ホンワカキャップ(ドラえもん)

登録日:2023/03/26 Sun 00:26:40
更新日:2023/04/20 Thu 19:38:45
所要時間:約 8 分で読めます




「ホンワカキャップ」は、漫画ドラえもんのエピソードの1つ。
小学五年生1983年11月号に掲載され、てんとう虫コミックス版には第30巻に収録されている。

【概要】

実際のところ酒に酔う、というのはどういうもので、どんな気分になるのか。周囲の大人を見て子供の時に疑問に思った、興味を持った事がある人、というのは世の中割といるのではないだろうか。この話はそんな子供の疑問に対し、ドラえもんのいつものメンバーが体を張って答えてくれるエピソードとなっている。
特に後半のスネ夫の酒乱ぶりは有名で、未読の人は一見の価値あり。抱腹絶倒のギャグにも、「酒はそんなにいい事ばかりでもない」という教訓にもなっており、F先生の隙のないストーリー構成が光る。
ただし、この項目及びこの話は「未成年の飲酒を推奨するものではありません」
繰り返すが「未成年の飲酒を推奨するものではありません」
そこは注意しておきたい所。


【原作】

ある休日のこと、のび太「嫌な世の中だなあ。」 と愚痴りながら帰宅をした。ジャイアン に切手のコレクションを巻き上げられたスネ夫から八つ当たりで暴力を振るわれたからだ。家に入ると、そんなのび太の気持ちとは裏腹なテンションの高い声が聞こえてきた。


いやあ、愉快愉快。
嫌な事はみんな忘れて楽しくやろうじゃないの。


居間には、昼間から家で友達と酒盛りをするのび助の姿があった。*1大人はいいなと羨ましがるのび太。そんなのび太にドラえもんはある道具を出した。


大人はいいよな。お酒飲んで気持ち良くなれて。
お酒飲まなくても、いい気持ちになれるよ。


出てきた道具は「ホンワカキャップ」。ジュース等のソフトドリンクの瓶にキャップを取り付けて、キャップ越しにグラスへ注ぐと、その飲み物で気持ち良く酔っぱらったような気分になれる道具だ。
試しに普通のジュースを使って一口だけのび太に飲ませてみた。すると、みるみると気分が上がったのび太は、コップを放り投げ、異様なテンションで炭坑節*2を踊り始めた。


♪月が~出た出~た、月が出~た、ヨイヨイ♪


踊り始めて間もなく、先程のテンションがウソのように覚めてしまったが、これは本当に一口しか飲まなかったから。もっと飲めばしばらくホンワカできる、とドラえもんは説明した。
これを聞いて気分が良くなったのび太はドラえもんを連れて静香と遊ぶ事にした。途中、ジャイアンに会うもののドラえもんが何とかごまかし、無事静香の家に到着。
さて、見せられたホンワカキャップに静香は興味津々。コケコーラのホームサイズが用意され、静香の部屋で3人で疑似飲み会と相成った。


いただきます。
乾杯。
ゴクゴク。


あっという間にテンションMaxになる3人。飲めや歌え、踊れや踊れ、とばかりに騒ぎ、楽しいひと時となった。しこたま飲んだのもあって、3人ともへべれけ状態のままお開きに


楽しかったわ、ヒック。
また飲もうね、ウ~イ。


ふらふらと帰途に着く二人。途中で再びジャイアンを見かけると、テンションMaxのまんまドラえもんは声をかけた。そして、完全に酔っ払いのノリで、ホンワカキャップをジャイアンに譲ってしまった


あ、ジャイアンだ。
黒い顔で暗~い顔してら、アハハ。
お~いジャイアン、いいものやるぞ!!
ホンワカキャップ?
いいから取っとけって。


直後に酔いが覚めるも時すでに遅し、高価なホンワカキャップをドラえもんはみすみす手放してしまっていたのだった。その上のび太に責任転嫁した。

さて、ホンワカキャップを入手したジャイアンは、スネ夫を家に誘って宴会する事にした。当然コーラ代はスネ夫持ち


塾へ行くところなんだよ。
俺とじゃ飲めねえってのか!?
じゃ、軽~く一杯…。
せこい事言わないでガバガバやれ!


ジャイアンの家に渋々連れてこられたスネ夫、当初は完全に嫌々な態度をとっていたものの、瞬く間に酔いが回ってテンションが上がってきた。そしてこちらも酔いが回っていい気になったジャイアンは、カラオケセットを引っ張り出して歌い出した。気持ちよく歌い散らすジャイアンを見ながら、手酌でどんどん何杯もコーラを飲み進めていくスネ夫
そして、飲み進んだスネ夫の様子が急変した。
スネ夫はフーっと息を吐いて腕まくりをすると、苦々しく吐き捨てるように言い放ったのである。


ケッ!止めろ止めろへたくそ。
今何と言った!?


いきなりの暴言に当然怒るジャイアン。しかしスネ夫は、あろうことか青筋を立てて吠えながら持っていたグラスの中のコーラをジャイアンの顔面にぶちまけた


へたくそをへたくそと言って何が悪いへたくそ!

ほれ!…つげよ。

スネ夫とは思えぬ剣幕に完全に出鼻を挫かれたジャイアンは、おとなしくコーラをスネ夫のグラスに注いだ。するとこれを皮切りに、スネ夫の要求と剣幕は更にヒートアップしていく。


おまえコーラ癖が悪いな。
そろそろ塾へ行かなくていいの?
るせえ!!もっとつげ!!
ないよ、もう。
買ってこい!!


スネ夫に空の瓶を投げつけられ、追加のコーラを買ってきたジャイアン。そんなジャイアンを激しく罵倒し続けるスネ夫。スネ夫はもはやグラスすら使わず、キャップをつけたコーラを一人でグビグビとラッパ飲み。地獄のような光景がそこにはあった。


でっかい顔しやがって!!てやんでえ!!
みんな泣かされてんだぞ。
おまえなんか町の公害だぞ!!バーロー!!


キャップの効果もあってか、スネ夫の暴走に泣き出すジャイアン。何故か女性口調でメソメソし出したジャイアンに苛立ったのか、スネ夫はジャイアンの胸倉を掴んで怒鳴り散らした。


何もそんなに…、言わなくても…。
心の中では…、みんなに悪いと…、あたしつらい!
悪いと思ったら切手返せ!!
返すわよ!!他の人の玩具も本もみーんな返すわよ!!


こうしてジャイアンは奪った物貰い物を町中回って返していくことになった。大荷物を持って町をフラフラと歩くジャイアンと、ジャイアンの尻を蹴りながら罵倒するスネ夫。


さっさと次の家へまわれ!!


返ってきた漫画とホンワカキャップを抱えたまま、ドラえもんとのび太は玄関先から二人の行く末主にスネ夫の身を案じたのであった…。


【登場したひみつ道具】

○ホンワカキャップ
飲み物の瓶の口にはめこむキャップの形をした道具。この道具を通して注がれた飲料にはホンワカ放射能なるものが含まれるようになり、これを飲むとソフトドリンク*3の類であっても酔っ払ったように気持ちよくなる事ができる。作中では瓶の口にはめて使用していたが、大きさが合えば恐らくペットボトル等でも使用できると思われる。*4アルコールが含まれている訳ではなく内臓や血管にも負荷がかからないのか、未成年でも使用が可能
覚める際は、現実のアルコールのように徐々に分解されて少しずつ酔いが覚めて落ち着いていくのではなく、一瞬で効き目が切れるように覚める。そのくせ飲んでる間の記憶はバッチリ残るので、迂闊な事をすると後が非常に大変。
因みに非常に高価な製品であるらしく、本来はアル中の治療、もしくはアルコール中毒症状の疑似体験や研究などに使用されていたりする専用器具としての扱いがメインなのかもしれない。

酒でない飲み物にアルコールのような効果をもたらす道具としては他に『ようろうおつまみ』があるが、こちらは水を本物の酒に変える道具なので未成年が使ってはいけない。


【アニメ版】

2023年現在、アニメ化されたのは大山版で1回のみ。
昭和当時と比べて、放送業界の規制が厳しくなっている影響もあってか、初期に一回作られたっきりになっている。
脂の乗った声優陣の熱演もあって楽しい話に仕上がっている。
ただし、しつこいようだがこの項目は「未成年の飲酒を推奨するものではありません」

◇大山版「ホンワカキャップ」

1984年2月24日に初放送。
おおまかな流れは概ね原作と同じ。ただし、みんなが疑似的に酔っぱらって遊んでいるシーンが少し追加され、いつもと違う5人の顔が見られる。中の人がアドリブで話していそうなネタも散見され、なかなか自由な雰囲気となっている。
  • 放射能、という言葉はやはりマズかったのか、使用されていない。
  • のび太が歌うのが炭坑節ではなく、「ドラえもん音頭」*5になっている。
  • 静香が出したコーラがコケコーラではなくEnya Cola(エンヤコーラ)になっている。名前は原作より捻りつつも、デザインはより本物に寄せた物になっている。
  • へべれけで千鳥足になった静香が呂律の回らない状態で「糸巻きの歌」を歌う。かわいい。
    まさか9年後にこの歌を歌いながら滅亡する敵が出てくるとはF先生もスタッフも思いもしなかっただろう
♪い~ろ~まきまき、い~ろ~まきまき…♪
  • 静香の家での3人のやりとりが大幅に増えており、3人そろって酔いどれオヤジさながらのしょーもない台詞を連発する様子は必見。
  • スネ夫の暴言と暴力のレパートリーが増えており、原作以上のスネ夫の壊れっぷりが見られる。ジャイアンには勿論、ジャイアンが歌っていた歌「北国の春」の歌詞にまで噛みつくさまはこちらも必見。
ケッ、何が北国の春だ!
みんなおまえに泣かされてんだぞ。おまえなんか町の公害だ生ゴミめ!!

いつものメンバーの様変わりぶりとキャストの暴走アドリブが楽しい、ドラえもんファンなら是非視聴したい回となっているが、映像ソフトがVHSのみという事もあり、残念ながら視聴する事が現在では困難になっている。


【余談】

  • アニメ化されたのは上記のように1回きりであり、今後わさドラでリメイクされる可能性も低いと思われるため、大山版のこの話はかなり貴重な存在であると言える。*6
  • スネ夫が暴走するシーンは後にバラエティ番組などでピックアップされた事があるため、このシーンだけは見たことがある人も多いかもしれない。
  • 原作では1度しか登場していない道具であるが、大山版アニメでは、1987年3月27日に放送された「真夜中のお花見」(原作の「何が何でもお花見を」に相当)でも使用されている他、1995年3月31日に放送された「春だ!一番 ドラえもん祭り」ではアニメの合間に挟まれていたお花見シーンで使用している。


こんな項目、追記修正が必要と言って何が悪いへたくそ!


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2023年04月20日 19:38

*1 手軽な娯楽が今ほどたくさん無い昭和の時代には、普通の勤め人が休日の昼から酒を飲むのはそこまで珍しくなかった

*2 盆踊り等で流れる定番の民謡の一つ

*3 作中では専らコーラが使用されていた

*4 ちなみに連載当時はペットボトルはまだ殆ど普及していなかった。

*5 同時期にアニメのEDに使用されていたもの

*6 現在では「直接アルコール摂取をしていなくても、アルコールと同様の効果があるものを未成年が摂取しそれが良い事面白い事に見える」表現は規制されやすい傾向にある