(数分前)
(舞台裏)
(打ち合わせ)
沙都子「……はい。じゃあ……」
スタッフ「ええ……」
沙都子「分かりましたか?あいつの妹の話、全部NG。これマジっすから」
沙都子「カットお願いしますよ……?」
沙都子「ほんと……マジ……」
スタッフ「かしこまりました……」
『カスJK・古手梨花について知ってみよう!』
♪BGM
古手梨花内親王(2009~ 存命中)────。
北条沙都子の友達(と、沙都子は思っている)
全てをあきらめ、アイスコーヒーのストローをガジガジ噛み続けるカスJK。
目に入るもの全てを見下し、努力という概念を鼻で笑い、怠惰にダラダラと生きている。
一見するとどうしようもない、ただのゴミクズである。
しかし彼女は、その無気力と冷笑の奥に、オヤシロ云々、魔女云々といった、
明らかに異常な“何か”を隠しているのだ。
何もかもを悟ったような顔で、何もしていないふりをして、全てを知っている。
今回は、古手梨花という存在の全貌に迫る。
これは“かわいそうな少女”の話ではない。
退屈と支配に慣れすぎた女の話である。
――女帝編、開幕。
① みらい高に来た理由
古手梨花のIQは145。
神童と持ち上げるほど突出しているわけではないが、「賢いかどうか」で揉める余地が一切ないラインには確実にいる。
そんな彼女が、なぜ不相応にもこの猿専用高校・みらい高に足を踏み入れたのか。
氷の擬人化である閣下にも、もしかすると人情のようなものが残っているのかもしれない──。
梨花「だって沙都子、そこしか来れなかったし」
沙都子「え?告白?www」
梨花「勝手にそう思っとけ、ゲス」
梨花「いや普通に、一から人間関係作るのだるいでしょ」
沙都子「それってさ、私じゃなくてもよかったってこと?」
梨花「それは違う」
梨花「あんたが顔カースト下位系だったら、そもそも仲良くしてないし」
梨花「整ってるから“使ってる”だけ。以上」
沙都子「……ごめん」
沙都子「キショいより、嬉しいって感想が勝つかも……」(※分かりやすくニヤニヤする)
② テストの点数
梨花のテストの点数は、すべてきっちり60点に統一されている。
これは決して、みらい高のテストが難しいからではない。
理由は単純明快。
- 高すぎると浮く
- 低すぎると混ざれない
- でも「点を操作できる側」ではいたい
という、承認欲求と支配欲が奇跡的なバランスで混ざった結果である。
梨花「でも誰にも気付かれないのが、地味に痛いとこなんだよね〜〜w」
沙都子「正直私、梨花のツンデレシリーズでこれ進めると思ってたんだけども……」
沙都子「てかさ」
沙都子「『こことここ、間違えれば60点になるな……(ニヤリ』って調整してるの普通にキモい」
梨花「まぁそれはそう」
梨花「でも点数って概念ないやつが言うのは違くない?」
③ 体育について
当然、不参加。
梨花は体育という文化そのものを“見る側の娯楽”として捉えている。
余った体力は部活で消費すればいい。彼女はそれでいいのだ。
そもそも梨花に限らず、みらい高の女子はほぼ全員が見学である。
男子が汗水垂らして走り回る様子を眺めながら、日陰で優雅なティータイム。
それがこの学校の体育の正しい楽しみ方だ。
梨花「でもジャージは可愛いから認めてる」
沙都子「着ながらスポーツ観戦w」
梨花「明日なに持ってこよっかな」
沙都子「ゆっこが白い恋人持ってくるって」
梨花「え、神。じゃあ私、ボスのラテ持ってくわ」
④ 趣味
古手梨花の趣味は、創作でも運動でも鑑賞でもない。
「他人の感情を、最小の力で歪ませること」である。
- Instagramのストーリーで「〇〇ちゃんのいいところ10個募集!」というアンケートを、あえて該当者本人が見ている状態で実施する。
- 電車で、向かいになんかウザく思うサラリーマンが座っていたら、友達と「え、あの人TikTokで晒されてた人じゃない?w」「200万再生はウケたよねw」と囁く。
- ニコニコ動画の新着動画(再生数0)に『もっと評価されるべき』『期待の新人』とのタグをつける。その後、「自演してる投稿者いたw」とXで晒す。
- 夜9時ごろ、コンビニの駐車場で鍵をかけ忘れた車の助手席に、白いくまのぬいぐるみと「次からは、閉めようね」というメッセージを置いていく。
- スクール・オブ・ロックのいじめ相談回をBGMに、入浴タイム
さすがは我らが女サソリ・古手梨花閣下。
もはや身内同士の序列だとか、友人関係だとかいう、狭くて安全な世界の話ではない。
無関係な第三者の人生を、一瞬で、しかも不可逆的に不快にする。
その一点に特化した、生粋の趣味である。
梨花「は??は?は?え、ナニコレ?ハァ??」
沙都子「~♪」
梨花「……お前だな?」
沙都子「まぁ梨花ちゃま、それくらいはしそうでしょw」
梨花「……お前の家族全員に【新しい趣味】ぶつけてやる」
沙都子「はい開示、はい通報〜」
沙都子「……(ちら)」
スタッフ「……(無言の目配せ)」
沙都子「ま、こんなもんかな」
梨花「時間も時間だしね」
梨花「……なんかさ~、こうやって可視化されると、ほんと私らどうしようもないよね」
沙都子「そんなもんっしょ」
沙都子「それが令和。それがアオハル」
梨花「あ、深い。さすが名言メーカーさちょこ」
沙都子「浅いこと言ってもさ、バカが囃し立ててくれんのが日本w」
梨花「いい国作ってこれ~鎌倉幕府」
沙都子「さーて、スタバ行こーっと」
⑤ 最後に
沙都子「は?」
梨花「は?」
⑤ 古手梨花の妹について
梨花「……え」(もう目がうるうるしている)
沙都子「は?は?はぁ??!」
沙都子「ちょ、待て待て待て待て!!」
古手梨花には、雉子という三つ下の妹がいる。
不器用な性格で、学校にうまく馴染めず、不登校の日々を送っている少女だ。
そのことに本人は深く悩み、傷ついているが、梨花は(らしくもなく)献身的に寄り添い続けている。
沙都子「……おい」
沙都子「おいスタッフ!!出て来い!!」
沙都子「なにしてんだよ!!!」
沙都子「打ち合わせしたよねぇ??!!」
沙都子「妹の話NGって言ったよねぇ??!!」
沙都子「止めろ!!!今すぐ止めろぉおおおお!!!!」
スタッフ「……」
梨花「……雉子」
そんな雉子から、梨花へ。
我々は、あらかじめ用意されたビデオメッセージを預かっている。
物語の締めとして相応しいかどうかはさておき、最後はこれを再生し、すべてを終わらせることにしよう。
梨花「……き、雉子……!?」
沙都子「やめろォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」
雉子「お姉ちゃんへ」
雉子「私は、生まれ変わってもまた、お姉ちゃんの妹になりたいです」
梨花「……」
沙都子「……(はいゲ~ムオ~バ~)」
雉子「お姉ちゃんは、私と違って、明るくて、友達もたくさんいて……」
雉子「でも、家に帰ると、いつもちょっと疲れた顔をしてます」
雉子「それでも……いつも、私のことを一番に考えてくれて」
雉子「だから私はお姉ちゃんに――」
雉子「ありがとうって気持ちと」
雉子「ごめんねって気持ちで……いっぱい、かな」
雉子「へへ、なんちゃって」
梨花「…………」(瞬きなし。口が半開きのまま固まっている)
スタッフ「(何が“なんちゃって”やねん)」
沙都子「……おい」
沙都子「おいゴミスタッフ」(極小声)
スタッフ「……はい?」
沙都子「言ったよね?雉子チャン絡むと梨花壊れるから、やめてって」
沙都子「私、これで何回目か知ってる?」
沙都子「四回目だよ?四回目。四回も雉子事案踏まされてきたわけ。分かる?」
スタッフ「……」
沙都子「感動回やりたいなら別のやつでやれって言ったよね?」
沙都子「なんで踏むの?地雷って分かってて?」
スタッフ「こっちも仕事なんで……」
沙都子「仕事?じゃあさ、死ねって言われたらお前死ぬの?それも仕事?」
スタッフ「……(40代しか使わない定型脅迫じゃねぇか)」
沙都子「おい!!!黙ってんなよ!!!!」
雉子「お姉ちゃん、最後に一つ……いいかな?」
梨花「うん……」
雉子「私は――お姉ちゃんの、パンケーキ」
梨花「うん、うん……!」
沙都子「なんか言えつってんだろ!!!!!」(スタッフに詰め寄る)
スタッフ「あーはいはい。じゃあギャラ増やすんで、その──」(後退)
その瞬間、ブチッ
コードに足が引っかかる音。
スタッフ&沙都子「へ?」
雉子「だいす……ズヴァバビビバビビババビビビビビビビビバビバババビビバガバァアアエアアアアアア!!!!!!」(映像が歪む、ノイズ、顔がぐちゃぐちゃに崩れる)
梨花「いやぁあああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
スタッフ「!?!?」
沙都子「……!?」
沙都子「……っ、……〜っ!!!……!wwwwwww」(後ろを向いて、必死に笑いをこらえる)
梨花は泣き叫び、沙都子は笑い、スタッフは固まる。
誰も、止めない。
いや、もう止められない。
カスJK二人は、この先もくだらない日常で、人生を浪費し続けるだろう。
誰かを壊し、自分を誤魔化す。
破滅する――その瞬間まで──。
【記録】
【本映像は事実に基づく】
終
最終更新:2026年02月10日 22:37