禍福は糾える縄の如し。
よほどのペシミストでない限り、多くの人間は、自ずと考えてしまうものだ。
自分が最悪の状況に見舞われれば、その後は良い事が代わって来るだろう。
少なくとも、これ以上悪いことは起こりやしないだろう。
口ではそんなことは無いと言っても、心のどこかでそう思うはずだ。
よほどのペシミストでない限り、多くの人間は、自ずと考えてしまうものだ。
自分が最悪の状況に見舞われれば、その後は良い事が代わって来るだろう。
少なくとも、これ以上悪いことは起こりやしないだろう。
口ではそんなことは無いと言っても、心のどこかでそう思うはずだ。
現にこの少年だってそうだ。
人間のほとんどが吸血鬼になり、逃亡と抵抗を繰り返す日々を過ごすことになった。
必死で生きようとしていた仲間も、吸血鬼の警官に捕まってしまった。
ここから人間が逆転する可能性など、無いに等しい。
逆に今以上に最悪の事態に追い込まれることはないはずだ。
つい先ほどまで、そう思っていた。
人間のほとんどが吸血鬼になり、逃亡と抵抗を繰り返す日々を過ごすことになった。
必死で生きようとしていた仲間も、吸血鬼の警官に捕まってしまった。
ここから人間が逆転する可能性など、無いに等しい。
逆に今以上に最悪の事態に追い込まれることはないはずだ。
つい先ほどまで、そう思っていた。
だというのに、よく分からない殺し合いに参加させられた。
しかも、自分の身体を奪われ、身元の分からない身体に憑依させられ。
挙句の果てに、その身体は。
しかも、自分の身体を奪われ、身元の分からない身体に憑依させられ。
挙句の果てに、その身体は。
彼が憎み続けた、吸血鬼のものだった。
「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
手鏡でその姿をはっきりと確認して、自分がこれまで以上に最悪の事態に立たされていることを知った。
殺し合いの真っただ中だというのに、凄まじい悲鳴をあげた。
夜でも分かるほど赤く輝く目、病人のそれより白い肌。そして口から覗かせる鋭利な牙。
そもそも、深夜の森なのに異様なほど明るく見える時点で、おかしいと思うべきだった。
どう考えても、自分が憎み、心臓に杭を突き立てた同胞のそれだ。
肉体の説明書を読まなくても分かる。
殺し合いの真っただ中だというのに、凄まじい悲鳴をあげた。
夜でも分かるほど赤く輝く目、病人のそれより白い肌。そして口から覗かせる鋭利な牙。
そもそも、深夜の森なのに異様なほど明るく見える時点で、おかしいと思うべきだった。
どう考えても、自分が憎み、心臓に杭を突き立てた同胞のそれだ。
肉体の説明書を読まなくても分かる。
「返せ!!僕の身体を!!」
手鏡を八つ当たり気味に投げ捨てる。それは、あっけなく砕けた。
たとえ地球上の人間が、自分しかいなくなったとしても、吸血鬼になってまで生きようとは思いたくない。
そんな決意は、理不尽によりあっけなく砕かれた。
自棄を起こしたかのように、近くの樹に蹴りを入れる。
頑丈な幹を持つそれは、サッカーボールか何かのように飛んで行った。
普通の人間ならば、どう考えても出来ない行為。
今の身体は、間違いなく人間を凌駕する吸血鬼のそれだと確信した。
たとえ地球上の人間が、自分しかいなくなったとしても、吸血鬼になってまで生きようとは思いたくない。
そんな決意は、理不尽によりあっけなく砕かれた。
自棄を起こしたかのように、近くの樹に蹴りを入れる。
頑丈な幹を持つそれは、サッカーボールか何かのように飛んで行った。
普通の人間ならば、どう考えても出来ない行為。
今の身体は、間違いなく人間を凌駕する吸血鬼のそれだと確信した。
「こんな体になってまで生きたくない!!」
「おい……」
「おい……」
癇癪を起して叫んでいる元少年の後ろで、声が聞こえた。
そこに立っていたのは、紫色をした猿だった。体格は人間の大人と同じか、少し小さいくらい。
異様なまでに毒々しい毛皮や、背中に生えている蝙蝠のような翼から、怪物だと伝わった。
異様なまでに毒々しい毛皮や、背中に生えている蝙蝠のような翼から、怪物だと伝わった。
「うわあああああ!!来るな!!来るな!!」
先程とは異なるトーンの悲鳴を上げ、後ずさる。
人間とは比べ物にならない力を持つ種族には似つかわしくない所作だ。
尤も、元の身体の持ち主も、屋根の上で血で滑ったりと、しばしば間抜けをさらしていたのだが。
人間とは比べ物にならない力を持つ種族には似つかわしくない所作だ。
尤も、元の身体の持ち主も、屋根の上で血で滑ったりと、しばしば間抜けをさらしていたのだが。
「おい、落ち着け。」
おおよそ話が通じそうにないと思っていた猿の怪物は、少年を宥めるように呼び止めた。
「え?」
「落ち着けよ。あんたも同じ、人間だったんだろ?俺もそうだ。」
「落ち着けよ。あんたも同じ、人間だったんだろ?俺もそうだ。」
ひどく落ち着いた口調だった。
親友の兄をはじめとした、知識人や大人が話す時の喋り方だ。
目をつぶっていれば、人間が話しているのだと勘違いしてしまうだろう。
親友の兄をはじめとした、知識人や大人が話す時の喋り方だ。
目をつぶっていれば、人間が話しているのだと勘違いしてしまうだろう。
「どうして……分かったんですか?」
「さっき、『返せ、自分の身体を』って叫んでただろ?」
「……ああ、はい。」
「さっき、『返せ、自分の身体を』って叫んでただろ?」
「……ああ、はい。」
他人にばれずに話すつもりは無かったが、他人に聞かれてしまうと恥ずかしいものだ。
それでも、吸血鬼の真っ白な肌は、赤面することは無いが。
それでも、吸血鬼の真っ白な肌は、赤面することは無いが。
「まずはあんたのことを知りたい。それでいいか?」
少年は話を始めた。
自分は良太という名前で、東京という町で一人の少年として暮らしていた。
けれど、ある日を境に、人間が次々に凄まじい力を持った吸血鬼に変わって行ったことを。
人間の数は刻一刻と減って行き、ついには知っている人間が自分一人になってしまったことを。
自分は良太という名前で、東京という町で一人の少年として暮らしていた。
けれど、ある日を境に、人間が次々に凄まじい力を持った吸血鬼に変わって行ったことを。
人間の数は刻一刻と減って行き、ついには知っている人間が自分一人になってしまったことを。
どんな話でも、ストレイボウと名乗った怪物は聞いてくれた。
どこか大人びた人間の口調だと思ったが、話をしてみると、本当に大人のように話を受け止めてくれた。
どこか大人びた人間の口調だと思ったが、話をしてみると、本当に大人のように話を受け止めてくれた。
「どうかしたのか?」
「いえ……人と話を出来たのが嬉しくて……。」
「いえ……人と話を出来たのが嬉しくて……。」
しばらく話をすると、段々涙が出て来た。
いくら見た目が怪物とはいえ、人間相手に話をしている。
親友が撃たれた後、もうそれは出来ないんじゃないかと考えていた彼にとって、それは涙が出るほど嬉しい瞬間だった。
いくら見た目が怪物とはいえ、人間相手に話をしている。
親友が撃たれた後、もうそれは出来ないんじゃないかと考えていた彼にとって、それは涙が出るほど嬉しい瞬間だった。
一通り話すべきことを話し終えても、色々なことを話そうとした。
元々はどんな姿なのだとか、どんな国に住んでいるのかとか、釣りは好きかとか。
話をしている間に、次に話したいことが次々浮かんで来た。
言ってしまえば、軽く酔ったような気分にさせられていた。
元々はどんな姿なのだとか、どんな国に住んでいるのかとか、釣りは好きかとか。
話をしている間に、次に話したいことが次々浮かんで来た。
言ってしまえば、軽く酔ったような気分にさせられていた。
「なあ。」
だからこそ、次にストレイボウが発した言葉は、酔っ払いに対する冷水のような力を発揮した。
「お前、殺し合いに乗る気はないのか?」
沈黙。
良太は声を出そうにも出せなかった。
ただ、真っ白な手を震わせるしか出来なかった。
良太は声を出そうにも出せなかった。
ただ、真っ白な手を震わせるしか出来なかった。
「な……なぜ……。」
良太は善良な一般市民だ。
吸血鬼の胸に杭を突き立てたことはあるが、それはあくまで緊急事態だったから。
それ以前に、相手は人間ではなかった。
今も昔も、人殺しをする気なぞさらさらない。
吸血鬼の胸に杭を突き立てたことはあるが、それはあくまで緊急事態だったから。
それ以前に、相手は人間ではなかった。
今も昔も、人殺しをする気なぞさらさらない。
「簡単な話だよ。吸血鬼になった者達を元に戻せるチャンスじゃないか。
いや、そもそもそのマチスンウイルスってヤツを消してしまえば良い。」
いや、そもそもそのマチスンウイルスってヤツを消してしまえば良い。」
人殺しなどする気はない。身体が吸血鬼になっても、心まで血に飢えた化け物になりたくない。そう思っていた。
だと言うのに。
だと言うのに。
闇の真ん中に現れた光は。
砂漠の真ん中に現れた水たまりは。
地獄の真ん中に垂らされた蜘蛛の糸は。
砂漠の真ん中に現れた水たまりは。
地獄の真ん中に垂らされた蜘蛛の糸は。
無視するにはあまりに眩すぎる物だった。
「道理じゃどうにもならないモノを、無理で引っ込ませる。間違ったハナシじゃないだろ?」
今度はストレイボウの方が、話を続ける。
「気持ちは分かる。俺も、色んな物を奪われてきたからな。」
先程と口調は変わらない。静かで、物怖じと言う言葉を感じさせない。
大人が子供をなだめるような、ともすれば優しさと勘違いしてしまいそうになる。
無視しようにも、無視できない。
大人が子供をなだめるような、ともすれば優しさと勘違いしてしまいそうになる。
無視しようにも、無視できない。
「そしてどんなに努力しても、奪い返すことは出来なかった。」
言葉という水面の上に、怒りという波紋が走る。
「あ、あなたは……。」
ようやく気付いてしまった。
目の前の男は、見た目だけが怪物なのではないことに。
心の奥でも、醜悪な怪物を飼っていることに。
目の前の男は、見た目だけが怪物なのではないことに。
心の奥でも、醜悪な怪物を飼っていることに。
「けど、願いさえ叶えてもらえば、そんなことはどうでも良くなる。
それに俺達には、新しい力がある。この怪物の力だ!!」
それに俺達には、新しい力がある。この怪物の力だ!!」
悪魔の顔をしているから恐ろしさを醸し出している。そんなものではない。
たとえストレイボウの、元の端正な顔からでも、悍ましさが伝わって来ただろう。
たとえストレイボウの、元の端正な顔からでも、悍ましさが伝わって来ただろう。
「ま、まさか、僕を……。」
彼は恐ろしいのは見た目だけで、殺し合いに乗ってはいないと錯覚していた。
吸血鬼の王とは思えない挙動で後ずさる。
目の前の男がどんな力を持っているか分からない。
それでも、戦いに関しては素人に毛が生えた程度の彼からすれば、不利なのは明確だ。
吸血鬼の王とは思えない挙動で後ずさる。
目の前の男がどんな力を持っているか分からない。
それでも、戦いに関しては素人に毛が生えた程度の彼からすれば、不利なのは明確だ。
「殺すつもりは無い。ただ、協力して欲しいだけだ。
たとえ願いを叶えてもらえるのが1人だけだとしても、生き残る可能性は上がるだろう?」
たとえ願いを叶えてもらえるのが1人だけだとしても、生き残る可能性は上がるだろう?」
「……いや、だ……。」
からからに乾いた口を動かして、辛うじてその言葉を紡いだ。
ストレイボウの言葉を正しいと思っている自分がいる。
いや、彼の言っていることが正しくないとは思えない。
万が一、元の世界に帰っても、帰りを待ってくれる家族や友達はいない。
結局生き残りの人間として、吸血鬼から追われるだけだ。
雅という吸血鬼の王の力を使い、参加者を殺して、あの日に帰る方が理にかなっているんじゃないか。
ストレイボウの言葉を正しいと思っている自分がいる。
いや、彼の言っていることが正しくないとは思えない。
万が一、元の世界に帰っても、帰りを待ってくれる家族や友達はいない。
結局生き残りの人間として、吸血鬼から追われるだけだ。
雅という吸血鬼の王の力を使い、参加者を殺して、あの日に帰る方が理にかなっているんじゃないか。
「嫌?言っていることが分からないな。」
「………!!」
「………!!」
それを言うと紫の怪物は、猿特有の皴だらけの顔に、さらに皴を寄せた。
吸血鬼の、冷え切った体にさらに寒気が走る。
吸血鬼の、冷え切った体にさらに寒気が走る。
「お前はかなり強い肉体を得たようだが。戦いに関しては素人だろう?
殺し合いに乗るにしろ身を守るにしろ、仲間は必要だと思うがな。」
殺し合いに乗るにしろ身を守るにしろ、仲間は必要だと思うがな。」
ストレイボウは蝙蝠の翼と尻尾を見せ、風のように去って行こうとする。
決して隙を見せたということではない。
お前のような優柔不断な相手など怖くないし、その気になれば簡単に殺せる。
そんなことを感じるサインだった。
決して隙を見せたということではない。
お前のような優柔不断な相手など怖くないし、その気になれば簡単に殺せる。
そんなことを感じるサインだった。
「ま、待ってくれ!!」
その言葉は、夜の風に消えた。
待ってくれたとしても、その後どうするか分からない。
親身になって話を聞いてくれた男を止めるか、それともその手を握り、心までも吸血鬼となるか。
待ってくれたとしても、その後どうするか分からない。
親身になって話を聞いてくれた男を止めるか、それともその手を握り、心までも吸血鬼となるか。
吸血鬼特有の人間を凌駕する筋力を使おうともせず、気の弱い男はただそこに立ち尽くしていた。
【良太@流血鬼】
[身体]:雅@彼岸島シリーズ
[状態]:健康 焦燥
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この場所からの脱出。しかし帰っても……。
1:あの日に帰るために、参加者を殺すべきなのか?
2:ストレイボウにまた会ったら、協力すべきか、止めるべきか。
3:身体は吸血鬼になっても、心まで吸血鬼になりたくない。
[備考]
※参戦時期は親友が吸血鬼の警官に撃たれた所を目撃した直後
※『良太』という名前はアニメ版からの名前です。
[身体]:雅@彼岸島シリーズ
[状態]:健康 焦燥
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この場所からの脱出。しかし帰っても……。
1:あの日に帰るために、参加者を殺すべきなのか?
2:ストレイボウにまた会ったら、協力すべきか、止めるべきか。
3:身体は吸血鬼になっても、心まで吸血鬼になりたくない。
[備考]
※参戦時期は親友が吸血鬼の警官に撃たれた所を目撃した直後
※『良太』という名前はアニメ版からの名前です。
(つまらねえ奴だったな……)
ストレイボウは嘘など言っていない。
実際に自分を親友と言う男、オルステッドに奪われてきたのは事実だ。
恋した女性を、勝者の名声を、人々の歓声を。
実際に自分を親友と言う男、オルステッドに奪われてきたのは事実だ。
恋した女性を、勝者の名声を、人々の歓声を。
だからこそ、魔王山で一人だけ地下への入り口を見つけた時、勇者を嵌めようと考えていた。
結果は、その途中で殺し合いに巻き込まれてしまったが、それはそれで問題はない。
優勝すればアリシアを、オルステッドでさえ手に入れられない程の名声も、手に入るはずだから。
結果は、その途中で殺し合いに巻き込まれてしまったが、それはそれで問題はない。
優勝すればアリシアを、オルステッドでさえ手に入れられない程の名声も、手に入るはずだから。
参加者を殺すついでに、もう一つやることがある。
むしろ、積極的に殺すつもりは無い以上、そちらの方が肝心だ。
ほんの少し、最低限の力で人を動かし、誤った道へ進ませる。
彼の肉体になった怪物、バズズと同じように。
むしろ、積極的に殺すつもりは無い以上、そちらの方が肝心だ。
ほんの少し、最低限の力で人を動かし、誤った道へ進ませる。
彼の肉体になった怪物、バズズと同じように。
【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[身体]:バズズ@DQM+
[状態]:健康
[装備]:炎の爪@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、アリシアをその手にする。
1:参加者の背中を押し、殺し合いに乗せる。
2:バズズの力をもう少し知っておきたい
3:あの怪物(良太)はどうなるか気になるな。
[備考]
※参戦時期は魔王城でオルステッドと別れてから、再会する前です。
※良太の国は、ほとんどの人間が怪物になったことを知りました。
[身体]:バズズ@DQM+
[状態]:健康
[装備]:炎の爪@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、アリシアをその手にする。
1:参加者の背中を押し、殺し合いに乗せる。
2:バズズの力をもう少し知っておきたい
3:あの怪物(良太)はどうなるか気になるな。
[備考]
※参戦時期は魔王城でオルステッドと別れてから、再会する前です。
※良太の国は、ほとんどの人間が怪物になったことを知りました。
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