『カスJK沙都子と梨花の昆虫大戦争①』
♪BGM
『東京都立 みらい総合高等学校』
ここまでこの小説を読み進めてくださった皆様。当然の疑問でしょう。──「どんだけ終わってる高校なんだよ」と。
その問いに、今回は正面からお応えしましょう。
次回を含む二話構成で、沙都子と梨花が通うこの高校の実態を解説いたします。
保護者の平均年収は約九百万円。にもかかわらず、集うのは選ばれし愚者たち。
検索サジェストに並ぶのは「カス」「爆破予告」「なんJ」のその高校。
ヤンキーですら必死こいて受験勉強し、回避するとのその高校。
偏差値21との、その高校。
なぜこの場所が『目黒区一の危険地帯』と呼ばれるのか、その理由を今から徹底解剖していきましょう。
歴史
語ることは特にありません。
有名なOBも特にいません。
重要なのはいつでも、過去ではなく現在なのです。
そこで本項では、この学校の“今”を象徴する内装と空気感について、順を追ってご紹介いたします。
内装
『玄関』
張り紙が目立っています。
『いつでも見てるからな』
『誰かが君を見ている』
一見すると怪談めいた文言ですが、これは教職員による注意喚起とのことです。
監視という名の教育方針が、来訪者を最初に出迎えます。
『無慈悲な殺人機マッギョネス』
一階に設置されてる自動販売機のあだ名です。
かつて二組の国枝という生徒がドッキリで、祭りの金魚を取出口に入れるという事件がありました。
金魚から飛び散った血液になぞらえて、物騒な異名が定着したとされています。
『配慮部屋』
図書室のことです。
年間利用者0。
図書委員でさえ足を運ばない、静寂に支配された空間です。
そのことに乗じて、たまにバカップルがセックスしにきます。
『いじめ相談室』
図書室の向かいにあります。
みらい高は一日の平均いじめ数752件です。
ただし、全員が互いに攻撃し合っている構図のため、加害者と被害者の境界が曖昧になっております。
その結果、「いじめ率0%」という理屈が成立しているとのことです。
相談室の利用者はほとんどおりません。
そもそも精神的に適応できない生徒は、入学後一か月ほどで自然と退学していく傾向にあります。
ある意味では、ブータンにも勝る世界一幸せな聖域が、当校なのです。
(※ちなみにいじめ相談室のカーテンはヤニで黄ばんでおります)
『ブタ公前』
一階多目的室の向かい側にある壁のことです。
待ち合わせの定番スポットであり、校内の“社交場”とも言える空間です。
かつてこの壁には、愛らしいクマやイヌのイラストが貼られ、
「君はひとりじゃない」「心を育むみらい高」と希望の標語が書かれていました。
現在では、歴代生徒たちによる落書きで、
ヒゲを描かれ、眼鏡をかけさせられ、目は塗り潰され、脇毛や胸毛、チン毛を生やされ、「殺す」「No Futuere」と書かれたり、
「おれらのガッコへようこそ!!!笑」と言わされる始末となっています。
『指名手配書』
二階廊下の一角。
そこには生徒が独自に貼り出した指名手配書がございます。
壁一面を埋め尽くすのは、犯罪者の顔写真。
異様な光景でありながら、誰も撤去しません。
当然のごとく、ほとんどの写真には落書きが施されております。
さらによく見ると、教員の顔写真までもが紛れ込んでいるのです。
生徒たちの会話は軽薄そのものです。↓
国枝「この見立ってやつ、俺のオヤジの知り合いw」
バカ男子「俺、こいつこの前ラーメン食ってるの見たわw」
梨花「もう芸術だよね」
沙都子「モナリザとかそういう類じゃんね」
梨花「歴代校長一覧ってかこっかなw」
沙都子「間違いなくどれかOBでしょw」
この廊下は、倫理観のボーダーラインが溶解した現代アート空間とも言えるでしょう。
『職員室前』
対照的に、異様なほど整然としているのが職員室前でございます。
理由は単純。ここは事実上の禁足地だからです。
周囲には監視カメラが四台(警備会社契約)。
消火器は六台。
張り詰めた空気が漂います。
扉の前には、反省文用の原稿用紙が山積み。
そして掲げられた注意書き。
「本当に用がある者のみ来ること」
「守れない生徒は即、保護者を呼びます」
教育と威圧の境界線が、ここには存在します。
しかし、よく目を凝らすと、扉の右端に小さく刻まれた一文字がございます。
「死ね」
それを刻んだ名もなきOBは、在校生の間で“伝説のお方”と呼ばれているとのことです。
先生について
続いて、この環境下に置かれている“ある意味での被害者”──教職員についてご説明いたします。
ここでは代表的な教員のみを取り上げます。
頓原嘉葎雄(64)
おじいちゃん先生。
生徒間では「余命」「デスターシャ」などと呼ばれています。
担当は歴史。しばしば脱線し、現代政治について意気揚々と語り始めます。
校内では、老朽化した設備の簡易清掃を自ら行う姿も見られます。
その様子を見て、優子は「時代の生き証人」と評し、梨花は「あと数年で家族のこと忘れる人」と辛辣に評します。
もっとも、彼にはもう一つの顔がございます。
実はバスケットボール部顧問。
その指導力は確かであり、国枝からは本気で「尊師」と呼ばれております。
試合や練習になると、まるで別人のように俊敏に動き回り、
その姿に沙都子は「それで食っていけばいいのに」と、皮肉を交えた評価を下します。
国枝は尊師の勇姿に心酔しており、将来の夢に「モニタリングの演者」と記すほどです。
彼なりの最大級の賛辞なのでしょう。
国枝の最近の口癖は「俺もジジイのフリして役所から年金騙し取りたい」になりつつあります。
鷹野圭司(46)
学年主任。
本気で叱責する数少ない教員であり、生徒たちからは一定の恐怖をもって迎えられています。
口癖は「親呼ぶからな?」
この一言で、多くの問題児が一時的に更生いたします。
彼の前では、生徒たちは驚くほど従順です。
しかし背後では、
「むきたまごが如く零」
「どうせ半グレだろ」
「昨日歌舞伎町で中学生殺してたw」
などと、根拠のない陰口が飛び交います。
もっとも、それらは恐怖の裏返しに過ぎません。
実際のところ、彼は筋の通った、どこか不器用な優しい教師です。
池端 道子(49)
いわゆる「学食のおばちゃん」ですが、その価格設定はもはや高級レストラン級です。
- みそ汁定食 …… 900円
- カレー …… 2,000円
- カツ丼 …… 2,800円
しかし、特例が存在します。
テストで好成績を収めた場合、80%OFF。さらに、誕生日の生徒は無料。
この慈悲深い制度を、生徒たちは悪用し、毎日ローテーションで“偵察部隊”を送り込み、虚偽の誕生日を申告。
まとめ買いした料理を持ち帰り、五人ほどで分配して食します。
もはや学食というより、経済戦争の最前線でございます。
以上です。
その他の先生は判を押したようにみな真顔で、金と個人的悩みと趣味の事だけ考えています。
そして、言うまでもありませんが生徒たちは、教員の授業を一切聞いておりません。
生徒について
3時にはおやつが配られるので、それ目当てで1/3の生徒が残ります。
女子は、配布されたおやつを「JKの手垢つき」と銘打ち、メルカリで三千円にて転売。
男子生徒は、窓から放り投げ、誰が拾って食べるかという罰ゲーム大会を開催。
結局、忘れ去られたおやつはおじいちゃん先生が全部捨てます。
倫理観という概念が、どこか遠い国の神話のように扱われている集団。それがみらい高生徒。
以下、その生態を順に解説いたします。
イベント
部活と文化祭と体育祭だけは「青春だから」と全力で楽しみます
もっとも文化祭に関しては、「生徒が怖い」という理由で催し物を断絶し、学校側が用意した唐揚げ弁当や焼きそばを客に配布するのみという、安全第一仕様ですが。
ジャージは女生徒からデザインが好評で、体育祭はもはやファッションショーと化します。
『自殺』
生徒達の口癖です。
例)
「は?ムカつくなお前、自殺しろよ」
「これ自殺っしょ」
「今日の弁当マジひどくて、ほんと自殺でさ~」
放課後
生徒たちは陰湿さを発揮いたします。
コンビニで会計が長引く客がいれば、列の後方で露骨に台を叩いたり、足踏みをして急かします。
本人たち曰く、「店内BGMのリズムに乗ってるだけですが?w」
基本、サラリーマンや弱そうな中学生にしかやりません。
教科書
捨てたら親を呼ばれるため、所持率100%です。
国枝大蛇(16)
沙都子ら二組における、事実上のカースト頂点に立つ男子生徒です。
この生徒に関しては、あまりに常軌を逸しているため特筆の義務があります。
国枝は、かつて沙都子の交際相手でした。
しかし「あまりにもキチガイすぎて見ていられない」という理由で別れを告げられております。
本人は自らを“ユーモラスな人物”と称しております。
そして自分の行動を批判する者を、「俺のユーモアが分からない哲学者」と一蹴いたします。
主な言動は以下の通りです。
- 理科室の人体模型を分解し、赤い塗料を施した上で校外に放置する。
- コバエコナーズを机に大量設置し、「衛生管理」と称して周囲を煽る。
- 「いいなぁ〜みんなコバエとお友達になれて(笑)」が決め台詞。
- 常に爪楊枝を多数携帯。
- 着信音はホラー映画の女の悲鳴(爆音)
- スマホのロック画面は、墓地でBBQをしながらピースサインをしてる自撮り。
- 昼食中、死刑囚の話題を持ち出し「尊敬してる」「殺人はNGだが生きざまに憧れる」と話す。そうかと思えば「俺の方がもっとエグいことできる」と支離滅裂な結論で締める。
- 好きな食べ物は「牛かマグロ!!!」
国枝大蛇という存在は、単なる問題児ではなく、“過激さを演出として消費する少年”でございます。
恐怖を娯楽に変え、倫理をネタに変換する。
それが彼の自己プロデュース手法です。
そんな国枝坊が起こした『スズメバチ繭事件』は、二人の職員を退職に追い込むほどでしたが、
その詳細については、また
次回にて。
終
最終更新:2026年02月24日 17:54