シュラウドの私が第1回放送をお送りしたら…裏方サバーク ◆7pf62HiyTE
放送――一般的にはテレビ局やラジオ局等の送信所から受信装置へと受信されそこからモニターあるいはスピーカーを使い届けられるものである。
だが、広い意味で言えば不特定多数に向けて送られる音声や映像等全てが該当すると言って良い。
つまり、モニターやスピーカー、あるいはアンテナ等の装置にこだわる必要は無いという事だ――
では、この殺し合いにおける放送はどのように行われるのか?
舞台となる島は非常に広くたった1つのスピーカーでは追いつかず、森などが多い場所にスピーカーを配置するわけにもいかず、破壊される手間を考えるならばあまり適しているとはいえない。
また、放送の為に飛行船を飛ばすというのも超常的な力を持つ者が多い状況ではリスクが大きい。
首輪を使う――という手法が割と一般的だが、激闘で破損する恐れも無視できず、他にも必要な機能がある以上、その装置ばかりを肥大化させるわけにもいかない。
更に言えば首輪を首ではなくソウルジェムに嵌められているパターンもあることを踏まえれば得策とも言えないだろう。
では――俗に言う念話、つまりは頭の中に直接呼びかけるという手法ならどうだろうか?
魔法少女達はその技術を習得しており仮面ライダーの技術力でも心で会話する術を身につけている故可能な手法だ、
また、スピーカーという装置を必要とせず、直接呼びかけるという性質上、耳を塞ごうとも意識さえあればほぼ確実に情報を伝える事が可能だ――
例えそれが、直視するには耐えがたい非情なる現実であったとしても――まず逃れる事は出来ない――
▼▽
おはよう、そしてごきげんよう。
私はシュラウド、今回放送を担当する者――
何故、私がこちら側で放送を行っているのか疑問に感じる者もいるだろうけど、その問いに答えるつもりはないわ。
この放送を聞いている貴方達がそれぞれ推測した上で判断する事――
貴方達の目的が殺し合いへの優勝であれ、こちら側を打倒して脱出する事であれ、全く別の目的であれ、それは決して容易ではないわ――
この放送による情報は今後における大きな鍵になる、それを忘れない事――
まず、禁止エリアについての説明を行うわ。
これから3時間後、8個のエリアを発動するわ、その場所は――
7時に【C-8】
9時に【I-5】
11時に【E-2】
以上よ、この情報をどう使うかは貴方達次第、
次に、この6時間で脱落した者の名前を発表するわ――
以上、18人よ。これが多いか少ないか、その判断も貴方達に任せる――
これで今回の放送は終わりよ。また6時間後、再びこの放送を聞ける事を願うわ――
貴方達の目的がどうであれ、状況を打開する切り札は貴方達の中に――
▼▽
「――言われたとおり放送は流した。それから、私の事はシュラウドと呼びなさい」
放送を終えたシュラウドに何者かが話しかける。
「何? ヒントを与えすぎている? 何故絶望を煽らないのか?
彼等がこちらの言葉程度で動揺する様な弱い連中だと本気で思っているの? その程度で堕ちる様な連中など、こちらの言葉があろうと無かろうと簡単に堕ちるわ……
それに、ヒントを与えたと言ってもあからさまな事は何も言っていない。さらに言えばこの情報が正しく使われる保証なんて何処にもないわ。
想定外の悲劇を巻き起こす事だって……かつての私が犯した様に……勿論、貴方達はそれが望みだろうけど……」
相手は更に問いかける。
「何か勘違いしているから今一度言っておくわ、
確かに私は技術を提供はしている。だが元々私は既にゲームを降りた身であり戦いに介入するつもりはなかった。
事情が事情だからこそこうして出てきたまで。それを忘れないで……
私はこちら側にいるがお前達の味方というつもりはない。もちろん、積極的に向こう側に肩入れするつもりもないわ――」
シュラウドは目の前の人物に対しても一歩も退かずそう答える。
「
加頭順? さぁ、さっきから別室で引きこもったきり……あの男の考えている事に私は別に興味は無い」
しかしその言葉は真実ではない――
「(冴子の死について思う所でもあったのかしら……園咲琉兵衛に対する牽制だけの為にあの子を保護したのだと思ったけど……あるいは……)」
シュラウドの正体――それは園咲琉兵衛の妻にして園咲冴子、そして
フィリップこと園咲来人の母、園咲文音である。
それ故、シュラウド自身にも冴子の退場については思う所がないわけではない。
だが、シュラウドはそれを表に出すつもりはなく、先の放送でも一切動揺を見せなかった。
あの日、琉兵衛そして園咲家と袂を分かち、来人を取り戻すと共に琉兵衛打倒を誓ったあの瞬間から――
何れは娘達とも戦う事など分かっていたのだ――だからこそ今更母親面して嘆く資格などないし、そのつもりもない――
「それにしても想定外の自体が起こったわね。まさかこちら側が送り込んだ刺客ともいうべき彼女が早々に退場するなんてね……」
シュラウドが言う人物はノーザの事だ。
ノーザ本人は最後まで気付く事はなかったが、彼女には主催側が送り込んだ刺客としての立場が与えられていた。
彼女への支給品を今一度考えてみて欲しい。彼女の手元にはソレワターセの実が2つ支給されている。
ラビリンス時代の彼女ならば、超獣化する為にはソレワターセの実が必要であったがボトムによって蘇生されている彼女にはその必要は無い。
つまり、本来ならば彼女にソレワターセの実が支給される筈が無いのである。
そしてこれまでの本編を見ればわかるが、
ソレワターセの実は1つでも強力な洗脳能力に加え、制限付きとはいえ周囲の物体は言うに及ばず参加者を取り込みその情報をダイレクトに入手する事が可能なのだ。
そう、参加者に支給するにはあまりにも過ぎた力であるのだ。
勿論、支給品は若干の作為はあってもある程度のバランスを考慮した玉手箱的なものでしかない。
だが、元々の彼女の所持品である彼女にそれをそれも2つも支給するのは明らかにやり過ぎでは無かろうか?
ほぼ死にかけに近い
相羽シンヤにソレワターセの劣化版(厳密には違うが)ともいうべきナキワメーケのシンボルが1つしか支給されていない事を考えても彼女にその上位版ともいえるソレワターセを2つというのはバランス無視以外のなにものでもない。
これが示すのは彼女が主催側からジョーカー、つまり殺し合いを促進させる役目を与えられていたという証明である。
実際に彼女はその想定通り大きな成果を上げてくれた、ソレワターセがもう1つあった事を踏まえ今後も期待されていただろう。
しかしその彼女は敗れ去り、貴重なソレワターセも全て消費された。言うまでも無く、この地にはもうソレワターセもナキワメーケも支給されていない。
「それでもある意味では
自業自得……あれだけソレワターセの力を見せられていて警戒しない方がどうかしている……いうなればこの結果も必然、彼女も所詮は只の道化だったということ」
そうシュラウドは語る。
「……貴方にとっては大した問題ではないみたいね。何しろ刺客はまだ他にいるのだから……」
その言葉に相手は僅かに反応を見せる。
「……気にしなくても良いわ、私に貴方を咎める資格もなくそんなつもりなど毛頭無い……それとも違うのかしら?」
シュラウドは言葉を進める。
「あの地にいる2人の娘……それも刺客では?」
シュラウドもまた主催側を全て把握しているわけではない。だが、参加者の動向や情報からある程度の推測を立てている――
「サバーク博士――いえ月影博士とでも呼ぶべきかしら?」
その言葉に反応を示す白髪の男――
「さっきのお返しよ」
これは裏方の物語――
表舞台に上がる事の無い――
それ故に今はまだ大した意味を成さない――
だが、裏方なくして表舞台は成り立たない――
そして――この舞台の謎を解くには裏を暴く事が必然となる――
誰も知り得ない真実の物語――真実の姿を――
▼▽
「(照井竜……貴方も散ったのね……)」
一人シュラウドは退場者の1人、照井竜へ想いを馳せる――
息子への愛からくる復讐の為とはいえ、ウェザー・ドーパントという悪魔を生み出し多くの人々を哀しませ、照井竜の家族を犠牲にし照井の人生を狂わせた事に良心の呵責はある。
確かに照井はシュラウドにとって琉兵衛を倒す最大のカードだったし、結果として彼の復讐心を利用していた。しかし最初からそんなつもりだったわけじゃない。
いや、もしかすると、それだけの犠牲を出したからこそ彼女自身退く事が出来なかったのだろう――
それはきっと、十何年も前に幼馴染みである鳴海荘吉をスカルの力を与えた時からずっと――
余談だが、この地で暁美ほむらがスカルに変身した時ほんの少し荘吉がスカルに変身した時の事を思い出していた――
「(あの時、貴方は言った――)」
『今から証明してやる、オールド・ドーパントを倒し闇の力に打ち勝つのが憎しみなんかじゃないという事を……俺達3人で』
「(貴方達はその言葉通りそれを成し遂げ見事に証明した――サイクロンアクセルエクストリームにならず、WとAの力で……)」
『もう貴方は……誰も傷付ける必要はない……俺達が園咲琉兵衛を倒す、仮面ライダーとして』
「(そして私は何もしないと約束した……もっとも、その約束はこうして破ってしまったけど……)」
だが、その照井も退場している。しかも照井を仕留めたのはある意味では闇の体現者なのだ。
これは照井の言葉が間違いだったという事を示すのか――
「(それでも貴方の答えは変わらないわね……そう、あの戦いで証明されたのは貴方の言葉だけじゃない――)」
先のオールド・ドーパント戦において、Wの片割れである
左翔太郎はオールド・ドーパントの力で老人化しており戦える状態では無かった。
オールド・ドーパントの力は琉兵衛の変身するテラー・ドーパントの力と似ている、その事情もありシュラウドはその力への耐性を持たない翔太郎に価値を見いだしていなかった。
元々、翔太郎がフィリップと共に仮面ライダーWになったのも偶然によるものでしかない事もあり、シュラウド自身は翔太郎がWであるべきだとは思っていなかった。
だが、あの戦いでもまともに戦えない筈の翔太郎は何とかWに変身した。
Wはフィリップと合わせなければその力を発揮しない。老人化しているにもかかわらず、それをやってのけ照井の変身したAを見事に援護したのだ。
「(そう、左翔太郎の力も証明された……そして……)」
仮面ライダーエターナルこと
大道克己率いるNEVERとの戦いにおいて、
フィリップを奪われ、エターナルの力により仮面ライダーの力であるガイアメモリの力を失い最大の危機に陥りながらも、翔太郎は運命的に導かれたT2ガイアメモリ・ジョーカーをその手に、照井と共に戦い最終的に大道達を打倒した。
「(その名の通りあの男が切り札となった……何の力も無い、荘吉と違いハードボイルドになりきれない半熟卵……ハーフボイルドのあの男が……最後の切り札となって……)」
今現在、翔太郎はダメージを受けながらも未だ健在だ。
無論、彼のいる市街地は危機的状況が迫っており、次の瞬間には無残な死を迎えても不思議では無い――
つまり、切り札は失われる――否、
「(切り札は彼だけでは無い……あの地にいる者達全てがこの状況を打開する切り札になり得る……それでも……)」
だが、それは等しく希望を意味するわけではない。切り札=ジョーカーという名が示す通りそれは時に最強最悪のカードともなり牙を向く――
「(切り札だけでは決して勝てない――)」
更に――クリアしなければならない問題は数多い、無論殺し合いに乗った敵対勢力を全て打倒しなければならないのは言うまでも無くそれは決して平坦な道では無い。
また、仮にそれを成し遂げても首輪を解除しなければどうにもなりはしない。
「(もっとも、それ自体はそこまで難しいものでもない――答えが分かった上で悪魔の力を使う勇気さえあれば十分に可能――技術者すら必要ないわ――でも)」
他にも問題はある、今現在シュラウド達のいる主催陣の本拠地にたどり着かなければ打倒すら不可能だ。
そして仮にそこに辿り着いても――
「(そう、連中はもう1つ最強最悪のカードを握っている……来人だけじゃないのよ……)」
主催側の戦力と戦わなければならない。
その筆頭となるのは加頭ことユートピア・ドーパント?
それとも、サバーク博士?
いや、その程度ならシュラウドもそこまで言葉にしない――ここまで警戒するという事は――
「(気付いている? 来人と連絡を取れた所で検索が十分に行えない事を――
考えてもみなさい、検索能力に介入できる者が早々いると思う? そう――)」
某所にて――1つの卵がある――
刷り込みという言葉を知っているだろうか?
孵化した雛鳥が最初に見た者を親と思う現象である――
この卵もそれと同じ――
つまり、孵化した後、最初に見た者の忠実なしもべとなる――
そして、卵に眠る人物は地球の本棚に介入できるもう1人の人間にして、
シュラウドこと文音と琉兵衛のもう1人の娘にして冴子の妹、同時にフィリップこと来人の姉、園咲――
「(若菜……彼女も連中の手中にあるのよ――)」
[全体備考]
※主催側に【シュラウド@仮面ライダーW】、【サバーク博士@ハートキャッチプリキュア!】、【園咲若菜@仮面ライダーW】の存在が確認されました。
※シュラウド及び若菜の参戦時期は劇場版(A to Z)以降です。
※若菜は今現在すりこみタマゴ@らんま1/2に囚われています。
最終更新:2012年07月01日 20:49