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「上級貴族 後日譚」

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匿名ユーザー

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「夢は、諦めたのか?」
 父の言葉に私は、書きかけの書類を中断して顔を上げた。
 書斎の窓からは、初冬の薄い光が差し込んでいる。
「お前が共に旅をした彼等なら、お前の望む自分の手で人を助ける事も可能だったはずだ。異端者を封したのであれば、ゆくゆくはお前の夢であった聖騎士への推薦も可能であったかもしれん」
 ここで、父はとがめるような視線を私に向けた。
「何故、夢を諦め戻ってきた、ジェイル」
 父の声には、第七教区のグリュワール卿としての威厳に満ちていた。
 志のために送り出した部下が、未練なく戻ってきたのだ。
 父の言葉には怒りが含まれているようだった。
 冷徹な父がここまで感情を露にするのは、私の記憶には数えるほどにしかない。
「諦めたのではありません」
 だが、私は怒りを含んだ父の目をまっすぐに応えることが出来た。
 以前の私では考えられないことだ。
「託したのです。・・・彼らは私の出来ないことが出来る。私など及びもつかない異端を  討伐する力と勇気を持っている。しかし、私も彼らの出来ないことが出来るのです」
 父の厳しい視線を意識しながら、私はゆっくりと言葉を続ける。
「彼らを異端に立ち向かうことが出来る。その結果、異端に虐げられる人々を救える。・・・私は政治を行うことが出来る。良政を敷くことが出来れば、数万の、数十万の領民を幸福にすることが出来る。それが貴族の責務であり・・・」
 話しながら、私は胸中に、近隣の村人を連れて父に減税を直訴した過去が渡来する。
 あの時、父は冷徹な表情のまま、必死の直訴を払い下げた。
 当時の私の感覚では許せないものであった。
 しかし、今なら分かる。
 父の責務は、あの村人達にたいしてだけではない。
 全ての領民に対してあるのだ。
 ‘
公正な政治を実施するに、あの時の父は決断したのだ。
「誇りです」
 最後の一言を、私は胸を張り、言い切った。
 私は聖騎士になるという夢は一つの区切りを迎えた。
 だが、寂寥の感覚はない。
 新らしく生まれた夢が、私の胸を明るく照らしていた。
「ただいま戻りました、父上」
「うむ、よく戻った」 
 父は私の顔をみると静かに頷いた。
 そして驚くべき事に、僅かに笑った。
 私の驚きが伝わったのか、深い皺の間に笑みを浮かべたまま、続けた
「喜べ、ジェイル。我がグリュワール家は今日、百万の味方を得たぞ」

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