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ジャンルイジ編:結フェイズ

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

前編:

メセタの街の下層地区。
廃材と貧困が蔓延する街の繁栄から取り残されたこの地区の最奥部に、それは存在した。
地下80メートルまで彫られたすり鉢状の炭鉱跡。
アスガルド鉄道の開通がもたらした良質な石炭により、廃棄されたかつての夢の跡。
の潜んだ下層地区を駆け抜けたジャンルイジが辿り着いた異端組織パナケアの矢の巣窟。

「待ちくたびれたぜぇぇぇ!」
炭鉱の中腹に立ち、眼下に穿たれた大穴を見下ろしていたジャンルイジの頭上から、獣のような咆哮が迫った。
澱んだ空気を裂く音に、ジャンルイジは擦り切れた外套を引きずるように、身をかわす。
直後にジャンルイジが立っていた場所に、成人男子の身長程の直径の巨岩が叩きつけられる。
爆発したかのように飛散した無数の岩片が、ジャンルイジの体を炭鉱穴へと弾き飛ばした。
 
「歓迎するぜ!ライナス・バルグの犬様よォ!」
 ジャンルイジが立っていた足場よりも、一層上段の採掘場に凶刃は立っていた。
 テーブル状の足場には、採掘途中の鉱石の山、採掘工具、トロッコが置き捨てられている。
 陽光の届かない鉱山穴の底へ落下していくジャンルイジを見下ろすと、凶悪な角度に口端を吊り上げるた凶刃は、足場に転がった子牛程の岩石を右手一本で掴んだ。
重さを感じさせない軽がるとした動作で岩石を持ち上げ、落下を続けるジャンルイジに対し、弾丸を思わせる速度で投げつける。
「ひゅっ!」
 落下中のジャンルイジは短く息を吐き、体軸の中央でシャランサの左手を構える。
 第二種封印弾が装填されたB級AFは炎を纏い、投げつけられた岩石を叩き落とした。
 ジャンルイジは鉱山穴の岩壁を蹴り、薄暗い穴底へ着地する。
「待ちくたびれたぜ、法王庁のワンちゃん様よ。屑共の掃き溜めを抜けるのに、どれだけ時間を無駄にしているんだよ?」
 凶刃の不遜な笑いが、鉱山穴に響き渡った。
 僧衣を埃に塗れながら坑道の底に立つジャンルイジを、凶刃は獣めいた眼光で見下した。
「待ち時間が十分にあったのなら、もう少し気の効いた歓迎をしてもらいたいものですね。頭上からの不意打ち程度なら、ヘルデ山脈の雪猿でも出来る」
頭上を見上げると、飛散した岩片が掠った額から流れ出した血がジャンルイジの頬を伝った。
右手の甲で拭うと、ジャンルイジは僅かに目を細めて、二層上の足場に立つ凶刃を見上げる。
「流石ライナス・バルグの犬ッコロは、よく吠える」
再び凶刃は、傍らの岩石を掴むと、続けざまに投げつける。
 自由落下をはるかに超える速度で迫った岩石は、弾丸の様に回避したジャンルイジの影を叩いた。
「・・・AFの使用形跡はない?」
「お前達異端審問官と違ってアーティファクトなんていうチンケな玩具でズルはしねぇ。この凶刃様は選ばれた者なんだからな!」
 再び笑うと、凶刃は大人二人分はある岩塊を無造作に片手で掴み、持ち上げる。
重力の軽減化。・・・パナケアの矢異能者とは珍しいですね」
「ガキの頃の俺様の才能に惚れ込んだシュルズベリの爺が、引き込んだのさ。・・・特別な俺様はどんな事をしても許された。望めば全てが手に入った。殺しも女も全てが思うがままだ。・・・お前が倒してきた屑なんかとは一緒にするなよ、ライナス・バルグの馬鹿犬よぉ。この俺はパナケアの矢最強の凶刃様だ!!」
「それは都合がいいですね」
「あん?」
「探さなくても最強が出てきてくれた。・・・僕は聖務に私情を挟むのが大好きなんです」
「上等だぜ、馬鹿犬!!」
 叫ぶと同時に、凶刃は岩塊を投げつけた。

かき集められた鉱石。
土嚢。
スコップ。
鉄杭。
運搬用のトロッコ。
レール。
採掘用油を入れたドラム缶。
凶刃は手に掴んだ物全てを投げつける。
あるものは弾丸であり、あるものは砲弾の破壊力を持って降り注ぐ中、ジャンルイジは雪豹のように身を屈めて疾走する。
異端審問官制服の胸ポケットから式錬金印が刻印された第三種封印弾を取り出し、シャランサの左手の錠前に装填する。
狙うは一瞬。
感覚を研ぎ澄まし、凶刃の呼吸のを感知する。
第三種封印弾、開放!」
凶刃の息継ぎの間に、ジャンルイジはシャランサの左手を足元に叩きつける。
掌より放出された収束された強風が、ジャンルイジの体を上空まで一機に舞い上げる。
空中でバランスを整えると、中腹にせり出した足場へ身を投げた。
「残念ですね。・・・遠距離戦を保っていれば、まだあなたにも勝ち目はあった」
「接近戦に持ち込めば、なんとかなると思ったか?」
砲弾の雨をかいくぐり、自分と同じ足場まで詰めたジャンルイジを嘲笑と供に迎えると、凶刃は無造作に右手を伸し、傍らの鉱山用の足場を支える鉄骨を引き抜く。
重装騎士が構える長槍を遥かに越える鉄柱だが、凶刃にとっては、食事用のナイフを振るうのと変わらない。
「どこから叩き潰されたい?足か?腕か?」
「その前に・・・」
 左手を重心より僅かに下げた半身の構えを取りながら、ジャンルイジは忠告した。
「出来もしない事は言わないことです」
「・・・決めたぜ。頭を吹き飛ばせば、その減らず口も叩けまい」
 唸り声のような呟きと共に、鉄柱がジャンルイジに振り折らされる。
 高速の一撃を、ジャンルイジは僅かな体重移動で右に避わす。
 無呼吸でつないだ二撃目は、左に。
 さらに速度を増した三撃目は、もう一度右に。
「間合いが長ければいいと言う訳ではありませんよ」
 忠告と共に、振り下ろされた四撃目をシャランサの左手の硬度と手刀で弾く。
 僅かに仰け反った凶刃の懐へ、山猫のように飛び掛ると、速度と体重を乗せた膝蹴りを、無防備な凶刃の腹部へ叩き込む。
「ごあはっ!」
「接近戦の間合いの長短なんて、一秒もあれば詰められます」
「調子に乗るなぁ、クソ犬がぁ!」
胃液を撒き散らしながら、凶刃は足元の砂を蹴り上げる。
細砂に目を潰されたジャンルイジは、自らの体を凶刃にぶつける。
間合いを消した中で凶刃の腕を押さえ込もうと伸ばされたシャランサの左手に、凶刃は全力で鉄柱を叩きつけた。
骨がひしゃげる音と供に、ジャンルイジの左肘が百八十度捻じ曲がる。
「っ!!」
「お祈りにはまだ早いぜぇ!」
動きが止まったジャンルイジの頭部を、続けざまに横殴りに振るわれた鉄柱が強打した。
薄暗い闇の中に鮮血の花が咲き、ジャンルイジの体が地面に叩きつけ、乱れた呼吸が鉱山穴に響いた。

「最初から犬らしく地面に這っていればいいんだよ!よく似合っているぜ!」
胃液を口元にこびり付かせたまま、凶刃は笑う。
「さて、次は犬らしく派手に泣き喚いてもらおうか」
鉄柱を振り上げ、仰向けに転倒したジャンルイジの両膝に振り下ろそうとした瞬間、ジャンルイジはの上体が跳ね上がる。
「何!?」
地面を叩いた鉄柱を持つ凶刃の右腕をジャンルイジが掴むと、そのまま立ち上がりながら捻り、全体重を乗せた。
「がはぁっっっ!」
凶刃の右肩の腱が捻じ切られ、激痛が全身に駆け巡る。
右手から落ちた鉄柱が地面を叩く硬質な音が、鉱穴に響いた。
「何故喚くのですか?」
右手を離すと、ジャンルイジは右肩を抑えうずくまる凶刃から5歩、後退する。
「お互い潰れたのは、たかが右腕一本・・・」
再度の間合いをとったジャンルイジは、仕切りなおしを要求するように自然体で凶刃と向き合った。
強打された頭部から出血は、ジャンルイジの黒髪を赤く染めている。
「戦いはこれからじゃないですか」
前髪から滴る血を拭いもせず、ジャンルイジは笑った。
純粋な楽しみを前にした、自然な笑みだ。
溢れ出る闘争本能に全身を震わせ、少年のように笑っている。
日常のジャンルイジの温和な物腰の裏には、第八課の中でも指折りの好戦的な性格が隠されている。
こと戦闘において苦境になればなるほど、ジャンルイジの闘争本能は風に煽られた炎のように激しく吹き荒れる。
異端との妥協や取引を決して許さず、ほぼ全ての聖務を異端者の殲滅という形で終結する。
それが、第八課課長ライナス・バルグが、異端審問官ジャンルイジに絶大な信頼を寄せる理由だ。

「さあ、仕切り直しです。後10秒だけ待ちます。9、8・・・」
頭部からの出血は止まっていない。
前髪から滴り続ける流血が180度逆を向いた、左腕のシャランサの左手を赤く染める。
負傷によるジャンルイジの肉体への負荷は、凶刃を数倍上回っているはずだ。
「7、6、5・・・」
「ま、待て!」
だが、凶刃はジャンルイジに気圧されていた。
少年の面影を残したライナス・バルグの犬が、凶刃を喰らっていた。
「4、3、2、行きます」
「くそったれぇ!」
正面から蹴りかかってきたジャンルイジを、凶刃が振り払った左手が掠る。
重力の軽減化されたジャンルイジの体は、紙屑のように吹き飛ばされ岩壁に激突する。
「コレくらいは楽しませてもらわなくては。・・・お祈りの時間にはまだ早いですよ」
受身を取り、砂塵を落としながら立ち上がったジャンルイジに対し、凶刃は色濃く浮かんだ焦りの表情と供に吐きつける。
「この・・・化物めぇ!」
「化物?・・・違いますよ。僕は・・・」
ジャンルイジが雪豹の様に低い姿勢で、凶刃に迫る。
再び振り払われた凶刃の左手を、二歩の小刻みなステップを踏むことでかわす。
直後に右手で、腱の断たれた凶刃の右腕を掴む。
「ごはっ!」
「・・・ライナス・バルグの犬です」
掴んだ腕を引き寄せ、凶刃の全身に蹴りを浴びせる。
一撃一撃に乗せられた筋繊維を破壊し、骨を砕く重みに凶刃は外聞を捨て、悲鳴を上げた。
「があぁぁぁぁ!」
ボロ雑巾のような身を捻り、激痛を無視して右腕を振り上げると、凶刃はかろうじて間合いから離れる。
「ま、待て。取引をしよう異端審問官。い、今まで貴様らの知らなかったパナケアの矢の情報を教えてやる!」
パナケアのご存じなかったんですか?」
 這いつくばりながら必死で懇願する凶刃の姿が、ジャンルイジから熱を奪った。
 戦いに身を沈めた高揚感が急速に冷め、失望感へと変わる。
 必然的に硬質な冷笑が頬に浮かぶ。
「ライナス・バルグの犬は、凶暴です」
 今度は忠告なしで、ジャンルイジは飛び掛った。
 直後に絶叫が、鉱山穴に響き渡った。

つづく

ちょっとだけ解説。
 凶刃
ハイテンション系DQN系マガジンヤンキー漫画の敵
 気持ち良く暴れて負けてくれる敵は楽しいです。
 黒キールベインもようやくそこそこ動いてくれました。ダーティーヒーローというカテゴリーでキャラが立っているかは微妙ですが。
 
 ワンシーンのバトルの尺としては、今の漏れにはこれが限界。
 流れで言えば、「押して、押されて、押し返す」
 理想の流れはダイ大の「チェス軍団」の皆さん。
 全キャラ2週で全てを出し切るという密度の濃さと、きれいな流れをリスペクト。

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