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06話「『グラットニー』 その2」の巻

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orisuta

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「………………どうして、君はこんなことするのかな?」
「ああ~~~っ?」

両足を抱え、苦しそうに顔を歪めた亜希が、ふと声を出した。声に焦燥はない。冷静な声だった。

「どうして、見ず知らずの私に対して攻撃してくるのかな?…………別に、不条理だと思って質問してるわけじゃないんだよ。
 本当に、好奇心なんだ…………。何故、どうして…………気になるんだよ……昔からの性分なんだ……………………。」

プルプルと、震えながらだが、グラットニーに支えられながら立つ。漱次郎は気持ち不気味そうに亜希を見つめる。

「何でって…………俺に『スタンド』を目覚めさせた奴に命令されたんだよぉおおお~~~~~~~っ。
 嬢ちゃん、アンタはそいつに狙われてるんだぜぇぇぇええ~~~~~っ。『ディープ・フォレスト』にさあああ~~~っ。
 なんかしちまったのかい嬢ちゃんん~~~~っ。」
「ありがとう。それだけ聞ければもう十分。」

聞きたいことが終わればもう用はなし、といった様子で会話を中断する。漱次郎は自分のペースをくじかれムッとする。

「OォォオオKェエエエエイィィ~~。じゃあ、天国でお友達を待ってなああああ~~~~~~っ。『モーニング・グローリー』ッ!」

ガチャリ、と漱次郎は手の中に古びたライフルを発現する。

(…………俺の『モーニング・グローリー』はあああッ!パワーはない貧弱なスタンドだが…………発射した銃弾が着弾した時点で
 その部分に起こるだろう(・・・)現象を『早漏』する能力ぅうう。足を持ち上げた姿勢を維持し続けたら起こる「だろう」現象や………………
 踏切に居続けたら起こる「だろう」現象を着弾部分に『早漏』させる。「タイミング」が重要な能力だぜぇえ~~~~っ。
 だが場所や姿勢に依存しないで一発で倒す方法が一つだけある………………。それは『ヘッド・ショット』ッ!
 どんな人間でも起こる「現象」…………『睡眠』を『早漏』させればよぉおお……………………、
 誰でもノック・アウト……………………。グッスリ夢の中だあああ…………後は昨日みてーに首をフッ飛ばすだけだぜ…………。)

「撃てッ!」
「おおおおおおッ!『グラットニー』ッ!私を小さくしろッ!」

間一髪、亜希の声と共に、亜希の体が小さくなる。みるみる小さくなっていき…………フィギュアサイズまで小さくなってしまった。
弾丸は亜希の頭があっただろう場所を通り過ぎ、亜希の後方の地面に被弾した。地面に当たっても地面に何かが起こるわけもなく、効果はない。

「なッ!『小さくなる』能力ッ!?くそっ!不意を打たれたがもう一発ッ!」
「『グラットニー』ッ!」

もう一発、続いて弾丸を撃ち込むが、今度は『グラットニー』が地面を殴った反動を使い、移動してかわす。

「私の『グラットニー』に人一人を大きく吹っ飛ばせるようなパワーはないよ………………。
 でもね……小さくなった今の私ならッ!『グラットニー』でも移動させることは可能ッ!」

(ックソォオオオオオ~~~~~…………。ちょこまかと動きやがって………………。)

『グラットニー』を使い動き回る亜希に、漱次郎は歯噛みする。

(俺は「目覚めたて」だ…………ちょいと訓練すればいざ知らず、今はこの銃の扱いにまだ慣れてねええええッ!そんな状態で小さくなって
 ビー玉サイズになったあの頭を、しかも動き回ってるのをとらえて撃つのはよおおおお、ちょっとこの射程からじゃあムリだああ…………。
 「2m」の至近距離からなら…………たぶん撃ちぬくこともできるだろうがよおおお~~~~っ…………………………。)

そう考えつつ漱次郎は亜希の2m内に入ろうと歩く。その瞬間、『グラットニー』の剛腕が漱次郎の鼻をかすめる。

(だが射程内に入ろうとすると「こいつ」がいるッ!侵入者は全員ブン殴るって感じのッ…………!)


――――ところ変わって事件があった踏切。

「おおーっ。来たかーJOJO-。遅かったなー。」
「悪い悪い。どうせ調べるっつってもよォー、現場を見ただけで分かる奴は俺たちの中にゃあいねーからよ。
 そこまで急ぐ必要もねーと思ってたからよ…………。」

あまりに無気力なJOJOの態度に、思わず苦笑するアクター。

「にしても、亜希遅いな…………。」
「準備があるから先に帰ってるって言ってたのに、俺らより遅いってのはおかしいよなァ~?」

空を仰ぎ、ぼーっと呟くJOJOの言葉に、アクターが反応する。

「あいつ俺のことナメt」
「ナメちゃあいないと思うぞ。」

――――そして場面は元に戻る。


「こないのかい?じゃあ私の方から行かせてもらうよッ!」

『グラットニー』のスイングを見たきり、攻撃の手を止めた漱次郎を「攻撃をやめた」ととったのか、
声と同時に、『グラットニー』が漱次郎を殴る。漱次郎はバックステップでこれを辛くもかわす。

「ぐうう~~………………危なッあぁ!?」

しかし、転倒する。この瞬間漱次郎は少なからず混乱する。『グラットニー』の拳は確かに「かわした」。にもかかわらず、
自分は転倒した。転倒するほど足場は悪くないはずなのにだ。まさか、『小さくなる』のは能力の一端で、既に自分は攻撃されているのでは……。
そういう不安が漱次郎の胸をよぎった。
しかし、それよりも漱次郎が考えたのはこの状況で「転ぶ」という致命的な隙を見せてしまったことだ。敵の巨大なスタンドヴィジョン……。
あの丸太のような腕でブン殴られては、無事ではすまない。殴られるッ!

「『グラットニー』……!スタンドの「体積」を地面にちょっぴり与えて肥大化させた…………!!」

「うわあああああああああああああ――!!」

当然、思わず悲鳴を上げる。『グラットニー』がその腕を振りかぶる。

「――ああああああああああああああああ――!!」

そして……振り下ろすッ!

「――あああああッ!うげえええッ!…………ええ?」

殴られた衝撃で少し吹っ飛び、その後も痛みに悶えてジタバタとする漱次郎だが、少しして動きが止まる。
きょとんとして、頬を抑える。少し腫れている。だが、それだけである。別に歯が抜けたりもしていない。

「……………………。」

その様子を無言で見つめる亜希。

「―――!! ッケ!見かけ倒しじゃあねえかッ!ああ~~~っ。でけぇからびっくりしたけどよおおおお~~~~っ!
 全然人並みのパワーじゃねえかッ!びっくりさせやがってよおおおおおおお~~~~~~~~っ!」

言いながら、銃を握りかえる。銃口を自らの方に向けるように持ち替えて…………。

「弾は当たらなくてもよおおおお~~~~~っ。銃をバットみてぇ~~に持ってよおおおおおおおッ!」
「『グラット……」
「おせえッ!」

ライフル銃を振る。ブン、と風を切りながら、銃は亜希の腹あたりに命中する。

「う…………っげェ…………ッ!」

亜希の体は銃に持ち上げられ、完全に振り切られると同時に吹っ飛び、さらに数m先の地面に無様に着地する。
なんとか体を動かそうとしているが、動かない。

「さあああああああッてえええ~~~~~~~~~ッ。ここまでかなあああり長い間しぶとく生き残ってたがよおおおおおっ。」

亜希のすぐそばまで歩み寄る。「2m」まで接近するためだ。実際には既に亜希に銃弾をかわす元気があるようには見えないのだが、念の為である。
殺し屋は死にかけの標的に対しても絶対に油断しないというのを漱次郎は昔映画で見たことがあり、彼はその殺し屋に自身を投影させていた。

「こいつをヤったら次は一緒にいた男ども…………その次は『ディープ・フォレスト』だな…………。ククク……人生面白くなってきたなああ~~~~っ。」

そう言いながら漱次郎が一歩踏み出した瞬間、『グラットニー』の拳が動く。一瞬漱次郎の顔が固くなるが……
拳の動きは次第にゆっくりになり、次第に漱次郎の足元に落ち着く。

「てめーの射程はもう心得てるんだよおおおお~~~~っ。そろそろ引導だぜえええええ~~~~~っ。」

その様子を見て満足そうな、そして勝ち誇った笑みを浮かべつつ、銃を構えなおす。銃身を顔の横につけ、ゆっくりとその先を亜希の頭に合わせる。
亜希はじたばたと動いてなんとか狙いを外れようとするが、動く範囲が圧倒的に小さく、全然効果はない状態だ。


――――一方その頃JOJOたち。

「いくらなんでも遅すぎるぜッ!あのアマ~~~~~~ッ!!」
「落ち着け……落ち着くんだアクター……。焦ってもいいことはねーぜ。女には女の準備があるのさ……。」

イライラが最高潮に達しつつあるアクターを、JOJOがなだめる。

「………………チッ。化粧とかしてきたら怒る。」
「亜希に限ってそんなことはありえねーぜ……。」

――――そして場面は戻る。

漱次郎は動けない亜希に慎重に照準を合わせる。

「安心しろよおおおおっ。痛くはないからさああああっ。」

そして、引き金を引く―――。
漱次郎の世界が、一瞬で傾く。

「――な、あ、ん、だああああああッ!?」

「『グラットニー』……さっきの攻撃は君への攻撃ではない………………。君の足元の地面を『肥大化』させて体制を崩すためだったッ!」
(とはいえ、今ので肩に被弾しちゃった…………。右腕はもう使えない…………。)

「し、しまったああああッ!」
「…………………………。」

「…………いや、今のはチト違うな……今俺が言うべきセリフはこうだ。「だからどうしたああああっ?」
 おめーのスタンドパワーは大したことねーってことは、さっき証明されてるしよおおおお。全然恐れるにたらねーぜ。」

「それはどうかなあ?私のスタンド、ただ殴る蹴るが能なスタンドだと思ってほしくないなああああっ?」

ニヤリと笑い、漱次郎の口調を真似る。

「な、なめやがってええええええっ!手加減しておけばこのアマああああああっ!『モーニング…………。」

『シャウアッ!』

銃を構えようとする漱次郎よりも早く、『グラットニー』がその拳を振る。拳は手に命中する。

「ぐ…………だが引き金を引いてやる…………てめー……くたばりやがれええええッッ!!」

「引き金を…………!」
「引き金を……」

「ひ、引き金が……!?引き金がひけねえ!!いや、そもそも指がはまらねえッ!」

「ふふ…………君の手を見てみなよ……。既に今、『グラットニー』で君の手を『肥大化』させた…………。これで君の『狙撃』は封じた!」

見ると、漱次郎の指はぶくぶくと肥っており、引き金に指が入らないほどになっていた。

「う、ヤバイ!逃げなくては………………!このままではやられる!」

「逃がさないよッ!」『シャウッ!』
「うがっ……うわああああああああああッ!」

逃げようと背を向ける漱次郎の足を殴り、『肥大化』させる。これで逃げを封じる。

「…………じょ、冗ぉぉぉおおおおお談んんんですよおおおおおおおおお~~~~~~~~~~っ!
 ちょ、ちょっとしたほんの冗談ですぅぅううううううう~~~~~~~~っ。始末とか言ってましたけど、それも全部ウソなんですよおおおお~~~~っ!
 ほんのちゃめっけなんですうううううう~~~~~~~~。………………………………もしかして、本気にしたりしませんヨネ?」

漱次郎はスタンド像を解除し、フィギュアサイズの亜希にすがりつく。

「……………………うーん、君に聞きたいことは全部聞いちゃったし…………………………。」
「あ!そうだ!!俺『ディープ・フォレスト』から何かきいてたようなぁぁあ~~~~~っ。」

その言葉を聞いて、亜希の動きが止まる。漱次郎の話に興味を持ったのだ。

「『ディープ・フォレスト』はよおおおおおおおおおぉぉぉ~~~~~~………………、俺の他に既に『3人』のスタンド使いを目覚めさせた。
 そう言っていた……………………。俺からの助言だがよぉぉおおおお~~~~~っ、アンタら、これからはひとりで出歩かない方が良いぜ…………。
 『ディープ・フォレスト』はよぉぉおおお――――『各個撃破』を狙ってるからなああああああああ~~~~~~~~~~~っ。」
「なるほ…………きゃあッ!?」

亜希が漱次郎の話に聞き入っていると、不意に体が持ち上がる感覚に襲われる。
…………見ると、体が漱次郎に握られている。

「くひゃはははははああああ~~~~っ!てめー隙を見せたなッ!俺はこいつを狙ってたんだよおおお~~~~~~っ!」
(情報は本物だけどな~~~~~~っ。)
「………………。」

「このままてめーが苦しむのを眺めつつ握りつぶしてやるぜぇぇええええ~~~~~~~~~っ!」
「『グラットニー』 私の縮小化、解除して。」

亜希の体が元の大きさにもどる。

「…………やれやれだね。」
「ひ、ひぃ。」
「『グラットニー』――ッ!やっちゃえ!」
「ぃ、あ。」

『グラットニー』が大きく腕を構える。呼吸を整え、大きく腕を振りかぶり……

『シャウア!』

一発殴る。漱次郎の首がぶくぶくと『太る』。

『シャウ!』『シャウア!』

次は二発殴る。どんどんと漱次郎の首が『太る』。

「やべ……やべちくれ~っ。窒息……窒息しちまうよっ~~。」

『シャウ!』
「あばっ。」
『シャウ!』
「ぼ。」
『シャウ!』
「ぁ……。」

そして最後に残ったのは、ただの肉塊だった。

「さて…………これくらいでいいかな…………。いけない!JOJOたちを待たせてたんだった!急がなきゃ…………。」

言いながら、自分の足を見る。もちろん普通に移動ができる様子ではない。

「…………『グラットニー』、もう一度私を小さくして……。」


――――数分後、事件のあった踏切。

「おい亜希おせーぞ……ってなんだそれ!?」

アクターが見たのは、フィギュアサイズになってぴょんぴょん飛び跳ねる友人の姿だった。

「……なんかあったのか?」
「いや……それがね………………。」


漱次郎(口調の間延びした男)
スタンド名『モーニング・グローリー』―→再起不能

佐野 亜希
スタンド名『グラットニー』―→この後一週間筋肉痛に襲われることとなった。

JOJO、アクター ―→待ちぼうけだった。




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