概要
ツォルマリア文明の始まり
この文明の始まりは、文明元暦2000年、星の伝承者として伝わる一体の漂流者の開拓から始まった。後に文明開化の祖(ティラ・ザバーディン)として知られることになる、この異星人は墜落した宇宙船から降り立つと、仮拠点を建設し、以後、地道な拡張を続けたとされる。幸い、この星(後にバラノルカと命名)には遠い過去の記録を彷彿とさせる完璧な生態系が確立されており、当面の生活を送るために必要な全ての資源が存在した。探究を是とする彼にとって、多くの実りに満ちている大自然での探索は広い宇宙以上に好奇心をくすぐるものであった。これが本来の使命であることを思い出した異星人は、やがて生物進化の過程に思いを巡らすようになり、周辺の動植物を刺激するなどして、その動向を注意深く観察したのだという。その中でも、後に人類と総称されることになる先住民の反応はビルーゼの使命を全うするに相応しい知性を感じさせた。かつて自身が属した、古の深海社会とは全てが異なる。触腕を持たぬ、珍しい形状の生命体。多くの困難を乗り越え、現地人の懐柔に成功した異星人は天上の神として遇されるようになり、ここに一つの文明圏が成立した。
急速な進歩と精神性の欠如
全ての頂点に立ったティラ・ザバーディンは、責任限界の名のもと、ツォルマリア人類に許される限りの情報を与えた。本来、狩猟採集によって集団を永らえてきた現地民であるが、多くの者が開祖の助言に従い、農耕主体の生活に切り替えたのである。その結果、早々に蓄積の概念を知ったツォルマリア人類は石器による試行錯誤のプロセスをショートカットし、急速に独自の機械文明を発達させた。しかし、そうした幸運は然るべき学習の歴史を得ていない文明の存続可能性を狭めることに時の開祖は想定していなかった。ツォルマリア人類は互いの領域を巡って争う熾烈な生存競争の時代を迎えたわけである。ザバーディンが自らの過ちを認めると、多くの権力者が異星の伝承者の存在を疎んじるようになり、これの排除に動き始めた。ザバーディンは精神的指導者としての立場を失い、反体制派による水面下のクーデターを許してしまった。その後は、星の覇権を巡るツォルマリア人同士の争いが続いていく。このような歴史は、真実を知らされていない多くの民にとって不幸な出来事でしかなかった。歴代の統治者は保身のために罪を擦り付け合う醜い権力闘争を演じた。
宇宙時代に入ってもなお熾烈な戦争を繰り返し、夥しい数の犠牲を出したツォルマリア人類は皮肉にも倫理を重んじるようになった。しかし、これまでの戦いで母星系の全域が荒廃。文明圏の崩壊に直面したことから、早期の恒星間渡航を迫られたわけである。
宇宙正暦0年(文明元暦4500年)にティラ・ザバーディンが復帰すると、
ツォルマリア文明統一機構が成立。これにより、限られたリソースのほぼ全てが宇宙分野に投じられ、加速度的に恒星間の移民が進んだ。人類は周辺星系の安定化に成功し、
同150年を迎えた頃には地域主権を重んじる緩やかな連合体としての成熟期を迎えたのである。
同215年にソルキア連合と接触。これにより、開祖の正体が広く知れ渡ることになるわけだが、ここで人類は恭順か戦争の二択を突きつけられたのである。あらゆる交渉を拒絶され、未曾有の危機に直面したティラ・ザバーディンは
同225年以降、ツォルマリア人類とともに戦う道を選択した。
なりふり構わぬツォルマリア人の抵抗は、種の保存を究極使命とするソルキア本国の危機感を煽り、結果的に大量破壊兵器を投じる凄惨な総力戦へと発展したのだという。
同445年。後に
大災厄と呼ばれることになる、ソルキア側の大規模砲撃(
時空遊動)をもって多くの惑星文明が崩壊した。ツォルマリアの諸星系は暫しの断絶期に突入。先の艦隊決戦において偉大なる開祖を失い、全てに絶望した時の
副官は持てる知識の全てを投じて
キューズトレーターを開発したとされる。そして、
宇宙正暦500年(宇宙新暦0年)、より強固な
ディストピアの成立へと誘った。この文明は後の時代において更に大規模な侵略戦争を実行。係る植民地諸国による
空前絶後の大戦を誘発し、共立体制が成立する大きなファクターとなって後の時代に刻まれた。
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最終更新:2024年11月26日 23:08