「泥棒とかさ、やめないか?」
金持がわたしにそう言う。
「どうして?」
わたしはそう聞き返す。
「どうしてって……」
金持は言葉を濁す。
またこいつは、堅苦しい法律とか、重苦しい仮定の話を持ち出す気だ。
「何者にもわたしは縛られる気ないよ」
「はぁ」
金持は「もういい」ともろ手を上げた。
とか、言いつつも、手を貸すこいつはどうなの? と思うが、そこは黙っておく。
「それにしても、毎度毎度、その格好……」
袖や裾を、びりびりに破いた制服を指して、金持はそう言った。
「別に……いいじゃん」
そう、そっけなく答える。
私のスタイルなんだから、あんたにとやかく言われる筋合いはない。
「へそとか丸見えだし……恥ずかしいだろ」
「別に、見せてるわけじゃないし、こっちのが動きやすいんだよね」
ヒラヒラの膝下何センチとか、そういうのをこいつは求めてる。
金持は、大きなため息を吐いて、空を見上げた。
「で、今日のターゲットは?」
「アレ」
私は、校舎の向かいにポツンっと立っている体育館を指差す。
「今日は、理事長室じゃないのか?」
「今朝見てきたら、すっからかんだった。というか、あそこに金庫隠すの見た」
「それって、バレてるんじゃ……」
「まぁ、あんたはいつも通り、警備員の注意を引いてくれればいいよ」
「おれ、さすがに、目を付けられてんだけど……」
金持が不安そうにわたしの顔を見る。
「いいよ、別に。忽然と金庫からお金だけが、消えたらそれは、もう大変なことになる。ひょっとしたら、魔人の仕業? ってなるかもしれない。だけど、怪しいやつが警備員の動きを止めようとしたって言うなら、話は変わってくるでしょ?」
「それって、おれが捕まるじゃん」
「だから、上手くやりなさい」
ぽんっと彼の肩を叩いた。
金持は、引きつった笑みを浮かべている。
「まぁ、葵のためだと思って」
「……仕方ない、今回だけだぞ……」
金持は、まんざらでもなさそうに、息を吐いた。
こいつは、ホント単純というか、付き合いが良すぎるというか。
人のために、とことん地獄まで落ちていくあたり仏みたいな奴。
「それじゃ、これであんたに立て替えてもらった分は、ちゃらにしてもいいよ」
どうせ明日には、また増えてるんだろうけど。
最終更新:2009年04月10日 23:52