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Frieren the Slayer

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砂塵が舞う。
閃光が迸る。
殺意と殺意が交錯する。


「砂縛柩」


低く底冷えのする声と共に、赤毛に隈取の少年───我愛羅が拳を握り締めていく。
眼前に立つ銀髪を二つに纏めたエルフの少女──フリーレンに砂が魔物の様に襲い掛かる。
だが、砂の魔手がフリーレンに届くことは無い。
フリーレンが、ワンドを振るうと同時に光線が発射され、砂を吹き飛ばす。
彼女の背後に控える異形の怪物、ハンディ・ハンディにも傷一つない。


「アハハハハハハ!どう人間!私の下僕の実力は!泣いて許しを乞うなら今の内よ!!」


同行者のフリーレンの強さにハンディは快哉を叫ぶ。
最初こそ大丈夫かと不安だったが、フリーレンは少年の操る砂を寄せ付けていない。
自分を守りながら戦っているにも関わらずである。
フリーレン自身は怖かったが、彼女は仲間との…ハーマイオニーとの軋轢を恐れている。
なら自分は殺せない。ヒー坊を失うのを厭い自分を取り逃がした宮本明たちと同じだ。
故に一先ずこの戦闘では自分に累は及ばない。その考えが彼女の気を大きくしていた。


────この敵は………


厄介だな。背後の堆肥以下の愚物は無視し、我愛羅とフリーレンの思考が重なる。
我愛羅にとっては後ろの口寄せ獣なのか何なのか良く分からない汚物を守りながら戦っているフリーレンの実力は驚異的だったし。
フリーレンにとってはまだシュタルクやフェルンにも満たない年齢で自分と渡りあっている我愛羅の実力もまた驚嘆に値するものだった。


───砂時雨!


我愛羅の身に纏う砂が、散弾銃に匹敵する速度で射出される。
これだけで、ハンディだけならば穴あきチーズになっている威力の攻撃だった。
だが、やはりフリーレンには届かない。
幾何学的な形状を形どった一般防御魔法によって、全ての散弾が防御される。
ここまで我愛羅は本気でフリーレンを殺すべく戦っていたが、今迄彼女に一撃もダメージを与えられていない。


(攻撃も防御も変幻自在……いい術を持っている。だが、それ以上に………)


この、フリーレンと言うらしい女の判断力が頭抜けている。
砂の散弾を放てば特殊な防御の術で防御し、砂で包み込もうとすればこれまた特殊な攻撃術で薙ぎ払う。
地盤を砕き流砂で包み込もうとすれば、空を飛行して無効化してくる。
我愛羅が繰り出す術の悉くを看破し、都度的確で冷静な対応を返し手を放ってくる。
チャクラ量も人柱力に匹敵する総量で、どんなに低く見積もっても上忍以上は確実。
ともすれば、木の葉に伝え聞く伝説の三忍にすら届くかもしれない。
そんな相手と戦っている───殺しあっている。
それは我愛羅にとって痺れるほどの高揚感をもたらしていた。
この女を殺し、自分の生を証明する。それが、彼を殺戮マシンとして突き動かす。


(あの女を殺すには並の術では不可能………)


点の攻撃では女の防御術を突破できない。
線の攻撃でも女の攻撃術に撃ち負ける。
ならば、狙うのは面の攻撃。
流砂瀑流で二人纏めて飲み込み、砂漠大葬で押しつぶす。
自分がいま使用可能な術で、この敵を殺せるとすればこの一手をおいて他になかった。
だが、あの女は今しがた流砂瀑流に対応して見せた。
如何に効果範囲の広い流砂瀑流とて、無策で撃っても対応されるのは必至。
駆け引きで、フリーレンと呼ばれた女に勝利する必要があった。



「チッ」


数十の交錯の果てに、フリーレンが肩に軽く走る衝撃と痛みに舌打ちする。
大地から伸び、槍のように鋭く形状を尖らせた砂の塊が掠ったのだ。
それを見た我愛羅はここだ、と。歴戦の魔法使いの陥穽を見抜く。


(女の防御術は完璧…だが、それはあくまで自分のみを守る時の話だ)


標的は、背後の掌のような頭をした化け物を守っている。
バケモノに対して致命的な攻撃を行ったときのみ、防御や攻撃が僅かに遅れる。
怪我を負ったことは今が初めてだが、砂自体が触れる事はこれまで幾度かあった。
そのどれもが、頭が掌の怪物を守ろうとした時の事だった。
一度や二度ならともかく、先ほどの接触で四度目。ここまで来れば間違いない。
これが、この女の……フリーレンの隙だ。


「ク、ククク……そうか、お前も………」


同じだ。
この女も、あの体術使いの下忍を庇った上忍や、金髪の女を守った甲冑の騎士と。
自分から、他者を守ろうとするもの。
絶対に、殺さなければならない。死を与えてやらねばならない。
この女を殺せば、自分はより強く生を実感できるだろう。
甲冑の女と戦った時とは違う。逃がすつもりはない。
その瞬間を思い浮かべ、ほくそ笑み。同時にそこへ至るための策を講じる。
砂瀑の我愛羅の殺意のボルテージは、最高潮に達しようとしていた。


(食いついたな)


そんな我愛羅の様子を冷静に観察し、フリーレンは彼の攻撃を捌きながら確信する。
彼は、自分の仕掛けた罠に食いついた。
まず前提として、目の前の少年は優れた魔法使いだ。
回避可能な状況なら、フェルンやシュタルクには交戦を避けるよう伝える手合いだ。
魔法は遠近両用かつ攻防一体で非常に強力。
更に魔力量も人間のそれではなく、精神(メンタル)も殺人に一切のブレーキがない。
恐らく、少年の中に潜む魔物の影響だろう。
フリーレンをして非常に危険な相手である。そう評価せざるを得ない相手だった。
もしこの少年が真っ当に成長したなら、きっと歴史に名を遺す魔法使いになった筈だ。


(だけど……殺す意思が強すぎるというのも考え物だね)


最初に違和感を持ったのは、砂の津波から写影たちを守った時だった。
フリーレンが戦闘時には常に行っている魔力感知が、少年の魔力に僅かなブレを生じさせているのを看破した。
フリーレンが自身を守る時には、彼は一切魔力の揺らぎを発生させていない。
だが、ハンディを守る為に防御魔法を使った時のみ、僅かに魔力に揺らぎを生じさせている。
まるで戦意高揚により、パンチが大振りになるボクサーの様に。
最初は規模の大きい魔法を使用したからかとも考えたが、ハンディを狙い撃ちした規模の小さな魔法でも揺らぎは発生していた。
そこで実験的に何度か交錯を繰り返したのち、フリーレンは確信する。
敵手は標的の、他者に対する防衛行動に執着している。
これを看破した瞬間、フリーレンの策は始動した。
後は、少年が乗ってくるのを待つのみ。そして、それはきっともうすぐの事だ。


(その前に、ハンディに聞いておかなくちゃいけない事がある)


放つ魔法の精度、威力の一切を緩めず。
視線も敵から切らぬままに、静かにフリーレンは背後のゴキブリ以下の存在に語り掛ける。



「ハンディ・ハンディ。これから一つ尋ねる。黙って答えろ」
「アハハハハハ!!怖いか人間よ!己の非力を嘆きなさ………って、え?」
「早く答えろ」


種族全体で人類とは尺度の違う気の長さであるフリーレンらしからぬ気の短さだった。
だが、彼女はこれ以上この喋って動ける汚物と口を利きたくなかった。
だから訝し気な態度を見せるハンディの心情を、一切気遣うことなく問いかける。


「ある魔法使いがいた。
その魔法使いは敵に操られた死体を容赦なく吹き飛ばす戦いをしていた」


ハンディ・ハンディは、魔法を知らない様子だった。多分演技ではないだろう。
となれば、ガッシュの様な別世界の魔族に類する存在であると見るべきだろう。
ではここでフリーレンが知りたいのは、ハンディがどちらの存在であるか、と言う事だった。
彼女の知る魔族と同一の存在であるのか。
それとも、ガッシュの様な、フリーレンの常識とは大きく外れた魔族であるのか。
この後の作戦にも関わる、一度きりの問い。


「それを咎める男がいた。ヒンメルという男だ。
その男に言われて、魔法使いは操られた死体を吹き飛ばす戦いをやめた」
「……?な、何の話よ?」


フリーレンの語る言葉の真意を測りかねて、ハンディ・ハンディは困惑した声を上げる。
だが、フリーレンにとってはそれで良かった。
発言の意図を探られて、無駄に言葉を選ばれては意味がない。
魔族は人間以上に人の感情を弄ぶ言葉を扱うのだから。
だから、間髪入れずに問いの根幹を、ハンディにぶつける。
恐らく、自分の予想が正しければ───


「やがて魔法使いを咎めた男は魔法使いよりも先に死んだ。
それでだ、魔法使いは男の死後も、男の言葉に従ったと思うか」
「ア、アンタそんな事より戦いに集中しなさいよ!」


理解不能。理解不能。理解不能だった。何だというんだこのクソ人間はこんな時に!
闘いの真っ最中に。そんな理解不能な魔法使いだか何だかの事を聞くなんて。
そんな事を聞かれても、ハンディにとってはどうでもいい。
咎められたからと言って、死後も言いつけを守るなんて馬鹿としか思えない。
フリーレンだって、そう思っているだろう。
冷たく凍り付いた視線と、宮本明のような合理性を突き詰めたような戦いっぷり。
この氷の様な女が死人の感傷を是とする心があるとは、とても思えなかった。
考える余裕をほとんど与えられないまま、ハンディは本能に従い解答を述べた。


「意味わかんない事言ってんじゃないわよ!そんなの、守る訳ないでしょ───」


だって、魔法使いを咎めたその男はもう。




「そのヒンメルって男はもういないんでしょう!?」




そう述べた。
そして、フリーレンの様子を恐る恐る仰ぎ見る。


「そう」



フリーレンは、正解だとも、不正解だとも言わなかった。
魔法も、飛んでこなかった。
だけれど、その瞬間。
ハンディ・ハンディはある一つの推論にたどり着く。
話に出てきた、魔法使いを咎めた男。
一緒に戦場に出ていることから、人間の男は子供などではないだろう。
だけれど、件の魔法使いとやらは男よりずっと長生きしたらしいと言う事は話で伺えた。
男は戦場で命を落としたのか?そうであったらいいのだが………
もし、その魔法使いと寿命で死に別れたのだとしたら?
ハンディ・ハンディはエルフが人間などよりも遥かに長命である事など知らない。
だけれど、魔法使いなら魔法で通常の人間よりも永く生きることが可能なのではないか?
他者の血を取り込むことで頂点に立った自分の主の様に。
何かしらの超常の手段で生きながらえたのだとしたら………?
そして、そう。その魔法使いがもし、もし目の前の───


「安心したよ、ハンディ・ハンディ」


そう言って、一瞥するフリーレンの流し目を見た瞬間。
ぞく、と。ハンディ・ハンディの身体に悪寒が走った。


「お前は“私の知っている”化け物だ」


それはどう意味だと、問う暇すらなかった。
ハンディの視界を砂塵が覆いつくしたのは、その直後の事だったからだ。


────砂漠葬送!!


砂瀑の我愛羅は、勝負に出た。
何やら言葉を交わしている様子の二人の周囲の地盤を砕き、流砂を作る。
更に、二人の周囲の砂を結集する事によって圧殺しにかかる。
二段構えの攻撃。ここまでは目の前の女なら対応して見せるだろうと我愛羅は見ていた。
だが、流砂に沈む身体と圧殺しにかかる砂を女自身はどうにかできても、後ろの手の怪物は別だ。
あれを助けようとすれば、流砂からの引き上げと迫る砂の消滅で二手遅れる。
更にここで我愛羅は今まで見せていない隠し札を切った。



「───ッ!?……伏兵か」


フリーレンの表情が無表情のまま、瞳だけが僅かに驚愕に染まる。
殺到してくる砂の中から、四足歩行の犬の様な怪物が飛び出したからだ。
怪物の名は『愚者(フール)』と言った。我愛羅が脳内に挿入したDISCにより得た力だ。
愚者のスタンドの犬の様な爪で、フリーレンの肩口が切り裂かれる。
反撃の光線が飛ぶが、愚者は命中よりも早く、俊敏に砂の中に潜り、溶け込んでしまう。
お陰で傷は浅かったが、我愛羅にとってこの攻撃は元より本命に繋げる布石でしかない。
隙は出来た。更にここからハンディを助けようとすれば致命的な物へと変わる。
果たして我愛羅のその予期した未来は、予期した通りにやって来た。


「イヤアアアアアア!!たっ助けッ!早く助けなさいフリーレン!!」


完全に砂に拘束された手の怪物が悲鳴を上げる。
助けようとしたためかは定かではないが、フリーレンの意識が完全に手の異形に向いた。
ここだ。我愛羅は確信を以て術を発動する。


────流砂瀑流!!



発動と共に、再び二人の獲物に押し寄せる砂の津波。
先ほどとは比べ物にならない速度で、周囲一帯ごとフリーレン達を飲み込みにかかる。
こうなれば先んじて砂に飲まれた異形を救うのは不可能だ。
救うために光線を発射すれば、その間に砂の津波に飲み込まれる。
見捨てられず砂に飲み込まれた場合はそのまま砂瀑大葬で殺す。
もしこれまで甲斐甲斐しく、手傷を負ってまで守って来た異形を見捨て空に逃げた場合は、砂に潜伏させた愚者で首を刈り取る。
何方を選んだとしても、フリーレンと言う女を待ち受けるのは死以外にありえない。
確信と共に、我愛羅は敵手の選択を見届けた。


───砂漠大葬!!


数秒後、女は最も愚かな選択をした。
自身の防御のための光線も、手の異形を救うための光線も撃つことはできず。
恐らくは動揺のままに、砂に飲み込まれていった。
我愛羅は間髪入れず砂にチャクラを送り込み、数十トン以上は確実にある砂の全てが殺意の塊に変貌する。
ただの人間がこの術を受ければ即死だ。間違いはない。
しかし、途中まではそれなりに楽しめたのに、最後は消化不良な幕引きだった。


「次だ……」


とは言え、相応に消耗させられた、休息をとる必要はあるだろう。
また戦闘を行うには一時間から二時間程休憩をとる必要がある。
その算段を立てながら、その場を後にしようとしたその時の事だった。
もう存在するはずのない視線が、彼の背筋を駆け抜ける。
視線の出所は、我愛羅から数十メートルは上空から感じ取れた。


「何────!?」


振り返り、仰ぎ見てみれば。
太陽を背に、表情を感じさせない氷の様な美貌はそのままに。
フリーレンが杖を掲げ、我愛羅に向けて指向していた。
まさか、脱出していたのか。これまで必死に守って来た蟹の異形を見捨てて?
それにしたって、早すぎる。あの状況から見捨てる判断をしても間に合わない。
思考を回し、その考えに行きついた時、我愛羅は気づく。
そう、最初から見捨てるつもりで、それを前提に飛行する術の速度をわざと落としていたのだとしたら?
敵の狙いは、あの異形を守ると思い込ませるためだったとしたら?


「その通りだ、お前は私の他人を守ろうとする行動に固執しているのには気づいていた」


上空で、フリーレンが我愛羅に告げる。
距離は離れていて、大きな声でもないハズなのに、妙に鮮明に聞こえた。


「だから罠を張った、わざと飛行魔法の発動時間を伸ばして、魔族を守る素振りをして。
痺れを切らしたお前が大きな魔法を掛けてくるまでじっと待った」


仲間を守る筈だと思い込ませた。
本来なら砂に包まれる一秒前でも脱出可能な上昇飛行の速度を誤魔化した。
力量を誤認させる、フリーレンの十八番。
それはただ、今この瞬間の為に。


「くっ………!!」
「遅い」


全身のチャクラを放出し、防御のための砂を操ろうとする。
だが、それよりも早く、フリーレンの杖から光線が迸った。
強く、眩い光だった。
我愛羅にとっては、当たれば死ぬ。そう確信させる死神の刃だった。
そうして、我愛羅の視界が光に包まれ。
白一色に、世界の全てが塗りつぶされた。




                ◆◆◆



地中より落ちのびた先で。
ゼェ、ゼェと荒い息を砂瀑の我愛羅は吐いていた。
敗北。
今はただ、その二文字が彼の脳を占領する。
殺そうとして取り逃がしたことは、この殺し合いで経験している。
だが、今回は明確な敗走だった。
敵の策に嵌まり、チャクラを無駄に消耗させられ。無傷では済まなかった。
敵の忍術が掠めた脇腹は、ごっそりと抉り取られたように消失していた。
既に血は止まり、肉体の再生が始まっているのは人柱力としての生命力の強さ故である。
もし守鶴の大狸が我愛羅の内に封印されていなければ、致命傷であったのは間違いない。


「ハァ……ハァ………ぐっ!」


ガン!と拳を大地に打ち付けて、悔しさを露わにする。
何だ、この体たらくは。
俺は俺以外の人間すべてを殺す為に存在していた筈だ。
その為に、母の命を奪い生まれ落ち。
あの日、夜叉丸を殺して生き残った。


───この子の名は我愛羅……我を愛する修羅………


───貴方は、愛されてなどいなかった……!


何度も何度も何度も何度も。
あの夜の夜叉丸の言葉が数えきれないくらい脳裏に呼び起こされる。
我愛羅にその言葉を吐いた夜叉丸の、その真意も知らぬままに。
ただ殺意と憎しみだけが、彼の中で膨れ上がっていく。


「クク……アハハハハハ……!」


敗北の事実を自嘲気に笑うと、堰を切ったかのように笑みが溢れてくる。
敗けはした、だが……俺は未だ生きている。それがどうしようもなく楽しい。
俺の存在はまだ消えていない。闘争と殺戮こそ、何よりも強い生の実感を与えてくれる。


「お前も……そうなんだろう………?」


周囲の気配に気を払いながら、独りの道をただ歩いていく。
考える事は、つい先程戦ったフリーレンと言う名の、杖を持った女。
あの女は強かった。
力で言えば金髪の女を守っていた甲冑の女の方が上だろうが。
それでも狡猾さ、戦場の経験値(キャリア)と言う点では群を抜いている。
あの女と比べれば、甲冑女以外はすべて有象無象と言わざるを得ない。
そして、フリーレンと言う名の女の瞳に、我愛羅は自身と同じものを見出していた。
即ち、強い憎しみの視線。
守る力よりも、敵を憎み殺す力の方が強いのだと、自分の在り方が肯定された様な気がした。
後は自分が彼女を殺し、自分の憎しみの方がより強いのだと証明するのみ。
まずは一度休憩を取り、消耗したチャクラと傷を回復させる。
人柱力であるこの身ならば、全身を強力な爆弾で吹き飛ばされるなどしない限り、二時間もあれば復帰できるだろう。

その後は……フリーレンを追撃するのもいいが、このエリアの付近に火影岩があるらしい。
木の葉の里の者ならば合流時のシンボルとして使用してもおかしくはない。
火影岩の近辺に身を潜め、奈良シカマルとうずまきナルトら木ノ葉隠れの里の忍を殺し、フリーレン戦のための戦力を蓄える。
もしこの二人が来なければそのままフリーレンの追撃に入ればいい。方針は定まった。
ただ、殺す。この後も憎しみが尽きぬ限り、殺し続ける。
そうだ、俺は────、



「俺は……自分のために戦う」



きっと、最後のその時まで。



【E-5/一日目/午前】

【我愛羅@NARUTO-少年編-】
[状態]チャクラ消費(大)、疲労(中)脇腹損傷(治癒中)
[装備]砂の瓢箪(中の2/3が砂で満たされている) ザ・フールのスタンドDISC
[道具]基本支給品×2、タブレット×2@コンペLSロワ、サトシのピジョットが入っていたボール@アニメ ポケットモンスター めざせポケモンマスター
かみなりのいし@アニメポケットモンスター、血まみれだったナイフ@【推しの子】、スナスナの実@ONEPIECE
[思考・状況]基本方針:皆殺し
0:一旦身を隠し休憩をとる。
1:出会った敵と闘い、殺す。フリーレンは特に殺したい。
2:火影岩の付近で身を潜め、うずまきナルト、奈良シカマルを待つ。来なければフリーレンを追撃する。
3: ピジョットを利用し、敵を、特に強い敵を殺す、それの結果によって行動を決める
4: スタンドを理解する為に時間を使ってしまったが、その分殺せば問題はない。
5:あのスナスナの実の使用は保留だ。
6:かみなりのいしは使えたらでいい、特に当てにしていない
7:メリュジーヌに対する興味(カオス)、いずれまた戦いたい
[備考]
原作13巻、中忍試験のサスケ戦直前での参戦です
守鶴の完全顕現は制限されています。




                ◆◆◆



「ダメだな……逃げられた」


本当に、大した相手だった。
あの状況から逃げおおせるとは。
フリーレンは眼下の砂の抜け殻を眺めて、そう評価した。
砂の抜け殻の下には、流砂と化した地面が広がっている。
恐らく大地を流砂化することで地面に潜り、そこからトンネルの様に地中を掘り進め離脱したのだろう。
フリーレンの力なら今から追跡できない事もないが、先に逃がした写影たちが心配だ。
追撃よりも彼らの保護を優先する。
だが、その前に“始末”しておかなければならない仕事がある。


「ピギュウウウウウッ!!!」


襲い掛かってくるハエトリグサに手足がついたような怪物。
怒り狂った様子で、フリーレンの矮躯を頭から飲み込まんとしてくる。
フリーレンは怪物に向けて無言で魔法を放った。
放つ魔法はもちろん魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)。
怪物は顎をもたげて、魔法ごとフリーレンを飲み込もうとする。
だが、それが叶うことはない。
放たれた魔法は怪物の体躯よりも遥かに大きく太い光の矢だったのだから。
抵抗すらできず、怪物たちは次々に光に飲み込まれ、消えていく。
ミサイルすら飲み込む変異種と呼ばれる怪物五体をフリーレンは瞬く間に葬り去った。
そして、つかつかと先ほどの戦闘で作り出された砂丘に歩み寄り、杖を指向する。
十秒ほど後に、ずるりと砂丘からグロテスクな怪物の残骸が姿を現した。


「テ…テメェ……ふざけんじゃ……ないわよ……この、クソ……おん、な……」


今や七割以上肉塊と化したハンディ・ハンディが恨み言をフリーレンに向けて吐く。
酷い有様だった。手の形をした頭部の指はどれもこれもあらぬ方向を向き。
頭部から下の肉体はぐちゃぐちゃに潰れてひき肉になっている。
我愛羅の魔法によって破壊されたのだろう。やはりあの少年は敵ながら強い魔法使いだ。
その我愛羅の魔法を受けて半死半生とはいえ生きているハンディの生命力も驚嘆に値するものではあるが。
だが、それももう終わりの時が迫ってきていた。


「アン、タ……最初、から、私を……嵌める、つも、りで………」


途切れ途切れになりながら憎しみを向けるハンディに、フリーレンは無言で杖を向けた。
ガッシュとこの汚物は同じ異世界の魔族だが、あり方は決定的に違う。
元より汚物まみれの匂いの中に血の気配を漂わせていたため十中八九人を殺すのに何の躊躇いもない魔族であることは確信していた。
それでも最後のチャンスとして、あの問いを投げた。
結果、見事にハンディ・ハンディはフリーレンの逆鱗に触れ、
その瞬間をもって、ハンディを囮にする作戦の決行が決定した。
ハンディに残れといった時点からこの策を思いついてはいたが、決行するかどうかはまだ決めかねていた。
ハンディが違う答えを返していれば、フリーレンの作戦も違うものになったかもしれない。
だが、その仮定は意味がない、というのが彼女の考えだ。
問いを投げた時点で、ハンディが彼女の知る魔族と同じ答えを述べることを確信していたから。


「……ぐ……ワタシ……達は、仲、間……でしょうが!?」
「お前と仲間になったことはない。これまでも、これからも」


図々しいハンディの発言をバッサリと切り捨て、フリーレンはその場を立ち去ろうとする。
その様を見て、ハンディは見苦しく引き留めようと声を上げた。



「待、ち、なさい……それ、なら……怪我を…治す、魔法、とか………」
「回復魔法は使えないんだ。そう言うのはハイターの役目だったからね」


尤も、使えたとしてもフリーレンがハンディに使用したかは非常に怪しいが。


「追って来るなら止めはしないし、もし望むなら楽にしてやるけど」


それがフリーレンにとって最大限の譲歩だった。
トドメを刺すことはハンディが希望しない限りしないが、助ける事もしない。
戦闘でズレたランドセルを担ぎなおし、冷淡に、冷徹にハンディに告げる。
傍目から見てもハンディの状態は完全に詰んでいる。
ここから自力で復活を果たすのは無理だろうし、助ける者もきっといない。
故に、待ち受けるのは二択だ。介錯を受けるか、そのままゆっくりと朽ち果てていくか。
当然、ハンディ・ハンディはそんな二択はごめんだった。


「ふざ…けるな。ふざ、けんじゃ……ないわよ……!そんなの、どっちも御断りよ………!」
「そう。それなら好きにするといい。じゃあね」


介錯を拒絶した以上、これ以上ハンディ・ハンディにフリーレンができることは無かった。
直ぐに写影達を救援に行かねばならない状況で、これ以上此奴に構っている暇はない。
そのまま場を去ろうとして、その直前に何かを思い出したように砂丘に向けて杖を掲げる。
そうして、確かあの怪物が出てきた地点はこの辺りだったと、魔法で何某かを行い始めた。
ハンディに、無防備な背中を晒して。


(こ、のクソ女……!本当に私を置き去りにするつもりね………!)


ハンディの血潮が憎悪に滾る。
殺す。絶対にこの女だけは殺すのだ。
クソガキから奪った体はもう使い物にならない。
だから───この女から体を奪う。
生首だけになろうとすれば首輪が警告するものの、爆発する前に身体を乗っ取ればいい。
無防備なフリーレンの背中を見て、ハンディは決意した。
例え多大なリスクを負うとしても、どの道ここで勝負に出なければ後がない。
ただ朽ち果てていくよりはよっぽどマシだ。
逼迫した状況と失血、そして何より憤怒と憎悪でハンディは冷静な思考力を失っていた。
故に、フリーレンをブチ殺す決定を下すのに躊躇は無かった。


(イヒヒ……この女の身体を奪えば、私も魔法ってのを使えるようになるかも……)


フリーレンは容姿だけなら、ハンディも認める可憐さだ。
更に魔法が使えるようになれば、あのさくらとかいうガキや自分を虐めた茶髪のガキに復讐ができる。
拷問のレパートリーも、更なる広がりを見せるだろう。
その未来を妄想して、ハンディ・ハンディは狂気にその異形を歪めた。


(殺す……殺す……殺す……殺す……殺す!)


あの女はきっと油断しているのだろう。
四肢がぐちゃぐちゃに潰れているのだから、もう動けまいと。
だが、このハンディ・ハンディ様は違うッ!
人間の様な下等生物と違い、首だけでも生存可能だ。
それどころか、這いまわり人間の子供程度なら食い殺せる。


(乗っ取ったらたっぷり使い倒してあげるわ、アンタの身体……)

ハァ…ハァー……
獰猛な吐息を漏らして、もぞもぞと蠢き、フリーレンに狙いを定める。
彼女は何かを発見した様子で、最早こちらには目もくれない。
今、思い知らせてやる。
誂えたように、首も千切れかけだ、フェイス・パージするのに支障はない。照準も良し。
このままクソガキの身体から一気に飛び出してあの能面のような面を貪り喰らってやる!


(さぁ…行くわよ。死になさいクソ女!!)



スポッ


「ガアアアアアアアア!!!ガアアアアアアア!!!!」


気の抜けた音と共に、ハンディの頭部が佐吉の肉体から分離する。
目にも止まらぬ早業だった。ハンディはその瞬間に限り、首輪の処理速度を完全に凌駕した。
そのままバキバキに折れたはずの頭部の五指を大地に付け、全霊の力を籠める。
背後(頭後)で首輪がピーッと音を鳴らすが気にしない。
そのまま猫科の肉食獣の様に、折り曲げた頭部の指を伸ばして跳躍。
フリーレンの背中に襲い掛かった。


「バリバリ頭から食べてやるわ!!死にクサレ、クソ女ァアアアアアアアッ!!!!!」


猛スピードでフリーレンの元へ。
狙いはクソ女の首級ただ一つ。
このハンディ・ハンディ様を裏切ったことを地獄に逝くがいい!
人間の頭部一つ、飴のようにかみ砕けるあぎとが疾風の様に迫る───!



ガンッ



そして、当然の様に展開されていた防御魔法に押し返された。


────禁止事項に接触しました。首輪の爆破を行います。


ハンディ・ハンディが最後に見た景色は、出会った時から一切変わる事無く冷徹だった、フリーレンの視線だった。
直後、ぼとっと跳ね返された先で、聴覚に響く、無機質な音。
彼女の終焉を示す、首輪の爆破を通達する電子音声だった。


「あり得ない……こ……このワタシが………」

そして。
多くの自衛隊員や無辜の市民を弄び貪り喰らった拷問野郎が、首だけになって放った最期の言葉は。
皮肉にも同じく葬送の魔法使いに倒された、断頭台の二つ名を持つ大魔族と、全く同じものだった。


────ボンッ


【ハンディ・ハンディ@彼岸島 48日後… 死亡】


フリーレンは今しがた一世一代の賭けに挑み、そして敗れた敗残者を数秒見つめた。
そして、さっき砂の中から取り出したある物に視線を落とす。
それは、ハンディ・ハンディのランドセルだった。
口は開いていて、恐らくさっきの異形はこれを出て襲い掛かって来たのだろうと推察する。
流石に支給品まで奪っていくのは盗賊の様で、するつもりはなかった。
最後にハンディ自身の支給品だけでも砂の中から掘り起こし与え、去るつもりだった。
それは、魔族に対するフリーレンの心情を加味すれば破格ともいえるほど温情に溢れた措置だっただろう。
もっとも、それも無駄に終わったが。


「………さて、急がないと」


数秒かからず意識を切り替えて、ハンディのランドセルの中身を自分の物に放り込む。
ハンディが生きていれば置いていくつもりだったが、死んでしまっては仕方ない。
もし凶器が入っていて、他のマーダーに拾われても面倒だ。持っていく事とする。
心配なのは写影達だ。自分が追いつくまで無事でいればいいが……
考えながら飛行魔法を使用し、その場を去ろうとする。
その前に、魔法使いは最後にもう一度、首から先を失った怪物の亡骸を一瞥した。
最後に襲い掛かって来たことについては、裏切りだとは思っていない。お互い様だ。
だから、自分がハーマイオニーと合流すれば、彼女の口利き次第では自分達が戻ってきて助かる芽も僅かにだがあった。
だがそれでも、この怪物は自分を殺すことを優先し、自らの手でその可能性を零とした。
実に、フリーレンの知る魔族らしい最期だったと言えるだろう。


「それじゃあね。ハンディ・ハンディ」


かつて、蟲の王に仕え、多くの人々を喰らった吸血鬼。
日本の東京と言う地に影を落とした悪は、世界を救った魔法使いによって討たれた。
葬送のフリーレンの伝えられぬ伝説が、また一ページ刻まれた瞬間だった。


【H-5/一日目/朝】

【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]魔力消費(中)、疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品×2、魔法解除&不明カード×3枚@遊戯王デュエルモンスターズ&遊戯王5D's、ランダム支給品1~2(フリーレン、ハンディの分)、
戦士の1kgハンバーグ、封魔鉱@葬送のフリーレン、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に業
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
0:写影達を追う。
1:首輪の解析に必要なサンプル、機材、情報を集めに向かう。
2:ガッシュについては、自分の世界とは別の別世界の魔族と認識はしたが……。
3:シャルティア、我愛羅は次に会ったら恐らく殺すことになる。
4:H-5の一番大きな民家(現在居る場所)にて、ガッシュ達と再合流したいけど。
5:北条沙都子をシャルティアと同レベルで強く警戒、話がすべて本当なら、精神が既に人類の物ではないと推測。
6:リーゼロッテは必ず止める。ヒンメルなら、必ずそうするから。
[備考]
※断頭台のアウラ討伐後より参戦です
※一部の魔法が制限により使用不能となっています。
※風見一姫、美山写影目線での、科学の知識をある程度知りました。
※グレイラッド邸が襲撃を受けた場合の措置として隣接するエリアであるH-5の一番大きな民家で落ち合う約束をしています。

084:或る相棒の死 投下順に読む 086:救われぬ者に救いの手を
時系列順に読む 087:ドロップアイテム
080:暴発 フリーレン 088:悪の不在証明
我愛羅 000:[[]]
ハンディ・ハンディ GAME OVER

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