九相あるいは九想は、人間の身体が死後に腐敗して土灰になる段階の様子を描いた言葉。
- 脹相(ちょうそう) 死後七日後の姿、身体は膨張し機能を失った内臓はここで腐り果てる
- 壊相(えそう) 身体が腐り爛れて行く
- 血塗相(けちずそう) 皮膚が破れ膿血が流れ出す
- 膿爛相(のうらんそう) 身体の腐敗が進み虫が涌く
- 青瘀相(しょうおそう) 身体が枯れ果てる
- 噉相(たんそう) 鳥獣らによって貪られる
- 散相(さんそう) 身体が散り散りになる
- 骨相(こつそう) 残された骨も乱れこぼれる
- 焼相(しょうそう) 灰土となり全ての形を失う
【人道不浄】
人間の精血にかすかに残存する赤気を求めて猛獣や禍烏や虫が貪り集う。
萬甡厨(ばんしんちゅう)
鬼や妖怪たちにとって、まだ新鮮な状態(新死想や肪脹想)の死者の精血の塊を示す。貪庫(とんご)とも。ただし、「生き血を啜る」などの言葉がある通り、貪庫(死者)よりも芳体(生者)のほうが
赤気を鬼や妖怪たちが奪い取る事が可能であることは言うまでもない。不浄九相の段階が進めば進むほど、赤気は消え失せ青瘀相(青瘀想)より以後はただの肉と骨と化す。人間が持つ最も最上の精血は「人黄」(じんおう)と呼ばれるものだとされる。「黄」というのは「中央」を意味していることからの名称である。
白蠕(はくぜん)
膿爛相や蓬乱想で死体を覆い尽くす虫たち。蠢ける白き虫。人間を護る存在とも言える。人間の
魄が変化して生じるともいわれている。
究竟不浄(きゅうきょうふじょう)
「新死」段階近辺を「人道不浄」と称する一方、「青瘀」段階から先は「究竟不浄」に当たる。この状態の精血には赤気などは最早存在せず、鬼や妖怪がこれを貪り喰らっても何も益が無い。
イザナギが夜見国に行き着いて見た、死後のイザナミの変わり果てた姿というのが、いわばこの究竟不浄の状態であると言える。
【檀林皇后(だんりんこうごう)】
嵯峨天皇の皇后。橘清友の娘。檀林寺を創建したことから檀林皇后と呼ばれる。『九相図』に描かれる女性は檀林皇后の朽ち果てて行く姿を描いたと伝えられている。「諸行無常」を自身の身体で世に示したいという願いから、自らの遺体を埋葬せず路傍に放置せよと遺言し、平安京の帷子辻(かたびらのつじ)に打ち捨てさせたという。
- 新死想(しんしそう) 死後まだ間もない生前そのままの姿
- 肪脹想(ぼうちょうそう) 脹相と同じ
- 血塗想(けちずそう) 血塗相と同じ
- 蓬乱想(ぼうらんそう) 散相と同じ
- 方塵想(ほうじんそう) 噉相や膿爛相と同じ
- 青瘀想(しょうおそう) 青瘀相と同じ
- 骨連想(こつれんそう) 肉体を失い骨だけとなった姿
- 骨散想(こつさんそう) 骨相と同じ
- 古墳想(こふんそう) 墳墓さえも朽ち果て風化して全ての形を失った姿
最終更新:2024年04月19日 21:42