「製造・運用の期間が長かったから」だけでは説明できないものもあるだろう。
今となっては愛嬌の感じられる丸みのある車体、そこから繰り出される当時世界最速の210km/hというインパクト。
車両そのものだけでなく「生活」から見れば、わずか4時間半で東京と大阪を結ぶことにより「日帰り出張」「日帰り旅行」すら当たり前としたことで、生活様式やビジネスのスタイルすら根本から変えた。

世界では鉄道斜陽論を吹き飛ばし、日本人の生活様式すら変革し、さらに我が国に於いては単なる「電車」を超え「文化」に入り込んだ0系という車両には、&bold(){「伝説」}の称号が相応しいだろう。

*特徴的な編成・車両
-YK8編成
東海道新幹線に於ける最後の0系による列車「こだま473号」を務めた編成。
-R61編成・R67編成・R68編成
山陽新幹線に於ける最後の0系。最終列車を務めたのはR61だが、同編成にもしものことがあった場合に備えR67編成が待機していた。
-H2編成
何やら過去にやらかしたようで「出る」と評判だったらしい編成。何が出るって?お察しください。
-21-5035
[[台湾新幹線>台湾高速鉄道]]の開業前に、建築限界測定のためにレーザー測定器を積み込み検測車として台湾に渡った。
-22-141
イギリス・ヨーク鉄道博物館に収蔵された編成。JR西日本からの寄贈品である。
-キハ32 3(JR四国)
…ディーゼルエンジンの音が聞こえるし最高速度も85キロだけど0系だ、いいね?アッハイ。



210km/hの衝撃を体験した人はぜひとも追記修正をお願いします。


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- 速度種別A96だったのか。電車でGO山陽新幹線をやってると、0系の加速力の貧弱さがよく分かる。どうりでフルノッチでも上り勾配で減速するわけだ…  -- 名無しさん  (2017-08-25 22:09:16)
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