テンバス
古代の草創期から現在まで、とてつもなく長きに渡り聖刻教会の裏で君臨する大僧正(僧籍だが伝道士・修道士ではなく、八門派の仮面を用いない古代聖刻の術を使える練法師)であり、ゼン・イクの第一の忠臣。そして歴史を跨いで暴威を振るう羅王虫の騎獣、バイラ・オグンの最初の主。
最高権力者であるはずの法王ル・タンを好き勝手できないよう押さえつけ(それでも陰でバレていないと思い、少なくとも四半世紀は権謀術数にふけるル・タンを泳がし)、ハーロウ達〈八門守護〉の門主連をゆくゆくは未来に降り立つこととなる、〈教王〉の配下にするつもりで手駒としている。
元々は古吾伽式の民と敵対し邪悪な異界の神ナルガを崇拝するイコ・セグの戦士長だったがゼン・イクによって、ナルガ神の呪いを受け図らずも不死となる。以降はゼン・イクの軍門に下り心酔して、吾伽式建国のどさくさに紛れて潜入。
その出自からか見た目はどちらかといえば荒事向けの屈強な身体に無数の傷が走り、また性格も非常にプライドが高く傲慢(さりとて状況が読めないという訳でも無い)だが、ゼン・イクに降ってからは彼に対しては何処か卑屈で、馴れ合いめいた態度を取ることも多くなった。
ナルガ神に仕えていた時には選ばれし「神の戦士」として絶対の忠誠を誓っていたものの、その実は甘い言葉を用いながらも殆ど捨て石のように扱われていたのを悟ったのか、後にはナルガに対する信心は欠片も見かけられなくなっている。
ナルガ神に仕えていた時には選ばれし「神の戦士」として絶対の忠誠を誓っていたものの、その実は甘い言葉を用いながらも殆ど捨て石のように扱われていたのを悟ったのか、後にはナルガに対する信心は欠片も見かけられなくなっている。
町割り普請分野の才能を発揮し、以前直接相対した禁赤人の長老たちへは目立たぬよう伽式恒市建設に尽力する(何せ彼らは長い間定住したことが無く、様々な超技能を持ちながら邸宅や都市開発に関する技術や知識は稚拙で、市民となった元流民たちに丸投げした)傍らに、異民族でありながら練法まで習得。高祖テシマルスや過去に留まったエギガスなどショク・ワンの仲間たちに正体がばれた頃には、すでに数多くの吾伽式国民たちから支持を勝ち取り、命を投げうつ信奉者を幾人も抱えて粛清も追放もできない実力者となっていた。
そうした貢献もさることながら、本来は善良な禁赤人からしてみれば彼は「魔神に唆された哀れな民族の生き残り」としてあまり疑いの目で見られなかった、というのもあるらしい。
そして市民の絶大なる支持を背景に、エギガスやセスルに魔神崇拝の嫌疑をかけ、吾伽式から退去させる事にも成功。
そして市民の絶大なる支持を背景に、エギガスやセスルに魔神崇拝の嫌疑をかけ、吾伽式から退去させる事にも成功。
そのまま千年以上に渡って吾伽式国、聖刻教会はおろか東方各地で自身、あるいは部下たちを使って遥か昔に生き別れた主君ゼン・イクの途方も無い計画を実現させるべく暗躍するが、内心では長すぎる人生に飽き己の死を渇望しており、彼の願いはショク・ワン一行が時代をループするよう定められた通りキ・ロウホウ?の地に旅だった事を確認して、ようやくナルガの呪縛より解放されたのか叶うこととなった。
二世紀の昔、もはや支配を受け付けない獣機と化し教都を蹂躙したバイラ・オグンに止めを刺さずいずれ目覚めるよう封印したのは、敬服し忠誠を捧げたにも関わらず(本心かどうかはわからないが、ゼン・イクに「信頼しているのに!」と発言したものの彼には拒絶されている…)、最期まで自分に心を許さずに《黒い月》打倒計画の全容を伝えてくれないまま未来へと去っていった、主人ゼン・イクへのささやかな意趣返しだった。