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デリル・メルダ


概要

 デリル・メルダ(ロフィルナ語:derir melda.意味:独立した名画)は、星間機構が開発した二対の恒星間通信端末である。旧暦のイドゥニアでは、占領に抗う独立運動の連絡に用いられた。

構造

 二台の端末は互いを唯一の相手として結び付けられ、恒星を隔てて遠く離れた二地点の間に、両者だけで完結する回線を開く。星間機構は試験段階の機器として二台を保管し、初期N.B.N.S(現:T.B.N.S.)の伝送を確かめる実証試験に充てていた。筐体は、人が一人で携えて星系の外まで運べる大きさに収まり、内部の部品を一つずつ取り外せる。外した部品を残らず揃えて組み直せば、長く引き離されていた二台であっても、元どおりに通信を交わせる造りである。回線が開くのは対の両方が組み上がった時点で、片方だけを組み直した端末は、相手が組み上がる日まで沈黙を保つ。内部には記録領域も組み込まれ、交わした通信の内容に加えて、使い手が端末に吹き込んだ言葉を蓄えておける。蓄えた記録は筐体の内側に留まり、端末が人の手を渡るたびに、新たな持ち主に引き継がれていく。

歴史

持ち出し

 宇宙新暦850年、星間機構は、保管していた二台の端末をキューズトレーターの承認のもとで貸し出した。ツォルマリアとイドゥニアを結ぶ新たな通信手段として、端末は被征服民の選別を強める計画に充てられる手筈であった。ツォルマリア人の将校で、通信部門に籍を置いたルドラス・エルクは計画を阻むと決め、端末に細工を施して持ち出している。細かく分解された部品はイドゥニア各地に散らされ、別々の隠し場所に預けられた。持ち出しは間もなく発覚し、ルドラスは処分の対象として追われる身となる。同915年、生産性を欠くとされた貧困層の粛清が始まると、貧しくも自由な暮らしを好む遊牧民の多くが標的に加えられた。圧政が厳しさを増す中、ルドラスの率いる独立派はツォルマリア本国との対立を深め、同調した市民は占領軍に抗議するデモに踏み切っている。拘束された活動家の多くは、アルゼヌーク星系の第2惑星インテファーラに連行されて鉱山労働を課された。散らされた部品は各地のレジスタンスの手で匿われ、追手の捜索をかわし続けた。

同時蜂起

 イドゥニアに残ったアルバス・ヴィ・レミソルトは、イドゥニアとインテファーラで時を合わせて蜂起する計画を練った。宇宙新暦963年、ヴァンス・フリートン(オリジナル)が各地に散った部品を集め、二台の端末を組み上げる。片方を託された親友のイェルバーニ・ヴィ・モルザンバーレ(後の初代イェルバーニ国王)は、端末を携えてインテファーラに渡り、イドゥニアのレジスタンスと連絡を取り合いながら蜂起の準備を進めた。しかし、同968年に計画は星間機構特務作戦軍の知るところとなり、加担したイドゥニアの市民が大勢虐殺されている。インテファーラとの通信も一時途絶えたが、イドゥニアに残った片方の端末は以後も抵抗の拠り所となり、各地の組織の連携に役立てられた。孤立したインテファーラの独立派は、それでも武力蜂起に踏み切った。蜂起した者たちが惑星に跋扈するクリーチャーに呑まれて自然に消えると見込み、星間機構は、インテファーラを放棄している。駐留軍の去った地には第一次イェルバーニ王国が成立し、もう片方の端末を守り抜いた男が、民衆に推されて指導者の座に就いた。

継承

 蜂起の後、二台の端末は何世代にもわたって秘匿された。キューズトレーターによる検閲が年を追って強まる中でも、隠し場所を知る者たちは口を閉ざし続け、端末の所在は最後まで追手の目を逃れている。二台は、後に支配者となったセトルラーム共立連邦の検閲も同じ手立てでくぐり抜けた。宇宙新暦4500年代、連邦は長きにわたる戦争負担をアルゼヌークの民に課している。苦難を味わった人々は、アルゼヌーク紛争の背景となった仕打ちの記憶を、端末の記録領域に刻み込んだ。二台の端末は、旧暦の抵抗に始まる記録を重ねながら、不屈の精神を表す自由の象徴として世代を超えて受け継がれた。長い秘匿の末、端末はイェルバーニ王国の首都パッションベルムの博物館に寄贈されている。館内の展示は、イェルバーニ文化の復興を支える歴史の教訓として、来館者に端末の歩みを伝える。

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最終更新:2023年03月09日 05:45