音響インピーダンス

  • インピーダンス(impedance)とは
 圧と量(流速)の比を表す物理量であり、交流だけではなく波動一般に広げられる。
 圧と量(流速)の積は仕事率である。

  • 音響インピーダンス
 音波の伝播にもインピーダンスが導入できる。
 音響インピーダンスは、1つの面における(複素表示による)音圧(SI単位はPa)を(複素表示による)体積速度(SI単位はm3/s)で除したもの。
 音響インピーダンスのSI単位は、Pa・s/m3またはN・s/m5(結局同じ)である。
  • 特性インピーダンス
 平面進行波について、音圧を粒子速度で除したものは、媒質の特性インピーダンス(SI単位はPa・s/m)と呼び、電気における電流に対する電圧の比に対応したものである。
 特に平面波の場合は媒質の密度と媒質中の音速の積で表される。
 音響インピーダンスと音波の特性インピーダンスは異なった概念の物理量である。

 水の(音響)特性インピーダンスは約1.5×106 N・s/m3であり、空気の特性インピーダンスは約4.1×102 N・s/m3である。
 例えば、水面に向かって叫び声を上げても、空気中の音波は水面でほとんどが反射され、水中には伝播しにくい。
 軽く大面積の振動板とそれに連結した小面積の振動板を用意し、その面積比を水と空気の特性インピーダンスの比に合わせる。
 小面積の振動板を水面に触れさせ、大面積の振動板に向かって叫び声をあげれば、狭い面積の水に大きな圧力がかかり、効率よく音のエネルギーが水に伝えられる。
 聴覚系では、中耳伝音機構がこれに近い動作を行い、空中の音波を内耳のリンパ液に伝えている。

 音波の開放端や閉鎖端における反射も特性インピーダンスの違いによる。
 金管楽器ではラッパ状の開口部はカットオフ周波数以上の音波に対してはホーンとして働き、効率良く音波を放射する。
 低い周波数の音波に対しては開放端に近い動作をすることになり、管内に定在波が維持される。

  • 機械インピーダンス
 音響インピーダンスでは、電圧は音圧(面積あたりの力)、電流は粒子の体積速度と対応関係がある。
 インピーダンスは複素平面上で扱うのが普通であるが、スカラーで扱える範囲だけを見ることにする。

 L(コイル)C(コンデンサ)R(抵抗)の直列回路に、電圧eの電源を繋いだところ電流iが流れたとする。
 これらの素子には全て同じ大きさの電流が流れ、電圧は加算されるので、eとiには、

 の関係がある。
 ただし、L、C、Rはそれぞれコイル、コンデンサ、抵抗のインダクタンス、キャパシタンス、抵抗の大きさである。

 質量Mの物体を並列するバネと機械的抵抗(摩擦物や粘性物など、変位の速さに比例した力のかかるもの)で支えたとする。
 力Fによって、Mが速さvでxだけ変位したとすると、バネと機械的抵抗も等しく速さvでxだけ変位し、質量Mに合計した力を与える。
 その時のFとvとの間には、

 の関係がある。
 ただし、Cmはコンプライアンス(バネ定数の逆数)、Rmは機械抵抗の大きさである。
 2つの式を見比べると、F - e、v - i、M - L、Cm - C、Rm - Rという対応関係がある。

 機械←→電気の間で、並列的な支持←→直列接続,力←→電圧,速さ←→電流,質量←→インダクタンス,コンプライアンス←→キャパシタンス,機械抵抗←→抵抗のように対応する。
 電気回路の振るまいと機械的な振るまいとを同じ式で表す事ができる。
 電気的なインピーダンスは電圧/電流であるから、機械インピーダンスは力/平均粒子速度(SI単位はN・s/m)、音響インピーダンスは音圧/媒体粒子の体積速度となる。
 機械的な仕事率は電圧と電流の積(=電力)に対応する。

 ここでは似而非直流源を用意しているが、実際にはeもFも時間的に変動するもの(交流)を考え、その際は電流と電圧、速度と力の位相を考慮しなければならない。
 そのために複素数を用いた記述を行う。
 重い物は力をかけてもすぐ動き出さない/止まらない(力に対して速度の位相が遅れる)、という性質と電圧をかけてもコイルにはなかなか電流が流れない(電圧に対して電流の位相が遅れる)という性質が共通するものだとは納得できる。
 バネとコンデンサの対応関係も同様である。
 電圧に対して電流の位相が遅れるとは「なかなか電流が流れない」という表現をしたが、誤解されやすい事柄であるが、即に電流は反応するのであるが、その変化の様子が電圧とは異なるという意味である。
 力と物体の速度についても同様の意味(直ぐに反応はするが変化の様子は力のそれと異なる)である。

 複素表現はインピーダンスの項参照。上記の置き換えを行うと機械インピーダンスの式になる。

最終更新:2009年08月28日 08:28
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