綴字法(てつじほう)
英spelling,仏orthographe,独Buchstabieren
英spelling,仏orthographe,独Buchstabieren
『言語学大辞典術語』
「ていじほう」とも読み,また「綴り字法」ともいう.アルファベットのような表音文字では,その一つ一つの字は,大まかに言って,音素を表わすだけである.しかし,文字による表現は,やはり言語を表わさなければならない.それには,語を単位として文字化していくことになるので,いちいちの音素文字の結合で語の音形を表わすことによって語を表わす必要が起こってくる.ここで重要なことは,その文字結合が,慣習的に決められることである.というのは,文字表現では,文字の一定の結合がゲシュタルトとして語の喚起に役立たなければならないからである.一つ一つの音素文字を読んでいって語を喚起するのではなく,文字の結合全体の視覚的映像が語と結びつくのである.このような慣習的な文字結合を,綴字法という.
「ていじほう」とも読み,また「綴り字法」ともいう.アルファベットのような表音文字では,その一つ一つの字は,大まかに言って,音素を表わすだけである.しかし,文字による表現は,やはり言語を表わさなければならない.それには,語を単位として文字化していくことになるので,いちいちの音素文字の結合で語の音形を表わすことによって語を表わす必要が起こってくる.ここで重要なことは,その文字結合が,慣習的に決められることである.というのは,文字表現では,文字の一定の結合がゲシュタルトとして語の喚起に役立たなければならないからである.一つ一つの音素文字を読んでいって語を喚起するのではなく,文字の結合全体の視覚的映像が語と結びつくのである.このような慣習的な文字結合を,綴字法という.
このように,綴字法はそれを造っている部分よりも,それらの結合全体が問題であるから,しばしばその部分が表音的に必ずしも合理的でなくても,綴字全体が語を表わすことが起こってくる.このことは,英語の綴字法によくみられる.たとえば,knightという綴りは,表音的にはこれが表わす音形[nayt]に即応しないが,この綴りがこの語を表わしているのである.もとより,この綴りは,それが成り立ったときにはその音形に即したものであったが,音韻変化の結果,いわゆる黙音の字(silent letter:この例ではk)も出てきた.なお,ighも文字通りに発音されず,[ay]を表音するのも音韻変化の結果である.しかし,依然としてこのような綴りが用いられているのは,表音文字にあっても,文字は表音(phonography)よりも表語(logography)をその目的とするからである.逆に,いったん綴字が固定し,その綴字が表わす語の音形とくい違った場合,伝来の音形とは違って,綴字通りの発音が生じることもある.たとえば,英語のoftenは正しくは[■fǝn]であるが,これを[■ftǝn]と発音する.このような発音を,「綴り字発音(spelling pronunciation)」という.
さらに,綴字法と発音があまりにかけはなれていくと,綴字法を発音の方に合わせて改革を行なうことが起こってくる.
日本の「仮名遣」は一種の綴字法である.