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心の刃

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「そんな危ないヤツからここまで逃げてきたなんて、セリムはよく頑張ったってばよ」
「いえいえ、うずまきさんも聞いてるだけで危ない存在に立ち向かえるなんて、とても立派ですよ」
「うずまきさんなんて何だか恥ずかしいから、せめてナルトさんって呼んで欲しいぜ」

 その様な会話を行っているのは、金髪蒼眼の少年うずまきナルトと、黒髪の子供セリム・ブラッドレイ。
 殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)ガムテと戦い、何とか退けたナルトは、程なくしてこっちに向かってくる子供と出会う事になった。
 ナルトは殺し合いに乗ってない事を子供に伝えると、子供は自分の名と自身が大総統の息子である事、そしてリボンを付けた少女に襲われた事を話し始めた。
 少女に襲われたというのは聞き捨てならず、即座に倒しに行きたくなったナルトだが、まだ年場もいかないセリムを置いていくわけにもいかず。
 この殺し合いが始まってすぐに襲われ、逃げてここまできた為を考えて、近くにあった休める場所に移動してそれそれのこれまでの動向を話し始めた。

(国のリーダー?の子供だってのに、木ノ葉丸と違って全然礼儀がなってる子供だってばよ。)

 セリムが話す「アメストリス国家」という国は全く聞いたことがないが、彼はどうやらその国のリーダーの子供らしい。
 その立場を聞いてナルトが思いつくのは、ナルトを親分として慕う忍の卵・木ノ葉丸。
 ナルトにとっても今ではかわいい弟分であるが、初対面からナマイキな事ばかり言い、自らを火影の孫であることに笠に着る部分もあった。
 しかし、この子供にはそういったワガママな部分が見えなかった。
 親である2人が人格者だったのか、それともセリムが根が良い子で育ってきたのか。
 どういった日常を送っていたのかセリムは話していない為、想像で考えるしかないが、とても殺し合いに乗るような少年には見えなかった。
 それがうずまきナルトの、セリム・ブラッドレイについての評価だ。

「ウッシ!それじゃあセリムを襲った少女はいた方角は―――」
「待ってくださいナルトさん……。誰か来ます」

 右手で作った拳を左手で受け止め、気合を入れて立ち上がるナルトに、セリムが声を掛ける。
 そう言われて気配を探ると、確かに誰かがこちらに向かってくるのを理解できた。
 忍者である自分よりも先に察知したセリムに不思議に思う部分があるが、今はこっちに来る相手に対処するのが優先だ。
 セリムを庇うように前に立ち、向かってきている方向に集中する。

 程なくしてやってきた存在は、旅をする衣装を着た少女であった。
 刀を携えており、真っ赤な髪をした、少し目立つ姿をした年が近そうな少女だ。 

「アナタ達はこの殺し合いに……、乗っている様子ではないわね」
「当ったり前だってばよ!誰があんな奴の言う事を聞くかよ!」
「すみません、お名前を伺ってもよろしいですか?」

 真紅色のロングヘアーをした少女は2人を交互に見ながらこの殺し合いの是非を訪ねてきた。
 高らかに殺し合いの反逆を口にするナルトと、後ろから少女の名前を尋ねるセリム。
 少女は腕を組み、真っ直ぐな目つきで名前を名乗る。

「私は『デッドエンド』のエリスよ。こう見えてもスペルド族だわ」

 後者は嘘である。
 だが、エリスは悪意や騙そうとして嘘をついたのではない。
 エリスの目的は「度胸試し」。
 悪逆非道の行為を行った海馬乃亜に反旗を翻すというなら、スペルド族を名乗る存在にどう対応するか、エリスは知りたかった。

「デッドエンド……?スペルド族……? 何だよそれは」
「スペルド族を知らないの!?」

 だが、ナルトの反応はエリスにとって全く予期せぬ返しであった。
 デッドエンドは魔大陸に飛ばされ、ルーデウスとルイジェルドの3人で旅をしてから名乗ったチーム名故に、理解されなくても仕方がないとエリスでも分かる。
 しかしスペルド族を知らないと返される事は想定してなかった。 
 なにせスペルド族は、世界全土で恐れられ、どの場所でも忌み嫌われる存在。
 「我が儘ばかりしているとスペルド族が来て食べられる」という子供への躾けの方言が、あらゆる地域で行われてる程だ。
 エリスは魔大陸で出会ったルイジェルドとの交流と、彼が語ったスペルド族の血塗られた悲しき過去―――を聞いたルーデウスからの言葉を受けて恐れる事は止めたが、他人はそうはいかない。
 その為ルーデウスは、魔大陸から帰郷するまでの旅路にて、スペルド族の名誉回復の手段を模索していた。

 驚きを隠せないエリスに、ナルトの後ろにいたセリムは前に出て言葉を話す。

「すみません。僕はセリムという者です。それぞれでどうも基本的な部分で嚙み合わない情報がある気がしますので、一旦話し合いたいのですがよろしいですか?」
「……分かったわ」

 幼いながらに丁寧な言葉を発するセリムの提案に、何処か思うところがあるのか、憮然とした表情をしながらも応じる事にしたエリス。
 そして話し合おうとした、その時。


『やあ、諸君』


 時刻は午前1時。唐突に海馬乃亜の放送が始まった。


 ☆ ☆ ☆ 


『―――では、今回の放送はここまでにしておこう。
 次の放送を聞けるのは、果たして何人かな?』

「アイツ、好き勝手言いやがって……!!」
「同感ね!言う事は生意気な事ばかりで、きっとチヤホヤされて育ったんだわ!」
「………」

 乃亞の放送を終えて、ナルトとエリスは怒りの言葉をそれぞれ口にする。
 一方でセリムは何も話さず、俯いて下を向いている。

「おーいセリム?」
「え、ええ。すみません。誰かが死ぬって悲しいですね」
「そりゃそうだってばよ。皆あんな奴のせいで死んだ様なもんだぜ」

 セリムの言葉にナルトはフォローを掛ける。
 ナルトは思い出すのは、一番最初に乃亞に殺されたルフィという少年について。
 あの少年については何も知らないが、あの様な最期を迎えていいとは全く思えず、生きていれば意気投合出来る部分もあったのかもしれない。
 改めて、乃亞への怒りと反抗を心の中で強くする。

「それじゃあ情報交換ってのをしましょうか」

 そんな思いを抱くナルトを横に、エリスはドカッと胡坐を組んで座り込む。
 なんだかデリカシーが無いなーと思いつつも、ナルトもエリスに向き合う様に座る。
 そしてセリムも座り、3人による情報交換が始まった。

 とは云うものの、この地に降り立ってから1時間。
 それぞれ語れる程多くの情報はなく、参加者とも一人二人くらいしか出会っていない。
 その為、情報交換の主な部分はこの殺し合いについてではなく、自分自身についてや、自分が育った国について話し合っう事になった。

 セリムは話す。総人口5000万超えの軍事国家、アメストリスについて。
 ナルトは話す。隠れ里の中で最も栄えている国、火の国・木ノ葉隠れの里について。
 エリスは話す。中央大陸西部全域を支配するアスラ王国と、危険な魔物が跋扈する魔大陸について。

「……どういう事だってばよ?」

 それぞれの話が終わって、ナルトは首をかしげる。
 どうもズレている事が多すぎる。違和感で済ませていいレベルではない。
 特にエリスの語る魔大陸は、それほど危険な存在がいるのなら、カカシ先生や中忍試験の際に名前が出ても良いのだろうが、そんな情報を聞いた記憶はない。

「セリム、お前が放送の前に言った嚙み合わない情報ってこの事だったってばよ?」
「……すみません。僕も忍者の事は知識に殆どなかったので違和感は抱いていたのですが、ここまで違いに剝離があるとは思ってなかったです」
「アスラ王国も魔大陸も知らない国家なんて、この世に存在するのかしら……?」

 三人はそれぞれ思った事を口にする。

「まあ難しい事はルーデウスに任せましょう」

 しかし議論に発展する前に、投げやりな言葉を発して考える事を放棄するエリス。
 確かに現状では確定的な結論が出ない気がするが、いきなり知らない誰かに投げるのはさすがにどうなのかと、ナルトは思った。

「あのー、今口にしたルーデウスさんとはどういった方なのですか?」

 何気ない質問をしたセリムだが、後にこの質問をした事をしくじったと思う事になる。
 質問をされたエリスは、勢いよく立ち上がった。

「ルーデウスは凄いのよ!!」


「ルーデウスはね、天才と呼ぶに相応しい魔術師なの!何が凄いのかというと、魔術を無詠唱で使う事が出来るのよ!魔術は本来なら言葉を発する事で発動するのだけれど、ルーデウスは言葉を発さなくても魔術を使えるのよ!簡単に聞こえるかもしれないけど、私がこれまで会った事のある魔術師の中で、実際に無詠唱魔術を使えるのはルーデウスだけしか見たことないわ!しかも、ルーデウスがいつ魔術を無詠唱で使える様になったと思う!?本人が言うには2歳よ!?私が2歳の時にはまだ剣も持ったことのないのに、ルーデウスが2歳の時にはもう魔術の本を読み始めて、実際に魔術を使えるようになったのよ!こんなに向上心あるなんて、ルーデウスを天才と呼ばないで誰を呼ぶのかしらね?!
 それに、ルーデウスは凄い勇気があるのよ!さっき私はスペルド族だって言ったけど、普通だったらスペルド族と聞いただけで皆殺されると思いたくなるくらい悪魔の様な存在なのよ!私も生まれて初めてスペルド族と出会った時は食べられて殺されるのだと思ったわ。でも一緒にいたルーデウスは怖がる素振りも見せなかったわ!それどころかスペルド族と話をつけてくれていたの!自分だって不安でたまらなかっただろうに、泣き叫んじゃった私をなだめてもくれていたわ!その時私は、なんて勇気のある人なんだろうと思ったわ!
 でも、私とルーデウスは生まれた時から一緒だったわけではないのよ。ルーデウスの出会いは私が8歳か9歳の時だったわね。ある日突然お父さまが連れてきて、私の家庭教師を務める為にやって来たのよ。最初に見た時は弱弱しく見えたし、年下の家庭教師だなんてバカバカしいと思ったわ。だから一発殴ってやったのよ!上下関係を教え込むには殴るのが最適だからわね!そしたらね、ルーデウスは何をしたと思う?私の頬を殴り返してきたの!こんな経験初めてだったわ!その時の私は気が動転して即座にマウントを取って殴り殺そうとしたけど、今となっては懐かしい思い出だわ。
 ルーデウスは当時から凄い人だったわ。なんでも知っていたし、なんでも出来てたわ。私に剣を教えてくれていたのはギレーヌだけれども、ギレーヌも一緒に学ぶ事が多くあって、ギレーヌも関心する程に沢山の事を教えていたわ。なのにルーデウスは自分自身も学ぼうとする意志があったし、私に家庭教師を行いつつも、獣神語や魔神語を覚えようとしていたわね。
 ルーデウスとの思い出で一番印象に残っているのはやっぱり10歳の誕生日の時ね。5歳と10歳と15歳の誕生日には大規模なパーティーを行うのが貴族の風習で、私は家族や貴族の子供達の前で踊る事になったの。けれども、私はそんな経験は無かったし、やりたくもなかったから何度も練習から逃げたわ。その度にルーデウスは私を連れ戻す為に説得してたし、私が踊れるようになる為に色々な練習を考えてくれていたわ。本番の時もルーデウスは一緒に踊ってくれて、あんなに胸が熱くなる事は初めてだったわ!」

「お、おう」

 ナルトはエリスは気難しい少女だと思っていたのだが、そんなイメージは思い込みであった。
 ルーデウスという人物を語らせれば自分の右に出る者はいないと言わんばかりに、熱を込めて話し続けた。
 そしてその表情は、これまでのムッとした表情から一転して、恋する乙女のそれであり、内容も褒め倒しであった。

「それからルーデウスはね―――」
「あー分かった、分かったってばよ!」

 延々と語り続けるエリスに、質問をしたセリムは面を食らってしまい、代わりにナルトが静止を掛ける。

「つまり?ルーデウスは魔術の天才で凄い子供で?この殺し合いに参加しているって事でいいのかってばよ?」
「そうよ、分かってるじゃない!」

 ナルトのまとめた一言にエリスは納得したようで、ニコニコした笑顔になって再び座り込む。
 程なくして、我を取り戻したセリムはエリスに話しかける。

「しかしエリスさん、よく短い時間でルーデウスさんの所在についての情報を得ましたね」
「いいえ、まだルーデウスの情報は何も手に入れていないわ」
「…? じゃあなんでエリスはソイツが参加していると断言できるってばよ?」
「? そんな事すぐに分かるじゃない。なぜなら私はルーデウスを信じているわ!」

「…………なんでエリスさんはそう信じ込めるのでしょうか」
「……私がいるのだもの。じゃなきゃ、私がいてルーデウスがいないなんで可笑しいわよ」

 そう呟きながら、エリスは再び憮然とした表情になり、眼が細く、そして鋭くなる。
 どうやらエリスの脳内では、ルーデウスの参戦が確定しているようだ。
 海馬乃亜はお友達がいない事を祈ればいいと喋っていたが、真逆の思考をしている事に不思議に思うナルト。
 ナルトからすれば、自身が好意を寄せている春野サクラがここにいるとして、「サスケ君も絶対参加してるわ」と熱を帯びて話す様なものなのだろう。全く面白くない話である。
 ナルトはセリムの方を見ていると、「えー…」といいたげな呆れた表情をしていた。

「まあ、誰がここにいるかどうかは朝の6時になればタブレットとやらに教えてくれるらしいから、そこまで深く考える必要はないってばよ」
「その事について聞きたい事があるのだけれど」

 ナルトは両手を頭の後ろに回しながら話した言葉にエリスは反応し、自分のランドセルに手を入れる。

「多分タブレットってコレなんだろうけど、どうやって使うのかしら」

 そういって見せびらかしたエリスのタブレットは、叩きつけたのか殴ったのか不明だが、フレームが歪な形状をしており画面にはあちこちヒビが入っていた。


 エリス・ナルト・セリム。この3人の住む世界事情に齟齬あれど、共通している部分は少なくとも一つあった。
 それは、コンピューター技術が未開の地である事。
 この片手で持てるサイズの硬くて薄い道具一つが、凄まじいテクノロジーの集合体であると、全く考えていない。
 かの異聞帯と呼ばれる世界を統べ人造の仙人に至った皇帝ですら、この技術と詰め込まれた緻密な機材と技能には驚愕していたのだ。

 ……その後の3人のタブレットの操作の戦いについては割愛させていただく。
 セリムがなんとか動かしながら、他の二人に操作を教えていくという状況になったのだが。
 ナルトとエリスは、戦闘センスは高いが座学はからっきしである為、タブレットの操作も当然すぐに覚えられるものではない。
 操作の難しさにイライラしたエリスが、ドラコ・マルフォイから強奪した無事なタブレットを叩きつけようとするのを、ナルトとセリムが止めるのが何度もあった。とだけ記載させていただく。



 ☆ ☆ ☆ 

「……それで、これからどうするってばよ?」
「どう、とは?」
「どこに移動するとか、ガムテとかセリムを襲った女の子についてとか?」

 タブレットとの格闘を終えたナルトは、気を取り直すような口調で二人に話しかける。
 返事を返したのはセリムだ。
 エリスは四苦八苦して開いたタブレットの中の地図を見て以降、黙りこんでいる。しかしそれが何故なのかはナルトもセリムのなんとなく理解はしてした。

「俺としてはガムテ野郎を早い段階でブッ飛ばしたいし、セリムを襲ったやつにも対処したいから、取り敢えずこの3人で―――」
「悪いけど、私が一人でソイツ等に会って斬りに行くわ」

 ナルトの言葉を遮る様にエリスが立ち上がり、地面に置いておいたランドセルを背中に背負う。
 数秒前までは物思いに耽っているように見えたその目は、今は闘志に燃えているに錯覚しかける程にギラギラになっていた。

「それにチンタラしてたらルーデウスと会えるのが遅くなるのもしれないわ。動き回って早く再開したいから、そのついでに斬って来るわよ」
「オイオイ、そんなに焦らなくてもいいんじゃねーか?」
「ナルトさん、よしましょう」

 口を動かすよりも身体を動かすタイプであるナルトであっても、エリスの唐突な発言とその決断力の速さに驚きつつ、先走る様な行動にナルトは口をはさむ。
 一方でセリムは冷静にナルトの方を静止させる。
 ナルトはセリムの方を見ると、セリムは目をつぶり首を振っていた。完全にエリスの好きにしろと言いたげな雰囲気をどことなく醸し出している。

「でもよーセリム。俺とエリスが一緒に戦った方がガムテ野郎や他のゲームに乗ったやつに勝てる可能性が高くないか?」
「ナルト。私とアンタが一緒に戦ったとして、誰がセリムを守るっていうの?」
「俺には影分身があるってばよ!」
「その影分身でずっと守り切れる保証はないわ。アイツの言う事なんて鵜呑みにしたくはないけど、ハンデとか何とか言ってたから、何かしらの制限がある可能性があるわ」
「うっ、それは……」
「それに、アンタの戦い方を私は見てないわ。そんな状態で行っても足を引っ張り合う可能性が高いわね。だったら、ハッキリと戦う側と守る側で分けた方がいいと思う」
「エー!それって俺はずっと戦わずにセリムを守るって事になるのかぁ!?」
「ナルトさん……、僕と一緒にいるのは嫌ですか……?」
「イヤ、そーいう訳ではねーけど、まあ任務で護衛とかもやった事はあるし……」
「だったら決まりね!」

 話し合いはもう終わりと言わんばかりに、エリスはナルトとセリムに背中を向けて移動する支度を纏める。
 ナルトは不満げな言葉を口をしようとにするが、これ以上話しても何も変わらないと理解し、代わりの言葉を伝える。

「エリス!! ……死ぬんじゃねーぞ」
「エリスさん、ルーデウスさんが本当にここにいて、僕達が会えたらエリスさんと会った事を伝えておきますね」
「分かったわ!」

 ナルトとセリムの言葉に、エリスは顔だけを向き直して声を返す。そしてすぐに顔を戻して、真っ直ぐに歩き始めた。




 ☆ ☆ ☆ 


「要はデッドエンドとスペルド族の名前は出しても意味はないって事ね……」

 歩き始めて5分を過ぎて、一人旅を始めたエリスはそう口にする。
 ナルトとセリムが暮らしていた世界と自身の世界の齟齬については、ルーデウスに再開して聞くまで保留。
 だが、実際にスペルド族の悪名を全く知らなかったという事は、スペルド族の名を使った行動は意味をなさないという事。
 これからは、名乗る際は自分の名前のみにしよう。エリスはそう考える。

 次に、この殺し合いに乗った人物について考える。
 セリムと襲った黒髪の少女と、ナルトが戦った少年・ガムテの二人だ。
 黒髪の少女については実際に戦ってどれくらいの実力なのか判断しないといけないが、ガムテについては明確な危険人物だ。
 ナルトによるとかなりのダメージを負わせたそうだが、出来るだけ早めに遭遇して、斬っておきたい所だ。

「それに……、絶対確認しておかないといけない場所が出来たわね」

 エリスは足を止めて、ランドセルに入れておいたタブレットを持つ。
 セリムとナルトと一緒に四苦八苦してなんとか理解した操作方法を思い出しながら、何とか地図を起動させる。
 エリスが見る名前はただ一点。G-4エリアの「ボレアス・グレイラット邸」。
 この存在を知る事が出来たのが、二人と一緒にいて得た最も重要な情報だ。

 名前からして、間違いなく我が家の事を指しているのだろう。
 必ず確認しなければいけない。なんなら、ゲームに乗った参加者を追うよりも、最優先で。
 魔大陸に転移されてからずっと、実家に帰る事を目的として旅を続けてきたのだ。

 しかし一方で、エリスがこの事について違和感、あるいはモヤモヤした気持ちを覚えていた。
 ルーデウス・エリス・ルイジェルドの三人が魔大陸で『デッドエンド』を結成し、旅を始めてからはや1年。
 苦しい事も沢山あったが、それ以上に楽しい事やワクワクした事を経験した旅であった。
 そんな旅の終わりを、「自分の家に戻る」という目的を、こんな殺し合いで済ませてしまっていいのか。そんな考えをエリスは覚えてしまった。

 もちろん、本物そのままの可能性はおそらく低い。イヤ、おそらく間違いなく紛い物だろう。
 それでも、無視できる存在ではない。
 何故なら、私は「エリス・ボレアス・グレイラット」なのだから。
 恐らくこの殺し合いで、その場所に最も縁のある存在なのだから。

「……とにかく、動きましょう」

 エリスは地図を閉じ、タブレットをランドセルの中にしまい、再び歩き始める。
 今は帰郷は雑念。ここは殺し合いの地で、何処に敵がいるのかは分からない。
 ルーデウスと再開する。マーダーは斬る。実家について確認をする。
 やらなきゃいけない事は多い。だが、やらないという選択は無い。
 そして、その為には歩み続けなければいけない。

 その時が来るまで、エリスは心の刃を砥ぐ。


【E-2南東/1日目/深夜】

【エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 ~異世界行ったら本気だす~】
[状態]:健康
[装備]:旅の衣装、和道一文字@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式×2(内タブレットは一つ破壊済)、ランダム支給品0~2(エリス)、ランダム支給品0~2(マルフォイ)
[思考・状況]
基本方針:ルーデウスと一緒に生還して、フィットア領に戻るわ!
1:首輪と脱出方法はルーデウスが考えてくれるから、私は敵を倒すわ!
2:殺人はルーデウスが悲しむから、半殺しで済ますわ!(相手が強大ならその限りではない)
3:早くルーデウスと再開したいわね!
4:どうして私の家がここにあるのかしら……。寄る必要があるわね
5:ガムテの少年(ガムテ)とリボンの少女(エスター)は危険人物ね。斬っておきたいわ

[備考]
※参戦時期は、デッドエンド結成(及び、1年以上経過)~ミリス神聖国に到着までの間
※ルーデウスが参加していない可能性について、一ミリも考えていないです
※ナルト、セリムと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました


 ☆ ☆ ☆ 


「エリスさん……、やっぱり自分の名前の家がある方にいくんですかね」
「さあな。それにしても、落ち着きってのが全くない女の子だったってばよ。好かれているっぽいルーデウスって奴がどんなのか見てみたいぜ」
「本当にココにいるのか分からないですけどね。それで、ナルトさんはこれからどうしようと思いますか?」
「うーん、俺も一応知っている場所には寄っておきたいからなー」

 エリスが去って見えなくなった頃に会話を再開したナルトとセリムは、タブレットを拙いながらも操作して、地図を起動する。
 地図の画像を見て、ナルトはある部分の場所に指をさす。地名の名前は、『火影岩』。


「火影岩って……コレ一体何なんですか?」
「火影岩はそのまま火影の岩だってばよ。スゲーでっけー顔でセリムもびっくりする事間違いないぜ!」
「説明になってない気がしますが……。とりあえずそこを目指しましょう。途中に病院があるのも何かの役に立ちそうですので寄りたいですね」
「ヨシ!目的地も決まったし、それじゃあ動くか!」

 一旦の目的とする場所も決まり、立ち上がり移動の準備を始めるナルト。
 ガムテと交戦した際に出来た傷も、セリムやエリスと話し合ったそこそこの時間である程度痛みも引いてきた。
 殺し合いに乗っているのがガムテだげではない事を知った。
 この1時間で多くの子供が亡くなった事も知った。
 なら、これ以上動かない理由はない。元来ナルトも考えるより動いて結果を出す行動派だ。
 海馬乃亜を打倒する為に、早く動いて仕方がないのだ。
 今は年下のセリムが一緒にいる為合わせているが、もし居なかったら自分自身も積極的に動き回っていただろう。

「少しお待ちくださいね、ナルトさん」
「オウオウ、自分のペースで良いってばよ」

 セリムもまた、ナルト同様に支度を始める。
 ナルトは声を掛けて、ペースを合わせて支度を行っていった。



(さっきの情報交換、この男と小娘の世界について……、どう考えるのが正しい?)

 セリム―――否、“人造人間(ホムンクルス)・プライド”は考える。
 ナルトとエリスが話した世界について、全く噛み合わない世界情勢について。

(忍者が隠れて国家経営を行っているらしい木ノ葉隠れの里はともかく、アスラ王国や魔大陸とやらは私の知る世界と全く一致がしない……。
 信じられないが、それぞれ別の世界があって、そこから拉致されたと考えれば一旦は説明が着く)

 “賢者の石”から供給されるエネルギーさえあれば、実質的な不老不死として生きるホムンクルスのリーダー格であるプライドは、数百年の時を生きている。
 その為、他国の情報など普段はどうでもいいが、自分の世界の世界情勢にもある程度は知識を持っている為、ナルトとエリスが語った大国の情報から、全く別の世界があるという結論に達した。

(わざわざ異なる世界から、それも子供に当て嵌まる存在だけを集めて殺し合いなんて、海馬乃亞は何を考えている……?
 おそらく何らかの実験と考えるのが妥当だろうが、ここまでの情報だけだと何も分からない……)

 海馬乃亜が今回このデスゲームを開いたのは、恐らく単なる娯楽や復讐といったものではない。
 『自分たちがそうしてきた』様に、何か裏があってこの血で血を洗う今回の戦いを画策したのだろう。
 だが、何をしたいのか、その真意へ繋がる情報が全く掴めない。
 しかし、情報が無い事についても理解は出来る。こちらも練丹術という異国の技術についての書物や情報を意図的に排除してきた。
 そうそう簡単に主催者に繋がる情報を手に入れる事は、恐らくないだろう。
 気になるのは地図にあった『海馬コーポレーション』という施設。機会があれば寄りたい所だ。

(……まあいい、まずは鋼の錬金術師がいるかどうかだ。それまではコイツにと一緒に行動して、極力無力な子供を装って動くとしよう)

 だが、プライドが一番求める情報は、主催者・海馬乃亜についてではない。
 計画にとって重要な存在であるエドワード・エルリックが参加しているかどうかだ。
 もし、参加しているのなら彼が死なない様に動かなければならない。しかし、彼の正義感を考えると必ず自分を顧みず無茶をするだろう。そうなっては今までの苦労が無駄になってしまう。

(頼みますよ、海馬乃亞……。彼が参加しているかどうかで私のスタンスが決まるのですから)

 幸い、6時の放送で参加者が判明する。
 どうせなら、今回の放送で全員の参加者を前倒しして発表してくれれば良かったのだが、どうもココではあまりホムンクルスの望むがままには事が進まないらしい。
 それまでは、「無力な大総統の息子/セリム・ブラッドレイ」を演じよう。
 これまで何年も、何十年もずっと演じてきたのだ。後5時間弱なら、なんら問題はないだろう。

「用意できました、ナルトさん」
「オー大丈夫か?それじゃあ行くってばよー!」

 “セリム”は支度が整った事をナルトに伝える。
 ナルトは元気よく目的地に移動する為に出発を始め、“セリム”に背中を向ける。疑う素振りは見えない。
 うずまきナルトの実力がどれ程なのかは不明だが、忍者を名乗る以上は全くの無力ではないのだろう。

「ナルトさん、改めてよろしくお願いしますね(精々必死こいて私を助けて下さいね……)」
「おう!このうずまきナルトに任せとけ!!」

 “セリム”の心に磨かれる悪意の刃を知らずに、ナルトは気合の入った言葉を掛ける。
 その言葉に顔では笑顔を作り、心で嗤う。


 セリム・ブラッドレイ―――傲慢のホムンクルスの刃が振るわれる刻は、おそらくそう遠くない。



【E-2/1日目/深夜】

【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:全身にダメージ(小)、右足に刺し傷(小)、治癒中。
[装備]:
[道具]:基本支給品、煙玉×4@NARUTO、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:乃亜の言う事には従わない。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:一先ずは、『火影岩』を目指して行動する。
3:ガムテの奴は次あったらボコボコにしてやるってばよ
[備考]
※螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
※セリム・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。


【セリム・ブラッドレイ(プライド)@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:もし居れば、鋼の錬金術師の生存を優先する。居なければ……。
1︰6時の放送まで、ナルトを盾に無力を装い情報を集める。
2:具体的な方針は放送まで保留する。
3:余裕があれば海馬コーポレーションに寄りたい。
4:海馬乃亜は何を企んでいる……?
[備考]
※ヨキに轢き逃げされて以降からの参戦です。
※ナルト・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。
※参加者がそれぞれ違う世界から来ていると考えています。



010:トリックルーム 投下順に読む 012:カサブタだらけの情熱を忘れたくない
時系列順に読む
032(候補作採用話):忍者と極道 うずまきナルト 030:関係なかった!!
124(候補作採用話):年齢詐欺 セリム・ブラッドレイ(プライド)
109(候補作採用話):ドラコ・マルフォイと紅い狂犬 エリス・ボレアス・グレイラット 042:男の子ひとりも知りもしないのに

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