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ダンゲロスSS上海
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ダンゲロスSS上海

最上級にかわいいの!

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dangerousss_shanghai

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喬芽芽は生まれながらの美少女であった。
家族は彼女を愛し、かわいがった。
そして愛された少女は確信した。

「私って世界一かわいい」

学校に進学しても彼女の自信は揺らぐことがなかった。
彼女を見た誰もがみんな彼女にこう言った。

「太可愛了」「太可愛了」

誰もが目を奪われていく。
誰もが彼女を崇めている。誰もが彼女に堕ちていく。

学園のアイドル。女王様。姫。
芽芽をたたえる称号が次々と増えていく。

そんな光景を見て喬芽芽はどんどん自信を深めていった。
そして確信する。

間違いない。

人気絶頂のアイドルよりも、カリスマモデルよりもどんな存在よりも私はかわいい。
私は世界一の最高の美少女だ!

もちろんほめたたえる人間ばかりではない。陰口もあった。
ごめんね。可愛くて。嫉妬しちゃうよね。ごめんね、こんなにかわいく生まれてきちゃって。

悪意にもまったく意に返す様子もなく、自分の道を進む芽芽。
究極最強美少女の誕生した瞬間であった。

その後紆余曲折を経て、芽芽は魔都上海の喧騒の中で「解決屋」として名を馳せるようになった。上海の闇市から高層ビルの影まで、どんな依頼も彼女の「可愛さ」で片づけてしまう。敵対するヤクザのボスが彼女の視線一つで膝を折り、ライバル組織の刺客が武器を落とす。--「太可愛了」と呟きながら。


◇◇◇◇


ある霧雨の夜、喬芽芽はいつものようにピンクのグラデーションヘアを揺らし、厚底ブーツの音を響かせて路地を歩いていた。黒とピンクのフリルワンピースが雨に濡れる。

「ふふん、雨に濡れる私もかわいらしいわね」

どんな時でも芽芽の可愛いさに揺らぎはない。
たとえゴミの中に紛れてたって彼女はかわいい。掃き溜めの中の鶴がそれでも美しいように。
絶対無敵の自己肯定感の塊。それが喬芽芽だ。

「しかし、特にダイヤの捜索は進展もないわね。私の次に光り輝く宝石だし、私みたいな輝く存在にぴったりかもって思って調べてみたけど」

あのダイヤは、自分にふさわしい。あわよくば自分のものに。魔都上海の解決屋の例に漏れず、ダイヤへの興味を隠さない芽芽。

「いっそ上海大賽にでも参加してれば良かったかしら」

芽芽はかわいい。かわいいは最強。
よって、最強は芽芽である。
だから、芽芽は上海大賽でも最強を目指せるというのが芽芽の考えである。

最終的に武闘会はそこまでかわいくないかもということで取りやめたのだが。

手持ち無沙汰に伸びをする。すると、スマホの通知音が鳴り響いた。依頼の通知だ。芽芽が十の指輪が輝く指先でスマホを弄る。

護衛の依頼。護衛対象であるカルミア・チャムリーという名前を芽芽は知っていた。百年節に招かれた野心家の若い貴族令嬢。行方不明になった清王朝のダイヤと呼ばれる【魔幇】の秘宝。その情報を知っているのだと噂されている。そのせいで複数の影から狙われているらしい。

今の上海の動向を考えれば彼女の持っている情報の精度は重要でない。どんな些細な手がかりでも欲しいと思っている連中がたくさんいる。
ダイヤの情報を口実に暴れまわっている奴らさえいる。

「へぇ、清王朝のダイヤの関係者かぁ。私も運が向いてきたよね。ふふ、護衛なんてお安い御用よ。大船に乗ったつもりでいなさい」

首元のチョーカーのハートを指ではじき、上機嫌でカルミアの泊っているというホテルのレストランに向かった。

そしてレストランにたどり着いた芽芽はその一席に座るカルミアを見つけた。

「へえ、実際に見ると結構美人ね。まぁ、私ほどじゃないけどね♡」

そのまま席に向かいカルミアと対面する芽芽。
宝石のような青いドレスを着たカルミアの金髪が優雅に揺れる。

「あなたが喬芽芽?実力のある解決屋だとは聞いてますけど、本当に信用できますの?」

ダイヤの騒動で多くの解決屋に連絡がとれない中やっと繋がった相手ではあるが、派手な地雷系ファッションに身を包んだ軽薄そうな美少女の姿に疑いの目を向ける。
カルミアの言葉に芽芽が胸を張って回答する。

「仕事はきっちりするつもりよ。私の可愛さの前には誰も寄せ付けられないもの。貴方のことは絶対に守るわよ。大船乗ったつもりでいてくれたらいいの。せっかくだしダイヤのことも教えてくれたら嬉しいけどね♡」

ダイヤへの関心を全く隠さない芽芽にため息をつきそうになるが、関心がないような顔を向けつつ刃を向けてくるような輩よりは良いのかもしれないと考え直す。
ダイヤの騒動を逆手にとってさらなる地位向上を目指さなければならない。上海への足がかりとしなければ。
そのために目の前の少女はどれほど使えるのか。

「まあいいですわ。ひとまず料理でも食べながらこれからについてお話ししましょう。ここの料理は——」

その時、レストランの扉が破壊され、外から怪しい影が飛び込んできた。黒服の男たち——ダイヤを狙う秘密結社の刺客だ。率いているのは中華風の礼服に身を包んだ長身の男。

「いたぞ!少しぐらい傷つけてもかまわん。確保しろ」
「わかりました藍龍さん」

藍龍と呼ばれた男の指示の元、ナイフを持った黒服がカルミアに迫る。芽芽は即座に反応し立ち上がった。

「かわいくない奴らねえ」

男達の姿を見て芽芽が率直な感想を漏らす。

「早速来ましたわね。私を守ってもらえますか」
「当然でしょ」

芽芽がフリルの裾を翻し、カルミアを庇うように前に出る。ナイフは芽芽の身体に刺さらず、そのままはじかれた。

「なっ」
「ふふん、当たり前でしょ。私より可愛くないヤツらが、傷つけられるわけがないんだから」

ツインテールを揺らしながら華麗にキックを繰り出す。厚底ブーツが腹にめり込み、男はそのまま倒れた。

「私の可愛さは最強なの。もっとかわいらしさを磨きなさい」

別の黒服が襲い掛かる。ナイフを振り下ろす。先ほどと同じようにナイフが身体から弾かれる

「だからあんたらごときが無理だって。私のかわいさは世界一なんだから」

芽芽はくるりと一回転し、華麗なハイキックが男の頭に突き刺さった。

「太可愛了・・・・・・」

男はそう呟き崩れ落ちた。その後も迫る男達を次々となぎ倒していく。キュートに。かわいらしく。

カルミアは自身に危険が迫る中、驚きの目でその光景を見つめていた。

「馬鹿な・・・・・・」

目の前で繰り広げられている光景に呆然とする藍龍。

「ふふん、私は世界一かわいいの♡誰にだって負けるわけがないわ」
「可愛いだと?それが何になる」
「わかんないの?かわいいは正義。かわいいは最強なのよ」

芽芽がウィンクと同時にハートのチョーカーを弾く。

「ふざけるなあ!」

激高した藍龍が龍のオーラを身にまとい、それを放った。藍龍の魔人能力だ。
両腕から放たれた龍が周囲の机や椅子、床を破壊しながら芽芽に突っ込んでいく。
だが芽芽は動かない。

「きれいねぇ!でもね、残念♡私よりかわいくないわ」

龍の気が芽芽を中心に爆発する。床の破片が宙に浮かび、龍の光がはじける。
煙が晴れると何事もなかったかのように芽芽がその場に立っていた。

「私が無傷でムカついちゃった?ごめんね」

顔の前で両手を合わせて舌を出す芽芽。

「おのれ!ならば貴様がそんな余裕を持てないほど恐怖を刻み込んでくれるわ!!」
「へぇ……できるもんならやってみなさいよ♡」

藍龍のオーラが爆ぜる。窓ガラスが割れ、外気が吹き込んでくる。慌てて巻き込まれないように逃げるカルミア。

藍龍がオーラを纏いながら芽芽に突っ込んでいく。

芽芽と藍龍の最後の一撃が交差する。
次の瞬間、藍龍は崩れ落ちた。

「ね、言ったでしょ?かわいいは正義。かわいいは最強って」

逃げまとっていたカルミアが芽芽のもとにやってくる。

「貴女、本当に凄かったのですわね」
「だから言ったでしょ。大船乗ったつもりでいればいいって」

人差し指を口に当て、カルミアにウインクをする芽芽。

「さて話の途中だったわね。でもここだともう続きは無理よね」

芽芽が荒れ果てた店内を見渡しながら言った。外から吹き抜ける風が芽芽のツインテールを揺らした。

「そうですわね・・・・・・。仕切り直しといたしましょう」

カルミアと芽芽は店を出て行った。



魔都上海。混沌の坩堝。光と闇が交差する街。
今この街は清王朝のダイヤを巡る争いで混乱に染めあげられていく。

だが、混乱に包まれた上海の夜は、きっと彼女のピンクの光で照らされていくだろう——。
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