ルドラディス始祖船団

概要

 ルドラディス始祖船団、通称「始祖船団」は、星間機構の絶滅プログラムと奴隷制度から逃れるため、ロフィルナ人を中心とする被征服民が結成した大規模な移民船団である。正式名称「ルドラディス」は指導者ルドラス・エルクの名に由来し、「ディス」は古ロフィルナ語で「導き」や「運命」を意味する接尾辞をイメージしており、彼が民を新天地へと導く救世主としての役割を象徴している。通称「始祖船団」は、ロフィルナ人が新天地での文明再興を夢見て自然に広めた愛称で、希望と歴史的使命を込めている。この時代、ワープ航法は存在せず、船団は世代間航行を前提に設計された。宇宙新暦1240年代に出発し、パレスポル星系の第三惑星ゼスタルを目標としたが、数世紀にわたる長い旅路を強いられた。中途半端な不老技術により、一部の乗組員は寿命を延ばしたものの、その副作用で肉体や精神に異常をきたす者も多かった。出発時には約300隻の艦船と50万人以上の乗組員・難民を擁したが、過酷な航海で船と人命が減少し、1366年のゼスタル到達時には半数以下になっていた。ヴァンス・フリートンにとって、この船団は屈辱と絶望の場であり、彼の冷酷な野心を育んだ原点でもある。

歴史

 船団の歴史は、世代を超えた苦難の記録である。宇宙新暦1220年代、星間文明統一機構の追撃が迫る中、ルドラスは船団を結成し出発を命じたが、準備不足で船内は過密状態となり、疫病が瞬く間に蔓延した。この混乱の中、技術者を中心とする一団がエイリア・ヴィン・セサルローンの下で「セサルティス技航船団」(通称、技術者移民船団)を結成し、ルドラディス始祖船団に追従しようとした。しかし、星間機構が仕掛けた細工により、彼らのナビゲーションシステムが狂い、船団とはぐれて孤独の宇宙へと追いやられた。これが後にオクシレインの原形となる集団である。ルドラディス始祖船団に残った者たちも苦難を逃れられず、最初の数十年で多くの命が失われ、生存者は子孫を残しながら生き延びることを強いられた。不老技術を受けたルドラスや一部の幹部は生き続け、船団の統治を維持したが、一般乗組員の世代交代が進む中で階級間の溝が深まった。1286年、ヴァンスが給糧艦「ディス・ヴァルティア」の廃棄区画で残飯を漁っていた時、ゾレイモス・ヴィ・ケレキラ=プルームダールに発見された。この出会いは彼を最下層から影武者へと引き上げ、人生の転機となった。1300年代には、資源の枯渇と艦船の老朽化が深刻化し、食料供給が途絶えて飢餓が広がった。不老技術の副作用で錯乱した乗組員による暴動も発生し、ルドラスは厳しい弾圧で対応した。1366年、長きにわたる航行を経てパレスポル星系のゼスタルに到達したが、生存者は疲弊し、船団は半壊状態だった。1386年、ゼスタルで都市建設が始まると、ルドラスは恩赦を宣言し、ヴァンスを含む者たちに新たな出発を許した。この長い旅は、船団の団結を試し、ヴァンスの復讐心をさらに燃え上がらせた。

艦隊編成

 船団は世代間航行を前提に、多様な艦船で構成されていた。旗艦「ルドラス・エトゥルナ」は、星間機構から鹵獲した旧巡洋艦を改造したもので、重厚な装甲とプラズマ砲を備えていた。ルドラスと不老技術を受けた幹部がここに居住し、数世紀にわたり統治を続けた。給糧艦「ディス・ヴァルティア」は、食料生産を担う巨大船で、農場モジュールと水耕栽培施設を有していた。初期は豊かな供給を維持したが、後期には資源が尽き、配給制に移行した。居住艦「ロフィルナ・レクティス」シリーズは20隻以上あり、難民を収容したが、過密と老朽化で劣悪な環境が続いた。護衛艦「エルク・ヴィンディス」群は小型戦闘艦で、機動性を活かし外部の脅威から船団を守ったが、部品不足で後期には機能が低下した。補修艦「ルドラ・ファルクェ」は技術者が運営し、艦船の修理を担ったが、不老技術を受けたエリート整備士への偏重が他の乗組員との軋轢を生んだ。

指揮系統

 船団の指揮系統は、ルドラス・エルクによる軍事独裁を中心に成り立っていた。不老技術で生き永らえた彼は、旗艦「ルドラス・エトゥルナ」から数世紀にわたり絶対的な命令を下し、反乱には容赦ない処罰を科した。反乱者は公開処刑され、遺体は船外に投棄されるのが常だった。副司令として、不老技術を受けた上級幹部たちが各艦を統括し、ルドラスの意志を忠実に実行した。彼らは特権階級として厚遇され、世代交代を繰り返す一般乗組員とは隔絶されていた。下層の管理は中層の監督者に委ねられ、彼らは労働者や下層民を暴力的に抑え込んだ。鞭や電撃棒を用いた懲罰が日常的で、不老技術を受けていないヴァンスのような最下層の者には統治の恩恵がほぼ届かなかった。上層のエリートが優先され、下層は放置される実態は、船団の長い歴史の中でさらに顕著になり、階級間の憎悪を増幅させた。

エリア構成

 船団のエリアは階級ごとに明確に分かれ、長期間の航行でそれぞれの特徴が際立っていた。上層エリアは、旗艦「ルドラス・エトゥルナ」や主要艦の上部に位置し、不老技術を受けた指導者とエリートのための快適な居住区だった。人工重力と清潔な空気が保たれ、娯楽施設やプライベートルームまで備え、数世紀を生きる彼らの精神を安定させた。中層エリアは、居住艦「ロフィルナ・レクティス」の中間層に広がり、労働者が暮らす区画だった。過酷な労働が課されるが、最低限の食料と居住空間が与えられ、家族単位で世代交代を繰り返した。下層エリアは、居住艦や給糧艦の最下部にあり、ヴァンスがゴミ処理に従事したような劣悪な区画が広がっていた。暗く湿った通路には廃棄物が山積みで、酸欠や悪臭が常態化し、生存者たちは飢餓と暴力の中で生き延びた。不老技術を受けていない者や、技術の副作用で廃人となった者がここに追いやられ、絶望的な生存競争が続いた。外部エリアは、護衛艦「エルク・ヴィンディス」や補修艦「ルドラ・ファルクェ」が占める外縁部で、戦闘や修理に特化していた。宇宙の放射線や微小隕石にさらされる危険地帯で、乗組員は短命に終わることも多かった。ヴァンスにとって、下層エリアは屈辱の記憶であり、彼の冷酷さを鍛えた場所だった。

主な施設

 船団内には、世代間航行を支える重要な施設がいくつか存在した。指令室は旗艦「ルドラス・エトゥルナ」の最上部に設けられ、戦略決定の中心だった。強化ガラス越しに星々を望むこの部屋で、不老のルドラスは数世紀にわたり船団の進路を定め、反乱の報告に冷徹な判断を下した。農場モジュールは給糧艦「ディス・ヴァルティア」にあり、人工光と水耕栽培で穀物や野菜を生産した。初期は豊かな収穫で船団を支えたが、後期には土壌の枯渇と電力不足で機能が低下し、上層以外への供給が途絶えた。不老技術を受けた管理者だけが新鮮な食料を享受し、下層民は残渣に頼った。廃棄区画は同じく「ディス・ヴァルティア」の下層に広がり、ヴァンスがゴミ処理に従事した場所だ。腐臭漂う暗闇の迷路で、廃棄物の中からわずかな食料を漁る者たちがうごめき、不老技術の失敗で廃人となった者も放置されていた。ヴァンスはこの区画で飢餓と屈辱に耐え、ゾレイモスとの出会いがなければ死にゆく運命だった。修理ドックは補修艦「ルドラ・ファルクェ」の核心で、巨大なクレーンと溶接機が並び、老朽化した艦船を修復した。不老の技術者たちは昼夜を問わず働き、船団の存続を支えたが、彼らの傲慢さは下層民の憎悪を招いた。雑居房は居住艦「ロフィルナ・レクティス」の下層にあり、犯罪者や反乱者が収容された。鉄格子と薄暗い照明しかないこの空間では、囚人同士の争いが絶えず、不老技術の副作用で錯乱した者も閉じ込められていた。ヴァンスも一度反乱の嫌疑で収容され、看守の暴力と囚人の狂気に耐えた経験が、彼の心をさらに硬くした。

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最終更新:2025年03月25日 23:45