正確には
マリカに擬態している魔王
フレデリカのセリフであるが、
この擬態は、記憶と性格も再現しているため紛れもなくマリカの祈りである。
「いたい、くるしい、タスケテタスケテ……」
「どうしてわたしを殺シたの? セイギの味方じゃなかったの?」
「イタかったよ、フェルさん。カナしかったよ、殺されて」
「だからお願い。これ以上わたしみたいな子を生まないで……今度こそタスケテ、守って、他の
みんなを」
「じゃないとわたし、なんのために死んだのかワカラナクなっちゃうよ」
不義者の属性を押し付けられた本物のマリカを、汚らわしい敵と断じて殺したのはフェルドウス。
疑問の欠片すら持たぬまま、本能に従って容赦なく斬り捨てた。
これが正義、善であると、愚かしくも誇りさえ抱きながら無辜の少女を絶望の淵へ叩き落した。
にも拘わらず、憎むとは言わなかった。許さないと、おまえを呪うと、無能な戦士を糾弾しなかった。
マリカの祈りは次こそ間違えないでくれとフェルドウスに願いを託した。
だがそれは呪いと同義
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せめてマリカ、君が僕を憎んでくれたら、僕は自分に見切りをつけて分相応な道を模索することができただろうに |
惨めさに吠える。魂まで血みどろに染まる慙愧の中で絶叫する。
自身の在り方をマリカへ転嫁をする己の卑劣さ。こともあろうに、マリカを悪霊へ変えんとする醜い思考。
そんな醜態を晒しながらも夢を諦めきれない。こんな己がどうなろうと、もはや知ったことではない。
たとえどれほどの痛みと代価を伴おうと、マリカの夢を穢すものは断固絶対に粉砕する。
これより先、すべてはそのためだけにあればいい。
様々な解釈の善が乱立する混沌の時代を生き抜いた ウォフ・マナフの善において
弱者とは必ずしも優先すべきものではない。
弱者に拘泥するあまり、戦力の低下や作戦の遅滞が起こっては本末転倒。
魔王の犠牲者など世に無数に存在するし、いずれ来る勝機を掴むまでの必要な犠牲だったと割り切ることこそが、ここでは善である。
そんな中、小さく素朴な幸せを必要な犠牲として割り切れなかった者は、スィリオスとフェルドウスの二人のみ。
結果、後者は自分の幸せも焼却する負の螺旋に落ちていくことになる。
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関連項目
- フェルドウスはナダレの資格があり、ナダレはミトラの写し鏡である事やKKKの碑文を考えるとミトラさんも同じような経験をしたのだろうか -- 名無しさん (2021-03-20 16:58:29)
- 敵の属性を被った存在を殺して「嘆かないで割り切って次の殺しに備えよう!」された過去……まああるかもなぁ(ナラカ汚染あるし -- 名無しさん (2021-03-20 17:02:21)
- マナフの善は現実的な一般論だけどそれ故にというかそれが不自然にごり押されるとフェルやスリィオスみたいにえげつない板挟みになるのね -- 名無しさん (2021-03-20 18:11:04)
- 一見ウォフ・マナフの善が合理的で、クインの村での葛藤もあったから気付きにくいが、よく考えたらそれに強い反発や慙愧持ったり、ライルや蓮みたいな大より小を優先する奴が碌にいないのも歪じゃね?ってなる塩梅 -- 名無しさん (2021-03-20 18:39:14)
- 結局この世界の善は「蟻の善」なんだろうな -- 名無しさん (2021-03-20 22:08:32)
- 群体生物みたいなこと言われてたしな -- 名無しさん (2021-03-21 00:39:17)
最終更新:2021年03月21日 00:39