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Malevolence

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概要

ようこそザルウィン屋敷へ…

導入

新興国家ラヴォネルは、AR4717年にシェリアックスから分離独立して以来、スルーン家の圧政に苦しんだ家々に対する補償に取り組んできた。その中で浮かび上がったのが辺境の地にある「ザルウィン屋敷」(Xarwin Manor)の存在である。ザルウィン屋敷は呪われた場所としてよく知られており、打ち棄てられてから半世紀以上も公式には完全に手付かずの状態であった。PCたちは何らかの理由でこの「幽霊屋敷」の調査に赴くことになる。

シナリオ情報

書籍情報

 
  • タイトル:Malevolence
  • 著者:James Jacobs
  • 刊行:2021/07/07
  • ルールセット:Pathfinder Second Edition
  • シリーズ:Pathfinder Adventure

レベル帯

4名から6名のパーティーが全員3レベルで開始し、冒険を通じて5レベルまで成長することが想定されている。進行によっては最終局面に入るころに6レベルに達する可能性もある。

冒険の傾向

このシナリオは、辺境の地にあるザルウィン屋敷と呼ばれる幽霊屋敷を舞台としたホラーテーマのアドベンチャーである。屋敷は打ち棄てられた町を見下ろす丘の上に建っており、地元では呪われた場所として悪名高い。公式に住民はおらず、度胸試しの冒険者や一獲千金を狙った盗賊が屋敷に向かったことはあるようだが、その内部について噂以上の情報はない。恐ろしい怪物や謎めいた魔法によって非常に危険な場所である、という印象以外には何も知られていないのだ。

PCたちの冒険は、この屋敷を探索し、怪物を退治し、隠された秘密を解き明かすことが目的となる。シナリオは探索、戦闘、謎解きによって構成されており、プレイヤーの勇気と知恵が試される。その過程でシナリオタイトルの「Malevolence」(悪意)の意味するところも明らかになるだろう。開始時点のPCたちは知る由もないことだが、ザルウィン屋敷に隠された秘密は非常に重大なものである。

冒険の舞台はザルウィン屋敷の敷地内で大体完結している。屋敷から最も近くの人里までは徒歩で1日の距離があり、それも小さな村であるため、余程のことがない限り財宝の売買や市場での物資補給を行うことはできない。冒険は一両日で完結するような規模ではなく、現地で寝泊まりをしながら何日間も探索を続けることになるだろう。PCの選択によっては療養の期間を確保するかもしれないが、時には勇気をもって継続的に行動する必要が生じるだろう。PCたちは人里離れた地で長期間の活動が行えるような準備をしておくことが望ましい。

セッション情報

  • 使用ツール:FoundryVTT v13(独自サーバ)
  • 各種相談や通話にDiscordを利用する(通話必須)
  • 平日夜開催(21時開始、3~4時間)が基本

記録の推奨

本シナリオの性質上、PLの中で以下のような役割分担を決めておくことを強く推奨する。
  • セッション記録
  • 情報の整理や吟味
  • 戦利品の整理

GMが提供するもの(予定)

  • チャットログ
  • セッション映像の録画
  • セッション記録を記載、共有する場
  • 戦利品管理表


レギュレーション

  • システム:Pathfinder Second Edition(Remaster)
  • 開始レベル:3レベル
  • 装備レベル:3レベル以下で揃えること
  • 開始所持金:80gp
  • 補足ルール:シナリオはリマスター前なのでGMの基準でコンバートする
  • 追加ルール:
    • 各PCはシナリオフック(後述)から経歴を1つを選択すること
    • 各PCは来歴等と矛盾しない任意のアンコモンデータ1つにアクセス権を得る

使用可能なデータについて

  • Remaster化済みのデータを用いること
  • データの稀少度ごとにアクセス可否がある
    • コモンデータは全て使用可
    • アンコモンデータはアクセス権があれば使用可
    • レア以上の稀少度のデータは使用不可
  • データの出典が "Pathfinder Roleplaying Game"、"Pathfinder Lost Omens" 以外のシリーズのものは使用禁止
  • 悪神の信仰は原則禁止(アスモデウス、ゾン=クーソンはどうしてもという場合相談可)
  • Archives of Nethysに記載されている「PFS Note」はアクセス権に関してのみ全て無効
  • 未訳のデータを用いても良いが他のメンバーにすぐに説明できるようにしておくこと

独自のルールについて



プレイヤーズガイド

シナリオフック

この冒険に参加するPC向けのシナリオフックを3つ紹介する。各PCはいずれかのフックで規定される「経歴」を1つ選択すること。アンロックする研究トピックに選択肢がある場合は、それも選択すること。キャラクタービルドにおける来歴(Background)は、ここで選択した経歴と矛盾しないものにすべきである。

予期せぬ相続 An Unexpected Inheritance

ラヴォネルがシェリアックスの支配から離れて新しい国家として独立した際、スルーン家の圧政によって苦しんだ家々に補償を提供することが国家の目標の1つとなった。シェリアックス時代の何十年にも渡る書類の精査は、削除された情報や欠落した文書による複雑な迷宮を歩くような困難があるものの、時々予期せぬ発見がなされることがある。

今回の発見は、キンターゴにザルウィン家の正当な相続人が存在したことである。その者は法的な調査によって確認されたザルウィン家の生きた相続人の最後の1人である。すなわち、ザルウィン家の遺産――半世紀以上前に忘れ去られた屋敷とその中に残っているもの全ての正当な相続権を持つ唯一の人物なのである。

その人物はかつてのザルウィン屋敷の所有者の直系の子孫ではなく、その兄弟姉妹か縁戚に由来を持っている。つまり、それらの子孫、その養子の子孫、密かに相続権を継承された親しい友人家族の子孫などである。いずれにせよ、相続権を持つ他の者は既にこの世を去ったか、相続権を放棄しているかであり、ザルウィン屋敷をどのように処理するかは、その人物の意向が全てである。

経歴オプション
このシナリオフックを採用したPCは以下のいずれかの経歴を選択すること。
  • 君はザルウィン家の最後の相続人である(最大1名)
  • 君は相続人から調査依頼を受けた(最大2名)

相続人がNPCである場合、その人物はザルウィン家やその領地の再興すら検討しており、屋敷の危険や懸念について可能な限り払拭することを求める。依頼書には、屋敷に赴いてその財産を調査して内容を目録化することと、屋敷を安全な状態にする必要があることが明記されている。

相続人が誰であっても、この大仕事に対して金銭的な報酬を与える余裕は存在しない。相続の件が発覚しなければそのまま忘れ去られるだろう家筋だったのであり、貴族のような財産は一切ないのである。依頼の報酬は、財産の売却益の一部を割り当てるか、領地再興後の有力な地位を約束する等になるだろう。

研究トピック解放
このシナリオフックを採用したPCは以下の2つの研究トピックをアンロックする。また、これらのトピックに関する研究判定に常に+1の無名ボーナスを得る。
  • トピック「ザルウィン屋敷」(Xarwin Manor)
  • トピック「イオセフ・ザルウィン」(Ioseff Xarwin)

制約
最低1名はこのシナリオフックの経歴を選択すること。調査依頼を受けたPCが複数いる場合、各人は協力関係(グループで依頼を受けた等)でもよいし、ライバル関係であっても良い。ただし相続人もPCとして参加する場合、依頼を受けた者がライバル関係であるのはいささか不自然かもしれない。

遺産の調査 Investigating a Legacy

ザルウィン屋敷はシェリアックスにおける「忘られし最も祟られた場所」の1つである。そのような怪奇的な話を好む者や、シェリアックス貴族の遺産に興味がある者、謎めいた魔法の遺物に関心があるような者は、ザルウィン屋敷に惹きつけられる可能性がある。

単に好奇心旺盛なのか、あるいは何か別の目的があるのか、ザルウィン屋敷に惹きつけられた者はその完全な調査を求める。調査に赴くのは自分自身であるかもしれないし、大金を払って誰かに依頼するかもしれない。

経歴オプション
このシナリオフックを採用したPCは以下のいずれかの経歴を選択すること。
  • 君は自らの関心からザルウィンの遺産調査に赴く(最大1名)
  • 君はザルウィンの遺産調査の依頼を受けた(最大3名)
  • 君はザルウィンの遺産調査の用心棒である(最大1名)

調査内容は4種類あり、それは下記の「研究オプション」の内容で表現される(そのトピックに関連する遺産の調査をするということになる)。NPCから遺産調査の依頼を受けた場合、「研究オプション」で選択した該当トピックを完全に調査した後で依頼主に報告することで400gpの報酬を得ることができる。用心棒はこのシナリオフックの経歴を選択したPCのいずれかに雇われたことになる。用心棒の報酬はPL間で相談し、取り決めておくこと(PC間の関係によっては報酬なしということすら可能であろう)。なお、用心棒の研究オプションは護衛対象であるPCと同一になる。

研究トピック解放
このシナリオフックを採用したPCは以下の1つの研究トピックをアンロックする。
  • トピック「ザルウィン屋敷」(Xarwin Manor)

研究オプション
このシナリオフックを採用したPCは以下の研究トピックのうち1つを選択する。そのPCは選択した研究トピックをアンロックし、そのトピックに関する研究判定に常に+1の無名ボーナスを得る。
  • トピック「アセタナ・ザルウィン」(Asethanna Xarwin)
  • トピック「イオセフ・ザルウィン」(Ioseff Xarwin)
  • トピック「スターレス・スコープ」(Starless Scope)
  • トピック「ヴォイド・ミラー」(Void Mirror)

このシナリオフックで後半2つのトピックのいずれかを選択する者は、デズナ、宇宙、古代の出来事などに関心があることが望ましい。また、調査人の関心または調査依頼の対象となるトピックはそれぞれ異なることが望ましい。

制約
用心棒を除き、遺産調査の研究トピックにPC間で被りがあってはならない。それぞれ調査を求めている者は別人である。

白銀の代理人 Silver Agent

ラヴォネルの統治の実質的な舵取りをしている「白銀評議会」(Silver Counsil)は、AR4715年にバルジライ・スルーンの圧政からキンターゴを解放するために再結成された反乱組織「白銀の鴉」(Silver Ravens)を前身とする機関である。独立後暫く経た今も、政治・経済の評議会と、治安・諜報の鴉という両翼は互いに協力し合いながらキンターゴとラヴォネルを支えている。

このようにラヴォネルを下支えする「白銀」がザルウィン屋敷という厄ネタを警戒するのは当然であった。確かに、旧体制の被害者に対する補償や私有財産権の尊重という原則に従い、ザルウィン屋敷の取り扱いは完全にその法定相続人に委ねられた。しかし、シェリアックス時代から放置されてきた文字通りの「負の遺産」が国家に重大な厄災をもたらす可能性を見過ごすわけにはいかない。

そこで「白銀」の有力者にしてラヴォネル独立の立役者であるカルディニア・タネッセン*1は、1人のエージェントをザルウィン屋敷の調査に参加させることにした。エージェントは、相続人の正式な随行者として振舞うかもしれないし、独自の調査者として密かに一行に紛れ込むのかもしれない。いずれにせよ、エージェントの使命はザルウィン屋敷の危険を完全に調べ上げ、命令者に報告することである。

経歴について
このシナリオフックを採用できるPCは1名のみである。このPCは自らの身分を他のPCに明かしても良いし、秘匿しても良い。秘匿していた身分が冒険の途中で明らかになっても、特にゲーム的なペナルティはない。

研究トピック解放
このシナリオフックを採用したPCは以下の1つの研究トピックをアンロックする。
  • トピック「ザルウィン屋敷」(Xarwin Manor)

研究オプション
このシナリオフックを採用したPCは以下の研究トピックのうち1つを選択する。そのPCは選択した研究トピックをアンロックし、そのトピックに関する研究判定に常に+1の無名ボーナスを得る。
  • トピック「スターレス・スコープ」(Starless Scope)
  • トピック「ヴォイド・ミラー」(Void Mirror)

このトピックは、君の命令者がザルウィン屋敷に関する調査において見出したキーワードであり、どのような文脈で登場する用語であるかはキャラクタービルド時点では一切不明である。

制約
このシナリオフックを採用したPCは白銀の使命に忠実でなければならない。

注目ルール

研究サブシステム

この冒険では研究サブシステムが大きな役割を果たす。冒険全体を通じて研究対象となる「研究トピック」がいくつか存在する。冒険中の様々な箇所で各トピックに対する研究ポイント(RP)を獲得する機会があり、獲得量に応じてトピックの情報が少しずつ明かされていくようになっている。RPはトピックごとに冒険の間ずっと累積する。

研究トピックは冒険の初期から提示されているものもあれば、探索の中で新たにアンロックされるものもある。別の研究の進捗によって新たに明かされるトピックもあるだろう。実地の探索や研究サブシステムを通じて様々な「謎」を解明することが、本冒険の目的達成のために非常に重要となってくる。

シナリオフックの経歴によってアンロックされる研究トピックは各PCが独自に獲得するものだが、研究トピックそのものやトピックごとの累積RPはパーティー全体で共有される。複数のPCが同一のトピックをアンロックしていたとしても、特別な利益はない。しかし、研究の共有が行われるのはPCたちがパーティーとして合流した後のことであるため、ゲームの最序盤に行う情報収集パートの研究判定は、各PC自身がアンロックしたトピックに対してのみとなる予定である。

霊障について

幽霊屋敷と呼ばれるだけあって本冒険の舞台では「霊障」(haunt)がしばしば発生する。霊障のルールは1版の時代と大きく異なり、罠などと共通の障害(hazard)というルールにまとめられている。障害がどのようなメカニズムで発現して機能するかを理解しておくことで、キャラクター能力とのミスマッチを避けることができるかもしれない。

1版の霊障では活力エネルギー(旧:正のエネルギー)が万能の対処方法として機能していたが、2版の霊障は必ずしもそうではないことに注意すること。例として、GM Core掲載のGhostly Choirを見てみると、この霊障の無力化に必要なのは〈芸能〉や〈宗教〉であることがわかる(この方法もこの霊障特有のものである)。霊障特性の説明にも特に一般的に有効な攻撃方法などは示されていないようである。ただし、これは活力エネルギーがまったく無駄であることを意味するものではなく、霊的な存在に対して依然として有効である可能性は高いだろう。

剥ぎ取り

本卓では独自定義の剥ぎ取りルールを採用する。今回は冒険の途中で市場へアクセスすることが難しいため、不足が生じた場合は現地調達となる。探索アクティビティを用いてアイテムを作成するルールも収録されており、現地調達型の冒険の助けとなる。活用する場合、事前に必要な装備や技能についてチェックしておくこと。

ハウスルール

その他、GM依存の裁定となりそうな事柄についてはハウスルールを確認しておくこと。

キャラクタービルド

大きくネタバレしない範囲でキャラクタービルドの指針をまとめる。パーティー全体で様々な状況に対応できるよう調整することが望ましい。

性向

冒険の性質上、善性を持つPCや好奇心旺盛なPCはロールプレイがしやすいだろう。一攫千金を狙うアウトローも動機を表現しやすいかもしれない。いずれにせよ、危険な探索からすぐに逃げ出さないだけの理由をつけやすい性格の方が良いだろう。

この物語はどちらかというと寄せ集め集団での探索を想定している。全員が旧知の冒険者同士ではない以上、非協力的な性向を持つPCは協調のために努力することになるだろうし、明らかに悪のPCは今回の参加者としてあまり相応しくないだろう。

能力

本作では研究サブシステムが大きな役割を果たすため、調べものや謎の究明が得意なPCは大いに活躍できるだろう。勿論、危険なクリーチャーとの遭遇も数多く想定されており、高い戦闘能力を持つPCが活躍するだろうことは言うまでもない。

冒険の舞台は辺境の打ち棄てられた集落跡にある幽霊屋敷であり、冒険中すぐにアクセスできる文明社会の拠点はない。遠方の地で補給がない中でも強かに生き抜く術が必要となるだろう。逆に、自然豊かな原野や都市部での冒険が得意なPCはその潜在能力を発揮できない可能性が高い。

また、敷地内の探索が中心となることを考えると戦闘が起こる場所は広大とは言えないため、乗騎を持つPCや大型の(または大型の相棒を持つ)PCは邪魔になってしまうかもしれない。狭い地形を利用したり、ダンジョンを探索したりするのが得意なPCは、能力を活かせるだろう。

出身地域

採用したシナリオフック(経歴)に相応しい出身地域を選択すること。相続人は自動的にキンターゴ出身となる。基本的には、アヴィスタンかガルーンド北部の出身であれば、参加への成り行きはある程度自然である。何らかの強い理由があって遠方出身とすることも可能だが、いたとしてもパーティー内で1人程度だ。

物語とのつながりをより強く表現したい場合、ラヴォネルやシェリアックスの住人が適している。意外なところではウースタラヴからやってきたPCも今回の物語と相性が良いが、ウースタラヴ出身者がパーティーの多数派を占めるのは不自然だろう。

種族

ラヴォネルやシェリアックスでは人間が1番多い種族である。土地柄として、ハーフリング、アーユヴァリン(ハーフエルフ)、ストリックス、テング、ネフィリム(ティーフリング)は他の地域に比べて多い。

信仰

デズナやファラズマを信仰するキャラクターは冒険の中で印象深い経験をする可能性が高い。あるいは、謎に迫ることを好むPCは魔術と知識の神であるネサスと相性が良いかもしれない。冒険の舞台であるラヴォネルやシェリアックスで信仰されがちな神格は、今回の冒険ではある程度自然な選択である。

信仰上ニュートラルな立場でいたい場合は、アヴィスタンで広く信仰されている神々を選択しておくのが無難である。珍しい信仰は奇異の目で見られる可能性はあるが、今回の冒険で支障が生じるケースは少ない。なお、今回の冒険はゴッズレインが起こる前の時代なのでゴルム信仰は通常通り機能する。

邪悪な信仰は推奨されない。外なる神や旧支配者など宇宙的恐怖と関わる信仰も非推奨である。非推奨の信仰はGMが禁止する可能性が高い。地域性により、アスモデウスとゾン=クーソンは悪神の中でも相談の余地がある。

技能

有用な技能
この冒険において〈宗教〉や〈伝承学〉が得意なPCは特に活躍する機会が多いだろう。それ以外にも“知識の想起”に使う技能やダンジョン探索で頻出する技能が普遍的に有用であることは言うまでもない。また、幽霊屋敷の探索というコンセプトにおいては連想しづらいかもしれないが、〈交渉〉をはじめとする社交的な技能が必要とされるシーンも少なくないだろう。

知識技能について
〈知識〉技能は他の一般技能に比べて汎用性では劣るものの、特定の判定においてDCが低くなる可能性がある。この冒険で使用機会が一定以上あるのは、〈知識:図書館〉、〈知識:天文学〉、〈知識:デズナ〉、〈知識:アンデッド〉、〈知識:異形〉、〈知識:サイコポンプ〉などである(順不同)。これ以外にも使用できそうな〈知識〉技能はある。狙ってみる場合は、冒険の舞台である地域の社会や文化、今回の探索場所が打ち棄てられた貴族の邸宅であるということ等を考慮すると良いだろう。

言語

地域で用いられる言語は共通語(タルドール語)である。また、アンコモンのため取得には注意が必要だが、アクロ語(Aklo)、死霊語(Necril)、天界語(Empyrean)は使用する機会があるかもしれない(順不同)。


キャンペーンセッティング

世界解説

ここでは冒険の舞台となるザルウィン屋敷を取り巻く地域の情勢について説明する。

1版時代の基本知識を確認したい場合は、PRDJ掲載の情報などを復習することを推奨する。キャラクタービルドに最新の内海地域の設定を生かしたい場合、Lost Omens World Guideの記載を参照すること。

※注:この項は1版のいくつかのネタバレを含んでいます。

旧シェリアックス Old Cheliax


かつてアヴィスタン有数の大帝国であったシェリアックスはこの1世紀で大きくその力と影響力を減じた。

シェリアックス帝国は、AR4300年代に始まった永続戦争(Everwar)の末期に最盛期を迎え、その最大版図はアヴィスタン南西部のほとんどを含んでいた。この地域は今でも旧シェリアックス(Old Cheliax)として知られている。

エイローデンの死後の混乱の中で勃発したシェリアックス内戦における勝者は、地獄のデヴィルと契約を結んだスルーン家であった。デヴィルや隣国ニダルの支援を受けたスルーン家はライバルを打ち負かして玉座を勝ち取り、シェリアックスを地獄の帝国へと変貌させた。そして現在の女王アブロゲイルII世の治世に至るまで、複雑な官僚制度による強権的で冷酷な支配を継続してきた。

しかし、近年シェリアックスでは大きな動乱が相次いだ。AR4709年、旧都ウェストクラウンにおいて「盗賊会議」(Counsil of Theaves)による腐敗が白日の下に曝され、同組織が壊滅する事件が起きた。この事件は、貴族社会の再編によるスルーン体制の強化やシェリアックス全体の経済活性化に寄与したが、その後の反体制的な動きの遠因にもなった。その結果かどうか、AR4715年からAR4717年にかけて、シェリアックスの南北で2つの大規模な反乱が発生した。南部で発生したアイオーメディ信徒たちの蜂起「栄光ある奪還」(Glorious Reclamation)は鎮圧され、首謀者は公開拷問の上処刑された。一方、北部のキンターゴで立ち上がった「白銀の鴉」(Silver Ravens)による反乱は成功し、最終的にラヴォネル地域の合法的な分離独立という形で終結した。

この10年の動きは旧シェリアックス地域の勢力均衡に劇的な変化をもたらし、スルーン家の支配は弱体化したと言える。しかし、それでも依然としてシェリアックスの軍事力や経済力は絶大であり、スルーン家の地獄の力は周辺諸国の運命に影響を及ぼし続けている。このため、イズガー、ニダル、ラヴォネルという周辺国家は、今もシェリアックスと複雑な距離感を保っている。

ラヴォネル Ravounel


ラヴォネルはアヴィスタン南西部、シェリアックスの北西に位置する国で、首都キンターゴを中心とした複数の自治勢力から構成される連合国家である。かつてはラヴォネル大公領としてシェリアックスの一部であったが、AR4717年に分離独立を果たした。

ラヴォネル地方はシェリアックスの中心地と険しいメナドール山脈で隔てられており、はるか昔のタルドール時代から帰属問題が存在していた。シェリアックス内戦時には独立を主張して反スルーン派貴族たちの拠点になるような土地柄であったが、スルーン家によってシェリアックスが掌握された後は、中央政府に対して面従腹背の姿勢で表面上は忠誠を取り繕っていた。しかし、AR4715年にバルジライ・スルーンがキンターゴ市長に就任したことで状況が一変する。バルジライは自らの野望の過程としてキンターゴに暴政を敷き、反体制派を徹底的に弾圧した。これに対して冒険者の一団が立ち上がり、内戦期に存在した伝説的な「白銀の鴉」を再結成し、バルジライ体制に対抗し始めた。

キンターゴに端を発するこの反乱はラヴォネル中の貴族やその他勢力を巻き込む形で発展していき、最終的にはバルジライの野望を打ち砕くことに成功する。更にラヴォネルは、スルーン朝の成立期から存在する「キンターゴ契約」と呼ばれる地獄の秘密契約の穴を突くことで、シェリアックスからの合法的な分離独立を達成する。ここに、史上初めてラヴォネルという名の独立国家が成立したのである。

ラヴォネル国内には、行政府のあるキンターゴの他、仮面の町ヴァイア(Vyre)、水棲エルフのディスマル・ニッチ(Dismal Nitch)、ラヴォネル森のストリックスたち、奴隷解放を推進する国際組織ベルフラワー・ネットワークなど、様々な勢力が存在している。これらの勢力が国益のために1つにまとまっているかというと、そうでもなく、ラヴォネル政府はニダルやシェリアックスとの外交関係だけでなく国内の摩擦にも気を配らなければならない。

クルックド・コーヴ Crooked Cove

クルックド・コーヴはラヴォネルの南西海岸の曲がった入江に存在する集落跡である。現在は人の住んでいないゴーストタウンとなっており、今回の冒険の舞台であるザルウィン屋敷はこの町を見下ろす丘の上に建っている。

メナドール山脈の西端、高地デヴィルズ・パーチ(Devil's Perch)の北斜面から北方に伸びる険しい海岸線の地域はイルヴァネス(Ilverness)と呼ばれ、シェリアックスにとっては西の果ての辺境地帯であった。そのような孤立した土地に、ヘルナイトのゲート騎士団(Order of the Gate)がメナドール山脈にエンフェラク城塞(Citadel Enferac)を建設するための拠点を作ったのがクルックド・コーヴのはじまりである(AR4599年)。その後、建設現場である城塞自体が拠点機能を持ち始めるとクルックド・コーヴの町は寂れていったが、4640年代には再び活気を取り戻す。シェリアックス内戦終結後、スルーン家はイルヴァネスを領地とする準伯爵にザルウィン卿を任命した。卿はクルックド・コーヴを見下ろす小高い丘に屋敷を建設して移り住み、辺境の領地経営に取り組み始めたのである。

しかし、AR4650年代後半、何かが起こって全ては変わってしまった。具体的に何があったかは明らかになっていないが、少なくともAR4657年の記録を最後にクルックド・コーヴは完全に放棄されたようである。その後は、稀に冒険者や探検家が訪れることはあったようだが、ザルウィン屋敷を目指した彼らのほとんどは行方不明になっており、生きて帰ったと噂される者もその体験を語ることを避けているという。そして現在に至るまで、クルックド・コーヴはシェリアックス(ラヴォネル)で最も恐ろしい呪われた場所の1つとして知られている。

年表

以下はシェリアックスとラヴォネル、クルックド・コーヴに関わる主要事項をまとめた年表である。

AR できごと
3007 タルドールの西部辺境としてシェリアックス州が成立
4081 タルドールからシェリアックスが独立
4305 シェリアックスの拡大期、永続戦争の開始
4410 シェリアックスがヴァリシアやベルクゼンへの拡大を断念、永続戦争の終結
4599 クルックド・コーヴの建設
4606 エイローデンが死亡、シェリアックス内戦勃発
4640 シェリアックス内戦がスルーン家の勝利で終結(エゴリアン条約)、国教がアスモデウス信仰となる
4657 この年を最後にクルックド・コーヴの記録が途絶える
4709 ウェストクラウンで盗賊会議が壊滅
4715 シェリアックスで2つの大きな反乱が起こる
4717 ラヴォネルがシェリアックスから分離独立
4721 現在の年

冒険の開始

この冒険はPCたちがザルウィン屋敷のあるクルックド・コーヴに揃ったところから開始する。しかし、クルックド・コーヴに至るまでの行程はPCごとに異なる可能性が高い。

ザルウィン屋敷までの道のり

イルヴァネスは現在のラヴォネルにおいても辺境の地であり、クルックド・コーヴまでは首都キンターゴから約280マイルの道のりがある。主要な街道でもないため、キンターゴからの道は次第に手入れが行き届かなくなり、草木が生い茂る荒れ放題の道へと変わっていく。このルートはアルカディア洋に面した海岸線に沿って進むことを想定したもので、悪路ではあるが、現在クルックド・コーヴに向かうにあたって最も現実的な経路である。

他のルートも物理的に全く不可能というわけではないが、あまり現実的ではない。例えば、キンターゴからヨルビリス川(Yolubilis River)を遡る内陸の街道は、かつてシェリアックスの中心地とラヴォネル地方を結んでいた王道の主要道であるが、メナドール山脈の北斜面に沿ってラヴォネル森の南側を迂回する部分は、海側ルート以上に整備されておらず、集落もほとんど存在しない。何より、山脈をシェリアックス側に抜けるためのメナドール・ギャップ(Menador Gap)という峠道が、ラヴォネル独立の過程で封鎖されたままであり、この経路の流通は往時と比べて大幅に減少している。必然的にシェリアックス側から陸路で直接向かうことも難しくなっている。別案として、海路などでペザック(Pezzack)まで行き、そこから北上するということも1つの考えかもしれない。しかし、その経路も非常に険しい地形を踏破する必要がある上、非合法な手段で国境超えを行うことになってしまうため、常識的には避けられるべきである。

このため、この冒険におけるクルックド・コーヴまでの道のりはキンターゴからのものを想定している。出身が国外である場合、キンターゴまでやって来る最も一般的な方法は海路である。陸路では、ニダル方面から入国するか、メナドール・ギャップ以外の峠道を使ってメナドール山脈を越えることになるだろう。

キンターゴからイルヴァネスまでの道にはおそらく宿泊可能な集落がいくつか存在するだろう*2が、大きな町は存在せず、その間隔も次第に疎らになっていく。クルックド・コーヴの手前に存在する最後の集落はセンバー・コーヴ(Sember Cove)という小さな村である。クルックド・コーヴはそこから徒歩で1日強の場所にあり、周囲に人里はない。仮に最後の補給を行うなら必然的にセンバー・コーヴにおいてとなるが、小さな村で取引できるアイテムはせいぜい1レベルコモンアイテムまでだろう。ゆえに、今回の冒険はキンターゴで十分準備を整えてから出発するのが合理的である。

行軍速度が25フィートの場合、1日の移動は20マイルであり、キンターゴからクルックド・コーヴまでは徒歩で2週間かかる計算になる。この往路分の費用(食糧費および宿泊費)はキャラクタービルド時には省略してよい(初期資金を使って準備しなくてよい)。ただし、冒険の間に必要となると考える物資や装備については初期資金を使って各自で準備しておくこと。また、もし移動経路をキンターゴからの海沿いルート以外のものにしたい場合や、馬車など足を別途確保したい場合は、GMと相談の上で初期資金から追加のコストを支払うこと。

パーティーの合流

上述の通り、クルックド・コーヴに向かうにはキンターゴを出発地点とするのが一般的である。しかし、仮に全員がキンターゴで準備をすることになったとしても、この冒険では異なる動機を持ったPCがそれぞれ独自にザルウィン屋敷へ向かうことを想定しているため、必ずしも全員で足並みを揃えて目的地に向けて出発する必要はない。

PCたちが合流するタイミングは以下のパターンが考えられる。
  • キャラクタービルド時:最初から仲間であるケース(雇用関係など)
  • キンターゴ:首都での情報収集で巡り会うなど
  • センバー・コーヴまでの道:道すがら偶然出会うケース
  • センバー・コーヴ:半ば必然的に同じ宿泊地となるケース
  • クルックド・コーヴ:現地で運命的な出会いをするケース

センバー・コーヴは想定のルートにおいてほぼ必ず宿泊する場所であるため、旅の途中で合流するパターンとしては最も想像しやすい。一方、その他の集落は立ち寄ること自体がPCたちの選択に依るため、道すがら合流するのはかなりの偶然に頼ることなるだろう。クルックド・コーヴで現地合流するPCは、キンターゴでもセンバー・コーヴでも出会わなかった人物となるため、よほど特殊な経緯で現地にたどり着いた者なのかもしれない。

今回のゲームでは、各PCはどこで合流しても特に有利不利がない(最初の展開は多少変わるが)。PCの経歴や性格などを考慮し、合流タイミングを演出することを開始時のロールプレイの1つとしてみてほしい。
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注釈

*1 1版のAP「Hell’s Rebels」におけるGMのPC

*2 公式資料に特に情報がないのでGMの推測である