星霊大祭の終盤、
あらゆる炭素系物質を消し去る現象と化したバイシャジャを抱きしめ、自分の体が崩れるのも省みず、ヴァルナはこの言葉を告げた。
ナーサティヤとバイシャジャの関係性は姉弟などではない。ヴァルナはナーサティヤがしたのは怪しいカルト儀式などではなく、行為の最中は怖さ以外の気持ちもあったんだろう、と。そしてその気持ちは──
「“愛しい”……とかな」
その言葉を聞いた瞬間、バイシャジャは輪郭が保てなくなり主人格のナーサティヤが解放される。
事前情報があったとはいえ、バイシャジャの真実を解体し、ナーサティヤの深層心理を言い当てる。これこそまさに
暗殺者の業。殺す相手のことを徹底的に調べ上げ、その人となりを推測する。
いや、ヴァルナは知っているのか。
「愛しい」と思える誰かが彼にはいるということだろう。
暗殺業を営むものとしては心を殺しきれないヴァルナは落第に違いないが、そうでなければ
始まりの地に至れるようなことは出来ない。ヴァルナはそうであると信じているのだ。
最終更新:2025年02月13日 20:23