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その時。
少女がまず認識したのは、体に走る岩壁に叩き付けられた痛みだった。


………デウス


そして、次に認識したのは彼女にとって最悪の景色。
少女よりずっとずっと強くて、それでも突然降りかかった災禍にはどうにもならず。
石畳に横たわる、恩人の姿と。


………ルー……デウス。


白髪の男に胸を貫かれた、たいせつな人の姿。
血反吐を吐いて崩れ落ちる少年の名を、ルーデウス・グレイラッドと言った。
彼はどう見ても致命傷だった。
生半可な回復魔法では死亡までに治癒は不可能。治せたならそれは正しく神の御業。
少女の恩人も、少女自身も、そんな回復魔術には縁が無かった。
お前はたった一人残った家族になりたい男すら救えない、無力で無能な女なのだと。
どうしようもない現実の二文字が、それを突き付けてくる。
彼女は泣き叫び、母や父、剣の師や祖父に助けを乞う事しかできなかった。
そして、それは今も───



「ルーデウス!!!」



真紅の鮮やかな髪を振り乱して、エリスは寝かされた寝台から跳ね起きた。
馴染みのない異国の一室と思わしき場所で、全身から嫌な汗を伝わせながら。
まだ覚醒しきっていない頭で、こうなるに至った経緯を記憶から辿る。


(確か……シュライバーから逃げて………)


首周りを包む、冷たい首輪の感触が現実を知らしめてくる。
シュライバーと名乗った白髪の怪物から逃げたのが記憶の結びで、そこからの記憶がない。
という事は、逃げる最中に自分は気絶してしまったのか?
彼女の思考が現実に追いついたちょうどその時、がちゃりと部屋の扉が開く。


「おう、起きたかエリス。体は大丈夫か?」


目に残るオレンジの服を身に纏った、頭の軽そうな少年。
うずまきナルトが、開けた扉の前に立っていた。
湯気を立てる白いカップと、牛の乳と見られる液体の入ったコップを乗せた盆を手にして。


「いや~シュライバーの奴から逃げた後、急に倒れたから焦ったってばよ」


シュライバーから逃走した後の記憶がないと思ってはいたが。
どうやら、あの後二十分も経っていない時間で、自分は突然倒れたらしい。
恐らくはシュライバーから受けたダメージが原因だろうと、ナルトは語った。
彼の推測の通り、エリスの体は現在進行形で体の節々が痛む。


「そう……アンタがここまで運んでくれたのね」


そう現状を認識しつつ、少し目を伏せがちにエリスはナルトを見た。
ナルトの様子は表情こそ疲れが見えた物の、既に目立った外傷は無くなっていた。
つい二、三時間前には内臓を貫かれた筈なのにも関わらず、だ。
ルーデウスの様に治癒魔法を使った訳でも無いのに異常な治癒能力だと、感嘆せずにはいられない。



「……ありがと」
「良いって事よ。俺ってば火影になる為に毎日鍛えているのだ!
だから、これくらいどうって事ねーよ」


そう言って、ナルトはニシシと得意げに笑い。
支えた盆の上のカップを手に取って、エリスに手渡してきた。
カップの中からは食欲を誘う香りが立ち上り、エリスの鼻孔を擽る。
中に入っていたのは、彼女にとって馴染みのない料理だった。
白く細長い穀物製と見られる生地が、茶色いスープの中を漂い。
卵を炒った物と思わしき黄色い欠片や、四角い四角形の肉片の様な物も混在していた。
それを見つめていると、ナルトは先んじて日本の棒で生地を挟みずるると啜る。
……実に美味そうに咀嚼していた。


「……これは?」
「何って…カップ麺だってばよ。もしかして食った事ねーのか?
喰える時に食っておけよ、でねーと肝心な時に力出ねーぞ」


もしここにルーデウスがいれば懐かしい食事に郷愁の念を抱いたかもしれないが。
当然ながら、エリスはカップ麺など食したことは無い。
だから仏頂面で提示された箸とフォークからフォークを選んで受け取り。
拙い手つきで、容器の中に入った細長い麺をちゅるりと啜った。


「……美味しい!」


魚介系の風味を感じるスープに、柔らかい触感の麺。
体力を消耗した今のエリスにとって必要な食事だった。
そうだろうそうだろうと得意げなナルトを尻目に、夢中で麺を啜る。
今度は先ほどの様にちゅるる、何て可愛い音ではなく、ずぞぞぞぞ、と野太い音が響く。
貴族の令嬢と言うよりは、山賊の様な食べっぷりで。
間近で見つめるナルトは、ちょっと引いていた。


「おはわり!」
「早ぇーってばよ」


あっという間に空になった容器に、苦笑いを隠せない。
だが同時にエリスの状態に安堵したような顔でナルトは部屋を出て。
直ぐに新しいカップを手に部屋に戻って来る。
最初はカップ麺がナルトに支給された食事かと思っていたが、どうやら違う様だ。
尋ねてみると、今いる民家に備蓄されていた物を拝借したとの事だった。


「あー!ダメダメ!カップラーメンは三分待つんだってばよ!」
「えー…面倒ね!」


直ぐに受け取って食そうとするエリスを、ナルトは些か必死な様子で止める。
エリスにとっては早く食べたかったが、どうやら様美式がある料理らしい。
それを認識すると面倒な料理ね、と零す物の、素直に引き下がる。
そして、自分の分をまた食べ始めたナルトを見つめて。
二十秒程の間を置いて、静かにエリスは尋ねた。


「……セリムは?」


エリスの口から出たのは、凶獣との戦いで殿を買って出た少年の事だった。
あの子と火影岩なる場所がある地点で落ち合う手筈だ。
だから、こんな所でのんびりしていていいのかと尋ねるのは必然であった。


「あぁ、そっちの方はもう向かってるから心配ない。
セリムの奴と首尾よく会えたら……俺達が今いる場所も分かるってばよ」
「……そう、便利ね」



向かっている、と言う発言から。
恐らくシュライバーとの戦いで見せた影分身と言う魔法を、既に使っているのが察せられた。
随分便利な魔法を使えて、尚且つ手際もいい物だとエリスは思った。
見た目は余り賢くなさそうだけど、存外頭の回転は悪くない少年なのかもしれない。
とは言えルーデウスには遠く及ばないだろうが。
そんな事を考えながら時間を確認する。まだ一分ほど時間があった。
また、僅かばかりの沈黙の後、再びエリスは口を開く。
セリムの安否については敢えて触れず。
尋ねるのは、二度目の放送前に戦った瓢箪を背負った少年についてだ。


「ねぇ、ナルト。
あの赤い髪の……我愛羅、って言った?あいつ、本気で止めるつもり?」


壁にもたれ掛かり、じっとナルトの蒼い瞳を見つめて。
エリスは真剣な表情で、今一度問いかけた。
我愛羅の事が初めて話の俎上に上がった時は、直後にシュライバーが襲撃してきた。
そのため、強制的に話は打ち切られたが……
シュライバーとの戦いを経た今、エリスは少しだけ思っていた。
あの圧倒的な戦力差のシュライバーを相手でも、ナルトとセリムは渡り合っていた。
自分が成す術なく滅多打ちにされるしか無かったにも関わらずだ。
我愛羅と言う少年を止める。最初に聞いた時は妄言でしかないとか思えなかったが。
今なら、もしかしたら目の前の少年なら我愛羅にも勝てるのかもしれない。
でも、だからこそ。


「あいつは…仲間でも家族でもないんでしょう。
アンタが命懸けで止めなきゃいけない様な奴なの?」


エリスの目には我愛羅と言う少年は強さこそ違えど、シュライバーと同じ殺人狂の様に映った。
あの少年が言葉で止まるとは思えない。
だからもう一度相まみえれば、あの少年がルーデウスに危害を加える前に斬る。
他の選択肢など浮かばなかったし、それ以外の選択肢を用意する程の男にも見えなかった。
でも、目の前の少年はあの破綻者を助ける事を心の底から望んでいる様子で。
エリスにはどうしてもそれが何故だか分からなかったのだ。


「教えなさいよ」


瞳を逸らさずに。
ベッドの上からナルトの瞳をじっと見つめて、エリスは尋ねた。
尋ねられたナルトは、普段の能天気そうな表情は鳴りを潜め。
暫し物憂げな表情をした後、ごくごくと自分が食べていたカップ麺のスープを飲み干す。
そして喉を複数回鳴らして、人心地ついてから静かに語り始めた。


「……エリスもシュライバーの奴から聞いてんだろ?
俺の中には化け物が……九尾の妖狐ってバケ狐がいるんだ」
「……強い魔物ってこと?」


九尾の妖狐。
かつて絶大な力を誇り、彼の生まれ故郷に多大な被害を及ぼしたとされる魔物。
ナルトの中に封印されており、シュライバーはそれを指して怪物と呼んだのだろう。
そして、ナルトが執心する我愛羅にも、そんな怪物が封印されているという。


「俺は体ン中に飼ってる化け物のせいで…ずっと独りだった
ワケ分かんねーまま、家族もいなくて…皆に憎まれて」
「…………」


出会った時からの明るい様相とは一変した、悲しみを湛えたナルトの表情は。
語る言葉が真実である事を訴えかけてくる。
だからエリスも口を挟まず、黙ってナルトの話に耳を傾け続けた。



「あいつはオレと…全部一緒だった。
でも、あいつは…オレよりもずっと一人ぼっちでずっと戦ってたんだ。
だから放っておけねーんだ。例えあいつが、俺の事を敵だと思ってても……」


悲痛さと決意を?き出しにした声だった。
その声を聞き、エリスは彼が我愛羅をどう見ているのか分かった気がした。
うずまきナルトという少年にとって、我愛羅と言う少年は同胞なのだ。
例え敵だとしても、同じ痛みを知る者なのだ。
だから救おうとしているのだと、エリスの胸の内で点と点が繋がる。


「エリス達に迷惑はかけねぇ。我愛羅の奴と会ったら、俺が闘る。
あいつが自分じゃ止まれねーっつーんなら…俺が手足へし折ってでも止めてやるってばよ」


揺るぎのない意志を込めた眼差しで、ナルトは宣言した。
本当に、心の底から我愛羅が止められる、止まると信じている瞳の彩だった。
こうなると、何をどう言った所で無駄だろう。確信できた。
だが、エリスも簡単に己の意志を枉げる様な少女ではない。


「……私は、敵は斬るわ。彼奴がルーデウスを傷つけるならね」
「…………………」


一切の誤魔化しをせず。
眼光を鋭くするナルトに臆することなく、彼女は宣言した。
つかの間、二人の雰囲気が張り詰める。
数秒後に衝突が始まってもおかしくない、緊迫した空気。
そんな空気の中で、しかし間髪入れずにエリスは続く言葉を紡いだ。
だから、と前置きをして。



「そうなる前に、アンタが何とかしなさい!」



斬らねばならない。私がそう判断する前に。
本当に手足をへし折ってでもあの少年を止めて見せろ。
それがエリスの考えた落としどころであり、ナルトへ示すスタンスだった。


「エリス……!すまねぇ」
「別に、謝らなくてもいいわ。斬らないって言ってる訳じゃないんだし」


謝罪するような、感謝する様な、複雑な表情を浮かべるナルトに対し。
エリスは仏頂面の顔を背けて、「それに」とエリスは続ける。
その脳裏を過るのは、あの日の記憶。
自分とルーデウスを襲った、転移と言う未曽有の災害のこと。


「私も、一人ぼっちになったらどうしようって、考えた事が無い訳じゃないし」


父も母も祖父も剣の師もいない、見知らぬ土地で目覚めて。
もし、ルーデウスとルイジェルドが目覚めた時隣にいなければ。
もし、家族が同じ目に遭い、より危険な荒れ狂う海だとか、深い谷底だとか。
そんな場所に転移していたら。
旅の最中、夜眠るときに、不安に駆られた事は一度や二度ではなかった。
何不自由なく、貴族の令嬢。狂犬エリスとして過ごしていた頃なら。
きっと想像すらできなかった喪う事の恐怖。独りになる事の恐怖。
まだ一端だけとは言えそれを知った彼女だからこそ、吐けた言葉だった。


「勝ちなさい。勝って、もう殺し合いなんて乗る気にならないくらいボコボコにするの。
ルーデウスでも、きっとそうするわ!」



力強く張り上げられた声から贈られた檄は、実にエリスらしいものだった。
そして勝ち気で何時でも好きな男(ルーデウス)が基準な彼女の言葉は、
やはり何時でもサスケが一番のあの子に似ているなと感じ、ナルトはふっと笑う。
そうしてサムズアップと共に普段通りの笑顔を浮かべて、彼はエリスに告げた。


「あぁ、我愛羅一人何とかしてやれずに……火影なんてなれる訳ねェからな!」
「……ずっと思ってたけどそのホカゲってのは領主か何か?」


何か地位の高い立場なのは察する事ができるが。
聞き覚えのない単語に、いい加減気になりエリスが尋ねる。
対してナルトの答えは素早く。彼にとっての火影の何たるかを語った。


「火影ってのは誰もが認める里一番の忍者で……
痛てー事や迷う事を我慢して、皆の前を歩いてるやつのことだ」


誇らしげに胸を張って、迷いなど欠片ほども無いように。
うずまきナルトは夢を口にした。
この一時間後の生存すら保証されていない世界で。
ウォルフガング・シュライバーと言う次元の違う相手に出会ったばかりなのに。
それでも彼の語る夢に込められたのは楽観ではなく、きっと。
人が決意や覚悟と呼ぶものなのだろう。それをエリスは直感的に感じ取った。


「……フン!苦労ばっかりしそうな奴ね。そんなの、アンタがなれるの?」


憎まれ口を叩いてから、珍しくエリスはしまったと思った。
でも、何だか今のナルトの話を聞いていたら悔しくなったのだ。
だって、今の自分は表面上、普段通りだけど。
あの白狼の怪物と相まみえてから、夢とか目標だとか。
未来の話をする気にはとてもなれなかったからだ。


───お前もルーデウスもそこそこ強い方だろうけど、ここはもっと強い奴等がうじゃうじゃしてるピョ。


今は亡き羽蛾の言葉が、脳裏に蘇る。
言われた時は深く考えないようにしていた言葉が、今はとても重々しい。
ルーデウスは強い。その事に疑いなんて僅かほども無いけれど。
でも、ルーデウスがシュライバーと出会ったらと思うと背筋が寒くなる。
感情とは別の、生物としての本能的な部分が告げていた。
あの殺人狂はエリスよりも確実にずっと強い。そしてルーデウスよりも。
最低でもギレーヌ程の強さが無ければ勝負するのは無理だ。
そんな相手と殺し合いをさせられている現状を考えれば、明るい展望など抱ける筈もない。
だから、それでも力強く夢を紡ぐナルトの姿が羨ましくて。
つい、自分が言われれば殴って痣だらけにしている様な話を。
他人の夢を腐す様な事を言ってしまった。
後悔してももう吐いた言葉は飲み込めず、バツの悪そうな顔で少年の様子を伺う。


「……ま、険しい道なのは確かだな」


しかしエリスの予想に反して、ナルトが怒りを見せることは無く。
目の前の少女の心境を汲み取った訳では無いだろうが。
それでも彼女が本気で、自身の夢を腐したかった訳では無い事を理解していて。
だから、続く言葉は相変わらず迷いも淀みもないモノだった。



「でも───元から火影に近道なんてぜってーねェんだ」



だから覚悟はしてるってばよ。
不敵に笑いながら、少年忍者はそう言い切る。
どこまでも挑戦者の笑みを浮かべて。
それを見ていると───エリスも少しだけ心を蝕む重圧が軽くなった様な気がした。



「そう……」


同時に、少し…見てみたいとも思った。
この少年が火影になった所を、ルーデウスと共に。
それ故に、彼女もまた笑みを返し。



「そう…ま、精々頑張りなさい!アンタはルーデウスを、ギレーヌと、ルイジェルド……
おじい様とお父様とお母さまの次位にはやる奴だって、評価してるから!」
「結構後ろの方だな、オイ」



ナルトの指摘に噴き出す様に笑みが零れ。
不意に時間を確認してみると、既に三分程時間が過ぎている。
もうとっくに、ラーメンが出来上がった時間だった。
そのためエリスはカップ麺の容器を受け取りつつ、再出発の確認を行う。


「これ食べたら出発するわよ」
「あぁ、さっさとセリムの奴を拾って我愛羅達やお前の言うルーデウスも探さねーとな」


まだ体は痛むが、体力自体は回復できた。
そうなれば、このままじっとしている訳にもいかない。
シュライバーや我愛羅がルーデウスと会うまでに合流しなければならないのだから。
算段を立てつつ、フォークを麺に添えて今度はずるずるずると豪快に啜る。



「おーい、誰かいるかー!?」



玄関口から声が聞こえたのは、その時の事だった。
一瞬で弛緩した空気を張り詰めさせ、二人は警戒しながら廊下の奥の玄関口の様子を伺う。
…突然のタイミングだったので、エリスはカップ麺を持ったままだったけれど。


「怪しい者じゃないし、悪くも怖くもない凄くいい感じの勇者だからさー。
だから、誰かいてくれたら返事をしてくれると俺嬉しいんだけど!」


玄関には背中に刀を背負い、真紅のバンダナを巻いた少年が立っていた。
表情に敵意は感じられない。むしろ何か馬鹿っぽい。
それがナルトとエリスの両名が感じた、目の前の少年に対しての第一印象で。
二人は顔を見合わせると言葉もなく頷きあい、少年を迎えた。
現れた少年の名を、ニケと言った。





          ◆          ◆          ◆



『行くのかい?ニケ』
『あぁ、おじゃるの奴を探してやらねーといけないからな』

『……そうか、分かった。ただ、その前にフランの事で少しいいかい?』
『ん、何?』

『彼女を許してやって欲しい。彼女も君を怒らせようとしてあぁ言った訳じゃないんだ』
『…別にいいよ。怒ってる訳じゃないし』

『感謝する。……彼女はまだ、人との接し方が分かっていないんだ』
『ま、それは何となくわかるよ。でも、ああいう事を言うのはやめさせといた方がいいぞ』

『彼女が僕らといる事を望む限りは、辛抱強く面倒を見るよ』
『……苦労するかもしれないけど、頼んだ。それじゃな』

『───ニケ、最後にもう一つだけいい?』
『まだ何かあんの?別にいいけど』
『すまない、でも。最後にもう一つだけ────』





         ◆          ◆          ◆




「マジかよ……中島以外にもそんなやばい奴らがいるの?」



ネモ達と別れて少しあと。
俺が出会ったナルト達は、運のいいことに悪い奴らじゃなくて。
少なくとも中島みたいにこっちに襲い掛かってくる気配はない。
だから、直ぐにお互い知ってる事を話す流れになったのは有難かった。
何しろ、早くおじゃるを見つけてやらないといけない状況だからな。
もっとも、ナルト達が話す内容は、余りいいもんじゃなかったけど。


「こう……うまい事潰しあっててくれないかな………」


この島にはクロや中島の他にもヤバい奴がいるらしい。
特にシュライバーって奴は一段とおっかないそうだ。
逃げることすら難しいとかどんなズルだ?そんなのどうにもならないぞ。
雄二やおじゃる達が、ナルト達の話す怖ぇー奴らと出会っていない様祈るしかない。


「アンタの言う中島ってのも随分厄介そうね。
他人に化ける上に本人も強い魔物なんて。まぁルーデウスなら簡単に見抜いちゃうだろうけど!」


エリスの言うルーデウスはとても頼りになる魔法使いらしい。
ククリみたいに沢山魔法が使えて、エリスみたいな可愛い子と仲いいなんて羨ましいけど。
まぁ俺としては頼れる魔法使いならぜひ力を貸して欲しい。
と言うか、滅茶苦茶頼りたい。中島だけでもまた会ったら殺されそうだし。
そんな事を考えながら、危ない奴の次は信頼できる奴の話に移る。


「沙都子にマサオにセリム……あと一応サトシって奴も信用できそうか」
「言ってた奴が奴だから、どれだけ本当かは分からなないけどね」


エリス達は夜明けまで余り他の参加者と会っていなかったらしい。
だからか、話に出てきた信用できる奴人数は何とも頼りなかった。
俺も人の事は言えないんだけど。


「そっちは水銀燈におじゃる丸…あと雄二にネモって奴で全員か?」
「あぁ、そいつらは取り合えず俺が見た感じじゃ協力できそうだったよ」


雄二たちについては今どこにいるかも良く分からないし、何とも言えない。
でもネモ達の居場所は凡そ見当がつくし、追加で伝えておかないといけない事が一つ…
いや、もう二つあったか。


「ふーん……そのネモって奴は首輪せるのね?」
「あぁ、けっこー自信ありげと言うか、首輪について色々知ってそうなのは確かだと思う。
俺には難しくてよく分かんなかったし、直ぐに別れたから悪いけど本人に聞いてくれ」


余り無秩序に広めて、乃亜に気取られたくない。
話をする前置きで、ネモはそう書いた紙を見せてきた。
…まぁどの道俺には難しくて説明とか無理だし、本人から話を聞いてもらうしかないけど。
それでもエリス達にとって初めてできた首輪を外せるアテだったみたいで。
反応は悪い物じゃなかった。生憎エリス達も人探しの真っ最中みたいだけど…
ネモはカルデアにいるって居場所もハッキリしてるしな。
だからこの話は最後まで良い話で終われる。問題は、もう一つの方だ。
こっちの方は、少なくとも俺には割り切れない話だったから。



「あと……これはあんまり俺自身信じていいか分からねーんだけど………」




自分でも、歯切れが悪くなってるのが良く分かった。
まず、話自体余り良い印象のない話だし。
でも、もう切り出した以上黙ってる訳にはいかない。
エリスはさっさと話せという目で見てるし、超怖ぇーよ。
結局、俺はエリスの視線に耐えきれなくて、溜息を一つ吐いて話を切り出した。
フランとネモが言っていた、ドラゴンボールについての話を。


「…………………………………………………………」


話している間、ナルトの方は如何にもピンと来てないって顔で。
まぁ無理もないよなと思った。
対するエリスはずっと無言だった。
ずっと無言で、俺の方を心なしか睨んでる気がする。可愛いのに超怖い。
俺がネモ達から聞いた話を話し終わっても、エリスは少しの間無言だった。
俺とナルトは、じっとキョーツケの姿勢でエリスの言葉を待つ。
そうしないと絶対ヤバいって確信があった。
めちゃくちゃ長く感じた十秒くらいの間を置いて、エリスが口を開く。
出てきた言葉は、俺の予想とは大きく違っていた。



「───成程ね。そのドラゴンボールっていうの、信じようと思うわ」
「…………へ?」



てっきり、適当な事を抜かすなと怒られると思っていた。
俺の考えていた話の流れに反してエリスはあっさり俺の言葉を信じると答えて。
その意味を直ぐに理解できず、ちょっと固まってしまう。
だけどこんなのは序の口で、エリスが本当に怖くなったのはここからだった。



「………言い出したのは自分のくせに、随分不服そうね」
「い、いや……だって、俺自身あんまり信じられない話なのに、
まさか信じるって言うとは思えなかったからさ」
「それだけじゃないでしょ。ウソついてんじゃないわよ」



腰に手を当てながら、エリスは俺の顔を覗き込んでくる。
と言うかガンを飛ばしてくる。
貴族のお嬢様とは思えない目力だ。もう不良だろこいつ。
可愛い女の子に見つめられてるのに、冷や汗が止まらない。


「話しておいて、乃亜が何か対策してるかもだの、問題が起きるかもしれないだの」


まるで、信じてほしくないみたいな物言いだったわよ、アンタ。

エリスは俺の目をじっと見つめながら、そう言った。
その言葉に何故か、見られたくない部分を暴かれたみたいな、そんな気分になって。
面白い推理だ探偵さん、漫画家にでもなったら?後藤ヒロユキ位は売れるかもよ?と言いかけてやめる。
言ったらマジで殺されそうだもんな。


「……じゃあ逆に、エリスは本当にこの話信じるのかよ?」
「バカね、信じるわけないでしょ!」


えっ、と声を上げる。
ついさっき信じるって言ったのに?
俺がそう考えたのを察したのか、エリスは自分の考えを説明してくれた。


「まるっきり頭から信じる訳じゃない。アテにはしない程度に期待するってだけよ。
第一、そんな大事な話をアンタの又聞きで判断する訳ないじゃない」
「いや、でも……」



エリスの考えに。
俺は咄嗟に「でも」と、そう返した。
そして、口にしてから考える。何が「でも」何だ?と。
エリスの言ってる事は刺々しいけど筋が通ってる。
悟空って奴から直接話を聞いて判断するのは多分間違ってないはずだ。
じゃあ何が引っかかってるのか、分からない。
そんな俺に、エリスは見透かしたような目で言った。


「………もういい加減言っていいかしら。アンタは信じる信じない以前に……
そのドラゴンボールを使う事に納得できてないんじゃないの?」
「………っ!?」


ぐさ、と鋭くて見えない剣が胸に突き刺さったみたいだった。
さっき、エリスが言った言葉が蘇る。
本当は、エリスたちにドラゴンボールの事を信じてほしくなかった。
何だそれ、胡散臭いってそう言って欲しかった。
ドラゴンボールがあるから死んでも大丈夫だって、思って欲しくなかった。
だから、俺は無意識にそういう答えが出てくる様に話をしてたのか?


「じゃあ……エリス達も、他の奴らが死んじまったとしても……
ドラゴンボールで生き返らせればいいって思ってるのか?それに納得しちまうのか?」


俺は気づけば、エリス達にそう聞いていた。
さっきのエリスの問いかけの答えになってない上に。
質問自体、話としてあんまり繋がってないけど。
それでも尋ねないままいるのは無理だった。
そんな俺に対して、エリスは顔を横に向けて。


「ナルト、アンタはどう思うの?」


唐突にナルトに話を振った。
突然話を振られたナルトは「なにっ」と声を上げて。
ちょっと困ったみたいに腕を組んで考え始める。
それから十秒…三十秒……一分ってずうっと考えて。
そして、プスプスと頭から煙が出てきてから、だー!と大きな声で叫んだ。


「しょーじき、鵜呑みにするには話が胡散臭すぎて、俺にはピンと来ないってばよ!」


よく通る声で、ナルトはそう言った。
すぐ後に「でも、ニケの話で気になった事は他にある」そう続けて。


「その…ニケにドラゴンボールの事を教えたネモだっけか。
そいつらも別に後で生き返らせればどんだけ犠牲が出てもいい……
なんて事は思ってないんじゃねーの?」


最初俺は、ナルトの考えがよく分からなかった。
だってネモ達は実際におじゃる丸を探そうとする俺を引き留めた。
特にフラン何かは正に今ナルトが言ったみたいなこと言ってたし。
そう考える俺に、頭の後ろで手を組んだナルトが考えを説明してくれる。


「だって、ネモ達が残ってほしいって言ったのはドラゴンボール云々より……
この首輪を外すために色々やるから、安心してそれができるように残ってほしいって。
ニケの話的には俺ってばそう言いたかったんだって思ったけど、違うのか?」
「…………………」
「首輪嵌めてるうちは、俺たちずっといいなりの奴隷だろ?
でも首輪外せば従う必要ねぇし、マーダーと一々戦う必要もなくなるってばよ。
そうなればシュライバーみたいな奴らから逃げ回りながら他の奴ら助けて、
それから首輪を外すのに取り掛かるより助かる人数は多くなりそうっつーかさ」



ナルトの説明に、俺は何も言い返せなかった。
フランは今振り返っても生き返るから大丈夫だって、そういう物言いだったけど。
その後に話したネモの言っていた事は、そういう話だった様な気もする。


「あと、ドラゴンボールに乃亜が何か余計な事やっててもさ。
それ、今の俺達にあんまし関係ないんじゃねーの?
だって、肝心のドラゴンボールって珠はこの島にないんだろ?」


ナルトの言葉を聞いてから少し考えて、「あ」と声が出る。
よくよく考えてみりゃ、ドラゴンボールが使えたとしても。
実際に使えるようになるのは乃亜を何とかして、この島を出てからになる。
ドラゴンボールはこの島に無いんだから。当たり前と言えば当たり前の話だった。


「い、いや、でもさ。乃亜が予めドラゴンボールを壊しておくとか……」
「それはあり得るかもしれねーけど、それ言い出したら俺達何もできなくなるってばよ。
乃亜が気合入れて予め邪魔するとしたら、まずここから出る事だろうしさ」
「………まぁ、そうだな………」


ここまで言われれば何も言い返せない。
ナルトの言う通り、乃亜の立場で心配するとしたら。
島になきゃ問題ないドラゴンボールより、島から逃げられる事だってのは分かる。
直接この島から出るのには関係ないドラゴンボールが手を加えられてるなら。
脱出なんて更にガチガチに性格の悪い対策がされててもおかしくない。
そこで俺は、ちょっと考えが後ろ向きすぎたかな?と自信が無くなって来た。


「その、じゃあナルトもさ、ネモ達の言う事が正しいって思うのか?」
「いや。俺がそのネモに会ったとしても、我愛羅を探すのを優先したと思うってばよ。
それに……俺もよく分かんねーけどさ」


もし胡散臭いその話をアテにして生き返れなかったらって心配も。
生き返るから大丈夫だって、犠牲が出る事を受け入れるのが嫌なのも。
俺ってばニケが正しいと思う、ナルトは俺にハッキリと言った。
それを聞いて、少しホッとする。
まぁその後直ぐに、「ただ」とナルトは続けたんだけど。


「ニケの言ってる事が全部正しいなら……それはそれで不味い気がすんだよ」
「………?それは、どういう────」


ナルトの答えに一番戸惑ったのは、多分この時だと思う。
ただ、何となくこの話はハッキリさせておかねーと不味い。
そう思って、どういう意味なのか説明してくれと言おうとした時だった。
俺の首筋に、冷たい刃物の感触が伝わってきたのは。
恐る恐る、感触の出所を探る。
すると、エリスが冷たい目で俺に刀を突きつけているのが分かった。


「……こう言う事よ」


どう言う事だよ。
エリスが突然刀を突きつけてきた、その事しか俺には分からない。
ナルトに助けてという目線を送っても、ナルトは何かに気づいた顔をして。
そして、何故か腕を組んで見守りモードに入っていた。助けてくれよ。
そう思っていると、背中でエリスの声が響く。


「私にはルーデウスって幼馴染がいるの」


は?



「ルーデウスは凄いのよ!
今よりずっと小さな時から無詠唱魔術が使えて、私には及ばないけど剣術もできて。
それに何より誰よりも賢いの!それから─────」


待て待て、本気で何の話をしてるか分かんねーぞ。
話を聞いて、そう思った俺はまたナルトの方に顔を向ける。
でもナルトもそれは俺にも分かんねぇって顔で顔を背けるだけだった。
そのままルーデウスへ誉め殺しが始まったけど、首に刀を当てられてる俺は身動きできず。
結局、ルーデウス賛美会終わったのは、五分以上後の事だった。
でも、終わってからルーデウスの話をしてた時とは違う、消え入りそうな声で。


「………でも、ここにはルーデウスより強い奴がいるわ。多分一人や二人じゃない」



心の底から、本当は認めたくない。
そう言ってるような声で、エリスは話し続ける。
聞いてて痛ましくなる声で、口を挟めない。



「だから!絶ッ対!万が一!太陽が逆側から昇る位ありえない事だけど!!」



────ルーデウスに、もしもの事があるかもしれない。
俺が聞いたその言葉は、震えてた。
真剣に、大事な話をしてるんだって事は伝わって来る。
でも、俺にはまだ、エリスが何を言いたいのか見えてこなかった。


「私は乃亜が大ッ嫌い。ルーデウスを…私の家族を、殺し合い何かに巻き込んで許せない」


後に立ってるエリスがどんな顔をしてるかは分からない。
でも、多分出会った時の様な、凶暴な位お転婆な表情はしてないと思う。
声色と話してる内容から、段々エリスが何を言おうとしているのか。
ぼんやり分かって気がしたのはこの時からだった。


「私の剣はルーデウスの為にあるんだから、乃亜に従って人を斬る何て死んでも嫌」


でも、
そう言って、少しの間エリスは押し黙ってしまった。
俺はやっぱり口を挟めない、何を言っていいのか分からなくて、石像になったみたいだ。
そんな俺に、エリスは一度剣の柄を握り締めなおして。
そして言った。



「それでも…願いを叶えられるのが乃亜だけなら……
ルーデウスに万が一の事があった時、私は殺し合いに乗ると思う」
「─────ぁ」



その言葉で、やっと。
俺は、エリスが何を言いたいのか分かった気がした。
話と話が繋がる。




────私、もう永くないの。



頭の中で、クロが俺に言った言葉が響く。
確かに、ドラゴンボールがアテにできないなら。
結局、万が一の事があった子供を生き返らせる事ができるのは。
願いを叶える力を持ってるのは……乃亜だけって事になる。
じゃあ、今切羽詰まってる奴らはやっぱり……乃亜に頼るしかない。
俺が話した内容だと、そう言う話になっちまう。



────ねえ、しんちゃんを生き返らせることはどうなるの?



次に頭の中で響くのは、そう言った時のフランの顔と声。
少し怒った様な顔と声には、今思えば悲しさもあった様な気がする。
やっぱり殺し合いに乗るしかないのかって、彼奴はそう思いかけてた。
勿論、今でもフランの言ってた事は、俺は受け入れられない。
生き返らせる事ができるかどうかも分かんないのに、死んでも大丈夫なんて言えない。
でも……あの時は彼奴自身が大丈夫なのかと思ってたけど。
今にして思えば、もしあの時。
フランが殺し合いに乗ってたらそれは俺が話した事が原因だ。
ネモが一度殺し合いに乗ったあの子を必死に説得したのに。
それを台無しにしちまう所だったのかもしれない。
そこまで考えついた時には、エリスは話の締めに入っていた。


「───でも、そんなのは絶対に嫌。嫌だから…………」


だから、ドラゴンボールなんてモノが本当にあるのなら……
私はそれを信じたい。賭けたいの。
私が私である為に。私が、ルーデウスの知ってるエリスでいるために。

それが、エリスの結論だった。
ドラゴンボールなんて胡散臭い話を、信じたいって思ってる理由だった。
それを聞いて、俺は。


「あー……くそ」


今でも俺の考えが間違ってるとは思わない。
生き返れるか分かんないのに、死んでも後で生き返れるから大丈夫なんて俺は言えない。
その考えを枉げるつもりはないけど。でも。
エリスの話を聞いたら、ドラゴンボールを信じたいって奴の気持ちも分かった。
この島は酷い場所だ。たった六時間で二十人以上死んでる。まともじゃない場所だ。
そんなまともじゃない場所でまともでいるためには、きっと皆………
多分希望って言うか、支えになる物が必要なんだ。
なのにさっきまでの俺の話は、その希望がアテにならないって宣伝してるみたいなもんだった。



───それ、勇者(ニケくん)が言っちゃうの?



ジュジュがさっきまでの俺の姿を見て、話しを聞いたら、こう言うかもな。
全く、勇者が希望に水を差してりゃ世話ないよな。
ククリにだって、きっとがっかりされちまう。それは嫌だ。
だから俺は、がばっとエリスの方に向き直って。


「あのさ。さっきまでの……ドラゴンボールの話…乃亜がどーとか
ふくさよーがどーとか、一旦全部ナシにしてくれ!!ごめーーーん!!!!」



大きな声で謝った。
それから、ドラゴンボールについて今確かに分かってること…
願いを叶えてくれる伝説のアイテムであること。
マーダーに迂闊に伝えようとしたら首輪が鳴ってヤバいこと。
孫悟空って奴がそれについて詳しく知ってること。
この三つ以外は一旦忘れてくれと頼んだ。
信じるかどうかは、悟空に直接会って話を聞いてから判断してくれ、とも言う。
素人の俺やネモの想像よりも…何度も使った事のあるらしい悟空に聞いた方が頼れるかどうか判断しやすいだろうしな。
それ以外の余計な心配は一旦全部ナシ、伝えるのはハッキリしてる情報だけでいい!
話を聞いてドラゴンボールを信じると決めたなら、俺も何も言わない。
取り合えず俺の中でそう言う感じに纏まった。



「よーし!そうと決まればもうこれ以上考えるのはやめだ!やめやめ!
ギャグキャラがウジウジ悩んでたら読み手からキャラ違うだろとか言われちまうしな!!」
「一瞬で何も考えてない気の抜けたアホ面になったわね」
「まぁ話に納得いったならいいんじゃねーの?」



やっぱり男はルーデウスみたいに賢くないとだめね、何て言いながら。
エリスは構えてた剣を降ろした。
顔は呆れてたみたいだけど、心なしか話し始めた時より柔らかくなってた気がする。
多分、エリスも不安に思う事があって。
今の話の中で少しだけその不安に整理がついたのかもしれない。
そんな事を考えていると不意にナルトと目が合った。
へへっと笑い合って、少し前のこと。ネモが別れ際に言った言葉を思い出す。



───ニケ、君の考えはきっと正しい。
───でも、僕達の方も、今の自分の考えが間違ってるとは思ってない。
───多分、何方も正しいんだと思う。
───この殺し合いを止めるには何方かじゃなくて、きっと何方も必要なんだ。
───僕達が首輪を外している間に君が皆を助けてくれれば…犠牲になる数はずっと減る。
───だから、よろしく頼むよ。そして……健闘を祈る、また会おう。



言われた時はフランの態度が引っかかって、ちゃんと返事ができなかったけど。
あの時のネモの言葉の本当の意味を、今分かった気がする。
さっさとおじゃるを見つけて、カルデアまで引っ張って行かないとな。
だからそれまで生きてろよ。おじゃる、ネモ。





          ◆          ◆          ◆



話が纏まってから数分後。
エリスとナルトとニケは再出発をしようとしていた。
解散し、各々手分けして出発するのも考えたが。
全員に探し人がいる事と、シュライバーの様な参加者に単独で出会えば手に余る。
その判断から、三人で行動する運びとなった。



『ふわあぁ…あのクソどーでもいい話、やっと終わったかァ~』
「今迄寝てたのかよ、アヌビス」
『あぁ、俺は敵を兎に角斬って斬って斬りまくれれば後はどうでもいいからなァ~!』
「お前やっぱその辺の便器に突き刺して行こっかな」
『冗談だからやめろマジで』


今迄静かだと思ったら、どうやら居眠りしていたらしい。
ぐっしっしと笑うアヌビス神に、呆れた様子でニケは相槌を返す。
そんな一人と一刀の姿をナルトとエリスはまじまじと見ていた。


「ねぇねぇねぇ!今喋ってたのその剣?ちょっと見せなさいよ!」
「喋る刀か……口寄せした獣が変化で化けてるって訳でもなさそうだな」
『……クソッ弾かれるッ!あの妙な契約書のせいかッ!?』
「はいはい、こいつ呪いのアイテムだから迂闊に触れるなよー」


魔法や忍術がある世界でも珍しい逸品に、二人は興味を引き寄せられる。
刀身をなぞったり、手触りを確かめて初めて見る喋る刀の様子を検めた。
途中どさくさに紛れて乗っ取りを試みるアヌビスだったが、上手く行かない。
それどころか、数秒で柄が滑ってエリスもナルトもちゃんと握れないのだ。
どうやら魔法の契約書が上手く働いているらしかった。


「二人とももういいだろ?時間が惜しいからさっさと行こうぜ」


今はアヌビスと遊んでいる暇はない。
だから、ニケは速やかな出発を促した。
エリスもナルトも最初は喋る刀に興味を惹かれていたが、直ぐにニケに返却する。
喋れても握れないのであれば、武器としては役立たずだからだ。
それに急ぐ必要があるのは二人にとっても同じだった。
そのためニケに促されるまま、一行は出発しようとする。


「────ん?あれ?」


その矢先に。
ナルトが前方からもう一人、走って来ていた。
今迄一緒にいた筈のナルトが二人いる。
その奇妙な現象にニケは咄嗟に今迄一緒にいたナルトの方を見た。
すると傍らにいたナルトは悪戯っぽく笑って、どろんと消える。
今度はエリスに尋ねてみれば、ナルトは分身の術が使えるらしく。
どうやら今迄一緒にいたのは分身の方だったらしいと、その時初めて知った。
エリスの介護を分身に任せ、本体は先行していたのだろう。
説明を受け、もう一度本体と見られるナルトに視線を戻す。
血相を変えて、何やら焦っている様子だ。
その答えは、彼の背中に背負われている存在にあった。


「こいつってば突然空から振って来たんだ。怪我はないけど気は失ってる」


ナルトの背中で呻く金髪の少年。
取り合えず、何かあったのは明白なので放って置く訳にはいかない。
だが、目が覚めるのを待っているほど、この場にいる全員に時間は無かった。



「私、こいつに被せる水持って来るわ。取り合えず部屋に運んでなさい!」
「お、おぉ……起きなくても殴ったりするなよ?」
「殴らないわよ!………多分」


多分なのかよ。
ニケとナルトは心の中で突っ込むが口には出さない。
そのまま慌しく気を失ったままの少年を部屋の中へと運んでいく。
しかし放って置く訳にはいかないが、出発しようとした矢先にこれとは。
出鼻を挫かれるとはこの事だろう。


「どうせ振って来るなら可愛い子がよかったなー…なぁアヌビス」


金髪の少年を背負ったナルトに続きつつ、ニケは背中に背負うアヌビスに軽口を叩く。
だが、アヌビスは応えなかった。
絶句した様子で、わなわなと震えている。
まるで信じられない物を目にしたように。
そんな彼の様子を怪訝に思ったニケは、もう一度名前を呼んで。


「……アヌビス?」


それでもアヌビスは応えない。
ニケの言葉は最早彼の耳に入っていなかった。
それほどまでに、今の出会いは衝撃だったからだ。
名簿に名前が載っていた時はまさか、と思った。
だが、ナルトの背に背負われていた金髪の少年。
アヌビス神はその少年を知っているッ!
高貴さを感じさせる顔立ちと金の髪を知っているッ!
衝撃に誘われる様に、アヌビス神はその者の名前を大声で呼んだ。



『ディ……DIO様ァ~~~~~~!?!?!?!?』



【D-5/1日目/午前】

【エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 ~異世界行ったら本気だす~】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、少しルーデウスに対して不安、
沙都子とメリュジーヌに対する好感度(高め)、シュライバーに対する恐怖
[装備]:旅の衣装、和道一文字@ONE PIECE、悪鬼纏身インクルシオ@アカメが斬る!(相性高め)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ルーデウスと一緒に生還して、フィットア領に戻るわ!
0:放送までに火影岩に寄ったあと、ルーデウスを探す。
1:首輪と脱出方法はルーデウスが考えてくれるから、私は敵を倒すわ!
2:殺人はルーデウスが悲しむから、半殺しで済ますわ!(相手が強大ならその限りではない)
3:ドラゴンボールの話は頭の中に入れておくわ。悟空って奴から直接話を聞くまではね。
4:早くルーデウスと再開したいわね!
5:私の家周りは、沙都子達に任せておくわ。
6:ガムテの少年(ガムテ)とリボンの少女(エスター)は危険人物ね。斬っておきたいわ
7:ルーデウスが地図を見れなかった可能性も考えて、もう少し散策範囲を広げるわ。
[備考]
※参戦時期は、デッドエンド結成(及び、1年以上経過)~ミリス神聖国に到着までの間
※ルーデウスが参加していない可能性について、一ミリも考えていないです
※ナルト、セリムと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました

※沙都子から、梨花達と遭遇しそうなエリアは散策済みでルーデウスは居なかったと伝えられています。
 例としてはG-2の港やI・R・T周辺など。

【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:チャクラ消費(小)、疲労(中)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品×3、煙玉×4@NARUTO、ファウードの回復液@金色のガッシュ!!、
鏡花水月@BLEACH、ランダム支給品0~2(マニッシュ・ボーイ、セリムの支給品)、
エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、ねむりだま×1@スーパーマリオRPG、
マニッシュ・ボーイの首輪
[思考・状況]
基本方針:乃亜の言う事には従わない。
1:火影岩でセリムを拾ってから我愛羅を探す。
2: 我愛羅を止めに行きたい。
3:殺し合いを止める方法を探す。
4: 逃げて行ったおにぎり頭を探す。
5:ガムテの奴は次あったらボコボコにしてやるってばよ
6:ドラゴンボールってのは……よくわかんねーってばよ。
[備考]
※螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
※セリム・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。


【勇者ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:全身にダメージ(中)、疲労(中)、仮面の者(アクルトゥルカ)
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険、ヴライの仮面@うたわれるもの 二人の白皇、龍亞のD・ボード@遊戯王5D's(搭乗中)
[道具]:基本支給品、丸太@彼岸島 48日後…、リコの花飾り×3@魔法陣グルグル、沙耶香のランダム支給品0~1、シャベル@現地調達、沙耶香の首輪
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗っちゃダメだろ常識的に考えて…
0:おじゃる丸と水銀燈を探す。銀ちゃんは、マジで見捨てそうだから大急ぎで。
1:とりあえず仲間を集める。ナルトとエリスに同行する。
2:クロエを探して病状を聞き出す。
3:マヤ……
4:DBの事は俺の考えが間違ってるとは思わないけど、あんまり後ろ向きになっても仕方ないか。
5:取り合えずアヌビスの奴は大人しくさせられそうだな……
6:フランはあいつ本当に大丈夫なのか?
※四大精霊王と契約後より参戦です。
※アヌビス神と支給品の自己強制証明により契約を交わしました。条件は以上です。
ニケに協力する。
ニケが許可を出さない限り攻撃は峰打ちに留める。
契約有効期間はニケが生存している間。
※アヌビス神は能力が制限されており、原作のような肉体を支配する場合は使用者の同意が必要です。支配された場合も、その使用者の精神が拒否すれば解除されます。
『強さの学習』『斬るものの選別』は問題なく使用可能です。
※アヌビス神は所有者以外にも、スタンドとしてのヴィジョンが視認可能で、会話も可能です。
※仮面(アクルカ)を装着した事で仮面の者となりました。仮面が外れるかは後続の書き手にお任せします。

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]気絶、精神的疲労(中)、疲労(中)、敏感状態、服は半乾き、怒り、メリュジーヌに恐怖、
強い屈辱(極大)、乃亜やメリュジーヌに対する強い殺意
[装備]バシルーラの杖[残り回数1回]@トルネコの大冒険3(キウルの支給品)
[道具]基本支給品、光の護封剣@遊戯王DM、ランダム支給品0~1(永沢の支給品)
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:…………
1:キウルを利用し上手く立ち回る。
2:先ほどの金髪の痴女やメリュジーヌに警戒。奴らは絶対に許さない。
3:キウルの不死の化け物の話に嫌悪感。
4:海が弱点の参加者でもいるのか?
[備考]
※参戦時期はダニーを殺した後


102:澆季溷濁(前編) 投下順に読む 104:僕は真ん中 どっち向けばいい?
時系列順に読む 110:ルサルカ・シュヴェーゲリンの受難
098:闇の胎動 勇者ニケ 107:ADVENT CHILDREN
072:死ヲ運ブ白キ風 エリス・ボレアス・グレイラット
099:DRAGON FLY うずまきナルト
ディオ・ブランドー

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