『沙都子vs沙都子①』
下校中の電車。
沙都子は座席でスマホを握り、TikTokを見ながら必死に笑いをこらえていた。
肩が微妙に揺れる。口角が勝手に上がる。
沙都子(やば、これ電車で見るやつじゃないw)
ふと、顔を上げる。
――目の前。
同じ顔。
同じ髪型。
同じ制服。
同じ“量産感”。
(……え、かわい)
(……いやてか。待って、は?)
(は?は?は?はぁあああっ??!!)
向かいの席に、自分と完全に同じ見た目の女が座っていた。
一拍遅れて、相手も沙都子に気づく。
目を見開く。
次の瞬間、表情がぱっと花開いた。
偽沙都子「マジ!?なにこれ!!どんな確率!?すごくない!?」
偽沙都子「やばやばやば!!なにこれ!!双子!?!?!?」
でかい。
声が。
リアクションが。
存在が。
沙都子(え、そういう系?)
相手は当然のように隣に座ってくる。
偽沙都子「ねえねえ!写真撮っていい?
インスタ載せたい!!絶対バズるやつ!!
名前なに!?」
沙都子(距離感ゼロすぎ……)
「……沙都子ですけど」
偽沙都子「まじ!?かわいっ!!!
うち二宮!二宮梨花!!」
沙都子「……は?! ぶふっw」
(梨花?)
(梨花??)
(お前が???www)
二宮梨花は、とにかく明るい。
声量、笑顔、姿勢、全部が前向き。
人見知りという概念が存在しない顔。
一目でわかる、クラスの中心にいるタイプ。
沙都子は内心で冷笑する。
二宮「沙都子ちゃんどこ高?
うち原宿!!!」
沙都子(ぁ!? 偏差値60台やんけぇえええええ)
「……まぁ、ぼちぼち的な高校っすかね〜」
二宮「ぼちぼちねぇ〜……(しみじみ)」
沙都子(やめろ、その“察してます”顔)
二宮「沙都子ちゃんTikTok見てたよね!?
好きなTikTokerだれ!?」
沙都子「……ゆら猫」
(“ちゃん付け”すか……)
二宮「えええ!!
うちも!!
やば、趣味まで一緒!!」
そのまま自然に腕を組んでくる。
沙都子「……」
(距離感、平成初期?)
二宮「ねえねえ!
奇跡じゃない!?
もう姉妹でしょこれ!!
うちらハイパードッペルじゃん!!」
沙都子「はあっす……」
(サラリーマン触れそうな子)
二宮「ま、沙都子ちゃんのカワイさには敵わないけどね〜!あははは~~~!!」
沙都子「……」
沙都子「悩みなさそうw」
二宮「え?」
沙都子(まずいっ、心の声漏れた……)
二宮「あるよ〜全然」
沙都子「え?」
二宮「今の悩みね、
沙都子ちゃんとまだ親友になれてないこと!!
カモンベストフレンズゥーー!!」
沙都子「は、はは……w」
(こいつ……絶対おばあちゃんっ子w)
沙都子(うざい)
(まじ無理)
(こういう子が一番たち悪い)
(早く駅つかないかな……いごこち悪すぎる)
(梨花と悪口言いたい)
(梨花とコイツ晒したい)
沙都子(……本物の梨花に、な?)
数分後、
下車。
二宮「ばいばーい!!
さとっち〜〜!!
LINE絶対返してね〜!!
遊ぼ!!」
沙都子「は〜い!」
ドアが閉まる。
沙都子「…………」
くすっと笑う。
(……うわ、やば)
(私って……こんな可愛かったんだ)
(ふふ……)
(ふへへ~……w)
沙都子「……ったくw」
「お互い頑張ろうぜ~……ニノ!」
小声でそう言い、去っていく背中にグッドサインを立てた。
終
最終更新:2026年01月24日 00:18