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  • 殺し抗え、人であるがために

コンペ・ロワイアル@ウィキ

殺し抗え、人であるがために

最終更新:2022年01月10日 14:47

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仕掛けられた罠は、人の心



■


「ぐごおおおおおおおッ!!!」

大気を揺らす怪獣の様な咆哮。
それが人の子供から発せられた物であるとは、直接目にしない限り信じがたいだろう。
咆哮の主はシャーロット・リンリン、未来に四皇となる怪童である。

リンリンは苛立っていた。
先程かけられた怪しげな呪文により、腹ペコで死にそうな時に見つけた走る卵の動物。
動物は好きだが腹の減っているときは別だ、何としても食いたいのに奴は思いの外すばしっこい。
こんなにもおれが腹を空かせているのに!何故食われない!!
そんな彼女の理不尽な怒りは殺意へと変わり、懐から一本の短剣を取り出す。

「さっさと…死ねぇええええええええ!!!!」

そして、投擲。
放たれた短剣は轟!!と時速五百キロは優に超える剛速球に変わる。
如何にぴーたんが速度に秀でたモンスターと言えど、敵うはずもない。
短剣が卵型の矮躯を紙の様に貫き、よろよろとよろめきながらぴーたんは沈黙した。

「ハァ…ハァ…腹…減った……手間取らせやがって……あぁ?」

怨嗟の声を漏らしながらリンリンが近づくと、ぴーたんの死骸はそこにはなく、おにぎりが一つ、そこにあった。
マムは一瞬不可解な現象に眉を顰めるが、どうでもよい事だ。
地面に落ちていたのも気にせず、鷲掴みにして豪快にかぶりつく。
味は悪くない。もちもちの米に程よい塩気と海苔の食感が心地よい。しかし…

「これじゃ足りない…もっと……食い物ォオオオオオオオ!!!!」

健啖家、という言葉も生ぬるいリンリンの胃袋がこれで黙る筈もない。
むしろ、中途半端に食事をしたことで危険性は更なる向上を見せ。
手負いの獣の様に荒い吐息、ぎょろぎょろと血走った瞳で次なる食事を探し求める。

「…こっちから……甘い匂いがするぞ……」

くん、と彼女の常人よりも何倍も優秀な嗅覚が微かな甘い匂いを察知したのは、直後の事だった。
短剣を拾い上げながら立ち上がると、誘蛾灯に誘われる蛾のようにリンリンは歩を進める。
そこには醜悪な人間に対する悪意も、マザーから教えられた善意もなく。
ただ空腹を満たそうとする獣の本能だけが、そこにあった。


■

岸辺露伴と別れてから一時間後、星野輝子と野原しんのすけは人気のない会場の散策を続けていた。
しかし露伴に出会ってからは他の参加者には出会わず、また幸運にもゴブリンの様なモンスターにも遭遇しなかったため、穏やかな凪の時間が流れていく。
今はただ、夜空に浮かぶ星だけが二人の観客だった。

「ねぇ輝子お姉さ~ん。オラ、お腹すいちゃった」
「お腹すいたの?しんちゃん」

ぐうとしんのすけの腹の虫が輝子に空腹を伝える。
時刻は深夜。しんのすけの本来の生活サイクルを考えればとうに就寝している時刻だ。
眠気は不思議とないようだが、活動している分空腹を覚えるのは無理もない話だろう。

「そうね…食べ物はカップ麺だけみたいだし…
う~ん…そうだ!ちょっと待ってねしんちゃん。確か私のカバンに……」

そう言って輝子はデイパックから筒状の箱を取り出し、しんのすけに手渡す。
手渡された筒のパッケージを見た瞬間、しんのすけの瞳が俄かに輝いた。

「おぉ~チョコビ!それも特別な時にしか食べられないロイヤルチョコビだゾ!」

茶色い筒状の箱に描かれた、王冠を冠ったピンクの怪獣のイラスト。
紛れもなく、彼が愛してやまないチョコ菓子であるチョコビ、それもリッチなロイヤルチョコビであった。

「それ、しんちゃんに全部上げる。全部食べていいよ」
「おぉ!お姉さん太もも~~!!」
「それを言うなら太っ腹、ね」
「そうとも言う~…う~ん。チョコビは何処で食べても美味しいゾ~」

軽口に苦笑しつつ、ぼりぼりとチョコビを貪るしんのすけを微笑ましく思う輝子。
人の喜びこそ、魔女っ娘である彼女にとって何より勝るエネルギー源だ。
幸せそうな笑みを浮かべて食べ続けるしんのすけを見て、彼女の自然と緩む。
殺し合いを行っているとは思えないほど、穏やかな時間が流れていた。
しかし、その穏やかな時間こそ、災厄を呼び込む呼び込むとなる事は、今の二人には予想できなかった。







「お菓子……寄越セ……!!!」


しんのすけがチョコビの箱を開けてから十数分後。
二人の前に大きな影が差す。
街角から現れ、口を利くピンク色の小山。
数メートルはある小山の頂上に頭が乗っていることを確認してようやく、それが少女であることを輝子としんのすけは認識することができた。

「おぉッ!でっか~い!!」
「いいから…お菓子…ヨコセ…!」

「し…しんちゃん?そのお菓子、あの子に分けてあげて?」

能天気な感想を漏らすしんのすけを他所に、輝子は尋常ではない雰囲気を醸し出す少女に全身が総毛立つのを感じた。
間違いなく、お菓子を渡さなければ最悪の事態が待っている。それだけは確信できた。
大丈夫だ、問題ない。だって、しんちゃんは少しマセているけど、とても良い子なのだから。
きっと、この女の子にもお菓子を分けてあげられる。そんな信頼があった。
そして彼女の予測の通り、しんのすけも目の前の少女がお腹を空かせているのが分かればチョコビを分け与えるのに逡巡は無かっただろう。

「えぇ~…もう食べちゃった」


――――だがそれも、肝心のチョコビがまだあったならの話である。
ぴしりと、空気が凍り付く瞬間を輝子は肌で感じた。
僅かに沈黙がその場に流れ、そして。

「そう、じゃあ死ね。人間」

輝子の危惧の通り、事態は最悪の展開へと廻り始める。
害虫を駆除するかのような氷点下の殺害宣言と共に、少女――シャーロット・リンリンはその手の天逆鉾を振り下ろした。
リンリンの巨躯で振るう短剣はまるで玩具の様だが、当然それが振り下ろされる事によって導かれる結果は遊びでは済まない。
しんのすけや輝子の頭部に当たれば、柘榴のように弾け、それでお終いだ。

「メテオテール!!」

間一髪。ステッキを振るうのが間に合った輝子の魔法が、リンリンの丸太の様な腕を抑え込む。
本当に危うい所であった。魔女っ子の導き手足るウルがいないとはいえ、紛れもない超人である輝子が反応できたギリギリの速度。
背後でしんのすけが自分の名を叫ぶが、意識を裂く余裕は、ない。
何故なら、危機はまだ輝子たちを見逃してはいないのだから。

「ぐ…やめ…‥貴方…どうしてこんなことを……!」

少女の力は、巨体を考慮してなお異常だった。
魔法のリボンで拘束しているのというのに、その剛力は何ら陰りを見せない。
それどころか、強引にリボンを引きちぎろうとしてすらいる。
本来彼女の魔女っ娘としての能力はリンリンより遥かに巨大な鉄人さえ抑え込むことができる。
しかし、制限のためか本来の能力を発揮するために必要なウルは此処にはいない。
自分はともかく、このままではしんちゃんが危険だ。
少女の視線は、お菓子を独り占めしたしんのすけをずっと殺意の籠った瞳で捉えている。

「しんちゃん!私がこの子を抑えている間に露伴先生を呼んできて!!」
「でも…キッコお姉さんは!?お姉さんを置いてなんか行けないゾ!」
「いいから…!早く行って!!止まらないで!!」

まだ五歳児にも関わらず勇敢な少年は、自分の指示に食い下がろうとする。
しかしここは戦場だ。生き残るのは常に強者と臆病者であり、勇者は死ぬと決まっている。
だから幼いしんのすけにも『露伴呼ぶためにこの場を離れる』という合理的な理由を用意した。
これならばただ逃げろと叫ぶよりも、この場を離れてもらえる確率は上昇するだろう。
戦うにしても逃げるにしても、重点的に狙われているしんのすけを守りながらでは困難だ。
自分一人なら、あの少女が相手でも煙に巻くことが可能なはず、だから、ここで共倒れするわけにはいかない――――

「待てェええええぇえええええ逃げるなァあああああ人間ンンンンンンン!!!」

輝子の思考を裂くように、怪獣の様な雄たけびを上げるリンリン。
大地を揺らすその威容に、びりびりと電流が奔ったような怖気が二人を襲う。
しんのすけと輝子には理解できなかった。
何故、この場で初めてであったはずの彼女が自分たちに此処までの憎悪を向けてくるのか。
…それが人類史の悪性を煮詰めた黒の章というビデオによって齎された者であることは、当然彼女らには知る由もない。

「――――露伴先生を呼んで来るゾ!!」



リンリンの咆哮を受け、遂にしんのすけが動く。
普段はスケベでおバカな彼も、潜ってきた修羅場の数は他の五歳児とは一線を画す。
この判断力と肝の座り方は、正に嵐を呼ぶ五歳児と呼ぶに相応しいだろう。

加えて、露伴を呼ぶという選択。
一時間ほど前に分かれた露伴がまだ近くにいるかは分からない。
しかし、彼のヘヴンズ・ドアーならばこの少女が相手でも無傷で無力化させるのも決して無理な話ではない。
もし、露伴がいなくても、闇雲に逃げられるよりは先程露伴と出会った周辺に捜索地点を絞れるので合流もしやすい。
場所を指定するより、リンリンに追ってこられる心配もない。

「メテオテール!!」

街を駆けていくしんのすけの後ろ姿を目に焼き付け、魔法のステッキを強く握りしめる。
此処から先は、自分の仕事だ。
魔力を練り上げ、再び魔法のリボンが二重、三重とリンリンを包み込む。

「があああああああ!!!おれの邪魔をするなぁあぁああああああ!!」
「させない…ッ!メテオテール…!」

怒り狂うリンリン。しかし、今度は輝子の魔法の方が優勢だ。
人を守ろうとする時こそ、魔女っ娘という種族の超人は命を燃やすのだから。
リボンに加え、視界を阻害する魔法の蝶の群れが加わる。
こうなれば如何な悪神・シャーロット・リンリンですら脱出は困難だ。
少なくとも、既に彼女はしんのすけの姿は完全に見失っているだろう。
いける。彼女がそう思ったのは無理もない事だった。

「――――え?」

突如としてステッキから手ごたえが消失し、呆けた声を漏らす。
直後、展開していた蝶の群れも、突風に吹かれた煙のように消え失せて。
現れるのは、黒色の殺意をその双眸に秘めて振りかぶるリンリンの姿。
何故。どうして。そんな事を考える暇すらない。
とにかく手を動かさなければ死ぬのだと、本能が告げていた。

「メ、メテオテール!!」

三度響く呪文。しかしその時にはもう、全てが手遅れだった。
リンリンがその手の短剣(カトラス)を放つと同時に、乾坤一擲の魔法は露と消える。
これこそがリンリンに支給された特級呪具、天逆鉾の効力。
最強の呪術師、五条悟の無下限術式すら破る全ての術式の強制解除。
その能力の行使の代償に、此処に来る直前に期せずして得たソルソルの実の能力が使用不能になっている。
だが、誇り高き巨人種であるエルバフの戦士ですら悪神と呼び畏れた怪物、シャーロット・リンリンには何ら問題がない。
一繋ぎの大秘宝(ワンピース)を巡る世界において圧倒的な肉体性能は、このバトル・ロワイアルにおいても健在なのだから。


「死ね、人間」

少女の声は、先程まであれほど猛り狂っていたとは思えないほど冷静で、しかしドス黒い感情を秘めた声色だった。
そして、それが星野輝子が生涯で最後に聞く声となる。
轟!と。放たれた短剣は砲弾の様に輝子の胸へと吸い込まれ――風穴を開けた。
奇しくも先程リンリンの餌食となったぴーたんの様に。
人体を紙の様に貫くその破壊力。正しく天逆鉾の本来の所有者と同じ、天与の暴君と呼ぶに相応しく。


(あ…これ、もう駄目な傷、だ…)


夥しい鮮血と共に膝をつく輝子。
流れる血の量と、胸に奔る灼熱は自分が助からないのを如実に示していて。
あぁ、と悟ってしまった。
自分は元の場所へ帰ることはできず、此処で死ぬのだと。

(―――けれど、それでも)

このままでは、終われない。
ごふ、と血の塊を吐きながら最後心臓が破壊される前に送っていた最後の血液を巡らせ、立ち上がる。
まだ自分にもできる事があるはずだ、と。凛とした瞳で前だけを見据えて。
ステッキを指向、最期の魔法を行使する。

「――――メテオテェェェルッッ!!!!」
「ぐお!?離せェェェェッ!!!!!」

魔法のリボンがリンリンをぐるぐる巻きに拘束していく。
引きちぎろうともがくリンリンだが、リボンのスピードの方が速い。
加えて、彼女の手には天逆鉾は既に無く。
故に、魔女っ子超人の最後の抵抗を阻む術はない。
全身を簀巻きにされて、ズシンを音を立てて巨体が崩れ落ち沈黙する。

それを見届けると、輝子の身体も最後の力を使い果たし糸の切れた人形のように倒れ伏した。
星野輝子がこのバトル・ロワイアルでできる事は此処までだ。
彼女なら数時間もあればあのリボンを引きちぎるだろう。
だが、その頃にはきっとしんのすけも露伴先生に保護されているはずだ。

しかし結局、まだ顔立ちは幼く見える少女が何故こんな凶行に及んだのかは分からず仕舞いだ。
自分たちと出会うまで、彼女に何があったのか。
しんのすけは無事露伴先生に保護してもらえるだろうか。
ウルがいれば、或いは自分以外の超人課の面々なら、この殺し合いも打破できたのだろうか。
様々な考えが巡るが、星野輝子の思考が最後に行きつくのは一つ。

(爾朗、さん……)

道を違えた、愛しい男の。どこか悲し気な横顔を夢想して、平行世界を統べる支配者となる筈だった魔女は、瞼を閉じる。

【星野輝子@コンクリートレボルティオ 死亡】






涙で、前が見えなかった。
おれはただお腹が空いているだけなのに、みんなが意地悪する。
甘いお菓子を独り占めして、おれを変なリボンで縛り付ける。薄汚ェ人間ばかりだ。
さっき見た、悍ましい、吐き気のする人間たちの姿が蘇る。
マザーに、皆に、どうしようもなく会いたい。もう一度一緒のテーブルで、お茶会がしたい。
けれど、マザーは此処にはいない。
それがどうしようもなく、悲しかった。

―――ぼりぼり、
一心不乱に、貪る。
味は度外視、ただただリボンを引きちぎるまでに消費したエネルギーと空腹を満たすためだけの摂取行為。
お湯で戻していないカップ麺など不味いし腹の足しにもなりはしない。
しかし、それでもリンリンは食らう。悲しみと憎悪の涙で前が見えなくなるほど、顔をくしゃくしゃにして。
ボリボリと、麺をかみ砕き、肉を千切り、骨を割り、赤い液体をすすって嚥下する。
カップ麺も、ストロングゼロも、転がる肉の塊も、その場の全てが亡くなるまで。
それはリンリンがバトルロワイアルに招かれる直前、六歳のバースデーで起きた悲劇の再演だった。

―――ゴクン。
リボンを千切るのに時間がかかり過ぎたため、最期の一口を飲み込んでも飢えはまだまだ収まらない。
むしろ中途半端に食べた事でもっと飢えたと言ってもいい。
だから、リンリンは再び空腹を満たすべく立ち上がり、輝子のデイパックと天逆鉾を拾って歩き出す。
先ずはお腹を満たし、そして自分に逆らう人間は皆殺しにする。その決意はより強く。
暴食は尽きず、善意の怪物は止まることなく進み続ける。

全てはこの世の光。マザーの夢のために。
偉大なるマザー・カルメルの名のもとに。
全ての人間は、此処で朽ちて果ててゆけ。

【H-6(北部)/早朝】

【シャーロット・リンリン@ONE PIECE】
[状態]:空腹(大)、憎悪

[装備]:天逆鉾@呪術廻戦

[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、輝子のデイパック

[思考・状況]基本行動方針:人間は殺す。マザーの夢を叶える。
0:何か食い物!
1:人間は殺しつくす。
2:お菓子が欲しい。

[備考]
参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。
天逆鉾の効果により、ソルソルの実の力が封じられています




「お助けしなきゃ…お助けしなきゃ…」

短い手足を必死に動かして、しんのすけは一人黎明の街を駆ける。
何度も転んだのかその膝には血が滲んでいたが、本人は気にする様子もない。
早く露伴先生を呼んでキッコお姉さんをお助けする。それだけが、彼の今の想いだ。
だが、見つからない。既に露伴と初めて邂逅してから二時間以上経過している。
何処かの建物で身を休めているか、既にエリアの外に出ていてもおかしくない時間である。

「おぉ~い!!露伴のおじさ~ん!!何処だ~~!!」

焦燥が募り、大声を上げて捜索する。
だがやはり近くには居ないのか、それとも屋内にいるのか…何方にせよ露伴が姿を現すことはなく。
しかし、その代わりに良く知っている声が彼を呼び止める。

「しんのすけ…しんちゃん!!」
「……おぉッ!?母ちゃん!?」

しんのすけを呼び止め、手招きしているのは彼の母である、野原みさえだった。
本来ならばいないはずの母の登場に、しんのすけも意外な顔をして走り寄る。
その首には参加者の証である首輪は嵌められていなかったが、最早此処まで近づけば見間違えるはずもない。

「良かった、無事で…」
「ほーい。でも何でかーちゃんは何でここにいるの?
キッコお姉さんはとーちゃんしか此処にいないって…」
「それが私にも分からないのよ~。気が付いたら此処にいて、
訳の分からない緑のお化けに襲われて……」

話を聞くと、どうやらみさえも気が付いたら此処にいた、という事らしい。
そして、数分間のしんのすけ達と同じく怪物に襲われたが、一人のお兄さんに助けてもらったというのは、幼いしんのすけの頭でも理解することができた。

「じゃ、じゃあそのお兄さんに頼んで、キッコお姉さんをお助けに行くゾ!
そのお兄さん何処にいるの?」
「えぇ!?えーっと、今はこの辺りを見回って来るって…
そのキッコお姉さんって言うのは?」
「それは――――」

みさえの問いかけに、夢中でしんのすけがこれまでの経緯を離そうとしたその時だった。

「へぇ、子供と会えたんだ。よかったね、みさえさん」
「あっ…真人さん」

カツンとしんのすけの背後から黒いローブを纏った青年が現れる。
みさえに真人、と呼ばれたその青年は、人当たりのよさそうなにこやかな笑みを浮かべていて。
しかししんのすけにはその笑みがどうしても不気味なものに思えてならなかった。
ともあれ、露伴が見つからない以上、今頼れるのはこのお兄さんしかいない。
挨拶もそこそこに、しんのすけは身振り手振りを交えた全力の説得で、キッコおねいさんを助けてほしいと頼み込む。

「ふぅん…ピンク色の大きな女の子ねぇ…あぁ、あの子かな」
「すッごくでっかくてシリマルダシみたいに暴れてるんだぞ!おねいさんを早くお助けしないと…」
「あー、うん。構わないよ。でも、その前に僕もちょっと見たい事があるんだよね」
「お?見たい事?」

うん、とはにかんで真人はぽんとみさえの肩にポンと手を置く。
みさえの顔にぎょっとした抵抗の色が浮かぶが、彼は気にしない。
抗議の言葉がみさえの口から放たれる前に、しんのすけに目的を告げた。

「うん――――愚かなガキが死ぬところを、ね」


―――無為転変。


「しししししししし、しんのぉすけええええええええ」


グニィ、と。
肉が変形する音が響き。
しんのすけは、目の前で母が怪物へと変貌する瞬間を目の当たりにした。





■

「よーし、そろそろ休憩するか?レヴィちゃん」

バトルロワイアルが始まってから二時間余り、ロボひろしは同行者の少女に休憩を提案する。
彼自身はロボットなので疲労を感じないが、隣を歩くレヴィはそうもいかない。
まして今は殺し合いという異常な状況下、できる限り気を払ってやらなければ。
その気遣いからの提案だった。

「うーん、平気!ボクはまだまだ元気だよー!!」

対するレヴィはまだまだ余裕があることを示すように、快活な返事を返す。
どこまでも明るく天真爛漫な彼女の顔には、不安など少しも見当たらない。
何でも魔術師らしいが、ロボットの自分でも多少緊張してる中で大したものだと思う。

「そーかそーか!レヴィちゃんは強い子だな~しんのすけとやっぱり似てるよ」
「ふ~ん?しんのすけってひろしの子供だよね?そんなにボクと似てる?」
「あぁ…レヴィちゃんみたいに元気で、強くて…優しい子なんだ
本当のとーちゃんがいるのに、オレの事も…とーちゃんって呼んでくれてな……」

そういってロボひろしは複雑な、けれど暖かな感情を秘めた声色で、野原しんのすけという少年を語る。
夜天の書から生まれたレヴィは父という存在も、野原しんのすけという少年もよく知らないけれど。
何故か。その時のロボひろしの横顔は彼女の奥深くに響いた。

「…早く見つかるといいね、しんのすけ。ボクも、デバイスさえ支給されていればもっと役に立てるんだけど…」
「気にしないでいいさ!レヴィちゃんやマサオ君と一緒に俺が守る!
何て言ったって、俺はロボとーちゃんだからな!!」

デバイスが支給されておらず、しょんぼりと俯くレヴィを、ひろしは励ます。

レヴィちゃんが危ない目に合う必要は何処にもない。
そうだ…誰も殺さないし、殺させない。
しんのすけも、マサオ君も、レヴィちゃんも、もう一人の、人の自分も。
必ず守り、平和な春日部に返して見せる。
きっとそれこそが、自分が再び起動した意味なのだとひろしが思った。
その時の事だった。

―――けて

ロボひろしに内蔵された超高性能の収音装置が、そう遠くない場所で発せられた声をキャッチする。

―――助けて

間違いない。自分が間違えるはずがない。この声だけは!

―――助けて、ロボとーちゃん!!


「レヴィちゃん!ちょっとゴメン!!」
「ふぇ?え?ちょ、ちょっと!?」

レヴィを有無を言わせず強引に担ぎ上げ、疾走を開始する。
例え今から駆け出したところで、人間野原ひろしならば間に合わないだろう。
しかし自分は鉄人だ。ロボとーちゃんだ。人間に間に合わない距離でも間に合わせてみせる!


「―――とーちゃんが直ぐに行くから。待ってろ!しんのすけ!」


■

「くぅっそ~!離せ~!!かーちゃん、如何したんだ~!!」
「無駄さ。君のお母さんはもうオレの手駒だからね」

時はしばし巻き戻り、特級呪霊真人は捕らえた少年に嵌められている首輪をじっくりと眺めていた。
しんのすけは何とか逃げようと藻掻くが、彼の首を掴む彼の母であったものがそれを許さない。
ぎょろぎょろと蠢く目は昆虫のように機械的で。グロテスクに肥大した肉体に母の面影は最早無く。
もし、しんのすけが何も知らない状態でこの怪物を見ても母であったなど信じられないだろう。

「くぅぅ~!!お兄さん趣味悪いゾ!早くかーちゃんを元に戻せ~!!」
「心配しなくても大丈夫さ。君もちゃんとお母さんとお揃いにあげるからね」
「ヤだ!かーちゃんを早く戻さないと、ロボとーちゃんを呼んでやっつけて貰うゾ!!」
「へぇ、ロボットの父親もいるのかい?」
「そーだゾ!すっごく強くてお兄さん何かコテンパンだぞ!」
「そう、なら呼んでみると言い。もしかしたら、助かるかもしれないよ」

しんのすけはばたばたと手足を振り回すが当然の真人には何の抵抗にもならず。
ひた、と彼の掌がしんのすけの首筋に触れる。
真人にとってはどちらでもよかった。
このままガキを殺すのも。この殺し合いにいるらしい父親の目の前で殺すのも。
どちらもそれはそれで面白い事でしかなく。
だから何時でも殺せるにも拘らず、敢えてゆっくりと、呪力を籠める。
そして、助けを乞うことを促した。


―――助けて。

しんのすけの脳裏に、怪物にされた母の末路が過り、恐怖がにじみ出てくる。
自力で逃げる事が不可能。促されるままにしんのすけはぎゅっと瞼を閉じ、そして叫ぶ。
声の限り叫ぶ。喉が枯れるまで、父の名を呼ぶ。

―――――助けて、とーちゃん。

父は現れない。しかしそれでも声を張り上げ、その名を呼ぶ。
最後のその瞬間まで、野原しんのすけは父を信じる。

―――――助けて―――――!

父は現れない。
真人の”原形の”掌に紫色の呪力がこもる。
術式が奔り、そして。


――――――ロボとーちゃん!!!


鋼鉄の火花が弾けた。


「―――大丈夫か。しんのすけ」
「んもう、遅いぞ…ロボとーちゃん」

首筋の圧迫感が消え、一瞬浮遊感が訪れた後。
懐かしい声に、瞼を開いてみれば。
そこには記憶と変わる事のない、あの日の鋼鉄の父が立っていた。
鋼鉄の父は此処に確かに。致命の一撃に”割り込んでいた”。
青年を殴り飛ばし、青年を守ろうとしていた怪物を蹴り飛ばして。
確かに、しんのすけの前に現れたのだ。
ロボひろしは担ぎ上げていた少女を下ろし、息子の頭を優しくなで、そして宣言する。


「―――もう、大丈夫だ。後はとーちゃんに任せろ」


■


「へぇ……これは驚いたな。本当にロボットが出てくるなんてね」
「おーともよ!俺がしんのすけの…ロボとーちゃんだ!
アンタ、よくも人の息子に怖い思いさせてくれたな!!」

唯の鉄屑風情が息子、ね。
真人は不敵に笑みを浮かべながら闖入してきた鉄人を見据えた。
どうやら、愚かなガキをただ殺すよりも愉快な事になりそうだとほくそ笑む。

「……レヴィちゃん。今すぐしんのすけを連れて下がっててくれ。
あいつは、間違いなく危ない」
「うん、任された!けど、今度からは突然担ぎ出して走り出さない事!
おかげで、何度も舌噛みそうになったんだからね!」
「ははは…ゴメンよ」
「そして…気を付けてね。あいつ何だかとっても嫌な感じがするから…」
「あぁ、分かってる」

ロボひろしはレヴィにしんのすけを任せると、二人を守るように進み出る。
目の前の青年が殺し合いに乗っているのは最早明らかだ。疑う余地はない。
絶対に、二人を近づけるわけにはいかないと。ひろしは鉄の拳を握りしめ、口火を切った。

「一応聞いておくが、アンタ、何で殺し合いに乗った」
「それを聞いてどうする。俺に何かやむなき事情があれば息子共々殺されてくれるかい?
あぁ…それとも。『楽しいから殺す』なんて言葉を引き出して、俺を手っ取り早く始末する理由が欲しいのかな?」

そのまま真人は理由なんかないさと答えた。
殺したいから殺す。何処までも欲求に正直に。
それこそが、呪いなのだから。

「……お前、それでも人なのか?」
「あぁ、そうだよ。俺たちこそ嘘偽りのない―――真の人間さ」

人間は嘘でできている。
表に出る正の感情や行動には必ず裏がある。
しかし―――負の感情は別だ。
憎悪や殺意などは偽りのない真実であり、そこから生まれ落ちた呪いこそ、真に純粋な本当の人間。
それが、真人たちが掲げるたった一つの信仰だった。


「…お前が絶対に野放しにはできないってのはよーく分かったよ。絶対に、ここで止めてやる」
「頑張れ~!ロボとーちゃん!!」

最早交渉の余地はない。そう判断して臨戦態勢に移れば、背後から声援が届く。
しんのすけは自分を信じてくれている。その信頼はロボひろしにとって何よりの力となる。
負けるつもりは毛頭なく。ただ目の前の青年だけを見つめて。

見つめた先の青年の視線に、ぞくりと、頭部のコンピューターにバグが生じるのを感じた。
ひろしは彼を注視しているというのに。青年は、ひろしの方を見ていなかった。
自分を見て笑っているならまだ理解できる。
だが、ずっと見ているのはひろしの背後のしんのすけの方だ。
しんのすけを見てずっとほくそ笑んでいる。
それがどうしようもなく、不気味に思えた。

そんなひろしの事など意にも介さず、青年はゆっくりと指を背後へと向けて、そして告げる。


「親子の絆は美しいね。でもいいのかいしんのすけ。君のお母さんの事は」
「―――は?」

指を刺した先にあったのは、ひろしが先程しんのすけを助ける際に蹴り飛ばした怪物だ。
だが、怪物としんのすけの母。つまりみさえがどう繋がるのかロボひろしの超高性能なCPUを以てしても分からなかった。
そもそも、野原みさえは名簿に載っていなかった。此処には居ない筈の人間なのだから。

ゆっくりと、しんのすけの方に視線を移す。
すると、何故かしんのすけは見たことがない程青い顔をしていて。

「か、かーちゃん!!!」
「あ、コラ!ダメだよ!向こうは危ないんだぞ!!」
「うぅ~でも、かーちゃんが、かーちゃんが…!」
「どうしたんだしんのすけ!かーちゃんって、みさえは此処には―――」

怪物と青年の方へと駆けて行こうとするしんのすけを慌ててレヴィが抑える。
だが、息子のめったに見たい焦燥した様子は、ロボひろしを混乱させるのには十分だった。
乱れた思考のまま、しんのすけから再び怪物の方に視線を戻す。
すると音もなく青年は怪物の前にしゃがみ込み。手をかざして。

グニィ。
その音が聞こえた一秒後、怪物は―――野原みさえの遺体となっていた。




「……は?」


脳内の超高性能コンピューターですら、思考が追い付かない。
だって、野原みさえは此処には居ない筈の人間で。
それなのに、自分の超高性能カメラが映す目の前の首の骨がへし折れ事切れた女が、野原みさえとどうしても一致する。
一瞬で思考回路が断絶し、力が漲っていた筈の人工筋肉から力が抜ける。
どうして、あんなところにみさえが居る?
どうして、あんな、壊れた人形のように手足を投げ出している?


「どうしてって顔してるけど。本当は分かってるだろ?アンタがやったってさ」

…違う。
違う違う違う!
そんなはずはない。そんなはずは…ないんだ。
俺が…みさえを殺すなんて……


「おッ!お前お前がやったんだろ!!お前が、みさえを…」
「うーん、まぁ形を変えたのは確かに俺だけどね。
でも野原みさえを殺したのは、間違いなくあんたさ」


何処までも残酷な真人の言葉。だがひろしはその言葉を否定できなかった。
彼はしんのすけを救うために確かに怪物を殴り飛ばしたのだから。
人間ならば都合よく記憶を改ざんして全て青年がやったと責任を転嫁できたかもしれない。
だが、ロボひろしはロボットだ。一度記録したデータを改竄することは難しい。
呆然とするひろしに真人は浮かべていた笑みを消して、さらに言葉を紡ぐ。
意外にも、その内容は今の彼にとって希望になり得る物だった。

「まぁ安心しなよ。この野原みさえはきっと野原みさえであって野原みさえじゃない」
「ど、どういう事だ!」
「掌で魂に触れてその形を歪めることで肉体も変化させる。それが俺の術式、無為転変。
それでこの野原みさえの魂に触れてみたんだけど…一言で言ってこれは偽物だった」


生者の魂は生きている限り常に代謝している物だ。
だが、首輪を嵌められていない参加者…野原みさえは魂の代謝が見られなかった。
つまり、野原みさえは主催者によって用意されたNPCだったのだ。
本物の野原みさえならば、例え怪物の姿に変えられていても気づけたかもしれない。
本物の野原みさえならば、例えロボひろしに殴られても生きていたかもしれない。
だけど此処にいた彼女はNPCで。だからこそ予定調和のように死亡した。
参加者でないNPCに運命の女神が微笑むことは決してない。

「しんのすけやそこの女の子は魂が代謝しているのを見ると、
首輪が嵌められている参加者とそうでない参加者で分けられるみたいだね。
安心しなよ。本物の野原みさえは多分まだ生きてるんじゃないかな」
「それじゃ…」

青年の話の殆どは理解できなかったが、それでもみさえは無事らしい。
ほっと安堵するが、同時に強烈な違和感に駆られる。
何故、殺し合いに乗っているはずの青年がこんなことを言うのかと。
同時に、知りたくないという感情が同時に湧き上がる。
嫌だ。やめろと。
どれだけ願っても、答え合わせは、直ぐにやって来た。

「此処からが本題なんだけど…俺の無為転変は呪力を籠めて触れた時点で効果を発揮するんだ。
もっとも今俺が試そうとしてる事はあんまり経験が無くて、不慣れではあるんだけどね」
「な、何が言いたい……!」
「いや、こうやって術式の開示をする事で効果を上げてるのさ。
ちゃんとできてるか不安だったからね…でも安心したよ」
「だから、何なんだ!お前は!!」

ぞく、と。
ロボットであるはずの肉体に、悪寒が奔る。
みさえは、あの青年に触れられた事で怪物から人に戻った。
怪物を人に戻せるとするならば。
人を怪物にすることも当然可能のはず。
そして、しんのすけは、ひろしが助けに入った時には既に触れられていた。





「――俺の術式は、まだ生きてる」




―――無為転変。
そして、グニィ、と。
全てが終わる音が響き渡った。





■

「とぉおおおぉおおおおちゃあああああああ」


しんのすけの姿が一瞬にして変貌する。
頭部と下半身が異様に肥大化し、目はぎょろぎょろとせわしなく動き、舌がだらりと垂らされた、怪物の様な姿へと。


「おっ、おいッ。しっかりし―――わぁッ!がっ!…ぁ……」

その瞬間は、動けなかった。完全に思考回路がフリーズし、指一つとして。
専用デバイスであるバルフィニカスを支給されておらず、また一番近くにいたレヴィが殴られ、建物の壁に激突し、沈黙。
その二秒後に、ようやく動くことができた。


「……ッ!!しんのすけぇえええええええッ!!」


追い打ちをかけようとするしんのすけの前方に回り込み、無我夢中で抑え込む。
だが、最早いまのしんのすけにはロボひろしの事が認識できていないのか、返答は拳で返された。
呪力の込められた拳で、しんのすけだった怪物は鋼鉄のボディを叩く。

「しっかりしろ、今、とーちゃんが治してやるから……!」

嘘だ。
どれだけ頭部のコンピュータをフル稼働しても、呪術師ではないロボひろしに治す方法など出て来るはずもなかった。
しんのすけの頭部を抑えたまま、ひろしは声を張り上げる。


「おい、アンタ!しんのすけを元に戻せ!!さもないと―――」
「さもないと、どうする。俺を殺すかい?
あぁ、それなら――五人ほど俺の代わりに殺してきてよ。それでしんのすけを元に戻そう」
「……ッ!?」
「俺を殺すのも他の参加者を殺すのも一緒だろ?俺は殺せても他の人間は殺せないかい?」

その言葉を受けた時の時のロボひろしの顔は。
機械の顔であると言うのに紛れもなく絶望を示していて。
そうだ、これが見たかったのだ。


「ふふっ、くっ、」


気づけば、笑うのを我慢できなくなっていた。
肩を震わせ、腹を抱えて、そして―――嗤う。





「あ、ははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 はははははははははははははははははははははははははははッ!」


ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲララゲラゲラ。
笑う。嗤う。ワラウ―――全ての未来を、矜持を、命を、呪いは嘲笑う。
何処まで行っても、真人という存在は呪いなのだから。
人が人を欺き、差別し、蔑み、陥れ、憎悪し、殺す―――そんな人の原罪全てが、形を成した者なのだから。



■


オラ、なにしてたんだっけ…。
あぁ、そうだ。キッコおねいさんを、あのかいじゅうからおたすけしないといけないんだ。
なんでわすれてたんだろう……

なにもみえないし、きこえない。
だれかがおおきなこえでなにかいってるけど…んもう、よくわからないゾ

でも、なんだかかなしそうなこえだゾ…それなら、おたすけしてあげないと。
………なぁんだ。ロボとーちゃんか。オラは、だいじょぶだから。
とってもねむいけど、それだけだから。

……ロボとーちゃんになら、オラがすこしおやすみしてるときも、おまかせできるゾ。
だから。
だから。
だから。


――――キッコおねいさんを、おたすけしてあげて……



…………………

…………

……



「ギッ…ゴ…おね…ざんを……おだずげ……」


それが、最後の言葉で。
ぐしゃり、と。
さっきまで命だった物が地面に転がる。
抑えていた力を抜いても、もうそれが動くことはない。

二度と、野原しんのすけが動くことはない。

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん 死亡】
【残り103人】

■





全身の機能の全てが停止。
結局、何も出来ずにロボひろしは全てが終わることを見送る事しかできなかった。
青年の狂った笑い声さえ、耳に入らない。
正しく壊れたロボットのように、立ち尽くしていた。
彼は正しくスーパーロボットだ、搭載されいる機能。演算性能。共に現行のロボット工学の遥か先を行っているだろう。


だけれど、その人格部分たる野原ひろしの心は。
とうの昔に限界を迎えていた。


「ダッ…ダメだ…ダメだ…しんのすけ……!」

膝をつき、野原しんのすけだった怪物の遺体に縋る。
そうすれば生き返ると信じているかのように。
真人の事も、レヴィの事も、既に視界に入っていなかった。


崩れ落ち、ただ息子の亡骸にすがるロボひろしをひとしきり嗤った後、真人は羽虫のように見つめていた。
嗤っておいてなんだが、やはりこれは真人からすれば紛い物だ。
これだけ喪失の彼岸にあって、魂の代謝を感じない。
嗜好としてみれば偶にはいいかもしれないが、熱が過ぎれば人形を殴っているのと変わらない。
それよりも今の興味は。

「こっちの方かな」

意識を失い、気絶している青髪の少女。
彼女のデイパックを回収し、じっくりと魂の形を観察する
外見は完全に人であると言うのに、何処か魂は呪霊に近しい。それも特級の自分たちに、だ。
闇の書より生まれた彼女の出生については真人は知る由もない。だが、この娘ならば…


「宿儺の器になれるかもしれないね」


真人は隠し持っていた改造人間を三体取り出すと、五本の宿儺の指を渡し、少女を担がせる。
そして、此処から南下したエリア…H-7付近で指を飲ませる様に命令した。
それに加え、少女の死亡か、外的要因により顕現に失敗した時は指だけ回収し此方に戻るようにも伝える。
宿儺が顕現したとしても、自分に向かってくる恐れがある。
そのためリスクヘッジとして、宿儺の顕現は自分のいない所で行う事としたのだ。
もし指に適合し宿儺が復活すれば万々歳。できずに少女が死ねばそれはそれでいい。



運ばれていく少女は未だに目を覚まさない。
そのまま、雪の女王と炎の魔術師が鎬を削る戦場の近くへと。
もし彼女が指に適合し呪いの王が目覚めてしまえば、
地獄が、始まる。

【H-6(南部)/早朝】
【レヴィ・ザ・スラッシャー@魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF DESTINY-マテリアル娘。】
[状態]:気絶
[装備]:三体の改造人間。宿儺の指(五本)
[道具]:無し
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけという子を探す
1:...…
2:王様やシュテルんは今どうしてるのかな...
[備考]
ロボひろしのことについて色々知りました

※三体の改造人間に運ばれています。
※H-7付近で宿儺の指を摂取させられる予定です




一仕事終えて、大きく伸びをする。
さて、後はあのがらくたを鉄屑に変えて、次の獲物を探すとしよう。
伽藍の鉄人形は未だぶつぶつと虚ろな言葉を漏らして、肉塊に縋りついている。
滑稽だった。魂すらない鉄の塊の癖にが一丁前に人のふりをして。
それ故に、こうして無防備な姿を自分に晒している。


「もうとっくに死んでるよ。ちょっと乱暴に形変えたからね。まぁこんなもんさ」


最早目の前の鉄屑は敵になどなりはしない、さっさと壊して次へ行こう。
そう思い、腕を硬質化させた、その瞬間だった。
轟!と。
真人の顔面に、鉄の砲弾が突き刺さった。


「―――ッ!?」


常人なら首が吹き飛んでいるであろう一撃。
魂への直接攻撃だけが有効打となる真人に痛痒は無い。
しかし、その衝撃は、籠められた殺意は。向けられる呪いは。
彼の殺意を再び高揚させるのに、十分な物だった。


「……へぇ、やればできるじゃないか」


ニィィィィイイイイイと顔を歪めて。
正面に立つ、鉄人と対峙する。
相も変わらず、魂の代謝は感じないが――精巧に作られた表情で分かる。
黒一色に塗りつぶされた、自分を生んだ感情。
即ち、憎悪。即ち、殺意。
それは自分にとって、愛の言葉よりなお心地よい。
野原しんのすけが信じていた父親も、俺たち呪霊のステージまで降りてきてくれたという訳だ。
ゆっくりと加速しながら向かってくる鉄人に向けて正眼に構え、拳に呪力を籠める。
そして、服のすき間から『子供の』改造人間のストックを何時でも放てるよう取り出す。
準備は整った。


「あぁ……それじゃあ存分に」


触れることのできる魂がない以上、無為転変は通用しない。
ならばどうするか。答えは一つ。
より洗練された、殺すための形、殺すためのインスピレーションを体現しろ!


「――――呪い合おう」




『―――そうだ、誰も殺さないし、殺させない。
しんのすけも、マサオ君も、レヴィちゃんも、もう一人の、人の自分も。
必ず守り、平和な春日部に返して見せる。』



―――――その時、俺の口から出会たのは、
     レヴィちゃんに語った事は、思いは 全て嘘だったんじゃないかと思うくらい。
     腹の底から、出た本音。





「ブッ殺してやる」

【H-6(南部) /黎明】

【ロボひろし@クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶガチンコ逆襲のロボとーちゃん】
[状態]:精神疲労(極大)、憎悪
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]:基本行動方針:目の前の男を殺す
1:目の前の男を殺す
2:しんのすけ…
3:目の前の男を殺した後、レヴィちゃんを助ける
[備考]
レヴィが魔法少女だということを知りました


【真人@呪術廻戦】
[状態]健康 
[装備]三代鬼徹@ONE PIECE、沖田のバズーカ@銀魂、大量の改造人間@呪術廻戦
[道具]基本支給品、両面宿儺の指15本セット、レヴィのデイパック(ランダム支給品1~3)
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し、その過程で領域展開を取得したい。
2:宿儺の器を探す。
[備考]
原作16話より参戦です



036:無意味かもしれない考察 投下順 038:運ゲーは既に始まっている
024:野原ひろし 星野輝子 :GAME OVER
野原しんのすけ
030:勃発!グルメレース シャーロット・リンリン 060:苦いものはまだ嫌いなの
015:大切な人へ、今どうしていますか...? ロボひろし 051:廻廻奇譚───闇を祓って
レヴィ・ザ・スラッシャー 079:幼魚と逆罰
019:反魂人形 真人 051:廻廻奇譚───闇を祓って
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