爆発
更新日:2022/09/11 Sun 01:49:54
ガシャンと音を立てると、そこにいた子供達は一斉にこちらを見た。
「アンコ……」
「アンコさん……」
声を発したのは、ろくばんとシトロンだ。よく知っている子供達だ。
「おい、大丈夫か?」
赤いキャンディの子供が、気安く声をかけ、こちらに向かって来た。
「待て!アイベリー!近寄るな!」
そうアイベリーに忠告したのは、のじゃロリ猫だ。こいつにも、言いたい事が沢山あった。
「何でだよ!アンコが……」
頭の中で何かがキレる音がした。
「違う……」
ずっとアンコしか見ない連中に腹が立ち、そう切り出す。
「アタシは……アタシは……」
アンコの形をしたそれは、大きな声で宣言する。
「アタシはアンコであってアンコじゃない……"アナザーアンコ"だ!」
のじゃロリ猫の瞳がキラリと光る。
アナザーアンコは、今まで溜めていた鬱憤を全て言葉に乗せる事にした。
「ああ~!イラつく!イラつくぜ!」
目に入った女を罵倒する。
「おい!マリネッタ!てめぇいつもいつもダル絡みしやがって!うぜぇんだよ!死に晒せ!」
アンコが到底吐かないような言葉に、一同が困惑してる中、アナザーアンコは更に言葉をまくし立て続けた。
「メローナ!てめぇ猫の事買いかぶり過ぎなんだよ!いつもヘラヘラ笑いやがって!本当はバカにしてんだろ?!ァア"?腹黒女がヨォ!」
「フロートォ!いつもいつも上からガミガミ言いやがって!エラソーなんだよ!苛つかせやがって!」
「アイベリー!騒ぎすぎなんだよ!!耳障りなんだよ!テメェの笑い方!」
「シトロン!!!!いつも横でおどおどしてんじゃねぇ!目障りだ!アタシの視界に入ってくんじゃねぇ!」
「マーマレード!てめぇの言い方はいちいちいちいち癪に触るんじゃッッッ!!!!」
「プラム!てめぇは騒ぎすぎなんだよパート2!」
怒涛のラッシュに、プラムはビックリしながら言った。
「ちょ、しょ、省略された?!」
プラムの足元にいたマロロンが膨れ上がり、マッチョ人間形態になった。アナザーアンコに食ってかかろうとする。
「てめ…」
「てめぇは単純に気持ち悪いんだよ!」
「グヌヌワン…」
キレた言葉に落ち込んだマロロンには目もくれず、次の人物を睨んだ。
「ピオーネ!お前はお姫様みてぇに守られて肝心な所が見えてねぇぇよなぁぁぁぁぁぁ!」
アナザーアンコの口角が上がる。
「それとも見ないふりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
「ジュジィ!貴様のイタズラでどんだけ困ったと思ってんだああああああああああ!!!!!」
「淡雪!スヤスヤ寝てんじゃねぇぞゴラァ!キビキビ働けや!!!!」
「くゆり!てめぇ、厨房が糸だらけになって困ってるんじゃボケェ!喫茶店にG連れ込んでンじゃねぇよ!」
「ろくばんてめぇ!ぐうたらサボってる先輩の為に酒作ってんじゃねぇ!」
「ピネ!いつもいつも隙あらば口説いてくんじゃねぇ!気持ちわりぃんだよ!」
「フルーチェ!いつも皿割りやがって!馬鹿は顔だけにしときやがれやぁ!」
ここまでノンストップで叫び続け、そして勢いよく振り返った。のじゃロリ猫と目が合う。アナザーはそれまでにない感情を込めて叫ぶ。
「のじゃロリ猫先輩よぉ~!てめぇはつまみ食いするは~勤務中にサボって酒飲んだり寝たり、店員と客にセクハラしたりよぉぉぉぉぉぉぉぉ!屑がッッ!!!」
「暴れて店破壊してしまいにゃあ~やりたくない仕事から逃げる糞妖怪が!興味の無い事には関心の無いな、お前な?」
「自由すぎるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!お前よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
誰もがお前みてぇに自由に出来る訳じゃ無ぇぇぇンだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!お前よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ほぼ八つ当たりの拳が、のじゃロリ猫の側にあった机に辺り、粉砕される。
「っっっ!」
のじゃロリ猫の肌をビリビリとした感覚が包んだ。
「のじゃちゃん!」
皆がアナザーアンコの事を、怯えた、敵意を込めた目で見ているのが分かった。
アナザーアンコの中でまた一つ、何かがキレる音がした。声にならない声が喉を通して出ていく。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
のじゃロリ猫に対し牙を剥き、全体重をかけて殴る。のじゃロリ猫は攻撃を受け止めはしたが、圧力で足が床下へと沈んだ。その沈む力を反動とし、拳を押し返し、アナザーアンコがバランスを崩した隙に跳躍し、距離を取った。アナザーアンコが体制を立て直すのと、のじゃロリ猫が地面に着地したのは同時の事だった。
「やれやれ……それが本性と言う訳か、ふむ。"はじめまして"と言うべきかの?アンコ」
のじゃロリ猫は鋭い牙が生えた口を嬉しそうに歪めた。
「いつものおどおどしとるお前も好きじゃが、今のお前も悪くないと思うぞ。相手してやる。来いよ!」
「グルワァァァァァァ!!!!!」
アナザーアンコは翼を高速で動かし、地上からのじゃロリ猫をかっさらうと、空中で激闘を繰り広げ始めた。殴り、蹴り、引っ掻き、噛み千切り、次に地上に着地した時には、二人とも血と傷だらけだった。
「殺してやる!猫ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
その頃、二人の激闘を、なす術なく見届ける事しか出来ない子供達が、テーブルや椅子でバリケードを作っていた。
「あ、アンコ……あいつ……」
椅子の影から、暴れるアナザーアンコを見上げるアイベリー。
「ど、どうしちゃったの、あの子?一体何があったのよ?!」
取り乱す姉、フロートを落ち着かせるように、ピオーネが口を挟んだ。
「多分……"アナザー"と……呼ばれる現象……」
「アナザー?」
ピンと来ていないプラムに、ジュジィは考えを聞かせた。
「聞いたことがあるよ……その起源は全くの謎かつ不明瞭だけど、どこからかやって来る"第二の自分"」
ああ、もしかしてと、マリネッタも加わった。
「この前読んだ本にも載っていたものかもしれないわ。
"アナザー"
その人に良く似た存在。本人の気持ちの具現化や、クローン、全くの別人、色々な生い立ちのある、一種の妖怪のような闇のような何か……」
「……」
ろくばんは何か思うところがあるらしく、黙って聞いていた。
「…………なあ、淡雪」
「どうしたの?アイベリーちゃん?」
そんな中、アイベリーが淡雪になにやら作戦を持ちかけていた。
「あたいが合図したら………」
アイベリーが淡雪の耳元でなにやら話し、暫く立ってから淡雪は決意を込めて返事を返した。
「………分かった」
アナザーアンコとのじゃロリ猫はまた激闘を繰り広げていた。牙を剥き、爪を突き立て、食い千切り、引き裂く。
「死ねぇ!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
アナザーアンコの重い拳が、のじゃロリ猫の腹にぶちかまされた。
「っく!お主、割りと強いのォ!」
渾身の一撃を急所にぶち当てても、なお不敵にニヤリと笑っているのじゃロリ猫にイラっとしつつ、アナザーアンコも口角をあげた。
「お前が気に入らないからってのもあると思うよ先輩ィィィ?いつもいつも好き勝手しやがってぇぇ!今度はアタシが好き勝手してやるのさぁぁぁぁ!」
のじゃロリ猫はアナザーアンコから離れ、口内から染み出した血を吐き捨てた。
「フッ!面白いのォ!……ところでお主、人を食った事はあるかの?」
「あん?」
「初めて見た時からお主の身体に血の匂いが漂っておっての、奇妙に思っとんだじゃよ。相当の量を食ったろ?人、いや妖の者もか?この残り香は……魚人に獣人……小人族もか?子供じゃな?友達でも食ったんか?」
アナザーアンコは四枚の翼を羽ばたかせ、滑るようにのじゃロリ猫に接近すると、また殴り付けた。しかし、今度の拳は軽く、殆んど力が入っていない。続けざまに放った蹴りも、簡単にブロックされてしまった。
「あぁ」
アナザーアンコは小さく呟くと、今度は大きな声で怒鳴った。
「喰ったよ!あぁ、喰ったさ!!喰ったとも!!!友達を!!!!でもよぉ~…旨かったんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
飢えた獣は声にならない叫び声を上げる。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!!!!!」
アナザーアンコの片手から黒く長い影……プレデターが飛び出した。鋭利な牙を持つそれは、のじゃロリ猫のマフラーに噛みつき、勢いに任せて振り上げた。
身に付けていたのじゃロリ猫も大きく上に振り上げられる。
「っ!成る程のぉ…うぉお?!」
首を絞められ、苦しそうに何か呟くのじゃロリ猫。と、プレデターがマフラーを振り下ろし、のじゃロリ猫はそれと共に地面へと思い切り叩き付けられた。
アナザーアンコはのじゃロリ猫に猛攻を仕掛けようと脚に力を込める。一気に相手の頭を引っ付かんで捻り潰すのだ。
「アンコォ!」
それを邪魔したのは、あの赤い子供だった。
「ァア"?」
「てめぇ!!!落ち着きやがれ!!!」
アイベリーは髪を振り乱し、アナザーアンコに近づいた。
アナザーアンコは鼻で笑い、プレデターをけしかけようとしたが、アイベリーの髪が、手のように変化していた。
「必殺!!じゃじゃん拳!!!」
チョキで目潰しされかけ、避けた所をグーで殴られ、パーで床に張り倒された。
「ぐっ!」
アナザーアンコが立ち上がろうとした時、一人の子供が側に駆け寄ってきた。
「いまだぜ淡雪!」
「《《女児符号!夢枕!》》」
アナザーアンコの瞳が、クラクラと揺れた。猛烈な眠気が襲う。
「な、んだと……」
フラフラになりながら、立ち上がろうとし、力尽き、地面に倒れた。
「くそ……まだ……起きていた……」
アナザーアンコの意識が途絶える。
辺りは静寂に包まれた。
「アンコ……」
「アンコさん……」
声を発したのは、ろくばんとシトロンだ。よく知っている子供達だ。
「おい、大丈夫か?」
赤いキャンディの子供が、気安く声をかけ、こちらに向かって来た。
「待て!アイベリー!近寄るな!」
そうアイベリーに忠告したのは、のじゃロリ猫だ。こいつにも、言いたい事が沢山あった。
「何でだよ!アンコが……」
頭の中で何かがキレる音がした。
「違う……」
ずっとアンコしか見ない連中に腹が立ち、そう切り出す。
「アタシは……アタシは……」
アンコの形をしたそれは、大きな声で宣言する。
「アタシはアンコであってアンコじゃない……"アナザーアンコ"だ!」
のじゃロリ猫の瞳がキラリと光る。
アナザーアンコは、今まで溜めていた鬱憤を全て言葉に乗せる事にした。
「ああ~!イラつく!イラつくぜ!」
目に入った女を罵倒する。
「おい!マリネッタ!てめぇいつもいつもダル絡みしやがって!うぜぇんだよ!死に晒せ!」
アンコが到底吐かないような言葉に、一同が困惑してる中、アナザーアンコは更に言葉をまくし立て続けた。
「メローナ!てめぇ猫の事買いかぶり過ぎなんだよ!いつもヘラヘラ笑いやがって!本当はバカにしてんだろ?!ァア"?腹黒女がヨォ!」
「フロートォ!いつもいつも上からガミガミ言いやがって!エラソーなんだよ!苛つかせやがって!」
「アイベリー!騒ぎすぎなんだよ!!耳障りなんだよ!テメェの笑い方!」
「シトロン!!!!いつも横でおどおどしてんじゃねぇ!目障りだ!アタシの視界に入ってくんじゃねぇ!」
「マーマレード!てめぇの言い方はいちいちいちいち癪に触るんじゃッッッ!!!!」
「プラム!てめぇは騒ぎすぎなんだよパート2!」
怒涛のラッシュに、プラムはビックリしながら言った。
「ちょ、しょ、省略された?!」
プラムの足元にいたマロロンが膨れ上がり、マッチョ人間形態になった。アナザーアンコに食ってかかろうとする。
「てめ…」
「てめぇは単純に気持ち悪いんだよ!」
「グヌヌワン…」
キレた言葉に落ち込んだマロロンには目もくれず、次の人物を睨んだ。
「ピオーネ!お前はお姫様みてぇに守られて肝心な所が見えてねぇぇよなぁぁぁぁぁぁ!」
アナザーアンコの口角が上がる。
「それとも見ないふりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
「ジュジィ!貴様のイタズラでどんだけ困ったと思ってんだああああああああああ!!!!!」
「淡雪!スヤスヤ寝てんじゃねぇぞゴラァ!キビキビ働けや!!!!」
「くゆり!てめぇ、厨房が糸だらけになって困ってるんじゃボケェ!喫茶店にG連れ込んでンじゃねぇよ!」
「ろくばんてめぇ!ぐうたらサボってる先輩の為に酒作ってんじゃねぇ!」
「ピネ!いつもいつも隙あらば口説いてくんじゃねぇ!気持ちわりぃんだよ!」
「フルーチェ!いつも皿割りやがって!馬鹿は顔だけにしときやがれやぁ!」
ここまでノンストップで叫び続け、そして勢いよく振り返った。のじゃロリ猫と目が合う。アナザーはそれまでにない感情を込めて叫ぶ。
「のじゃロリ猫先輩よぉ~!てめぇはつまみ食いするは~勤務中にサボって酒飲んだり寝たり、店員と客にセクハラしたりよぉぉぉぉぉぉぉぉ!屑がッッ!!!」
「暴れて店破壊してしまいにゃあ~やりたくない仕事から逃げる糞妖怪が!興味の無い事には関心の無いな、お前な?」
「自由すぎるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!お前よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
誰もがお前みてぇに自由に出来る訳じゃ無ぇぇぇンだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!お前よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ほぼ八つ当たりの拳が、のじゃロリ猫の側にあった机に辺り、粉砕される。
「っっっ!」
のじゃロリ猫の肌をビリビリとした感覚が包んだ。
「のじゃちゃん!」
皆がアナザーアンコの事を、怯えた、敵意を込めた目で見ているのが分かった。
アナザーアンコの中でまた一つ、何かがキレる音がした。声にならない声が喉を通して出ていく。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
のじゃロリ猫に対し牙を剥き、全体重をかけて殴る。のじゃロリ猫は攻撃を受け止めはしたが、圧力で足が床下へと沈んだ。その沈む力を反動とし、拳を押し返し、アナザーアンコがバランスを崩した隙に跳躍し、距離を取った。アナザーアンコが体制を立て直すのと、のじゃロリ猫が地面に着地したのは同時の事だった。
「やれやれ……それが本性と言う訳か、ふむ。"はじめまして"と言うべきかの?アンコ」
のじゃロリ猫は鋭い牙が生えた口を嬉しそうに歪めた。
「いつものおどおどしとるお前も好きじゃが、今のお前も悪くないと思うぞ。相手してやる。来いよ!」
「グルワァァァァァァ!!!!!」
アナザーアンコは翼を高速で動かし、地上からのじゃロリ猫をかっさらうと、空中で激闘を繰り広げ始めた。殴り、蹴り、引っ掻き、噛み千切り、次に地上に着地した時には、二人とも血と傷だらけだった。
「殺してやる!猫ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
その頃、二人の激闘を、なす術なく見届ける事しか出来ない子供達が、テーブルや椅子でバリケードを作っていた。
「あ、アンコ……あいつ……」
椅子の影から、暴れるアナザーアンコを見上げるアイベリー。
「ど、どうしちゃったの、あの子?一体何があったのよ?!」
取り乱す姉、フロートを落ち着かせるように、ピオーネが口を挟んだ。
「多分……"アナザー"と……呼ばれる現象……」
「アナザー?」
ピンと来ていないプラムに、ジュジィは考えを聞かせた。
「聞いたことがあるよ……その起源は全くの謎かつ不明瞭だけど、どこからかやって来る"第二の自分"」
ああ、もしかしてと、マリネッタも加わった。
「この前読んだ本にも載っていたものかもしれないわ。
"アナザー"
その人に良く似た存在。本人の気持ちの具現化や、クローン、全くの別人、色々な生い立ちのある、一種の妖怪のような闇のような何か……」
「……」
ろくばんは何か思うところがあるらしく、黙って聞いていた。
「…………なあ、淡雪」
「どうしたの?アイベリーちゃん?」
そんな中、アイベリーが淡雪になにやら作戦を持ちかけていた。
「あたいが合図したら………」
アイベリーが淡雪の耳元でなにやら話し、暫く立ってから淡雪は決意を込めて返事を返した。
「………分かった」
アナザーアンコとのじゃロリ猫はまた激闘を繰り広げていた。牙を剥き、爪を突き立て、食い千切り、引き裂く。
「死ねぇ!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
アナザーアンコの重い拳が、のじゃロリ猫の腹にぶちかまされた。
「っく!お主、割りと強いのォ!」
渾身の一撃を急所にぶち当てても、なお不敵にニヤリと笑っているのじゃロリ猫にイラっとしつつ、アナザーアンコも口角をあげた。
「お前が気に入らないからってのもあると思うよ先輩ィィィ?いつもいつも好き勝手しやがってぇぇ!今度はアタシが好き勝手してやるのさぁぁぁぁ!」
のじゃロリ猫はアナザーアンコから離れ、口内から染み出した血を吐き捨てた。
「フッ!面白いのォ!……ところでお主、人を食った事はあるかの?」
「あん?」
「初めて見た時からお主の身体に血の匂いが漂っておっての、奇妙に思っとんだじゃよ。相当の量を食ったろ?人、いや妖の者もか?この残り香は……魚人に獣人……小人族もか?子供じゃな?友達でも食ったんか?」
アナザーアンコは四枚の翼を羽ばたかせ、滑るようにのじゃロリ猫に接近すると、また殴り付けた。しかし、今度の拳は軽く、殆んど力が入っていない。続けざまに放った蹴りも、簡単にブロックされてしまった。
「あぁ」
アナザーアンコは小さく呟くと、今度は大きな声で怒鳴った。
「喰ったよ!あぁ、喰ったさ!!喰ったとも!!!友達を!!!!でもよぉ~…旨かったんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
飢えた獣は声にならない叫び声を上げる。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!!!!!」
アナザーアンコの片手から黒く長い影……プレデターが飛び出した。鋭利な牙を持つそれは、のじゃロリ猫のマフラーに噛みつき、勢いに任せて振り上げた。
身に付けていたのじゃロリ猫も大きく上に振り上げられる。
「っ!成る程のぉ…うぉお?!」
首を絞められ、苦しそうに何か呟くのじゃロリ猫。と、プレデターがマフラーを振り下ろし、のじゃロリ猫はそれと共に地面へと思い切り叩き付けられた。
アナザーアンコはのじゃロリ猫に猛攻を仕掛けようと脚に力を込める。一気に相手の頭を引っ付かんで捻り潰すのだ。
「アンコォ!」
それを邪魔したのは、あの赤い子供だった。
「ァア"?」
「てめぇ!!!落ち着きやがれ!!!」
アイベリーは髪を振り乱し、アナザーアンコに近づいた。
アナザーアンコは鼻で笑い、プレデターをけしかけようとしたが、アイベリーの髪が、手のように変化していた。
「必殺!!じゃじゃん拳!!!」
チョキで目潰しされかけ、避けた所をグーで殴られ、パーで床に張り倒された。
「ぐっ!」
アナザーアンコが立ち上がろうとした時、一人の子供が側に駆け寄ってきた。
「いまだぜ淡雪!」
「《《女児符号!夢枕!》》」
アナザーアンコの瞳が、クラクラと揺れた。猛烈な眠気が襲う。
「な、んだと……」
フラフラになりながら、立ち上がろうとし、力尽き、地面に倒れた。
「くそ……まだ……起きていた……」
アナザーアンコの意識が途絶える。
辺りは静寂に包まれた。