表意文字(ひょういもじ)
英ideograph, ideogram, 仏idéogramme, 独Ideograph, Begriffszeichen
英ideograph, ideogram, 仏idéogramme, 独Ideograph, Begriffszeichen
『言語学大辞典術語』
アルファベットや仮名画のような,一字一字が音を表わすだけで原則として意味を表わさない文字を表音文字(phonogram)といい,漢字のような一字一宇が意味をもっている文字を,普通,表意文字とよぶ.エジプトの聖刻文字やオリエントの楔形文字にも,そのような表意的な文字がある.おそらく,こういう表意文字は,これらの文字のもっとも原始的な要素であった.原始的な形では,表意文字ということができる.たとえば,日輪を示す円形の文字は,エジプトの文字でも漢字でもたしかに「太陽」の意味を表わしている.しかし,その文字がだんだん慣習化され,字形も本来の絵文字から離れていくと,もう表意(ideography)とはいえなくなる.たとえば,偕書の日という字は円形ではなくなって,このままではもはや「太陽」を髣髴させない.したがって,表意文字というのは正しくない.というので,最近では,表意文字の代わりに表語文字(logogram)という言葉を使うようになった.すなわち,漢字の一字一宇は,元来,中国語のそれぞれの単語を表わしたものであり,また現在でも表わしている.それがそれぞれある意味を表わすというのは,それぞれの単語の意味を表わすのであって,直接,その意味になる観念(idea)を表わすのではない.純粋な表意文字というものがあるとすれば,それはアラビア数字のごときものである.アラビア数字は,今日いかなる言語にも用いられるが,それぞれの言語の数詞を表わすというよりも,まず一般的に,数の観念を表わすところにその特徴がある.
アルファベットや仮名画のような,一字一字が音を表わすだけで原則として意味を表わさない文字を表音文字(phonogram)といい,漢字のような一字一宇が意味をもっている文字を,普通,表意文字とよぶ.エジプトの聖刻文字やオリエントの楔形文字にも,そのような表意的な文字がある.おそらく,こういう表意文字は,これらの文字のもっとも原始的な要素であった.原始的な形では,表意文字ということができる.たとえば,日輪を示す円形の文字は,エジプトの文字でも漢字でもたしかに「太陽」の意味を表わしている.しかし,その文字がだんだん慣習化され,字形も本来の絵文字から離れていくと,もう表意(ideography)とはいえなくなる.たとえば,偕書の日という字は円形ではなくなって,このままではもはや「太陽」を髣髴させない.したがって,表意文字というのは正しくない.というので,最近では,表意文字の代わりに表語文字(logogram)という言葉を使うようになった.すなわち,漢字の一字一宇は,元来,中国語のそれぞれの単語を表わしたものであり,また現在でも表わしている.それがそれぞれある意味を表わすというのは,それぞれの単語の意味を表わすのであって,直接,その意味になる観念(idea)を表わすのではない.純粋な表意文字というものがあるとすれば,それはアラビア数字のごときものである.アラビア数字は,今日いかなる言語にも用いられるが,それぞれの言語の数詞を表わすというよりも,まず一般的に,数の観念を表わすところにその特徴がある.
なお,中期ペルシア語ではアラム文字系のパフラヴィー文字(Pahlavi)を使って中期ペルシア語を表わした.たとえば,パフラヴィー文字でBRH(BRはアラム語で「息子」,Hはアラム語で「彼の」を表わす」と書いて中期ペルシア語のpus「息子」を表わした(『世界言語編(上)』「イラン語派」p.678).これは中期ペルシア語の単語を,その語の意味と同じ意味のアラム語を表わす綴りによって示すもので,これをイデオグラム(ideogram)とよんでいる.これは表意の特別の場合である.もっとも,日本で「日」と書いて上と読むのも(訓読)同じことであるが,この場合は表語文字である漢字を日本語で読むのであって,中期ペルシアの場合は,パフラヴィーのアルファベットの綴りをペルシア語に読みかえるところに違いがある