真人は自らの下半身を魚に変えて、水中を流れるように泳いでいた。
目的地は定めていない。ただ、アビドス高校から離れることだけを考えて南下していた。
移動に伴い荷物になるザビーのバズーカは川岸に置いてきた。リュックがあればと悔やむ気持ちはあるが、背に腹は代えられない。
そうまでして逃げの一手を選んだのは、天敵の存在を重く見たからだ。
目的地は定めていない。ただ、アビドス高校から離れることだけを考えて南下していた。
移動に伴い荷物になるザビーのバズーカは川岸に置いてきた。リュックがあればと悔やむ気持ちはあるが、背に腹は代えられない。
そうまでして逃げの一手を選んだのは、天敵の存在を重く見たからだ。
――それじゃあ、次会ったら殺し合いかしらね?
――そうじゃない?俺は出来ればアンタと戦いたくないけどさ。
――そうじゃない?俺は出来ればアンタと戦いたくないけどさ。
柊真昼。その身に鬼を宿した少女と、別れ際に交わした言葉は本心だ。
真人を呪霊と看破した上で、軽口を叩く余裕を見せていたような強者と再会したくない。
別れてから後ろを振り返ったとき、真昼は行先を決めかねている様子だった。
つまり、近場をうろついているだけでは再会する可能性が大いにある。
真人を呪霊と看破した上で、軽口を叩く余裕を見せていたような強者と再会したくない。
別れてから後ろを振り返ったとき、真昼は行先を決めかねている様子だった。
つまり、近場をうろついているだけでは再会する可能性が大いにある。
(あんなバケモノが近くにいたんじゃ、おちおち遊んでいられない)
真人は普段通り、呪いらしくあろうと試みている。
そして、それを疎外する存在からは距離を取るのが吉だと結論づけて、呪力を消費する身体の大幅な変形さえ行い、川を泳いでいるのだ。
そして、それを疎外する存在からは距離を取るのが吉だと結論づけて、呪力を消費する身体の大幅な変形さえ行い、川を泳いでいるのだ。
(ちょっかいをかけた奴等からも離れちゃうけど……まあいいや。前向きに考えよう)
これまで接触した中でもイザーク・ジュールやタギツヒメなど因縁の生まれた相手は複数いるが、彼等との再会は必須ではないと思考から取り除く。
それより、これから先の殺し合いで如何にして呪いとして振る舞うかを考える。
軽軽しく悪意をばらまく算段を立てる真人は、童子のように純粋だった。
それより、これから先の殺し合いで如何にして呪いとして振る舞うかを考える。
軽軽しく悪意をばらまく算段を立てる真人は、童子のように純粋だった。
(えっと……そう、沙耶香の知り合いに会えるかもしれない)
他の刀使に会えたなら、そのときは改造人間を使いその顔を絶望に染めるか、あるいは再度Lの聖文字を使い籠絡するか。いずれにせよ、沙耶香から得た情報は最大限に悪用していくつもりだ。
しばらく泳いでから陸に上がり、近くの小屋に入ると、テーブルに置かれたラジオから声が響いていた。
しばらく泳いでから陸に上がり、近くの小屋に入ると、テーブルに置かれたラジオから声が響いていた。
――では、これにて第二回定時放送を終了する。生き残ったプレイヤー諸君の健闘を祈る。
「あれ?もう放送の時間だったのか」
「あれ?もう放送の時間だったのか」
気の抜けた声で真人は呟くと、椅子に腰かけながらホットラインを開いて、口角を上げた。
真人が手にかけたのは黒鋼スパナとダークマイトの二名。それに対して死者は四十四名。
他の参加者の例に漏れず、真人もまた死者の多さに驚いていた。
真人が手にかけたのは黒鋼スパナとダークマイトの二名。それに対して死者は四十四名。
他の参加者の例に漏れず、真人もまた死者の多さに驚いていた。
「へえ。皆そんなに殺し合いたいんだ」
くつくつと笑う真人。
身体を休めている最中でなければ快哉を叫んでいた。それほど喜ばしいことだ。
この殺し合いで真人が接触してきた参加者で、殺し合いに積極的な者の割合は小さい。
先程エケラレンキスという運営側が真人を焚きつけたのは死者を増やすためであり、逆説的に殺し合いの進行は緩やかなペースだと仮定していた。
しかし、その仮定は死者の多さで否定された。
身体を休めている最中でなければ快哉を叫んでいた。それほど喜ばしいことだ。
この殺し合いで真人が接触してきた参加者で、殺し合いに積極的な者の割合は小さい。
先程エケラレンキスという運営側が真人を焚きつけたのは死者を増やすためであり、逆説的に殺し合いの進行は緩やかなペースだと仮定していた。
しかし、その仮定は死者の多さで否定された。
(あるいは漏瑚や花御レベルの参加者がいるのかな?
それなら話は変わってくる……いや、だとしても蹂躙するのは難しそうだ)
それなら話は変わってくる……いや、だとしても蹂躙するのは難しそうだ)
真人はいともたやすく人間を呪い殺せる特級呪霊たちを思い浮かべた。
特に漏瑚は、タイムラグなしで人体を発火させることができる危険な呪霊である。
そのレベルの参加者が参加者を蹂躙しているかもしれない、と考えるも即座に否定する。
特に漏瑚は、タイムラグなしで人体を発火させることができる危険な呪霊である。
そのレベルの参加者が参加者を蹂躙しているかもしれない、と考えるも即座に否定する。
(あの羂索はそんなつまらないゲームを望んでない)
これまで接触してきた参加者は、程度の差はあれ真人に立ち向かう力を有していた。
筋肉ゴリラや式神使いは元元の力だとしても、イザークの鎧と強化武装は明らかに外付けのそれ。
呪術師でもない人間が、アイテム次第で特級呪霊に太刀打ちできる。言葉にすると相当な脅威である。
あるいは主催者の羂索が強化アイテムを積極的に配布している事実を、一方的な蹂躙を望んでいない、と解釈することもできる。
筋肉ゴリラや式神使いは元元の力だとしても、イザークの鎧と強化武装は明らかに外付けのそれ。
呪術師でもない人間が、アイテム次第で特級呪霊に太刀打ちできる。言葉にすると相当な脅威である。
あるいは主催者の羂索が強化アイテムを積極的に配布している事実を、一方的な蹂躙を望んでいない、と解釈することもできる。
「となると、やっぱり人間の本性は悪である、ってコトになるのかな?」
真人の脳内は廻り廻ってそこに帰結する。
一方的な蹂躙が難しいと想定するなら、殺人を強制されている状況下で、それを断行する参加者は真人の想定より多かったことになる。
つまり、人間は自らの生存のための殺人を厭わないのだと証明されたようなものだ。
一方的な蹂躙が難しいと想定するなら、殺人を強制されている状況下で、それを断行する参加者は真人の想定より多かったことになる。
つまり、人間は自らの生存のための殺人を厭わないのだと証明されたようなものだ。
「これは俺も気合いを入れないと」
水に濡れた髪をかき上げながら真人はそう言った。
およそ気の向くまま理屈をこねくり回したが、正誤にさして意味はない。
重要なのは一点。四十四人の死者を生み出したこの会場は、いま人間たちの絶望と怨嗟に満ちている。
真人は肌でそう感じ取ると、首をぐるりと回して、軽薄な笑みを浮かべた。
およそ気の向くまま理屈をこねくり回したが、正誤にさして意味はない。
重要なのは一点。四十四人の死者を生み出したこの会場は、いま人間たちの絶望と怨嗟に満ちている。
真人は肌でそう感じ取ると、首をぐるりと回して、軽薄な笑みを浮かべた。
「これまで以上に狡猾に行かせてもらうよ」
〇
・・
それを目撃したのは偶然だった。
ホットラインの地図と現在地を照らし合わせて目的地を定め、小屋に配置されていた回復のエナジーアイテムを使用して、いよいよ外に出たとき。
褐色の肌に長い白髪の人物を、小屋から北西の方角、数十メートル先に視認した。
いや、はたして人物と形容してよいものか。
それを目撃したのは偶然だった。
ホットラインの地図と現在地を照らし合わせて目的地を定め、小屋に配置されていた回復のエナジーアイテムを使用して、いよいよ外に出たとき。
褐色の肌に長い白髪の人物を、小屋から北西の方角、数十メートル先に視認した。
いや、はたして人物と形容してよいものか。
「なにアレ?」
・・
最初は奇異の目で見た。それがあまりに無機質に見えたから。
ただ決められた進路を移動しているだけの存在、という認識。
それを即座に改めることになったのは、またもや偶然だった。
・・
最初は奇異の目で見た。それがあまりに無機質に見えたから。
ただ決められた進路を移動しているだけの存在、という認識。
それを即座に改めることになったのは、またもや偶然だった。
「――ッ」
・・
たまたまこちらに視線を動かしたそれと、目が合ったとき。
慣用句の“肝が冷える”とはこのことなのだと、脈打つ魂で理解した。
思わず発した声がおよそ意味を成していなかったのは、舌根から震えているせいだった。
たまたまこちらに視線を動かしたそれと、目が合ったとき。
慣用句の“肝が冷える”とはこのことなのだと、脈打つ魂で理解した。
思わず発した声がおよそ意味を成していなかったのは、舌根から震えているせいだった。
(オイオイ)
・・・・・・・
外見は大した問題ではない――正しく言えば、そんなものは問題にならない。
ただ総身から放たれるオーラや波動と呼ぶべきものだけで、圧し潰されそうな錯覚を覚えた。
・・・・・・・
外見は大した問題ではない――正しく言えば、そんなものは問題にならない。
ただ総身から放たれるオーラや波動と呼ぶべきものだけで、圧し潰されそうな錯覚を覚えた。
「なに、アレ」
それでも口角をぐいと上げたのは、湧き上がる好奇心からだ。
人から生まれた呪霊でさえ――否、人から生まれた呪霊であればこそ。
そこに居るだけで人智を超越したものだと分かる存在に、どうしても興味をそそられる。
一体全体アレは何だ?あんなモノはこれまで一度も見たことがない。
人から生まれた呪霊でさえ――否、人から生まれた呪霊であればこそ。
そこに居るだけで人智を超越したものだと分かる存在に、どうしても興味をそそられる。
一体全体アレは何だ?あんなモノはこれまで一度も見たことがない。
「アハハッ!」
とめどない疑問に衝き動かされて、笑いながら駆け出した。
これまで見たことのない魂を撫でてみたい。調べてみたい。壊してみたい。
無邪気な欲望のまま、俊敏な動きで背後に回り、背中に触れて生得術式を起動した瞬間――己の腕が吹き飛んだ。
これまで見たことのない魂を撫でてみたい。調べてみたい。壊してみたい。
無邪気な欲望のまま、俊敏な動きで背後に回り、背中に触れて生得術式を起動した瞬間――己の腕が吹き飛んだ。
「は?」
〇
インド神話において、呪いはさして珍しいものではない。
なにしろ修行を積めば、神神をして逆らえない能力を会得できる世界観である。
神にかけられた呪いで有名なのは、インドラのエピソードだろう。かの神は聖仙の妻に手を出したことで恐るべき呪いを受けたとされる。
当然、呪いの脅威は誰もが認識するところであり、アルジュナ・オルタも例外ではない。
むしろ本人もクリシュナの呪いを付与することで他者を服従させていたくらいだ。
それでは、なぜ真人の無為転変を回避しなかったのか?
なにしろ修行を積めば、神神をして逆らえない能力を会得できる世界観である。
神にかけられた呪いで有名なのは、インドラのエピソードだろう。かの神は聖仙の妻に手を出したことで恐るべき呪いを受けたとされる。
当然、呪いの脅威は誰もが認識するところであり、アルジュナ・オルタも例外ではない。
むしろ本人もクリシュナの呪いを付与することで他者を服従させていたくらいだ。
それでは、なぜ真人の無為転変を回避しなかったのか?
「不出来、なり……」
答えは単純。回避するほどの脅威だと認めなかったからである。
魂を知覚できる真人からすれば、アルジュナのそれは一つに見えたのだろう。
しかし、アルジュナの魂はあらゆるインドの神性を取り込んで統合されたもの。
それに加えて、神性の権能を分け与えられるアルジュナは、自身の中にある神性を漏れなく管理できることになる。
これこそ魂の輪郭を把握している状態に該当するため、無為転変は通用しなかった。むしろ反発により腕が吹き飛んだというわけだ。
魂を知覚できる真人からすれば、アルジュナのそれは一つに見えたのだろう。
しかし、アルジュナの魂はあらゆるインドの神性を取り込んで統合されたもの。
それに加えて、神性の権能を分け与えられるアルジュナは、自身の中にある神性を漏れなく管理できることになる。
これこそ魂の輪郭を把握している状態に該当するため、無為転変は通用しなかった。むしろ反発により腕が吹き飛んだというわけだ。
「……」
アルジュナは当惑した様子の真人を一瞥すると、淡淡とした口調でこう告げる。
「不出来にとどまらず……矮小、劣悪……すなわち、不要」
死刑宣告に近い言葉を聞かされて、脱兎の如く逃げ出した真人。
アルジュナは真人の背中に迷いなく矢を射かけたが、身体を変形して回避される。
続けざまに放たれた光線は、逃走車の腕や足を掠めたものの射貫くことはなかった。
そして逃げられたことを認めると、アルジュナは再び動き始めた。
アルジュナは真人の背中に迷いなく矢を射かけたが、身体を変形して回避される。
続けざまに放たれた光線は、逃走車の腕や足を掠めたものの射貫くことはなかった。
そして逃げられたことを認めると、アルジュナは再び動き始めた。
この神の歩みは、呪い程度では止まらないらしい。
【エリアF-6/租界/9月2日午前11時30分】
【アルジュナ・オルタ@Fate/Grand Oreder】
状態:ダメージ(超々軽微)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1~3、ホットライン
思考
基本:一切の邪悪を断ち、世界を救う
01:全て些末……
02:兵を作る……それも手か……
参戦時期:創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ、19節でカルナと相対する前。
備考
※殺し合いが破綻しない程度に能力を制限されています。
【アルジュナ・オルタ@Fate/Grand Oreder】
状態:ダメージ(超々軽微)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1~3、ホットライン
思考
基本:一切の邪悪を断ち、世界を救う
01:全て些末……
02:兵を作る……それも手か……
参戦時期:創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ、19節でカルナと相対する前。
備考
※殺し合いが破綻しない程度に能力を制限されています。
【真人@呪術廻戦】
状態:五体満足、呪力消費(中)、昂揚感
服装:いつもの
装備:改造人間@呪術廻戦、Lの聖文字@BLEACH
改造人間(ダークマイト)@呪術廻戦(オリジナル)
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:いつも通りにする。呪いらしく、人間らしく狡猾に。
00:また逃げの一手だ。だけど……面白い!
01:もっともっと人らしく、呪いらしく狡猾に行こう。
02:イザーク・ジュールたちは次会った時に身も魂も殺してやる。
03:沙耶香の知り合いに会ったら、適当な改造人間を沙耶香ってことにしても面白いかも。
04:タギツヒメ、それは呪いの在り方じゃないでしょ。
05:ロロに関しては頭にとどめておく程度。
もしルルーシュと遊ぶ機会が有ったら、ってところかな?
06:相性最悪の柊真昼やアレ(アルジュナ)、運営側のエケラレンキスはどうする?
07:個性持ちの改造人間。どう使おうかな。
参戦時期:少なくとも渋谷事変よりも前
備考
※魂の輪郭を知覚していればダメージはより通りますが、
魂の輪郭を知覚してなくてもダメージは通るようになってます。
※改造人間が没収されてない代わりに支給品が1枠減ってます。
※沙耶香から『刀使の巫女』、ロロから聞かされてる限りの『コードギアス』に関する知識を得ました。
※レプリケミーも呪霊同様術式対象に出来るようです。
※リュックを失いました。
状態:五体満足、呪力消費(中)、昂揚感
服装:いつもの
装備:改造人間@呪術廻戦、Lの聖文字@BLEACH
改造人間(ダークマイト)@呪術廻戦(オリジナル)
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:いつも通りにする。呪いらしく、人間らしく狡猾に。
00:また逃げの一手だ。だけど……面白い!
01:もっともっと人らしく、呪いらしく狡猾に行こう。
02:イザーク・ジュールたちは次会った時に身も魂も殺してやる。
03:沙耶香の知り合いに会ったら、適当な改造人間を沙耶香ってことにしても面白いかも。
04:タギツヒメ、それは呪いの在り方じゃないでしょ。
05:ロロに関しては頭にとどめておく程度。
もしルルーシュと遊ぶ機会が有ったら、ってところかな?
06:相性最悪の柊真昼やアレ(アルジュナ)、運営側のエケラレンキスはどうする?
07:個性持ちの改造人間。どう使おうかな。
参戦時期:少なくとも渋谷事変よりも前
備考
※魂の輪郭を知覚していればダメージはより通りますが、
魂の輪郭を知覚してなくてもダメージは通るようになってます。
※改造人間が没収されてない代わりに支給品が1枠減ってます。
※沙耶香から『刀使の巫女』、ロロから聞かされてる限りの『コードギアス』に関する知識を得ました。
※レプリケミーも呪霊同様術式対象に出来るようです。
※リュックを失いました。
【共通備考】
※ザビーのバズーカ@戦国BASARAはD-10川岸に放置されています。
※ザビーのバズーカ@戦国BASARAはD-10川岸に放置されています。
116:確かめたい答え | 投下順 | 118:ミカ、その心のままに |
107:キリト爆弾 ~サチにみせるな~ | 時系列順 | 093:昨日へは決して進めないから |
058:ファントムパレード(後編) | アルジュナ・オルタ | |
071:空と虚④ ナラティブ | 真人 |