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  • 突き立てよ その牙、その爪、その■

神薙の巫女と堕ちし龍Wiki

突き立てよ その牙、その爪、その■

最終更新:2025年06月09日 23:32

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

「ったく、かったりぃなオイ」

 粗野な口調で呟いたのはこれまたガラの悪そうな赤髪の少女であった。

 クロエ=ノロシダ。

 ギリシャにて活動する巫女グループ、『オリュンポス』へ加入するためにはるばる日本から来訪した彼女は高倍率の試験の数々を潜り抜け、並み居るライバル達を蹴散らし見事ギリシャ神話に名高い軍神アレスを宿す権利を勝ち取った。

「んで、神降ろしにも無事成功して巫女になった……」

 何もかもが順調であった。
 ──────だがしかし。

「何が『あなたはまだ条件を満たしていない』だクソッタレ……」

 それだけでは正式メンバーとなるには不足らしい。
 真の最終試験をクリアして初めて『オリュンポス』の一員として迎え入れると告げられたのだ。
 勿論、不本意ではあった。
 十分な実力は既に身に着けていたと確信していたのだから。
 かの軍神を身に宿すことが許された以上、自分以外に空席となっているその座を埋めるに相応しい者は他にいるだろうか。いや、いまい。
 しかし、ルールはルール。
 そうというのなら仕方が無い。ここで駄々を捏ねて受験資格を剥奪されては全て水の泡。
 寧ろ自分の力を見せつける絶好の機会だとポジティブに切り替えて行くとする。
 というわけでクロエは渋々「最終試験会場」とやらに出向いた次第なのであった。

「おーすっ、邪魔するぜ」

 意気込んで案内された扉を潜るとそこは体育館のような広い空間。
 そして、その真ん中で待ち構えて佇んでいる誰か。
 クロエにとって面識の有る人物。
 モデルのような体型の妙齢の美女。

「あら、いらっしゃい。待っていたわよ」

 カサンドラ=イプシランティス。

 これまでの試験で監督役を務めていただけあって、此度もまた彼女がその役割を担うということなのだろうか。
 一応は目上の人物であってもお構い無しにクロエは乱暴な口調を崩さずに応じる。

「そいつはどーも。……へぇ、ここが最終試験会場っつーわけか。それで?アタシは何すりゃいいんだよ?シャトルランでもやってみせろってか?」
「相変わらず気が早いわね。まぁ、いいでしょう。あなたにやってもらうのは……いいえ、妾よりも『彼女』から話してもらった方が良さそうね」
「あん?」

 首を傾げるヤンキーを置き去りにしてカサンドラが指を鳴らすと、カツカツと足音を立てて別の出入り口から何者かがこちらに向かって歩いて来た。
 部分的に白髪が混じった黒髪をポニーテールに纏めたぱっと見の推定年齢は三十代の女性。
 黒いスーツにサングラス、手には革グローブを嵌めた格好はまるでどこかの秘密組織のエージェントを想起させた。
 そして、軽やかな足取りで二人の元へ辿り着くと完璧な角度のお辞儀と共に「彼女」は自己紹介を始める。

「マリヤ=ノヴァツスキーと申します。『オリュンポス』にて恐縮ながらマネージャーを務めさせていただいております。どうかお見知り置きを」

 マリヤと名乗ったスーツの麗人は顔を上げると大きくはないがよく通る声で「試験内容」を述べていく。

「カサンドラ様に引き続き、私が説明をさせて頂きます。ノロシダ様には私とスパーリングを行ってもらいます。ルールは至って単純なものです。私を無力化すればそこで終了。ただそれだけ。時間は無制限。方法は問いません。巫女化は勿論、権能もご自由にお使いくださって結構で
「待てよ」

 スラスラと喋り続けるマリヤをクロエが途中で遮った。
 そのことに対して、特に不快感を示さずにあくまでも丁寧な態度のまま『オリュンポス』のマネージャーは応じる。

「どうかなされましたか?何かご質問が有るのでしたら承りますが」
「おう、そんじゃ遠慮無く。……あー、マリヤさんだったか?」

 クロエは元々刻まれていた眉間の皺を更に寄せて問い詰める。
 目の前の女は明らかにこの場にそぐわない人間だと思える理由があったからだ。
 つまりは。

「──────アンタ、巫女じゃねぇだろ?」
「はい、その通りでございます。それがどうか致しましたか?」

 即答だった。
 まるで自分の質問など聞くまでも無い当たり前のことのように返されて苛立ちを募らせるクロエの語気は荒くなる。

「『どうかいたしましたか?』じゃねぇよ。そりゃ気付くさ。だってアンタからは巫力を全く感じやしねぇんだもの。この期に及んでアタシをコケにしてんのか?大体パンピーなんかに巫女の力を振りかざせるワケねぇだろ!下手すりゃ殺しちまう!」
「その点についてはご心配無く。貴方様を侮辱する意図はこちらには全くございません。何より確かに私は巫女ではありませんが、一般の方々より多少は『特別』ですので」
「ワケのわかんねぇこと抜かしてんじゃねぇ!なぁ、カサンドラさんよぉ!ほんとにやっちまっていいのか!?このままじゃ人殺しの被害者と加害者のセットがそっくり一つ生まれちまうぞ!?グルになってからかってんならいい加減勘弁してくれ!」
「あら、妾達は到って真面目よ」

 クロエの怒鳴り声に対してカサンドラはフラットな口調で応じる。如何にもどうでも良さげといった具合に。
 二人のやり取りなど取るに足らんとばかりに視線など向けず、爪に塗ったマニキュアの出来栄えを暇そうに眺めてさえいた。

「これはれっきとした最終試験。どちらかが一生寝たきりの再起不能に陥ろうと物言わぬ死人になろうともこの場で起きた出来事の結果は全て妾が責任を負うから存分にやりなさいな」
「いや、アンタの態度が一番人を馬鹿にしてんだろ!はぁ……、どうなっても知らねぇぞ……」

 すっかり調子を狂わされてしまったが好き勝手やる了承は得た。
 とりあえずここは手加減して意識を奪うに留めるか。
 ──────などと適当な算段を頭の中でぼんやりと浮かべていたクロエであったが。

「ノロシダ様。試験を始める前にこちらをどうぞ」
「あん?」

 マリヤから何かを差し出された。
 言われるがまま反射的に受け取ったのは格闘技において頭部や耳を覆う防具。
 所謂ヘッドギアであった。

「身に付けることをお勧めします。お怪我をなされては大変ですので」
「っ!!」 

 その一言だけでクロエの脳は沸点に達した。

 幼い子供に甘口のカレーを勧めるように。
 泳げない者のために膨らませた浮き輪を渡すように。
 将棋の初心者に熟練者が飛車角落ちのハンデで迎え撃つように。

 相手は明らかにこちらを「下」、ズブの素人とだと舐め腐っている意思表明。

 巫女じゃないくせに。
 喧嘩もしたことが無いような涼しいツラをしているくせに。
 自分よりも弱いくせに。

「ふざけんじゃねぇ!」

 余計なお節介にプライドを逆撫でされたクロエは激昂して、ヘッドギアを床に叩き付けた。
 あまりの勢いに衝撃を緩和するよう頑丈に設計されているはずの防具はバラバラに四散する。

「ナメやがって!こんなモンいるかよ!」
「左様ですか。遠慮するのでは仕方がありません。『自己責任』、ということでよろしいでしょうか?」
「やかましいっ!いつでも来やがれっ!」
「かしこまりました。それでは参ります」

 相対するは挑戦者と試験官。
 遂に両者の激突が始まろうとした。  
 ──────その一瞬手前。

「あ、マリヤ。少し待ってちょうだい」
「はい、カサンドラ様」

 それまで静観を決め込んでいたカサンドラからの制止が唐突に割り込んだ。直前まで臨戦態勢だったマリヤは即座に構えを解いて元の直立不動へと戻る。
 一方でペースを崩されたクロエは勢い余って前方へややつんのめりながらツッコんだ。

「これからって時に何だってんだよオイ!」
「あら、ごめんなさい。寛大で慈悲深い妾からのありがたい助言を忘れていたのよ」
「助言だぁ?」

 カサンドラの口調はやはりあくまで軽いままだった。
 聞く側にとって子供扱いされているようで業腹だったが渋々ながら一応は耳を傾ける。

「あなた、一見怒っているように見えてまだマリヤに手加減するつもりでいるでしょう?だとしたらやめておきなさい。最初から徹頭徹尾本気でやった方が良いわよ」
「オイオイ、態々ンなこと言うために……」
「──────だって彼女、その辺の巫女より強いもの」

 意味不明なアドバイスに対して「はぁ?」と返す間も無かった。

 カサンドラが言い終わると同時。
 メリィッ……!!と。

 クロエの頬にナニカがめり込み、頭蓋骨全体をメキメキと軋ませる音を響かせた。

「なっ─────!?」

 殴られている。誰に?
 辛うじて衝撃の発生源へ視線を送るとマリヤ=ノヴァツスキーがそこにいた。
 先程まで約10mは離れた位置にいたというのに。
 一瞬でそれ程の距離を詰め、お手本のような綺麗なフォームで腕を伸ばして自分の顔を打っている。

「忠告はしたわよ」

 欠伸を交えながら眺めていたカサンドラの呟きなど耳に入れることは叶わず、そのままクロエは何度も床を転がって壁まで吹き飛ばされた。

「ぐ……、がぁっ!」

 あまりの勢いに衝突と同時に壁に亀裂が入り、漆喰がボロボロと崩れて頭の上に降り注ぐ。
 思いも寄らぬ一撃に膝をつくクロエは口の端から流れ出る血を手の甲で拭う。
 鏡を見ていないので彼女自身は確認出来ていないが、痛みと熱を放つその片方の頬は痛々しく真っ赤に腫れ上がっていた。

「カハッ……ゥ……!汚ぇぞ……!不意打ちなんざしやがって!」
「『いつでも来い』と先程貴方様自身が仰られておりましたので」
「っ!チクショウが……!」

 マリヤ=ノヴァツスキーの披露したパワーとスピード。
 先程のストレートパンチはボクシングのヘビー級チャンピオン程度では比べ物にならない威力は間違い無くあった。
 無論、巫女ではないというのならあの細腕からそのような出力が発揮されるはずもなく。
 考察を重ねていく中でクロエはマリヤのとある発言をふと思い出す。

『確かに私は巫女ではありませんが、一般の方々より多少は「特別」ですので』。

 彼女を「特別」たらしめているもの。
 果たしてその正体は。
 即座に結論は出せず疑問だけが零れ出る。

「アンタ、一体……?」
「お気になさるのでしたら教えて差し上げましょう。私は『オリュンポス』のリーダー、イリス=A(アルター)=イルテリアス様より賜った血により『英雄化』されております。そのおかげで常人を凌ぐ力を得ているのです」
「けっ、何かと思えば要は下らねぇドーピングかよ。成る程、『臨界者』の権能なら何が起きても不思議じゃねぇっつーわけか。そいつが例えパンピーに巫女に匹敵する力を持たせるような代物だとしてもな」
「理解が早くて何より。尤も、引き上げられるのは身体能力のみですが。──────それよりも立ち上がらなくてよろしいのですか?」

 マリヤが再び構えを取る。
 すると空気が一気に張り詰めた。
 今のはほんの小手調べ。
 次からはより一層研ぎ澄まされた真なる暴力が牙を剥く。

「試験が終わるまで私が手を緩めることはありません。こちらの『気遣い』を突き放された以上、後遺症の残るお怪我を負わせてしまった場合はどうかご容赦を」

 懇切丁寧かつ物騒な「今からお前をボコる」宣言と共に『オリュンポス』の最終試験官は人間の限界を超えた力で床を蹴り、砲弾のような速度で挑戦者へと肉薄する。


◇


 実の所、クロエ=ノロシダには幾らか余裕があった。
 先制を許してしまったがカラクリについては向こうからベラベラ喋ってくれた。
 説明通りなら要するに思い切りぶん殴っても構わない程度には頑丈らしい。
 ならば遠慮さえ捨てればこちらが有利。
 何故なら自分は純粋な巫女。
 幾らあちらが得体の知れないドーピングでブーストしていようとも総合的な身体能力ではおそらく勝っている。
 強くて早い方が勝利するという実に単純で覆しようの無い戦いにおける図式。
 それに則って攻め立てていけば自ずとスペック差で押し切れるだろう。
 そう思っていた。
 ───────だというのに。

「クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソがぁっ!!」

 一方的な試合運びが展開されていた。

 クロエが優位に立っているのではない。
 実態はその逆。

(どうしてアタシが押されているっ!?)

 攻撃を放てども躱され、捌かれ、受け止められ。
 防御を固めども崩され、削られ、掻い潜られ。
 その繰り返しによって蓄積していくダメージは何時しかクロエの方が圧倒的に上回っしまっていた。

(クソッタレが……!全然響いてる気がしねぇっ!!)

 彼女が知る由も無いが原因は至ってシンプルだった。
 マリヤ=ノヴァツスキーの持つテクニックと年季を前に本来は優位に立てるはずであった巫女由来のパワーとスピードがまるで追いつけていないからである。
 クロエは地元で喧嘩に明け暮れていた経験から腕っぷしに関してはそれなりに自信を持っていた。しかし、それはあくまで誰かから師事を受けて学んだわけではない荒削りな我流。動作の合間にどうしても無駄な隙が生じてしまっている。
 一方で対するマリヤのスタイルは空手やボクシングにシステマを始めとする様々な武術の動きを取り入れ、統合した上で更に数十年に及んで洗練させ続けた総合格闘術。謂わば世界に一つだけのオリジナルたるマリヤ流。
 前者と後者では道端で拾ったただの棒切れと鍛えて磨き上げた刀剣程の差が存在していた。鋭さという一点においてどちらがより武器として優れているのかは明白だろう。

(当たれっ!当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ!当たりやがれってんだっ!!)

 そのことに気付かずに焦りと苛立ちからクロエは闇雲な乱打を繰り出す。
 されどこんなにも肉薄しているはずのマリヤには決して届かず。
 寧ろ却って自滅に近い形で自らの体力を奪い、呼吸を乱し、判断力を鈍らせていく。 
 そして、遂にその時は訪れた。

「オッラアアアァッ!!」

 大振りの一撃が空を切ると同時に生じる。
 致命的な隙。

(やべっ─────!?)

 拳を引き戻そうとしたが既に遅かった。
 当然、歴戦のマネージャーがその好機を見逃すはずも無く。

「失礼致します」

 伸び切った軸脚を狙った鞭のように鋭い足払いが炸裂し、アレスの巫女は床に仰向けに転がされる。
 追撃のマリヤはそこへ更に四肢をヘビのように這わせ、絡みつかせて抑え込む。

 腕ひしぎ十字固め。

 瞬きする間に脱出不能の関節技が完璧に決まっていた。

「降参なさいますか?」
「誰が、んなもんするかよ……!」
「左様ですか」
「ぐっ……がっ、ぁああああああああアアアぁぁぁっっ!!」

 荷重がかけられたことによって可動域を越えて人体が無理矢理折り畳まれていく。
 ミシミシミシという普通に生活していれば絶対に耳にすることの無い危機感を煽る音がクロエの脳内で耳障りに反響する。

「降参なさいますか?」
「へっ……、クソ……くらいやが………れっ……!」
「……それが貴方様の答えなのですね」

 ボグッ──────。

 躊躇無く、折った。折られた。
 自らの肉体からその音が発せられたのだと自覚した途端、爆発したかのような熱と激痛が患部である左腕を起点にクロエ=ノロシダの全身を駆け巡る。

「ギッ────ァ、っ────ぁ──ッ!!」

 本物の「痛み」とは。
 悲鳴を上げることすらも許さない。
 これまでの生涯で感じたことの無い程の刺激の伝達によりクロエはのたうち回ろうとしたがロックされた体勢ではそれは叶わず、死にかけの魚のように痙攣することしか出来なかった。

「降参をお勧めします。先にお伝えしておきましょう。私はこれから貴方様の左腕、骨折した箇所へ更なるダメージを与えていくつもりにございます。これまで以上の比べ物にならない痛みに加えて、筋肉、そして最終的には腕そのものを動かす神経が断裂し再起不能となるでしょう。今ならまだ適切な治療を施せば後遺症を残すこと無く退室することが可能です。いかが致しますか?」

 マリヤは拘束を解いてゆっくりと立ち上がると、無様に横たわる挑戦者に二つの選択肢を突き付ける。

 ギブアップか続行か。
 解放か更なる苦痛か。

「ハ……ァ……!フッ、ぐぅ……!」

 浅く早い自分の呼吸と心臓の鼓動でさえ鬱陶しく感じる脳内で思考を張り巡らせていく。
 短い時間の中で理解したことがある。
 マリヤ=ノヴァツスキーは必要とあらば躊躇いなくマッチ棒のように容易く人の骨を折れる女だ。
 左腕を破壊し尽くすという悪魔のような宣告は決してハッタリではないだろう。どれだけ凄惨でグロテスクな光景を自らが作り出すことになったとしてもきっと眉一つ動かさないに違いない。
 加えて万全の状態であっても全く敵わなかったというのに、片腕が使えなくなった今の状態ではより勝機は薄くなってしまっている。

「30秒以内にどうなさるのかお決めください。返答の無い場合は続行の意思有りと見做します」

 折れた左腕が焼けるような熱と鈍い痛みを放つ。
 それはまるでこのまま意地を張り続けるのは危険だと警鐘を訴えているかのようで。

「25、24、23、22、21……」

 果たしてこれ以上、試験を続ける意味はあるのか?
 この辺りが潮時なのではないか?
 片腕を犠牲にしてまでやる必要は本当にあるのか?
 妥協してもいいのではないか?
 別に巫女グループは世界に一つだけではない。
 『オリュンポス』がダメだったとしても他所ならば知名度抜群のアレスの巫女は引く手数多のはずだ。どこでも快く受け入れてくれるはず。

「15、14、13、12、11……」

 だったら。

「5、4、3、2、1─────」

 それならば。

「うるっ、せぇんだよぉっ!!」

 尚更屈してなるものか。
 全てを否定し、拒絶してみせる。

 上から目線のマリヤの提案も。
 一瞬脳裏を過った弱気な自分さえも。

「ッラァッ!」

 這いつくばった状態から放つ脛目掛けての蹴り。
 素人丸出しで、荒削りで、乱暴極まりない一撃。
 当然のようにマリヤには躱されてしまったが、両者の間で久々に距離が開かれる。
 その隙にクロエは折れた左腕を抑えながらスクリと立ち上がる。
 鋭いその双眸は未だ衰えぬ闘志の炎を燃え上がらせていた。
 そして、何故『オリュンポス』の一員になりたかったのかについて思い返す。

(3年前、来日した『オリュンポス』が東京で開催したライブ)

 地元の友人が「一緒に観覧するはずだった知り合いが急病によるドタキャンでチケットが余ったから来ないか」と誘ってくれたので、「せっかくだから」という適当な理由で態々高い電車賃払って県を跨いで見に行った。

(あの頃は別に巫女にもアイドルにも興味は無かったっけ。それなのに──────)

 いざ、間近で彼女達を目の当たりにすると文字通りクロエの『世界』が変わった。否、変えられた。

 訪れた観客全てを魅了する圧倒的なパフォーマンス。
 場の雰囲気全てを支配する絶対的な実力に基づくカリスマ性。
 巨大なアリーナ全体を沸かせる熱狂。

 これが『オリュンポス』。
 これが世界トップクラスの巫女グループ。
 決してランクは高くない中央のステージから程遠い外れの席だったというのに、観覧していたクロエの心と脳は激しく震わされた。
 そして、焦がれてしまった。どうしようもなく。
 だから、思ってしまった。止めどなく。

(この連中に混ざりたい。アタシもあんな風に誰かの世界を変えてみたいってな)

 そう、有り体に言ってしまえばただの憧れ。

 その昔、命を救われたから。
 大切な人を奪われた復讐を誓ったから。
 代々巫女を担って来た一族の出身だから。

 大前提としてそういったドラマチックな過去やシリアスなバックボーンをクロエ=ノロシダは特に持たない。
 それらと比べればどこまでも浅く薄っぺらい動機かもしれない。

(あぁ、そうだ。──────それがどうした?)

 だとしても、だからこそ誰に笑われようとも諦める理由にはならない。
 気持ちが本物であれば何者であろうと挑戦する権利は確かにそこに存在するのだから。
 故に何度だってクロエは立ち上がる。立ち上がれる。

(手前ェの心が奮い立っている限り、どんなになっても戦って、戦って、戦い果てることこそが軍神の巫女としての本懐だよなぁっ!)

 心の内で強く己の在り方を定義する。
 技量に歴然とした差を付けられていても。
 左腕が使えなくなろうとも。
 例え勝ち目が薄くても。
 もうこれ以上は、一歩も引くものか。

「悪ィ、待たせたな。まぁ、見ての通りだ。アタシはまだまだ闘れるぜ。続きと洒落込もうじゃねぇか」
「左様ですか。ならば完膚無きまでに叩き潰させていただきます」
「おう、来やがれ」

 熱した鉄が冷めて固くなるようにクロエの精神は落ち着きを取り戻していた。
 何も特別なことをしたわけではない。
 自分が何の為に戦い、何故『オリュンポス』を志したのかを再確認しただけ。
 ならば後は雌雄を決するのみ。

(左腕を集中的にぶっ壊すって宣言したのは悪手だったぜマリヤさんよぉ……!予め狙う箇所が割れてんならそこを捨てる前提で一撃を叩き込めば通るはずだ。左腕はくれてやる。敢えて受けた直後にカウンターを顎に食らわせて意識を刈り取る!万全じゃねぇ今の状態で突破するにはそれしかねぇ!)

 戦意は滾らせど、戦況の分析は冷静に。
 絞り出した策と呼ぶには余りにも脆い展望に全てを賭ける。
 そして、最後の激突が訪れた。

「「──────────ッ!」」

 マリヤが加速して接近し、クロエが迎撃する形で互いの距離が一瞬で詰められていく。
 交差する両者。
 ──────が、しかし。
 クロエの拳はマリヤの顎を掠めることなく空振った。

「な、に……!?」

 完璧に軌道を読まれていた。
 何故?
 驚きに目を見開くクロエの様子を捉えたマリヤは律儀に答える。
 刹那のやり取りの最中であってもその声だけはやけに透き通っていて聞き取りやすかった。

「視線でどこを狙っているのかを容易に察知することが出来ました。裏をかこうとしたようですが此度は私が更にその裏を読んでいたということで」

 そして次の瞬間、振り抜かれたマリヤの拳が意趣返しとなって逆にクロエの顎を掠める。
 クリーンヒットさせて砕くことを目的としたわけではない意図的に掠めるように狙った一撃。
 頭部の最下端で生じた僅かな衝撃が同じ頭部で最も遠い頂上部に位置する脳へと至るまでに加速度的に増幅される。
 すると何が起こるのか。
 効果は即座に現れた。

「……ッ…………ぁ!」

 引き起こされる現象の名は脳震盪。
 クロエの平衡感覚が消失すると同時に目に映る世界全体が上下にひっくり返り、膝から力が失われてストンと崩れ落ちる。

(チク……ショウ……)

 最早捨て台詞すら吐き出せず、彼女の意識はそこで途絶した。


◇


「──────うっ……ぁ…………っ……」

 明滅する視界と共にクロエ=ノロシダは呻き声を上げて目を覚ます。

「あら、おはよう。よく寝れたかしら?」 

 傍らにはカサンドラ=イプシランティスが佇んでいる。
 更にキョロキョロと視線を移すとマリヤ=ノヴァツスキーは自己主張薄く試験会場奥の壁際に像の如く微動だにせず直立していた。特に傷を負った様子は無い。

 状況を鑑みるにどうやら「そういうこと」らしい。

 そうか、自分は負けたのか。
 それもどうしようもない程の完敗を喫して。

 理解すると共に思わず乾いた笑い声と自嘲が口から零れ出る。

「ハッ、あんだけ頭ン中でゴチャゴチャと啖呵切っといて結局ノされてやがるんだから世話ねぇぜ。ったくダッセぇなぁアタシ……」 
「えぇ、そうね。無様で野蛮で泥臭くてみっともなかったわ」
「…………………………………」

 いざ他者から辛辣で容赦の無い客観的な評価を聞かされると中々に堪えるものがあった。
 だが、事実なのだから仕方が無い。
 目の前のヘラの巫女は「よくがんばったねエラいエラい」などと優しいだけの陳腐な慰めの言葉をかけてくれるような甘い人種では無いのだから。
 この場において彼女が執行するのは私情を挟むことの無い、ただ無慈悲で公平な裁定だけだ。

「それで試験の合否についてなのだけれど」
「いや、聞かなくても分かる。あんだけボコボコにやr
「クロエ=ノロシダ。合格おめでとう。あなたを『オリュンポス』の新たなメンバーとして正式に認めます」
「──────は?」

 カサンドラの口から告げられたのは予想外の結果だった。
 何故?どうして?どのような意図で?
 はてなマークが頭の中をグルグルと渦巻いて脳を混乱させる。
 まるで意味がわからない。

「ま、待てよ。アタシはマリヤさんに手も足も出ずに一方的にボコられてただけじゃねぇか!」
「あら?マリヤは一度たりとも『自分を無力化することだけが唯一の合格条件』だなんて言ってないわよ」
「あ」

 確かにマリヤが述べていた試験内容を思い返してみれば、語っていたのは受験者が彼女に勝利した場合についてだけで敗北した場合については特に触れてはいなかった。
 即ちその真意とは。

「そもそもこの試験は最初から受験者に勝たせるつもりなんて無いのよ。巫女になりたての子がマリヤに敵うはず無いのだから。殆どはあなたのように一方的に叩きのめされて終わるわね」
「何だよそりゃ……」
「実力を証明するのも評価点の一つではあるけれども、妾達が見たかったのはどれだけ痛めつけられても決して折れない闘志。特にあなたのような軍神の巫女には最も求められる才能よ。それに単純な肉体的な強さなら『オリュンポス』に入ってからトレーニングや実戦によって幾らでも伸ばせるもの。その反面、精神的なものに関してはそうはいかなくてね。ああいった荒っぽい方法で元々の素養を推し量るってワケ。何はともあれようこそ『オリュンポス』へ。歓迎するわ」
「……………………………………………………」

 余りに乱暴で滅茶苦茶な試験概要の種明かしに唖然とするクロエであったが、状況に置いてかれつつある彼女に最終試験官改めプロデューサーのマリヤは拍手とお辞儀を添えて合格を祝う。

「おめでとうございます。ノロシダ様。此れを持って貴方様は正式な『オリュンポス』メンバーとなりました。これからは不詳私マリヤ=ノヴァツスキーが誠心誠意サポートさせていただきます。どうかお気兼ねなく何なりとお申し付けください」
「お、おぅ……。まぁ、その、なんだ……。世話になる。ヨロシクな」

 つい先程散々ボコボコにされた相手に礼を尽くされて、若干の戸惑いを覚えつつ無事な右手でクロエは頬を掻く。
 その顔からいつも刻まれている不機嫌そうな眉間の皺が珍しく消えていた。

 走り出した憧れはこうして形を結んだ。
 とはいえこれは漸く夢のスタート地点。
 クロエ=ノロシダの新しき歩みは再びここから始まるのであった。

「──────ところでアタシの折れた左腕どうすんだ?倍くらいに腫れてんだけど。つーか気ィ抜けたせいかスゲー痛い」
「あら、妾としたことがすっかり忘れていたわ。えーと、ウチで治癒が得意なのは……、コロニあたりかしら?マリヤ、至急呼んで来てちょうだい」
「はい、かしこまりました。と答えたい所ですがコロニ様は現在『ヒュギエイアの杯』へ出向中でございます。他の治癒の権能に長けるメンバーの方々もスケジュールによれば折り悪く不在となっております。いかが致しましょう?」
「それは困ったわね。………………えーと、救急車の電話番号って何番だったかしら?確か1……」
「……………………オイ」

 始まると言ったら始まるのである。

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