どこかのビル、下界がよく見える屋上にて。
「ええーっと・・・アンタが、『ボス』ってことでいいの?」
「そういうことになるわ、しかし貴女も貴女ね、どう見ても二十歳いってないわよ」
「そーよ、私まだ14歳だもん」
「よくそんなんで組織率いてるものだわ・・・まあ、いいわ」
二つの組織の『頂点』が・・・いまここに相対していた。
漂う雰囲気は、身を切るような鋭いもの。一瞬即発とは、まさにこのこと。
片方は、幼い姿に見合わぬ鋭い殺気を放つ少女だ。腰に差す一振りの刀が、彼女をより外見にそぐわぬものにする。
もう片方は強く人を惹きつける、いわゆる『カリスマ』というものをまとう女性。引き締まる横顔が彼女を更に強く見せる。
「・・・で、この抗争だけど・・・貴女は直接手を出したのかしら?」
この返答で、すべてが決まる。女性が、少女に問いかける。
そして、女性の背後に、金属のような光沢を放つ、赤い悪魔のようなシルエットが現れる―――『スタンド』だ。
「まあ・・・一言で言っちゃうと・・・だけど」
対する少女は、軽い口調で応える。そして、やはり背後に現れる影・・・女帝の如き威圧感を持つ『スタンド』を出す。
ぶつかるか・・・少女が、答える。
「あれは、私じゃないわ・・・私の部下が、勝手にあなたの所にケンカをしているだけよ」
「ほう、それはどういう意味かしら?返事次第じゃあ私の『アンシエント・レクイエム』を叩き込むことになるけど・・・」
「そのときはアタシだってこの『ブレイズ・クロス』が黙ってないよ・・・、まあ、最後まで聞きなよ」
少女が、腰のバッグにてを突っ込む。
拳銃でも取り出すつもりか?しかし、女性の予想に反して出てきたのは、一つのビデオテープ。
カチリ、とビデオテープのスイッチが入る。雑音だらけの音声だったが、それはよく聞こえた
声は、複数の男のもののようだ。彼女は、その一方の声をよく知っていた。
いうまでもない、自分の部下の声だったからである。
『お前ら幼女に忠誠誓っとるんか――ッ!?このヘナチンがァ!』
『テメーらこそ己らんとこのボスオカズにしてるんだろがッ!』
『俺らはいいんじゃ!お前らの頭目なんか幼女やぞ幼女!お前ら揃いも揃ってロリコンやでぇ!』
『ウルセー!テメーらこそ女にヘコヘコしとるだろがぁ!』
『お前らに言われたかないわァ!』
『何ぞコラァ!』
『やるかおんどれらァ!』
そこまで聞こえたところで、ブツン、とテープが切れた。
「・・・」
「・・・」
お互い、沈黙が流れる。
そして、その静寂を破ったのは、
「ぷっ・・・あははは・・・」
女性の漏らした、笑い声だった。
「ふふっ・・・くすくす・・・」
釣られて、少女も笑ってしまう。
「あー、なんか力抜けちゃったわ・・・なんだなあ・・・って、感じよ」
「全くよ、もう、くだらないことでケンカしてばっかりなんだから・・・」
「まあそれでも大事な部下だしねェ・・・でも発端になった奴はちゃんと」
「そーねー・・・で、どうする?ボスとしてけじめつける?」
「いいや、それはないわね、小さな頭目サン。なぜなら・・・」
「なぜなら?」
女性が、にや、と笑う。
「私の『アンシエント・レクイエム』の能力で10秒後に『貴女と楽しそうに笑いあう』って運命にしたからよ」
そういう女性に、少女は一瞬ぽかんと口をあけて、そしてくすっと笑う。
「いいわね、気に入ったわ。ちょっと協力体制でも築いてみる?」
「そうね、あなたの組織とは一度話し合ってみたかったのよ・・・モチロン、親交的な意味でね」
そして、二人の頂点はまた笑う。先ほどまでの剣呑な雰囲気は、微塵もなかった。
先ほどの宣言から、キッチリ10秒後のことであった。
「じゃあ、まずは階下で叩き合ってるアホな部下達を止めにいきましょうか」
「分かったわ」
二人並んで、階段に向かう。
階下からは、相変わらず罵声と銃声が響いていた。
使用させていただいたスタンド
No.4083 | |
【スタンド名】 | アンシエント・レクイエム |
【本体】 | ボス |
【能力】 | 「10秒後の運命」を操作する |
No.3065 | |
【スタンド名】 | ブレイズ・クロス |
【本体】 | 頭目 |
【能力】 | 触れた物を活火山に変える |
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