アットウィキロゴ

リンベルーク・アカデミア > 遊理部


概要

 遊理部は、リンベルーク・アカデミア付属サー・フォス・カレッジの公認サークルである。
部長スーラ・ヴィ・レクサーニが掲げた「未知への探求は遊びの中にこそある」を部是に据え、入部した者は一人残らず「怪人」の称号を背負わされる。

怪人の育て方(非推奨)

 部員の前歴は異世界からの転移者に亡命者と振れ幅が大きく、重度の依存症を抱えた者まで平然と名簿に並んでいる。

准怪人(仮免許・返品不可)

 新入りが最初に放り込まれる階層が准怪人で、部長が命名した正式名称は「怪人の卵(孵化予定日:部長の気分次第)」である。入部届は部長がその場で代筆するのが習わしで、本人が事情を飲み込むより先に、准怪人の名札が胸元に貼りつけられる。正規怪人への昇格条件は「部長を十分に楽しませること」の一行だけ。以上、終了。何が部長に刺さるかは当日の風向き次第で、准怪人たちは手探りで奇行を重ね、その暴走が新たな伝説を量産していく。恐る恐る企画を持ち込めば、部長が横から予算と規模を勝手に上乗せしてくれる親切設計で、校庭の片隅で済ませる予定だった実験が、気づけば学区の掲示板を埋める大事業に化けている。失敗の報いは叱責どころか拍手で、爆心地に近い場所に立っていた者ほど部長から熱烈な激励を浴び、失敗談を共有する報告会まで用意されている。寛容と言えば聞こえはいいものの、要するに暴走の燃料補給である。外の常識を部内へ持ち込む役回りも期待されているが、その常識が一週間もてば長持ちした部類に入り、准怪人の発案から部全体を巻き込む大型企画が生まれた例もある。

正規怪人(番号付き・保証対象外)

 部長から直々に番号を授かった者が正規怪人で、正式名称は「孵化済み怪人(番号の刻印あり)」となる。番号はNo.1号からNo.50号まで用意されており、現在は全枠が埋まって満席御礼の状態にある。正規怪人が胸に刻む心得は、部長いわく「常識は踏み台、なんなら助走をつけて蹴り飛ばせ」。与えられる裁量は大きく、各自が得意分野と興味の赴くまま、好き勝手に研究を進めてよいことになっている。医学と心理学を修める者がいれば、戦闘技術や工学に入れ込む者もおり、失われた歴史を掘り返すことに青春を捧げた歴史研究組まで籍を置く。准怪人の指導も正規怪人の務めに含まれるが、教え方は型破りの一言に尽き、教わる側は講義の途中で首をひねり、終わる頃には首の角度が戻らなくなっている。評価の物差しも独特で、アイデアは狂気じみているほど点数が上がり、まともな提案を出した怪人には部長から「体調悪い?」と本気の心配が飛んでくる。

指名手配中の怪人たち

【容疑者】 【囚人番号】 【罪状】
スーラ・ヴィ・レクサーニ 怪人No.1号 役職:部長。☢️怪異☢️を纏った狂人
シーナ・フリートン 怪人No.3号 役職:消防部門火元責任者。🎸大統領令嬢の肩書を持つ社会不適合者⚡️
シレヴィ・ラルフェーナ 怪人No.5号 役職:副部長✝️兼✝️救護部門係長🔪。溢れる聖女の地獄メンヘラ世界線
ヨーク・キサラム 怪人No.7号 役職:外交部門局長。転移者にして独裁者。そして、留学生でもある。🚷経歴情報渋滞保持者🚷
エリカ・キリシマ 怪人No.11号 役職:戦闘部門班長。🌿THE・ヤク中🌿無駄にキメ散らかし鍛えてる
霧島兵一郎 怪人No.13号 役職:経済部門本部長。🔴大正義🔴全国皆伝大和魂の伝承者
セラニーヤ・フォルクネール 怪人No.31号 役職:監査部門の主力。クーデレ🏏スケバン。やべーお菓子の人
マキラス・ルカナ=アルヴェンスト 怪人No.46号 役職:文書部門工房長。🧊お気持ちスノータワー💣️

  • 主要なメンバーによる記念撮影の図。この絵面だけ見ると美しいが……
*1

狂気の組織図

 予算を削られ続けた部長が「じゃあ稼げばいいじゃん」と言い放った日から、遊理部は小型の複合企業に化けつつあり、部門長の辞令は部長の独断で黒板に書き殴られる。

爆発後処理班(消防部門)

🎸『火種を足したのはあたし、消すのもあたし、焦げた残骸で次の楽器を組むのもあたし!消火器は打楽器、警報は前奏だ!』
 部長の実験が爆発した後の消火から悲鳴の発生源の特定までを受け持つ部門が爆発後処理班で、班を率いるシーナ・フリートンの肩書は火元責任者である。肩書の字面どおり、危険遊戯の試遊前に雷の術式を仕込んで危険度を引き上げるのも同じ本人で、班の出動記録では火元の欄と消火の欄に同じ名前が並ぶ日が月に何度も訪れる。出動の合図は部長の企画書が部室に届いた瞬間で、班員は爆発に先立って消火器を抱え、待機の位置についている。壁の消火器の列は、いまや本棚の古文書と場所を奪い合う。火元責任者の着任後は、実験の前に配電盤の容量を確かめて回路を切り分ける工程が加わり、爆発の規模は回路一本分に収まるようになった。避難経路を書いた紙を全員に配るのも班の決まりで、紙の裏面には、前回の実験で塞がった通路に斜線が引いてある。鎮火した現場の残骸は、使える部品が班長の作業台に、傷みの深い部品が壁の補修材に振り分けられ、補修の重なった部室の壁には爆発の回数だけ継ぎ目が走っている。班員の間では、爆発音の高さと響き方から原因の装置を言い当てる耳が鍛えられており、「あ、今のは部長のやつ」と一声で判定できる者が何人もいる。歌い手の耳を持つ班長に至っては、原因の装置と一緒に爆発音の音名まで告げてくる。

死なない程度に治す係(救護部門)

✝️『痛いところはございませんか?……ございますよね?ございますとも。逃げたら刃のほうでお迎えにあがりますね……』
 実験の爆発に巻き込まれた部員や、訓練で転がされた戦闘部門の課員の手当てを受け持つ部門が死なない程度に治す係で、係長は副部長のシレヴィ・ラルフェーナが兼ねている。名前のとおり、治療は「死なない程度」まで施すのが原則で、傷がふさがった部員は即座に次の実験へ送り返される。部長いわく、全快させると反省の機会が失われるらしい。主な治療手段は係長の秋属性の術式で、骨や臓器の具合を解剖学の知識で見立ててから書き込む手順のため、手当ての最中に始まる係長の解剖学講義まで治療の工程に数えられている。搬送の順番は爆心地に近かった者から決まり、係の受付には爆発のたびに立ち位置の聞き取り票が積み上がる。問診票の最後の設問は「好きな刃物の形」で、設問の意図を尋ねた部員に、係長は治療に関わる項目だと微笑んで答えた。副部長の職務と重なる日には、心の相談と打ち身の手当てが同じ椅子の上で並行して進み、相談者は話し終える頃に全身の痛みまで引いている。治療室の壁には、なぜか形の美しい刃物がずらりと並んでおり、並べた理由を尋ねた部員の数は、係の開設以来ずっと零のままである。

土下座外交局(外交部門)

🚷『頭を下げるのはタダ、起き上がるのは有料ですわ。鎧が重うて一人じゃ立たれへんので、譲歩で引っ張り上げてもらえます?』
 遊理部が起こした騒ぎの後始末を一手に引き受け、学園の各所に頭を下げて回る部門が土下座外交局で、局長の椅子にはヨーク・キサラムが座っている。局長の計算では、揉め続ける手間は謝りに行く手間を毎回上回り、局は騒ぎの当日のうちに詫びの行脚へ出発する。主な取引先は当然ながら風紀委員会で、局員の必須装備は、訪問先の床の硬さに合わせて選び分ける三種類の膝当てとなっている。局長の膝は全身の鎧に付いた膝甲で最初から覆われ、選び分けの手間は局長の業務から外れた。ところが、一度平伏した鎧が起き上がるには他人の手が要り、委員会の側が譲歩の条件を並べて助け起こすまで、床の上の謝罪は延々と続く。口上は閣議で使い慣れた平坦な標準語で始まるものの、平伏が長引くにつれて語尾に故郷の訛りが混じり出し、根負けした委員たちは部室の使用時間の延長と引き換えに局長を立たせて話を畳む。騒音と安全に配慮した新ルールを部の側から設ける代わりに活動範囲を広げてもらう提案も、局の手柄として知られている。局内規定の第一条は「部長を交渉の席に同行させるべからず」。部長が一度だけ同席した折には、平伏の姿勢から顔を上げた部長が委員長を煽り始め、局員総出の土下座で場を収めた記録が残っている。

物理的話し合い課(戦闘部門)

🌿『議題は一つ、逃げ道は二つ、弾倉は四つ!全部撃ち切ったら満場一致ってことでよろしく~!』
 部内きっての武闘派をかき集めた実働部隊が物理的話し合い課で、班長の座にはエリカ・キリシマが就いている。課の名前に「話し合い」を掲げている以上、交渉はいちおう口から始まる。しかし、相手が一言でも言い淀んだ瞬間に「物理的」の側が発動する運用になっており、課の記録簿には話し合いの所要時間が秒単位で書き込まれている。班長の受け持つ交渉では二挺の銃口が議長席に座るため、記録簿の班長の欄には一桁の秒数ばかりが並んだ。路上仕込みの勘が決裂の気配を嗅ぎ取った日は、話し合いの開始前に退路が二本引かれ、撤退も正式な議決として議事録に綴じられる。平時の任務は、経済部門の集金に同行する護衛と、学外から舞い込む用心棒仕事の二本柱である。訓練の場は部長の新作遊戯で、試作段階の危険娯楽を実戦形式で試遊させられた課員は、ボールが飛んでくる角度から身の危険を読む反射を嫌でも身につける。課の標語は「議事録は拳で書け」。書記を務める課員の手の甲には、今日も議事録のインクがうっすら残っている。

悪党募金推進本部(経済部門)

🔴『悪党の財布は天下の公金である!出し渋る者には鉄拳で領収書を切る!釣りは要らん、大和魂を置いていけ!』
 慢性的な予算不足を打開するため、部長が「悪い奴からお金をもらえば、世の中も部費も綺麗になって一石二鳥」と閃いて設けた部門が悪党募金推進本部で、本部長には霧島兵一郎が据えられた。学内外の悪党を探し出し、制裁金の名目で財布の中身を寄付していただくのが主業務である。賞金稼ぎの稼業で鍛えた本部長の目は、歩きながら手配書の顔と通行人の顔を照合し、悪事の匂いを嗅ぎつけた瞬間、募金の呼びかけに先立って拳が飛ぶ。募金箱を抱えて立つのは物理的話し合い課の面々で、本部長が悪党を路地の奥まで追い込み、箱を持った課員が出口を塞ぐ段取りが固まった。受け取った金額には本部長が毛筆の楷書で領収書を切っており、悪党の側は達筆の紙切れを手に首をかしげて帰っていく。本部の帳簿には部員の上納金も記入され、アルバイトや任務で得た給与の一部を自発的に納める部員の列が、月末になると本部の机の前に伸びる。最近は事業の多角化にも手を伸ばし、部が生んだ危険遊戯の出張体験会を開いて参加費を取る商売を始めた。参加費には救護部門の出動料が最初から上乗せされており、明細を読んだ客の顔が引きつるところまでが体験会の一部である。

部長の財布を縛る係(監査部門)

🏏『部長の予算は一円単位で見てるよ~。……で、この上乗せ書いたの誰?決裁印ならとっくに埋めたわ、墓の場所ごとな!』
 経済部門が汗水垂らして集めた部費を、部長が一晩で溶かす事態に備えて置かれた部門が部長の財布を縛る係で、主力を務めるのは収拾役を自任するセラニーヤ・フォルクネールである。縛られる側の部長本人が名付け親で、辞令を黒板に書き終えた部長は「これで安心して散財できる」と満足げに頷いたという。業務の中心は、部長が勝手に上乗せした予算と規模の差し戻しで、支出の申請書が回ってくるたびに、係員が過去の上乗せ額を突き合わせて赤字を入れる。主力の仕事は申請書が届く前から始まっており、会議の席で部長の口元が緩み、視線が天井の隅を泳いだ瞬間を散財の構想の芽生えと判定して帳面を開く。数字の読み上げが先に始まるため、構想は部長の口から出る前に差し戻し欄に書き込まれる羽目になる。決裁印は部長の手の届く範囲の外に保管されており、隠し場所は月に一度の頻度で移されている。移転先の選定にも主力の観察が生かされ、部長の目が向く頻度の最も低い方角が、部長自身の癖から割り出された。部長の側も印鑑の在処を探し当てる技術を磨いており、係と部長の攻防は部内の季節行事として定着した。

始末書量産工房(文書部門)

🧊『すみません、この度は誠に申し訳ございませんでした。……今月四百通目の書き出しです。同じ文面が出たら俺が塔に埋まります』
 部の活動が生み出す始末書を筆頭に、詫びの書類一式を書き上げる部門が始末書量産工房で、工房長にはマキラス・ルカナ=アルヴェンストが就いている。発足当初は日付と被害箇所だけを差し替えた雛形で乗り切る算段だったが、同じ文面を三度続けて出した時点で風紀委員会から全部差し戻され、工房の方針は一夜にして転換した。以降の工房員は、語尾と文型を毎回変えながら反省の意を表す修行に明け暮れ、同じ謝罪を百通りの言い回しで書ける職人が育っている。工房長の机には過去の文面を写した控えの帳面が積まれ、書き上げた一通を帳面と照らし合わせる工程が提出の前に挟まる。照合で同じ一文が見つかった瞬間、工房長の指先から白い粒が噴き出し、工房は机ごと塔に埋まる。塔の弁償書類を書くのも工房の仕事であり、埋まった机の下から工房長の手が伸びて、次の用紙を引き寄せていく。部長の署名が要る書類は、懲罰独居房の差し入れ口から出し入れされるのが通例である。余興の事前申請書も工房の担当で、申請書を出す窓口の隣で同じ企画の始末書を提出する段取りまで組まれた。反省文の出来栄えがあまりに良いため、風紀委員の一部では工房の文章を読むのが密かな楽しみになっている。

本日の犯行予定

 活動の拠点となる部室は、未整理の古文書と工具の山に正体不明のガラクタが混ざり合った魔窟で、爆発音と悲鳴が環境音として流れている。

週刊・部長の独裁会議

 毎週開かれる定例会の正式名称が、週刊・部長の独裁会議である。建前は各部員が進行中の研究や企画を報告する場で、新たな危険遊戯の構想が発表されたかと思えば、専門分野の熱弁が延々と続き、独自理論の講義が割り込んでくる。失われた歴史の再解明に挑む歴史研究組の報告もここで行われるが、質疑応答に入った途端に脱線が始まり、議題が何だったかを覚えている者は会議の終わりに一人も残らない。部の運営に関わる相談もこの場に持ち込まれる。ただし、結論は部長の独断で決まるのが通例で、議事録の表紙に書かれた「民主主義」の四文字は、部長が思いつきで書き足した飾りである。それでも部員たちは互いの研究に遠慮なく噛みつき、時に取っ組み合い寸前まで議論を戦わせる。会議室を出る頃には、殴り合う寸前まで行った相手と肩を組んで購買へ向かう光景が、毎週どこかで繰り広げられる。

爆心地ワークショップ

 月に一度、部員の創造性と部室の耐久性を同時に試す催しが爆心地ワークショップである。題目は部長が独断で決め、「未来の遊び道具の開発」「エネルギー効率を最大化する装置の設計」のように、字面だけ見れば至極まっとうな課題が掲げられる。しかし、部員の解釈は毎回斜め上へ飛んでいき、生まれたアイデアはその場で即試行されるため、部室と周辺施設の損壊が恒例の締めくくりとなる。部長が直々に主導する回は危険度が跳ね上がり、爆発後処理班が開始前から配置につく。部が世に送り出したパワーボウリングと鉄血刺々野球は、いずれもこの催しの産物である。盤上遊戯の『アポリアすごろく』もここで産声を上げており、試作品で遊んだ部員の何人かは、盤の上で起きた出来事をいまだに言葉にできずにいる。混沌の中から学術的に価値のある発見が転がり出る回もあり、その発見が部の存続を正当化する言い訳として、各方面への答弁で重宝されている。

怪人博覧会

 部員の成果物が一堂に会する部内展示会が、怪人博覧会である。展示物は各自の専門と関心がそのまま形になった代物で、実験装置と研究成果が並ぶ隣に、用途不明の創作物が堂々と鎮座する。展示の形式に制限はなく、来場者から感想を集めて改良を重ねる流れも確立されており、次回の博覧会では前回の展示物が一回り危険になって帰ってくる。部外からの見学者も受け入れているが、会場の異質さに困惑したまま帰る者が大半を占める。その一方で、遊理部の独自性に魅了されて入部を志願する物好きも毎回現れ、志願者が出口にたどり着く前に、准怪人の名札が胸に貼られている。部員同士が互いの活動を知る機会でもあり、医学の展示と工学の展示が隣り合った結果、誰も頼んでいない合作が翌月のワークショップに持ち込まれたこともある。

講師が泣いて帰る会

 外部の専門家や異分野の研究者を招いて開く交流会が、講師が泣いて帰る会である。部内では数少ない真面目な活動に数えられ、学問と技術の話題に加えて、芸術や遊びまで幅広い題材が取り上げられる。招待状は部長が自ら筆を執るが、文面の勢いが強すぎて果たし状と間違えられることがあり、土下座外交局が事前に先方へ詫びを入れるのが段取りの初手となっている。当日は講演の後に討論の時間が設けられ、ここからが本番である。部員の質問は常軌を逸しており、講演の内容から三段階ほど論理を跳躍した問いを真顔でぶつけるため、講師の多くは壇上で黙り込む。会の終わりには経済部門が謝礼を手渡し、救護部門が念のため講師の脈を取る。講師たちは各々に独特の感想を残して学園を後にし、部員たちはその感想を次の研究の燃料にくべている。

届け出済みの狂気

 研究の合間に部員の親睦を深める余興企画の総称が、届け出済みの狂気である。肝試しに謎解きゲーム、コスプレ大会と題目は幅広く、どの企画にも遊理部流の改造が施される。余興の名を借りた危険行為が繰り返された結果、風紀委員会の監視対象に指定され、企画ごとに事前の申請が義務付けられた。申請書は始末書量産工房が作成し、書式上は非の打ち所がない。問題は書面に記された企画と当日の企画が別物になる点で、肝試しの申請で集まった部員が、夜明けには学園の裏山で謎の儀式を執り行っていた事例もある。申請の抜け道を探しては企画を強行する執念は、学園の中で半ば伝説として語り継がれている。部員たちはこの場で、研究の最中には見せない素の顔をさらけ出し、コスプレ大会で部長の仮装をした部員が、本物の部長に本人より部長らしいと認定されて表彰を受けた。

学園との仁義なき外交

 遊理部と風紀委員会の対立は、学園で最も有名な抗争の一つに数えられ、その起点は部の設立以前から続く部長の素行にある。風紀委員会は部の実験と創作活動を規律違反と断じ、他の学生生活に悪影響を及ぼすとして、部室の使用停止を再三迫ってきた。指摘事項には深夜の実験による騒音と周囲を驚かせる仕掛けの設置が並び、予告なしの爆発事故がそこへ毎回のように書き加えられる。対する遊理部の主張は「学問の自由と創造性は規律よりも優先されるべき」で、部はこの一文を盾に、巧妙な理屈で活動の正当性を訴え続けている。部長自身は懲罰独居房の常連で、独居房をマイホームと公言してはばからず、今では風紀委員長もため息で応じるだけになった。風紀委員長ですら内心諦めているという噂も、学園の廊下でまことしやかに囁かれている。委員会の側も手をこまねいてはおらず、制裁のたびに部の予算を削り取っており、経済部門が設けられた遠因もここにある。一般の学生との関係は、恐怖の一言で片付く。学園屈指の問題児集団としての悪名に加え、その戦闘能力の高さから学園中の不良たちに恐れられており、遊理部がバックに付いているというだけで多くの教職員や学生が距離を置くほどの威圧感を放っている。制裁金の徴収で名が売れて以降、学内の不良が部員の姿を見かけるなり、財布を握りしめて廊下の角へ消えていく光景が日常になった。

国家元首(入部不可・懇願継続中)

『離して副官!これは亡命です!国から部室への亡命!国家元首の亡命ひとつ受理できない部活なんて部活じゃないでしょ!?』
 学園で最も熱心な入部志願者は、学生理事会の頂点に座る代表理事エレイナ・フィルトヴァールである。部長に准怪人の名札を貼られるたびに代表理事は部室へ駆け込み、同じ回数だけ、隷下の風紀委員会の手で廊下に引きずり出されてきた。搬出の手順は委員会の内規に定められており、両腕を委員二名が抱え、足首を副官が確保する三点支持が基本の型となっている。内規の決裁欄に並ぶのは代表理事本人の署名で、自分を運び出す手順書に判を押した日の彼女は、朱肉の色が紙の裏まで抜ける強さで印を押し込んだ。連行の途中、代表理事は部室の扉枠にしがみつき、亡命の受理を涙ながらに叫び続ける。涙には拒まれる悦びが半分ほど溶け込んでおり、泣き声が高くなるほど肌の艶まで増していくため、委員たちは同情と警戒の配分に毎回頭を抱える。扉枠に刻まれた爪の跡は怪人博覧会に国家元首の爪痕として出品され、来場者の人気投票で首位の座を守り続けている。引きずられた跡は廊下の床に二本の筋として残り、清掃係は筋の長さから抵抗の強さを読み取る。副官の上着の内ポケットには、扉の前で剥がされた名札が束になって溜まっていく。部員名簿の欄外には部長の鉛筆で代表理事の名前が書き足され、副官が消しゴムで消した翌朝には、同じ場所に一回り大きな字で書き直されている。

関連記事

タグ:

団体
最終更新:2026年09月26日 21:01

*1 作:ChatGPT