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更新日:2022/11/01 Tue 21:32:28
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セブンスカラー
セブンスカラー
山々が立ち並ぶ寂れた採掘場。その一角で一人の少女がいた。
見るかに震えて怯えている様子の彼女の目の前に一人の少女が現れる。
「あら?黒衣さんちゃんと来てくれたんだ。」
「………ひっ。」
恐竜の頭蓋骨のような意匠の鎧と黒のドレスを纏った天願を見た黒衣が小さく悲鳴をあげる。
その様子をクスクスと笑いながら天願は彼女へと近づく。
「なんで怯えるの?いつもあなたが私にやっていたじゃない。」
そう言って笑う彼女に黒衣は怯え切った表情で地に頭をつけて許しを乞う。
「ご、ごめんっ!ごめんなさいっ!謝るから…」
泣きながら謝る彼女を見た天願の顔から笑顔が消える。彼女は無言で黒衣の髪を掴んで無理矢理顔を上げさせる。
突然の痛みで小さく悲鳴をあげる彼女に天願は顔を近寄せる。
「……謝るなら、最初からしないでよ。どれだけ私が辛かったと思うの?どれだけ怖かったと思うの?」
「ほん、と。私が、悪かったから…ごめんなさい…っ。」
謝る彼女に天願はどんどん怒りを募らせる。いざ自分がされる立場に回ったら許しを乞うその姿が彼女の怒りのボルテージを上げ、嗜虐心が顔を覗かせる。
「…ふんっ。」
彼女は黒衣を放り投げる。離されて地面に尻餅をついた彼女が痛がりながら顔をあげると、天願はスッと“タイラントアックス”を取り出す。
「……私が受けた痛み、その万分の一でも思い知れ。」
「あ、あぁ……」
天願は絶望に慄く彼女を見ながら斧を振り上げる。そんな彼女を見て、過去の自分と重なり一瞬躊躇するが。
《迷うな。この女がどれ程お前にひどい事をしてきたんだ?やり返してやれ。そんな事では欲しいものは何一つ手に入らない。》
カノープスが彼女に囁くように言う。その言葉を聞いた彼女はスッと目を細めると。
「うん、そうだね。」
斧を振るう腕に力を込める。斧が振り下ろされ、黒衣が思わず目を瞑ったその時。
「──危ないッ!!」
そう叫びながら一人の少女が横から黒衣にタックルをかますように抱えながら横っ飛びに跳ぶ。
目標を失った斧が地面を砕く中、少女は黒衣と共に地面を転がるが、すぐに起き上がる。
「な、んで……」
その少女の顔を見た黒衣が驚きのあまり声を漏らす。天願も突然の乱入者の顔に驚く。
そう、そこにいたのは……黒衣から天願を助けた紫水龍香だったからだ。
「黒衣さん!怪我はない?立てる?」
「……紫水、龍香?なんで…私を……」
助けられた事に黒衣が驚く中、龍香は彼女に力強く笑顔で応える。
「誰かが傷つくのを、黙って見てられないから。」
「……!」
「天願さん。確かに黒衣さんのいじめはよくないよ。けど、だからってこれはやり過ぎだと思う。」
龍香は天願の方を振り返ってそう言い放つ。その言葉に彼女はガンっと頭を殴られたかのような衝撃を受ける。
「は、えっ?何を、言って……?」
自分に向けて強い意志を持った眼差しを向ける龍香に天願は困惑を隠しきれない。
だってあの時自分を救ってくれた少女が今、自分を虐めていた少女を助けている。
彼女には理解し難い光景だった。
「龍香さん?何で、ソイツを庇うの…?ソイツは、人をいじめて喜ぶ最低な人間なのに!」
「……今の自分を見て、そう言えるの?天願さん。」
龍香の問いに天願は詰まる。龍香はそんな彼女を見ながら続ける。
「……黒衣さんに対して、あなたがやっていることは何?」
「あ、あぁ……!?」
龍香にそう言われ天願は慄き、顔を青ざめさせる。自分がやっていることは、もしかして──
彼女が混乱して取り乱した次の瞬間、龍香達の目の前の地面に銃弾が炸裂し、地面が弾ける。
「きゃっ」
龍香が思わず後ずさると同時に彼女達の前に両目を真っ赤に染め、虚な視線を向ける雪花、飛行ユニットを背負った月乃助、魚の怪物と化した龍斗と背中から鋭い爪を持つ四本の脚を向ける大女郎蜘蛛達が降り立つ。
「あっ……」
《ええい。惑わされるなッ!こんなものガキの戯言だ!》
彼女の迷いを払うようにカノープスが叫ぶ。それと同時に二人が動く。
「バカめっ!ノコノコ私の前に…!」
そう女郎蜘蛛が言いかけた次の瞬間文字通り光速で龍香と二人の間に割って入った龍姫が雪花を蹴り飛ばし、大女郎蜘蛛に光刃がついた杖を振るう。
大女郎蜘蛛はそれをすぐさま四本の脚で受け止める。
「ちっ、害虫風情が。さっさと切られておきなさいよ。」
「まさかそっちから来てくれるとはなぁっ!嬉しいザマスよ!」
変幻自在に脚を振るう大女郎蜘蛛と龍姫が打ち合う中、カノープスが苦言を呈する。
《チッ、なんだって他の奴らは来ない?》
すると龍姫が笑いながら挑発するように言う。
「あらあら。皆さん忙しいみたいね。」
一方その頃カノープスに呼ばれ、彼の元へ行こうとした面々に攻撃が襲い掛かる。
「チィッ!」
「守りなさい眷属!」
「!」
シャドウマン、アリックス、姦姦蛇螺。それぞれへの攻撃が防御、回避される中彼女達の前に複数人が立ちはだかる。
「さぁー!やってやろーやないのぉ!」
「再戦と行こうか。」
シャドウマンと黒鳥の前にシェーンとむらサメが。
「君達は必ずボク達が止める!」
「…微力だけど、私もやります!」
アリックスと龍賢の前にデヴァときゅーばんが。
「三つ目の子は私が抑えるわ。」
「ほう。ならワシは蛇担当というわけじゃな。」
姦姦蛇螺、赤羽の前にエフィとのじゃロリ猫が立ちはだかる。
見るかに震えて怯えている様子の彼女の目の前に一人の少女が現れる。
「あら?黒衣さんちゃんと来てくれたんだ。」
「………ひっ。」
恐竜の頭蓋骨のような意匠の鎧と黒のドレスを纏った天願を見た黒衣が小さく悲鳴をあげる。
その様子をクスクスと笑いながら天願は彼女へと近づく。
「なんで怯えるの?いつもあなたが私にやっていたじゃない。」
そう言って笑う彼女に黒衣は怯え切った表情で地に頭をつけて許しを乞う。
「ご、ごめんっ!ごめんなさいっ!謝るから…」
泣きながら謝る彼女を見た天願の顔から笑顔が消える。彼女は無言で黒衣の髪を掴んで無理矢理顔を上げさせる。
突然の痛みで小さく悲鳴をあげる彼女に天願は顔を近寄せる。
「……謝るなら、最初からしないでよ。どれだけ私が辛かったと思うの?どれだけ怖かったと思うの?」
「ほん、と。私が、悪かったから…ごめんなさい…っ。」
謝る彼女に天願はどんどん怒りを募らせる。いざ自分がされる立場に回ったら許しを乞うその姿が彼女の怒りのボルテージを上げ、嗜虐心が顔を覗かせる。
「…ふんっ。」
彼女は黒衣を放り投げる。離されて地面に尻餅をついた彼女が痛がりながら顔をあげると、天願はスッと“タイラントアックス”を取り出す。
「……私が受けた痛み、その万分の一でも思い知れ。」
「あ、あぁ……」
天願は絶望に慄く彼女を見ながら斧を振り上げる。そんな彼女を見て、過去の自分と重なり一瞬躊躇するが。
《迷うな。この女がどれ程お前にひどい事をしてきたんだ?やり返してやれ。そんな事では欲しいものは何一つ手に入らない。》
カノープスが彼女に囁くように言う。その言葉を聞いた彼女はスッと目を細めると。
「うん、そうだね。」
斧を振るう腕に力を込める。斧が振り下ろされ、黒衣が思わず目を瞑ったその時。
「──危ないッ!!」
そう叫びながら一人の少女が横から黒衣にタックルをかますように抱えながら横っ飛びに跳ぶ。
目標を失った斧が地面を砕く中、少女は黒衣と共に地面を転がるが、すぐに起き上がる。
「な、んで……」
その少女の顔を見た黒衣が驚きのあまり声を漏らす。天願も突然の乱入者の顔に驚く。
そう、そこにいたのは……黒衣から天願を助けた紫水龍香だったからだ。
「黒衣さん!怪我はない?立てる?」
「……紫水、龍香?なんで…私を……」
助けられた事に黒衣が驚く中、龍香は彼女に力強く笑顔で応える。
「誰かが傷つくのを、黙って見てられないから。」
「……!」
「天願さん。確かに黒衣さんのいじめはよくないよ。けど、だからってこれはやり過ぎだと思う。」
龍香は天願の方を振り返ってそう言い放つ。その言葉に彼女はガンっと頭を殴られたかのような衝撃を受ける。
「は、えっ?何を、言って……?」
自分に向けて強い意志を持った眼差しを向ける龍香に天願は困惑を隠しきれない。
だってあの時自分を救ってくれた少女が今、自分を虐めていた少女を助けている。
彼女には理解し難い光景だった。
「龍香さん?何で、ソイツを庇うの…?ソイツは、人をいじめて喜ぶ最低な人間なのに!」
「……今の自分を見て、そう言えるの?天願さん。」
龍香の問いに天願は詰まる。龍香はそんな彼女を見ながら続ける。
「……黒衣さんに対して、あなたがやっていることは何?」
「あ、あぁ……!?」
龍香にそう言われ天願は慄き、顔を青ざめさせる。自分がやっていることは、もしかして──
彼女が混乱して取り乱した次の瞬間、龍香達の目の前の地面に銃弾が炸裂し、地面が弾ける。
「きゃっ」
龍香が思わず後ずさると同時に彼女達の前に両目を真っ赤に染め、虚な視線を向ける雪花、飛行ユニットを背負った月乃助、魚の怪物と化した龍斗と背中から鋭い爪を持つ四本の脚を向ける大女郎蜘蛛達が降り立つ。
「あっ……」
《ええい。惑わされるなッ!こんなものガキの戯言だ!》
彼女の迷いを払うようにカノープスが叫ぶ。それと同時に二人が動く。
「バカめっ!ノコノコ私の前に…!」
そう女郎蜘蛛が言いかけた次の瞬間文字通り光速で龍香と二人の間に割って入った龍姫が雪花を蹴り飛ばし、大女郎蜘蛛に光刃がついた杖を振るう。
大女郎蜘蛛はそれをすぐさま四本の脚で受け止める。
「ちっ、害虫風情が。さっさと切られておきなさいよ。」
「まさかそっちから来てくれるとはなぁっ!嬉しいザマスよ!」
変幻自在に脚を振るう大女郎蜘蛛と龍姫が打ち合う中、カノープスが苦言を呈する。
《チッ、なんだって他の奴らは来ない?》
すると龍姫が笑いながら挑発するように言う。
「あらあら。皆さん忙しいみたいね。」
一方その頃カノープスに呼ばれ、彼の元へ行こうとした面々に攻撃が襲い掛かる。
「チィッ!」
「守りなさい眷属!」
「!」
シャドウマン、アリックス、姦姦蛇螺。それぞれへの攻撃が防御、回避される中彼女達の前に複数人が立ちはだかる。
「さぁー!やってやろーやないのぉ!」
「再戦と行こうか。」
シャドウマンと黒鳥の前にシェーンとむらサメが。
「君達は必ずボク達が止める!」
「…微力だけど、私もやります!」
アリックスと龍賢の前にデヴァときゅーばんが。
「三つ目の子は私が抑えるわ。」
「ほう。ならワシは蛇担当というわけじゃな。」
姦姦蛇螺、赤羽の前にエフィとのじゃロリ猫が立ちはだかる。
《……成る程、分断されたか。》
龍姫の言葉にカノープスは彼女の意図を察して舌打ちをする。
「そう言う事。ま、アンタらごとき私一人でも充分だけど、出来る楽はしておくに越した事はないってね。」
ニヤニヤと嗤う彼女にカノープスはピキリ、と青筋を浮かべる。
《はッ。……足手纏い二人を抱えて我ら三人に勝とうなど。いくぞ天願。》
「えっ、でも。龍香さんが……」
《彼女は操られているんだ。適当に殴って気絶させて奴を倒すのだ。そうすれば、元に戻る。お前を慕うハズだ。》
「……そう。そう、か。」
カノープスの言葉で天願は無理矢理納得したのか、斧を構えると龍香へと向かう。
「き、来た…!」
「黒衣さんは下がってて!私が相手よっ!」
《ほう?》
迫る天願の前に龍香は敢然と立ち向かう姿勢を見せる。
「んな、無茶よ!アンタ知らないでしょうけど、アイツ無茶苦茶強いのよ!?勝てっこないわ!」
そんな彼女に黒衣は忠告するが、龍香は振り返ると笑顔を見せる。
「確かに勝てないかもしれない。でも私は貴方を…皆を、そして」
龍香は再び天願に振り返り、叫ぶ。
「天願さんを助けるのを諦めないっ!」
《馬鹿がっ、いくら雑魚が喚こうが!何も変わらんっ!》
天願が斧を振るう。常人を遥かに超えた腕力で放たれた一撃。しかし龍香はその一撃を紙一重だが、かわしてみせた。
「なっ。」
《まぐれだっ!》
天願が今度は横薙ぎに斧を振るうが、龍香はまたしても身体を伏せてかわす。
「このっ」
天願がさらに蹴りを繰り出すが、龍香はまたしてもそれをかわし、拳を振るう。
「うあああっ!!」
ペチンッと音がして天願の頬に龍香の拳が当たるが、カノープスに守られた彼女に当然ダメージはない。
しかし変身してカノープスの力を得ているのにも関わらず、ただの“何の力もない少女”に攻撃をかわされた挙句一発貰ったという事実が彼女に衝撃を与える。
「なっ、…あっ?私、殴られた?」
「へぇ。」
茫然とする彼女を見て、龍姫が口角を上げる。しかし、カノープスは憤慨して。
《何をしているッ!?こんなガキ一人仕留めるのに!》
カノープスの激昂に天願は我に帰り、龍香へと攻撃を仕掛けるが、彼女はまたしてもその攻撃の尽くをかわしていく。
《な、ぜ?かわせる?奴は?一体何故かわせる─ッ!?》
攻撃を仕掛ける天願とそれをかわす龍香を見て、龍姫はふふっと嗤う。
「何が、おかしいザマス?」
「そりゃ、笑っちゃうわよ。アレだけの力の差があるのにただのガキ一人仕留められないんだから。」
龍姫の脳裏にこの決戦の前にかわした龍香との会話が過る。
「…じゃあ、誰が誰を抑えるか、だけど。龍香。アンタはあの緑髪のガキを抑えなさい。」
「……うんっ。」
「ちょいちょいちょいっ!!」
龍姫の提案にむらサメがツッコミを入れる。面倒臭そうに龍姫はむらサメの方に視線を向ける。
「何ようるさいわね。私の采配に文句ある訳?」
「大ありでしょ。変身した敵を前に、この子を一人で対峙させる気?」
エフィの忠告のような言葉に龍姫はハァとため息をつき。
「何も私も考えなしに当ててないわよ。そんなに言うなら説明してあげるわ。確かにアイツと龍香じゃ力の差は歴然。けど、アイツは成り立てで戦いがてんで素人。攻撃は直線的で読み易いわ。龍香じゃ勝てないでしょうが、足止めすることは出来る。」
「……でも、彼女に出来るのかい?直線的とは言え、攻撃をかわすことが?」
心配なのかデヴァが尋ねる。龍香が答えようとするが、それより龍姫が言う。
「かわせるわ。確かに今の龍香に力はない。けど、“前の世界”で培った経験がある。」
「経験…?」
「戦いの経験よ。そう簡単に抜けやしないわ。」
龍姫の言葉にカノープスは彼女の意図を察して舌打ちをする。
「そう言う事。ま、アンタらごとき私一人でも充分だけど、出来る楽はしておくに越した事はないってね。」
ニヤニヤと嗤う彼女にカノープスはピキリ、と青筋を浮かべる。
《はッ。……足手纏い二人を抱えて我ら三人に勝とうなど。いくぞ天願。》
「えっ、でも。龍香さんが……」
《彼女は操られているんだ。適当に殴って気絶させて奴を倒すのだ。そうすれば、元に戻る。お前を慕うハズだ。》
「……そう。そう、か。」
カノープスの言葉で天願は無理矢理納得したのか、斧を構えると龍香へと向かう。
「き、来た…!」
「黒衣さんは下がってて!私が相手よっ!」
《ほう?》
迫る天願の前に龍香は敢然と立ち向かう姿勢を見せる。
「んな、無茶よ!アンタ知らないでしょうけど、アイツ無茶苦茶強いのよ!?勝てっこないわ!」
そんな彼女に黒衣は忠告するが、龍香は振り返ると笑顔を見せる。
「確かに勝てないかもしれない。でも私は貴方を…皆を、そして」
龍香は再び天願に振り返り、叫ぶ。
「天願さんを助けるのを諦めないっ!」
《馬鹿がっ、いくら雑魚が喚こうが!何も変わらんっ!》
天願が斧を振るう。常人を遥かに超えた腕力で放たれた一撃。しかし龍香はその一撃を紙一重だが、かわしてみせた。
「なっ。」
《まぐれだっ!》
天願が今度は横薙ぎに斧を振るうが、龍香はまたしても身体を伏せてかわす。
「このっ」
天願がさらに蹴りを繰り出すが、龍香はまたしてもそれをかわし、拳を振るう。
「うあああっ!!」
ペチンッと音がして天願の頬に龍香の拳が当たるが、カノープスに守られた彼女に当然ダメージはない。
しかし変身してカノープスの力を得ているのにも関わらず、ただの“何の力もない少女”に攻撃をかわされた挙句一発貰ったという事実が彼女に衝撃を与える。
「なっ、…あっ?私、殴られた?」
「へぇ。」
茫然とする彼女を見て、龍姫が口角を上げる。しかし、カノープスは憤慨して。
《何をしているッ!?こんなガキ一人仕留めるのに!》
カノープスの激昂に天願は我に帰り、龍香へと攻撃を仕掛けるが、彼女はまたしてもその攻撃の尽くをかわしていく。
《な、ぜ?かわせる?奴は?一体何故かわせる─ッ!?》
攻撃を仕掛ける天願とそれをかわす龍香を見て、龍姫はふふっと嗤う。
「何が、おかしいザマス?」
「そりゃ、笑っちゃうわよ。アレだけの力の差があるのにただのガキ一人仕留められないんだから。」
龍姫の脳裏にこの決戦の前にかわした龍香との会話が過る。
「…じゃあ、誰が誰を抑えるか、だけど。龍香。アンタはあの緑髪のガキを抑えなさい。」
「……うんっ。」
「ちょいちょいちょいっ!!」
龍姫の提案にむらサメがツッコミを入れる。面倒臭そうに龍姫はむらサメの方に視線を向ける。
「何ようるさいわね。私の采配に文句ある訳?」
「大ありでしょ。変身した敵を前に、この子を一人で対峙させる気?」
エフィの忠告のような言葉に龍姫はハァとため息をつき。
「何も私も考えなしに当ててないわよ。そんなに言うなら説明してあげるわ。確かにアイツと龍香じゃ力の差は歴然。けど、アイツは成り立てで戦いがてんで素人。攻撃は直線的で読み易いわ。龍香じゃ勝てないでしょうが、足止めすることは出来る。」
「……でも、彼女に出来るのかい?直線的とは言え、攻撃をかわすことが?」
心配なのかデヴァが尋ねる。龍香が答えようとするが、それより龍姫が言う。
「かわせるわ。確かに今の龍香に力はない。けど、“前の世界”で培った経験がある。」
「経験…?」
「戦いの経験よ。そう簡単に抜けやしないわ。」
天願が斧を振るう。その軌道が龍香には予測出来る。果たして、その攻撃は龍香の予想通りの軌道で振るわれる。
龍香はその攻撃を避ける。
(見える…ッ!私にも、攻撃が避けられるッ!)
龍香はカノープスと共に様々な戦いを共にしてきた。それはカノープスの補助があったとは言えどれも激戦と呼べるものだった。
楽な戦いなんて一つもなかった。その戦いの経験が彼女を成長させていた。磨かれたセンスと動体視力。そして経験を総動員させた彼女は天願と互角にやりあえていた。
「な、んで!?当たらないのッ!?私は、強くなっているのに!」
《チィッ!だが、避けてばかりでは我等には勝てんぞ!》
カノープスはこちらの攻撃が当たらない事に苛立ちつつも龍香の方からも決定打はなく、冷静に体力勝負に持ち込もうとする。
しかしそう判断した次の瞬間天願目掛けて三つの光の刃が飛んでくる。
「ッ!!」
《これはッ!》
天願が慌てて斧で光刃を弾く。飛んできた方を見ればあいも変わらずと言った様子で大女郎蜘蛛と雪花を相手にしている龍姫がいた。
「あらあら。私もいる事を忘れてもらっちゃ困るわね。」
「貴様ッ!私達がいる前で余裕を…!」
「アンタらごときを相手にしてこの私の余裕が無くなるとでも?」
龍姫の飛ばした光刃は天願を後退させると、龍香の周りをふよふよと浮かぶ。かつて自分の命を狙った刃と肩を並べて戦っている。なんともおかしな話だと、龍香は思わず苦笑する。
《…成る程。貴様は囮……本命はそれ、か。》
カノープスが苛立ちを声に滲ませながら分析する。不意の一撃と龍香が相手と言う事で混乱しているのか、天願は膝をつく。
「はぁっ、はぁっ……私は、私は強く……!あの時の、少女のように……!」
ぜぇぜぇと肩で息をする彼女に龍香は心配そうに話しかける。
「天願さん。もう、やめよう。あなたがやろうとしている事は、本当に貴方がやりたいことなの?貴方が目指したものなの?」
「私、私は……!」
《ええい!惑わされるな!それではお前が言う強さには…!》
「“モドキ”は黙ってて!!」
《何だと!?》
天願に言葉を投げかける“カノープス”に龍香は叫ぶ。
「さっきから話を聞いてて思ったの。貴方、全然カノープスじゃないっ!偽物だっ!カノープスは無遠慮でデリカシーがなくて、ちょっと偉そうで、口喧しかったけど…!それでも貴方みたいに人を堕落させようなんてことはしなかった!!」
《意味の、分からん事を……!!貴様如き小娘に、何が出来るって言うんだ!!》
再び天願を言いくるめたカノープスが向かってくる。向かってくる彼女達を龍香は真っ直ぐと見据えて呟く。
「……皆を助けるんだ!私達が!」
龍香はその攻撃を避ける。
(見える…ッ!私にも、攻撃が避けられるッ!)
龍香はカノープスと共に様々な戦いを共にしてきた。それはカノープスの補助があったとは言えどれも激戦と呼べるものだった。
楽な戦いなんて一つもなかった。その戦いの経験が彼女を成長させていた。磨かれたセンスと動体視力。そして経験を総動員させた彼女は天願と互角にやりあえていた。
「な、んで!?当たらないのッ!?私は、強くなっているのに!」
《チィッ!だが、避けてばかりでは我等には勝てんぞ!》
カノープスはこちらの攻撃が当たらない事に苛立ちつつも龍香の方からも決定打はなく、冷静に体力勝負に持ち込もうとする。
しかしそう判断した次の瞬間天願目掛けて三つの光の刃が飛んでくる。
「ッ!!」
《これはッ!》
天願が慌てて斧で光刃を弾く。飛んできた方を見ればあいも変わらずと言った様子で大女郎蜘蛛と雪花を相手にしている龍姫がいた。
「あらあら。私もいる事を忘れてもらっちゃ困るわね。」
「貴様ッ!私達がいる前で余裕を…!」
「アンタらごときを相手にしてこの私の余裕が無くなるとでも?」
龍姫の飛ばした光刃は天願を後退させると、龍香の周りをふよふよと浮かぶ。かつて自分の命を狙った刃と肩を並べて戦っている。なんともおかしな話だと、龍香は思わず苦笑する。
《…成る程。貴様は囮……本命はそれ、か。》
カノープスが苛立ちを声に滲ませながら分析する。不意の一撃と龍香が相手と言う事で混乱しているのか、天願は膝をつく。
「はぁっ、はぁっ……私は、私は強く……!あの時の、少女のように……!」
ぜぇぜぇと肩で息をする彼女に龍香は心配そうに話しかける。
「天願さん。もう、やめよう。あなたがやろうとしている事は、本当に貴方がやりたいことなの?貴方が目指したものなの?」
「私、私は……!」
《ええい!惑わされるな!それではお前が言う強さには…!》
「“モドキ”は黙ってて!!」
《何だと!?》
天願に言葉を投げかける“カノープス”に龍香は叫ぶ。
「さっきから話を聞いてて思ったの。貴方、全然カノープスじゃないっ!偽物だっ!カノープスは無遠慮でデリカシーがなくて、ちょっと偉そうで、口喧しかったけど…!それでも貴方みたいに人を堕落させようなんてことはしなかった!!」
《意味の、分からん事を……!!貴様如き小娘に、何が出来るって言うんだ!!》
再び天願を言いくるめたカノープスが向かってくる。向かってくる彼女達を龍香は真っ直ぐと見据えて呟く。
「……皆を助けるんだ!私達が!」
「もう貴方の攻略法は分かっている!」
「ハッ!だったらやってみせろやァッ!!」
シェーンが迅雷の如き踏み込みでシャドウマンとの距離をあっという間にゼロにすると蹴りを繰り出す。しかしシャドウマンも影を操り、腕を異形に変形させてその一撃を受け止める。
「ッ!」
次の瞬間触れた身体を通して、シェーンはある事に気づく。
「邪魔だァッ!影鋏“カゲバサミ”!」
次の瞬間腕を鋏のように変形させた彼女の攻撃がシェーンに迫る。
だがシェーンはそれを皮一枚でかわすと反撃の拳を繰り出す。
「おぉっと。」
だが、シャドウマンはそれを“回避した”。それを見たシェーンの推測が確実なものになっていく。
互いを蹴飛ばし、一旦離れる両者。砂埃が舞う中、シェーンがシャドウマンに語りかける。
「……貴方。実体を…」
「その通りさ。どうせネタが割れちまってるなら、こっちの方が出力しやすいんでね。」
「……その思い切りやよし。正々堂々といざ尋常に…!」
「はっ。悪いが、俺はそんなにお行儀よくないんでな。さっさと決めさせてもらう!」
彼女はそういった瞬間額の×印の瞳が輝きを放つ。
「!」
だが彼女はそれを見た瞬間大きく跳躍し、影から伸びる縄を回避する。
「それは最早見切った!!」
「分かってるよそんくらい!」
シャドウマンは空中にいて、身動きの取れない彼女「向けて腕を槍へと変貌させ、一気に射出する。
「ッ!」
シェーンはそれを無理矢理身体を捻る事でかわすが、その一撃は彼女の頬を掠める。
「かわしたか!」
「……やってくれる!」
一方、立ちはだかったむらサメを前に黒鳥はバッと黒い翼を拡げる。そして何の躊躇いもなく翼から鋭い刃のような羽根を射出し始める。
「いぃっ!?」
慌てて彼女は物陰に隠れると同時に彼女が隠れた岩に羽根がドスドスと音を立てて突き刺さる。
「やっばぁ〜…!迂闊に出て行ったら文字通りハリネズミにされるで……。」
むらサメが岩に突き刺さった羽根を見て、肝を冷やす。しかし、バサッと何かが飛び上がる音がしたと同時に彼女の周りが暗くなる。
「なんや?」
気になってふと上を見上げたその瞬間、彼女はゾッとする。何故なら彼女の真上には黒鳥が飛翔しており、翼をこちらへと向けていたからだ。
「うわわっ!!」
慌てて飛ぶようにして彼女はその場を離れる。さっきまで彼女がいたところに羽根が次々と突き刺さるのを背で感じながら彼女は駆け出す。
「や、やっばい!速い!」
駆け出す彼女を追跡するように黒鳥は飛翔すると、瞬時に彼女の目の前に迫る。
しかしむらサメもそれは読んでいた。だから彼女は黒鳥の翼が自身を攻撃するよりも早く、蟹のヘアアクセを噛んでいた。
「ちょっと痛いけど堪忍してなっ!!」
その瞬間黒鳥の目の前に巨大な拳が突然現れる。
「!!」
それを見た黒鳥は攻撃をやめて翼を畳んで防御の構えを取る。しかし完全な不意打ちに彼女は満足に防御出来なかったようで、拳が炸裂すると大きく吹き飛ばされて地面を転がる。
だが吹き飛ばされて尚、翼をクッションにしたお陰なのかすぐに起き上がるとむらサメを睨む。
「……謝らんでよかったかもしれへんな。」
翼が消え、蛇のような尻尾を生やし、蛇の口を模したマスクへ変わり、迫る彼女を見てむらサメはぼやいた。
「ハッ!だったらやってみせろやァッ!!」
シェーンが迅雷の如き踏み込みでシャドウマンとの距離をあっという間にゼロにすると蹴りを繰り出す。しかしシャドウマンも影を操り、腕を異形に変形させてその一撃を受け止める。
「ッ!」
次の瞬間触れた身体を通して、シェーンはある事に気づく。
「邪魔だァッ!影鋏“カゲバサミ”!」
次の瞬間腕を鋏のように変形させた彼女の攻撃がシェーンに迫る。
だがシェーンはそれを皮一枚でかわすと反撃の拳を繰り出す。
「おぉっと。」
だが、シャドウマンはそれを“回避した”。それを見たシェーンの推測が確実なものになっていく。
互いを蹴飛ばし、一旦離れる両者。砂埃が舞う中、シェーンがシャドウマンに語りかける。
「……貴方。実体を…」
「その通りさ。どうせネタが割れちまってるなら、こっちの方が出力しやすいんでね。」
「……その思い切りやよし。正々堂々といざ尋常に…!」
「はっ。悪いが、俺はそんなにお行儀よくないんでな。さっさと決めさせてもらう!」
彼女はそういった瞬間額の×印の瞳が輝きを放つ。
「!」
だが彼女はそれを見た瞬間大きく跳躍し、影から伸びる縄を回避する。
「それは最早見切った!!」
「分かってるよそんくらい!」
シャドウマンは空中にいて、身動きの取れない彼女「向けて腕を槍へと変貌させ、一気に射出する。
「ッ!」
シェーンはそれを無理矢理身体を捻る事でかわすが、その一撃は彼女の頬を掠める。
「かわしたか!」
「……やってくれる!」
一方、立ちはだかったむらサメを前に黒鳥はバッと黒い翼を拡げる。そして何の躊躇いもなく翼から鋭い刃のような羽根を射出し始める。
「いぃっ!?」
慌てて彼女は物陰に隠れると同時に彼女が隠れた岩に羽根がドスドスと音を立てて突き刺さる。
「やっばぁ〜…!迂闊に出て行ったら文字通りハリネズミにされるで……。」
むらサメが岩に突き刺さった羽根を見て、肝を冷やす。しかし、バサッと何かが飛び上がる音がしたと同時に彼女の周りが暗くなる。
「なんや?」
気になってふと上を見上げたその瞬間、彼女はゾッとする。何故なら彼女の真上には黒鳥が飛翔しており、翼をこちらへと向けていたからだ。
「うわわっ!!」
慌てて飛ぶようにして彼女はその場を離れる。さっきまで彼女がいたところに羽根が次々と突き刺さるのを背で感じながら彼女は駆け出す。
「や、やっばい!速い!」
駆け出す彼女を追跡するように黒鳥は飛翔すると、瞬時に彼女の目の前に迫る。
しかしむらサメもそれは読んでいた。だから彼女は黒鳥の翼が自身を攻撃するよりも早く、蟹のヘアアクセを噛んでいた。
「ちょっと痛いけど堪忍してなっ!!」
その瞬間黒鳥の目の前に巨大な拳が突然現れる。
「!!」
それを見た黒鳥は攻撃をやめて翼を畳んで防御の構えを取る。しかし完全な不意打ちに彼女は満足に防御出来なかったようで、拳が炸裂すると大きく吹き飛ばされて地面を転がる。
だが吹き飛ばされて尚、翼をクッションにしたお陰なのかすぐに起き上がるとむらサメを睨む。
「……謝らんでよかったかもしれへんな。」
翼が消え、蛇のような尻尾を生やし、蛇の口を模したマスクへ変わり、迫る彼女を見てむらサメはぼやいた。
「行くぞ!」
デヴァが剣を持って駆け出すと同時に、龍賢も迎え撃つように剣を腰に当てて構える。
彼が剣を振るい、龍賢へ攻撃を仕掛けた瞬間、ぞくっと彼の背筋に冷たいものが走る。
「くぅっ!?」
何かを感じ取ったデヴァが攻撃をやめて止まった瞬間、彼の体に薄い切り傷が入る。
「へぇ、眷属の攻撃をかわしたんだ。」
ヒュゥと口笛を吹いてアリックスはニヤニヤと笑いながらデヴァを見やる。
「!何が…!」
「居合、か…!」
見れば龍賢の剣はいつの間にか振るわれており、その神速の抜刀による斬撃がデヴァの薄皮に傷を入れたのだと分かるともし彼が立ち止まらなければどうなっていたかを思うとデヴァときゅーばんの二人の背筋を冷や汗が伝う。
「……!」
龍賢はさらに剣を突き出しデヴァに追撃を仕掛ける。デヴァはそれを剣で受け止めるが龍賢は鍔迫り合いに持ち込むと同時に激しい体当たりを食らわせる。
「ぐっ、」
よろめく彼に龍賢は剣を振り下ろすが、デヴァもすぐに体勢を立て直し、彼の一撃を受け止める。
しかし今度は足払いがデヴァに飛んでくる。慌てて脚を引くが、体勢を崩したその隙を縫うようにまた剣が繰り出される。不規則かつフェイントを織り交ぜた攻撃にデヴァは思わず舌を巻く。
「ッ!やりにくいっ!」
「フフッ、流石私が見込んだ眷属ね。これは数十年ぶりの“あたり”かも…。」
奮戦する龍賢を見て、アリックスはウットリと熱い視線を送る。
だがデヴァもただでは転ばない。繰り出された剣に薄皮を切られながらも反撃の一撃を振るう。しかし操られている龍賢に躊躇いも恐怖もない。
振るわれた一撃を薄皮一枚でかわしながら攻撃をしかける。
その瞬間。
「デヴァさんっ!足払いのフェイントですっ!」
「!」
きゅーばんの声にデヴァはすぐさま反応して大きく跳躍してその足払いを避けると、彼はそのまま後退するようにきゅーばんの横に着地する。
「ありがとう。君には、彼の攻撃が見えるのかい?」
「うん。私の女児符号を使えば、彼の動きは見えます!」
デヴァの問い掛けに彼女がそう答えると、デヴァは再び剣を構える。
「よしっ、なら任せたよ!」
再びデヴァは地面を蹴り、龍賢に肉薄する。龍賢は彼を迎撃すべく剣を振り上げる。
だが、きゅーばんの瞳は龍賢の動きを正確に捉えていた。
「フェイントッ!顔を逸らして!」
きゅーばんの言葉通りデヴァが顔を傾けると同時に龍賢は土を蹴り上げる。逸らした彼の顔の横を目潰しの土が通り抜けるのを感じながら、彼は剣を振るい、龍賢の装甲を切り裂く。
「左薙ぎ払い!」
反撃にと振るわれた横薙ぎの一撃をデヴァは屈んで避けると同時に痛烈な回し蹴りを龍賢の横っ腹にお見舞いする。
「たぁっ!」
よろめく龍賢。さらに追撃と言わんばかりにデヴァの振るう拳が炸裂し、龍賢はさらに後ずさる。
「……よしっ!」
確かな手応えにデヴァはガッツポーズをする。流れが徐々にあっちに寄っている事が面白くないのかアリックスは不機嫌そうな顔をすると、龍賢の横に並び立つ。
「……ったく、仕方のない眷属ね。このまま好きにさせるのも癪だし。」
アリックスはそう言うと目の前に血のように赤黒い槍を出現させると、それを地面に突き刺す。
「“血塗れ庭園”《ブラム・ガーデン》」
「ッ!ちょっとごめんねっ!」
「きゃっ」
アリックスの雰囲気にヤバいものを感じたデヴァは慌ててきゅーばんを抱き抱えると、大きく跳躍してその場を離れる、と同時に彼らがさっきまでいた足元から赤黒く、鋭い棘が地面を食い破るようにして無数に現れる。
「危なかった…!」
「ハッ、よくかわしたわね。でも。空中にいたんじゃ身動き取れないんじゃないの!?」
アリックスは翼を拡げると、それを円状に伸ばす。
「“血塗れ咬牙弾”《ブラム・ファング》」
次の瞬間翼の幕から針のような鋭い形状をした血が無数に撃ち出される。
「あぶない!」
デヴァは彼女を抱き抱えるようにして何とか身を捻って直撃は避けるが、左肩にその一撃が当たる。
「うあっ……!」
そのまま落ちて地面を転がりながらもきゅーばんに衝撃がいかないように抱き抱え、何とか守りきる。
デヴァの腕の力が緩むと同時にきゅーばんは這い出すと、彼の怪我を見て、戦慄する。
「デヴァさん!大丈夫ですか!?」
「う、ん…!何とか、ね。まだ全然動けるよ…!」
そう言う彼の左肩には血の針が数本刺さっていた。しかし、彼はそれを無理矢理引っこ抜くと目の前の敵を睨む。
「……あわよくば僕が倒そうと思ったけど、これは“作戦通り”に行くしかないね…!」
「…!はい!」
彼の言葉にきゅーばんは頷くと、デヴァと一緒にその場から離れる。一見逃げにしか見えないその行為にアリックスは嗜虐的な笑みを浮かべる。
「なぁに、怖気付いたの?」
そしてペロリと舌舐めずりをすると、槍を手に彼らを追った。
デヴァが剣を持って駆け出すと同時に、龍賢も迎え撃つように剣を腰に当てて構える。
彼が剣を振るい、龍賢へ攻撃を仕掛けた瞬間、ぞくっと彼の背筋に冷たいものが走る。
「くぅっ!?」
何かを感じ取ったデヴァが攻撃をやめて止まった瞬間、彼の体に薄い切り傷が入る。
「へぇ、眷属の攻撃をかわしたんだ。」
ヒュゥと口笛を吹いてアリックスはニヤニヤと笑いながらデヴァを見やる。
「!何が…!」
「居合、か…!」
見れば龍賢の剣はいつの間にか振るわれており、その神速の抜刀による斬撃がデヴァの薄皮に傷を入れたのだと分かるともし彼が立ち止まらなければどうなっていたかを思うとデヴァときゅーばんの二人の背筋を冷や汗が伝う。
「……!」
龍賢はさらに剣を突き出しデヴァに追撃を仕掛ける。デヴァはそれを剣で受け止めるが龍賢は鍔迫り合いに持ち込むと同時に激しい体当たりを食らわせる。
「ぐっ、」
よろめく彼に龍賢は剣を振り下ろすが、デヴァもすぐに体勢を立て直し、彼の一撃を受け止める。
しかし今度は足払いがデヴァに飛んでくる。慌てて脚を引くが、体勢を崩したその隙を縫うようにまた剣が繰り出される。不規則かつフェイントを織り交ぜた攻撃にデヴァは思わず舌を巻く。
「ッ!やりにくいっ!」
「フフッ、流石私が見込んだ眷属ね。これは数十年ぶりの“あたり”かも…。」
奮戦する龍賢を見て、アリックスはウットリと熱い視線を送る。
だがデヴァもただでは転ばない。繰り出された剣に薄皮を切られながらも反撃の一撃を振るう。しかし操られている龍賢に躊躇いも恐怖もない。
振るわれた一撃を薄皮一枚でかわしながら攻撃をしかける。
その瞬間。
「デヴァさんっ!足払いのフェイントですっ!」
「!」
きゅーばんの声にデヴァはすぐさま反応して大きく跳躍してその足払いを避けると、彼はそのまま後退するようにきゅーばんの横に着地する。
「ありがとう。君には、彼の攻撃が見えるのかい?」
「うん。私の女児符号を使えば、彼の動きは見えます!」
デヴァの問い掛けに彼女がそう答えると、デヴァは再び剣を構える。
「よしっ、なら任せたよ!」
再びデヴァは地面を蹴り、龍賢に肉薄する。龍賢は彼を迎撃すべく剣を振り上げる。
だが、きゅーばんの瞳は龍賢の動きを正確に捉えていた。
「フェイントッ!顔を逸らして!」
きゅーばんの言葉通りデヴァが顔を傾けると同時に龍賢は土を蹴り上げる。逸らした彼の顔の横を目潰しの土が通り抜けるのを感じながら、彼は剣を振るい、龍賢の装甲を切り裂く。
「左薙ぎ払い!」
反撃にと振るわれた横薙ぎの一撃をデヴァは屈んで避けると同時に痛烈な回し蹴りを龍賢の横っ腹にお見舞いする。
「たぁっ!」
よろめく龍賢。さらに追撃と言わんばかりにデヴァの振るう拳が炸裂し、龍賢はさらに後ずさる。
「……よしっ!」
確かな手応えにデヴァはガッツポーズをする。流れが徐々にあっちに寄っている事が面白くないのかアリックスは不機嫌そうな顔をすると、龍賢の横に並び立つ。
「……ったく、仕方のない眷属ね。このまま好きにさせるのも癪だし。」
アリックスはそう言うと目の前に血のように赤黒い槍を出現させると、それを地面に突き刺す。
「“血塗れ庭園”《ブラム・ガーデン》」
「ッ!ちょっとごめんねっ!」
「きゃっ」
アリックスの雰囲気にヤバいものを感じたデヴァは慌ててきゅーばんを抱き抱えると、大きく跳躍してその場を離れる、と同時に彼らがさっきまでいた足元から赤黒く、鋭い棘が地面を食い破るようにして無数に現れる。
「危なかった…!」
「ハッ、よくかわしたわね。でも。空中にいたんじゃ身動き取れないんじゃないの!?」
アリックスは翼を拡げると、それを円状に伸ばす。
「“血塗れ咬牙弾”《ブラム・ファング》」
次の瞬間翼の幕から針のような鋭い形状をした血が無数に撃ち出される。
「あぶない!」
デヴァは彼女を抱き抱えるようにして何とか身を捻って直撃は避けるが、左肩にその一撃が当たる。
「うあっ……!」
そのまま落ちて地面を転がりながらもきゅーばんに衝撃がいかないように抱き抱え、何とか守りきる。
デヴァの腕の力が緩むと同時にきゅーばんは這い出すと、彼の怪我を見て、戦慄する。
「デヴァさん!大丈夫ですか!?」
「う、ん…!何とか、ね。まだ全然動けるよ…!」
そう言う彼の左肩には血の針が数本刺さっていた。しかし、彼はそれを無理矢理引っこ抜くと目の前の敵を睨む。
「……あわよくば僕が倒そうと思ったけど、これは“作戦通り”に行くしかないね…!」
「…!はい!」
彼の言葉にきゅーばんは頷くと、デヴァと一緒にその場から離れる。一見逃げにしか見えないその行為にアリックスは嗜虐的な笑みを浮かべる。
「なぁに、怖気付いたの?」
そしてペロリと舌舐めずりをすると、槍を手に彼らを追った。
「フッ!」
「……!」
エフィが精製した氷の刃と赤羽の刀が両者に振るわれる度に火花が散る。
そして互いに切り払って離れた瞬間、赤羽は太腿のホルスターから針のような投擲噴出装甲炸裂弾“椿”を取り出すとエフィに向かって投げつける。
「させない!」
エフィはそれを氷の盾を出現させることで防ぐ。キィンという乾いた音がしたと同時にカチリと“椿”にスイッチが入り、爆発が起きる。
辺りを煙が包む中、爆煙の中から赤羽が刀を振りかぶってエフィに迫る。
「そんな見え見えな攻撃…!」
エフィは彼女を気絶させるべく氷の刃から電撃を放つ。放たれた電撃は確かに彼女に直撃する。
しかしその電撃は彼女をすり抜けてしまう。
「!これはッ」
ゆらりと蜃気楼のように消える彼女を見て、エフィが辺りを見回そうとすると同時にいつの間にか接近していた赤羽が彼女の真横から飛び出てくる。
「!」
「おっと危ない。」
エフィの心臓がドキリと跳ね上がると同時にこちらもいつの間にかエフィの後ろにいたのじゃロリ猫に引っ張られ、振るわれた斬撃は空を切り裂く。
「くっ、話には聞いていたけど厄介ねあの幻。」
刀を構える赤羽を見て、エフィがそう愚痴ると。
「あらあらぁ。私も仲間に入れてくださいよぉ。」
そう言いながら姦姦蛇螺は巨大な蛇を召喚し、二人にけしかける。
「喰らえ、“大蛟”《オオミズチ》〜」
「おっとぉ!」
人一人余裕で丸呑み出来る程の大口を開けて蛇が迫る。しかし、エフィがフッ、と一息で剣を振るう。放たれた電撃は蛇を灼いて消滅させる。
「ヒュゥ。やりますねぇ。」
ニマニマと薄気味悪く笑う彼女にのじゃロリ猫は地面を蹴って一瞬で距離をゼロにすると、思い切り拳を振り上げて彼女に振るう。
「おっとぉ。」
だが彼女はすぐにそれに対して右手を掲げると障壁を作り出してその一撃を受け止める。
「チッ。やっぱ腐っても元“巫女”かの?」
「……その単語、出さないでくださいますかぁ?」
次の瞬間彼女はさらに手を向けるとその袖から無数の蛇が毒を滴らせながら牙を剥き、彼女に殺到する。
「不愉快ですのでぇ!!」
「おっとぉ、これは要らぬことを言うたかのぉ!」
攻撃の対象が完全にのじゃロリ猫に行った姦姦蛇螺を尻目に、赤羽とエフィは鍔迫り合いをしながらその場から遠ざかっていく。
「…こっちは何とか作戦通り上手くいきそうね。」
振るわれる斬撃を何とか屈んで回避しながら、エフィが呟く。
「さぁ。後はアンタ次第よ。」
「……!」
エフィが精製した氷の刃と赤羽の刀が両者に振るわれる度に火花が散る。
そして互いに切り払って離れた瞬間、赤羽は太腿のホルスターから針のような投擲噴出装甲炸裂弾“椿”を取り出すとエフィに向かって投げつける。
「させない!」
エフィはそれを氷の盾を出現させることで防ぐ。キィンという乾いた音がしたと同時にカチリと“椿”にスイッチが入り、爆発が起きる。
辺りを煙が包む中、爆煙の中から赤羽が刀を振りかぶってエフィに迫る。
「そんな見え見えな攻撃…!」
エフィは彼女を気絶させるべく氷の刃から電撃を放つ。放たれた電撃は確かに彼女に直撃する。
しかしその電撃は彼女をすり抜けてしまう。
「!これはッ」
ゆらりと蜃気楼のように消える彼女を見て、エフィが辺りを見回そうとすると同時にいつの間にか接近していた赤羽が彼女の真横から飛び出てくる。
「!」
「おっと危ない。」
エフィの心臓がドキリと跳ね上がると同時にこちらもいつの間にかエフィの後ろにいたのじゃロリ猫に引っ張られ、振るわれた斬撃は空を切り裂く。
「くっ、話には聞いていたけど厄介ねあの幻。」
刀を構える赤羽を見て、エフィがそう愚痴ると。
「あらあらぁ。私も仲間に入れてくださいよぉ。」
そう言いながら姦姦蛇螺は巨大な蛇を召喚し、二人にけしかける。
「喰らえ、“大蛟”《オオミズチ》〜」
「おっとぉ!」
人一人余裕で丸呑み出来る程の大口を開けて蛇が迫る。しかし、エフィがフッ、と一息で剣を振るう。放たれた電撃は蛇を灼いて消滅させる。
「ヒュゥ。やりますねぇ。」
ニマニマと薄気味悪く笑う彼女にのじゃロリ猫は地面を蹴って一瞬で距離をゼロにすると、思い切り拳を振り上げて彼女に振るう。
「おっとぉ。」
だが彼女はすぐにそれに対して右手を掲げると障壁を作り出してその一撃を受け止める。
「チッ。やっぱ腐っても元“巫女”かの?」
「……その単語、出さないでくださいますかぁ?」
次の瞬間彼女はさらに手を向けるとその袖から無数の蛇が毒を滴らせながら牙を剥き、彼女に殺到する。
「不愉快ですのでぇ!!」
「おっとぉ、これは要らぬことを言うたかのぉ!」
攻撃の対象が完全にのじゃロリ猫に行った姦姦蛇螺を尻目に、赤羽とエフィは鍔迫り合いをしながらその場から遠ざかっていく。
「…こっちは何とか作戦通り上手くいきそうね。」
振るわれる斬撃を何とか屈んで回避しながら、エフィが呟く。
「さぁ。後はアンタ次第よ。」
天願の有り余る膂力で振るわれる斬撃を龍香は何とかかわす。それと同時に彼女の後ろから十字の刃が飛び出し、天願に襲いかかる。
《チィッ》
だが天願は咄嗟に“タイラントブレイド”を盾にしてそれを弾く。
《クソガキがぁ。調子に乗るなよっ!!天願!》
「ッ」
天願が斧を振るう。振るわれたそれを龍香はまたもやギリギリで回避するが、斧は勢いそのまま地面へと炸裂する。
そしてその瞬間地面が割れ、凄じい衝撃波が彼女を襲う。
「うっ、わぁ…!!」
あまりに強いその衝撃に龍香の身体は吹っ飛んで、地面を転がる。
《この程度の衝撃波でも脆弱な人間の子供の身体には応えるだろう。》
「ちっ」
得意げにカノープスが笑う。だが身体のあちこちに擦り傷を負いながらも龍香は立ち上がる。
その目は些かも闘志は衰えておらず、それどころか。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
大声で彼女は叫ぶと、天願に向かってくる。
《馬鹿なガキがっ!もうお前に勝ち目なぞない!》
天願はまたもや武器を振るう。龍香は避けるが、地面に直撃した衝撃波でまたもや吹き飛ばされる。
だが龍香は少し呻くが、またもや立ち上がる。
「はぁっ、はぁっ……!!」
龍香は拳を振り上げて天願へと向かう。
「なん、で?アイツは……立ち向かえるんだ…?」
何度も吹き飛ばされながらも立ち上がる彼女を見て黒衣が思わず声を上げる。
勝ち目なんて万に一つもない。側から見ればただの自殺行為でしかない。
だが、それでも彼女は立ち上がり続ける。
何度吹き飛ばしても倒れない彼女の諦めない執念のようなものに、絶対的優位であるはずの天願は段々と恐怖を覚える。
「な、んで!向かってくるの!?今の私と龍香さんじゃ、天と地ほどの力の差があるのに!絶対勝てないのよ!?のんな、馬鹿な事……!」
龍香の真っ直ぐな瞳が彼女を射抜く。鬼気迫るその顔に天願の顔が引き攣る。
《馬鹿!怯えるな!お前が絶対有利なんだぞ!?コイツは何をしたってお前には勝てない!お前には俺が絶対的な力を……!》
そう言った瞬間、大女郎蜘蛛達の攻撃を捌いていた龍姫が口を開く。
「馬鹿ね。力を得るだけなら誰でも出来るわ。剣でも銃でも虫でも、その辺のクソガキでも。……そう、ただ得るだけならね。」
「何を言ってるザマスか!?」
女郎蜘蛛はそう言うと鋭い爪のついた脚を前に向け、回転しながら龍姫へと迫る。
「“回転蜘蛛牡丹”!!」
「“征服王光葬送”!!」
負けじと龍姫の放った光の大剣がぶつかり合う。互いの攻撃で大女郎蜘蛛は吹っ飛び、大剣は砕け散る。
「強くなった力に対して心が追いついてないのよ。信念がない。デカくても隙だらけの力じゃ、本来の力を発揮出来ない。」
ぜぇぜぇと肩で息をして、傷だらけになりながらも立ち上がる龍香。
それを見た天願が叫ぶ。
「何でっ、龍香さんは立ち上がれるの!?力も何もないのに!」
「私には一緒に生きていきたい友達がいる…!この世界で一生懸命生きていく約束がある!力があってもなくても関係ない!これが!私のやりたいことだから!」
またもや衝撃波が彼女を襲う。しかし今度は地に足をつけて踏ん張ると、よろめきながらも龍香はその場に留まる。
「私は絶対諦めない!」
「!」
龍香の振るう拳が天願に当たる。勿論彼女には全然効かない。痛くもない。だが、その一撃を受けた天願はよろけて尻餅をついてしまう。
「……!」
「はぁっ、はぁっ……!」
肩で息をする彼女を、天願は尻餅をついたまま呆然と見つめる。
《チィッ……!》
カノープスが苛立ちのままに言葉を吐き捨てたその瞬間、ドゴォンと音がして、その音がした方を振り向くと、猛烈に打ち合うシェーンとシャドウマン、黒鳥に追いかけ回されるむらサメが飛び込んでくる。
「中々、やるっ!」
「ひぇーっ!!取り敢えず連れてきたでぇっ!めっちゃヤバいけどっ!」
「シェーンさんっ!むらサメちゃん!」
さらに背後からアリックスの血の針の雨攻撃を受けながらも何とか回避しながらこちらへ向かってくるデヴァとその小脇に抱えられたきゅーばんの姿も見える。
「おーい!なんとか連れて来たよ!」
「龍香ちゃん!」
「デヴァさん!きゅーばんちゃん!」
今度は赤羽と打ち合いながらこちらに流れ込んでくるエフィと、巨大な蛇の口から逃げ続けるのじゃロリ猫の姿が。
「連れてきたわよ!」
「出来ればささっとやってくれ!」
「エフィさん!のじゃさん!」
「役者は揃った、ってところかしらね!」
皆が集合したのを確認すると、龍姫はニヤリと笑って三つの光刃を周りに纏わせ、三人から無理矢理距離を取らせると同時に全身の眼の装飾が大きく見開かれる。
「くっ、まさかあの停止光線!?」
それを見たアリックス達がゾッとするが、龍姫はニヤリと口角を吊り上げ。
「いや、それよりももっと面白いことよ。龍香!」
「はいっ!」
龍姫に呼びかけられた龍香はすぅ、と息を吸うと叫ぶ。
「雪花ちゃんはこの前のプールの授業の時着替えのパンツを忘れた!黒鳥さんはお尻に黒子がある!赤羽さんは珈琲を砂糖とか牛乳を沢山入れないと飲めない!月乃助さんは部屋がホントに汚い!お兄ちゃんたちはその……洗濯物を私のと一緒に洗わないで!!」
「「「「「「!!!??」」」」」」
突然の爆弾発言に洗脳された六人全員が固まる。それと同時に龍姫の全身の眼が光を放つ。
「征服王ノ威光!!」
辺り一面を激しい光が包み込む。それは一瞬のことで光はすぐに晴れる。
「……どうなった?」
誰かが呟く。洗脳された六人は固まっていたが、しばらくするとツカツカと雪花が龍香の方に近づく。
そして思い切りその胸倉を掴む。──顔を羞恥で真っ赤にして。
「あ、アンタなんて事を大声で言うのよっ!!二人だけの秘密って言ったでしょっ!!」
「い、いやぁ。そうだけど、これは雪花ちゃんを元に戻す為仕方なく、って言うか……」
「……雪花アンタもしかしてあのプールの後全部の授業ノーパンで受けたんか…?」
「水着をある程度乾かしてその上から制服を着てたわよ!!気持ち悪くてしょうがなかったけどっ!!」
ちょっと引くむらサメに雪花が叫ぶ。さらに見れば洗脳されていた他の面々も気まずそうに攻撃を取り止めて、相手から離れる。
「その、龍香……」
「さっきの発言は……」
龍賢と龍斗が何か妙に落ち込みながら龍香に尋ねる。それに気づいた龍香は慌てて。
「ち、違うよ!お兄ちゃん達の秘密が咄嗟に思い浮かばなかったから、その、ビックリするかなぁっ、って!嘘ついちゃった!」
「う、嘘か。そうか……。」
龍香の説明にどことなく安堵する二人。さらに黒鳥と赤羽も龍香に駆け寄ってくる。
「……龍香ちゃん。あんまりそう言うのは大声で言うもんじゃないと思うんだけど。」
「…言っとくけど、私珈琲飲めるから。アレは、その…そう言う気分だっただけだから。」
若干怒ってる風の二人に気圧されながらも龍香は気づく。
「あれ?皆私の事、覚えてる?」
龍香の言葉に全員が顔を見合わせる。
「…確かに、皆私達を覚えてるわね。」
そんな中、カノープスは正気に戻った六人を見て驚きの声を上げる。
《な、んだと……!?何故、我の書き換えが…!》
「ふっ、残念ね。私がそれをさらに書き換えたのよ。」
龍姫が笑みを浮かべながらそう言う。
「作戦通り、皆戻ったみたいですね。」
きゅーばんの言葉に他の面々も頷く。作戦──それは龍姫の“征服王ノ威光”によるさらなる洗脳の上書き。そのためにバラバラに配置されていた六人を誘導して一箇所に集めたのだ。
「ま、確かに正面からアンタの洗脳を上書きすることは出来ないけど……ま、くだらない事で動揺して精神が不安定になっている時なら別よ。」
《ぐ、うぅ…!》
歯噛みをするカノープス。龍姫は振り返ると六人に言う。
「どう?特別サービスで記憶も蘇らせたんだけど。私に言う事あるんじゃない?」
龍姫の言葉に雪花、黒鳥、赤羽と月乃助は不機嫌そうに顔を顰め。
「誰がアンタに感謝するか。」
「私、貴方に一回殺されてるから。これでおあいこよ。」
「右に同じ。恩着せがましく言わないで目玉野郎。」
「妹とピーコック殺しといてよく言えたな君。」
吐き捨てるように恨み言を言うと四人はそっぽを向く。前の世界でやらかした事がやらかした事なので、険悪な雰囲気になりつつも龍香が慌ててフォローに入る。
「で、でも!今回はお姉ちゃんも私と一緒に協力してくれたし、守ってくれたから!改心したんだよ!ね?」
龍香が必死にフォローするものの、四人の視線は依然冷たいままだ。
「つれないわねぇ。」
なんて龍姫が肩をすくめていると、何故か肩を震わせながら龍姫を見る弟二人が。
「な、何よ……」
「いや、その。あんだけ傍若無人だった姉さんがそんな事をするなんて……」
「なんて言うか感動したって言うか……」
「……アンタ達ねぇ。って言うか龍斗。アンタを殺したの私なんだけど。恨み言の一つもない訳?」
龍姫の問いに、龍斗は。
「まぁ、確かに結衣さんを殺したのは思うところはあるけど……けど、彼女も生き返ってるし、何より姉さんとこうしてまた話せて嬉しいよ。」
龍斗の言葉に龍姫は少し驚いたように目を丸くするが、取り繕うように笑うと。
「はっ……我が弟ながらとんだお人好しね。」
正気を取り戻したらしい彼らを見てアリックス達はカノープス側に一旦集まる。
「あぁ〜〜……眷属ゥ〜……」
「そんなに気に入っていたんですの?」
「……どうするザマスか?何かいきなりこっちが人数不利になったザマス。」
《チィッ…!!奴らが寝返ろうと!シャドウマン!!》
「はいよっ!今回は大サービスだ!!」
カノープスの言葉と共にシャドウマンが地面に手をつけると地面一杯に黒い影が沼の如く拡がり、その中から三体の怪物が姿を見せる。
「ふしゃるるるるる………」
「ヒャァッハッハッハッハッ」
「フフフ……」
全員影のように黒くなっているが、一体は六つの目を持つ醜悪な多足の龍、一体は悪魔のようなツノと翼を生やし、お腹には涎を垂らす凶悪な口がある少女、一体はかつて異世界にて龍香と肩を並べて戦ったモノクロの翼を持ち、鳥類のような脚を持った少女。
三体の怪物がそれぞれ姿を見せ、龍香達と相対する。
「再会の感動を分かち合うのも良いが、どうやら奴さん達は許してくれんみたいじゃのう。」
のじゃロリ猫の言葉に全員が臨戦態勢を取る。雪花は龍香を後ろへとやると。
「龍香、アンタは下がっていなさい。ここまで、ご苦労だったわね。見直したわ。」
「そうだ。後はお兄ちゃん達に任せておけ。」
「……うん。」
龍香が下がると同時に全員が動く。敵味方入れ乱れた乱戦に突入し、あちこちで斬撃と爆発が巻き起こる。
「蝙蝠君!君の相手はこの私だッ!」
「チィッ!邪魔するんじゃないわよっ!」
アリックスと月乃助が空中でかち合う。
「まさか姉弟三人で並び立つ日が来るなんて、ね。」
「俺たち姉弟の力、見せてやろうぜ!」
「あぁ!」
「ふんっ!三人に増えたところで!私は絶対倒せないザマス!!」
龍姫、龍斗、龍賢の三人が大女郎蜘蛛に挑みかかる。
「さっきは斬りかかって悪かったわね。」
「別に、気にしてない。それより早く目の前の敵をどうにかしましょう。」
「ええっ、さっさと終わらせましょう!」
「ハハァっ!終わらせられるかなっ!!」
赤羽とエフィの前にシャドウアナザーアンコが立ちはだかり、剣を構える。
「てぇあっ!!」
「美味しそうな蜥蜴さんと鳥さんねぇっ!!食べてあげたいわぁっ!」
「悪いけど私達、食べられるつもりはないわよっ!」
デヴァと黒鳥の前にお腹から涎を垂らしながら、シャドウソブリーヌが二人を捕食せんと向かってくる。
「おいおい偽物とは言えコイツはちょいと厳しいのぉ……」
「安心せぇウチもおる……と言いたいけど、えらくけったいなモンが出てきたなぁ……」
「ふしゅるるるるる……」
珍しく冷や汗を浮かべるのじゃロリ猫とむらサメを見下ろすようにシャドウしろうねりがおどろおどろしく唸る。
「決着をつけるぞ!」
「望むところよ!」
互いに構え、シェーンとシャドウマンがかち合う。
「あーあ、しっちゃかめっちゃか……面倒ねぇ。」
「さぁて、蛇女。アンタの相手はこの私よ。」
「微力だけど、手伝うよ!」
姦姦蛇螺の前にチェーンソーブレイド“マタンIII”を構えた雪花ときゅーばんが立つ。
皆がぶつかり合い、爆発や剣戟の音があちこちで響く中、黒衣に肩を貸されながら龍香は戦線を離脱しようと走る。
「ちょっと、アンタ傷だらけだけど大丈夫なの!?」
「ごめんね。助けに来たのに助けてもらっちゃって。」
「…!別に、アンタに借りを作るのが、癪なだけよ!ほら、さっさと走る!言っとくけど私あんな怪物達に巻き込まれるなんてごめんなんだか──」
黒衣がプイッとそっぽを向きながらもそう言いかけた瞬間、二人の背後の地面が爆発し、爆風な二人を襲う。
「「きゃあああああああ!!?」」
爆風に押され、二人が倒れる。痛む身体を押さえながら、起き上がり振り返ると、そこには怒り心頭と言った具合の天願がいた。
「……黒衣さん。今度は、私から龍香さんを奪うつもり?いつも、いつも貴方は私から……!!」
「ち、違うわよ!別に私紫水さんとは…!」
「待ってて!龍香さん!私が貴方を──!!」
天願が斧を構えて二人に向かってくる。威圧され、動けない黒衣を庇うように龍香が前に出る。
「させないっ!天願さん、貴方にそんなことは──!」
天願は龍香が前に出て驚いたような顔をする。どうやらまさか龍香が前に出るとは思ってもみなかったらしい。
《好都合だッ!》
天願は斧を振るう勢いを緩める事が出来ず、その刃が龍香へ向かう。
龍香がかわせば、黒衣に当たってしまう。だから龍香は回避出来ない。
(やばいっ、これは死ん──)
回避の出来ない迫り来る死に龍香が目を逸らせず、見つめていたその時だった。
龍香と刃に挟まるように何かが飛んでくる。その何かは刃に当たると同時に紫色の光を放つ。
「何ッ?」
ガキィンッと音が鳴り、天願の刃が弾かれる。それと同時にその何か、は龍香の元へと飛んでくる。
その何かを手に取った龍香はそれを見て思わず息を呑む。胸から湧き上がる感情に言葉を詰まらせる彼女にそれは語りかける。
《よぉ。久しぶりだな龍香。随分と元気でやってるみたいだな。》
「カノ……プス?」
震える声で尋ねるように言葉を漏らす彼女は手元にいるカノープスを見つめる。
《おうよ。久々過ぎて忘れちま》
「ていっ。」
《あ痛ァッ!?》
喋るカノープスを遮って、龍香は彼にチョップを食らわせる。
そして龍香はジトっとした瞳で睨みながら言う。
「カノープス……生きててくれたのは嬉しいけど、最後の最後で私にした事、忘れてないからね?」
睨まれた彼はしどろもどろになりながらも言葉を返す。
《い、いや、アレは誰かが身代わりになる必要があったからやっただけで……》
「じゃあ何でカノープスはここにいるの?」
龍香の問いにカノープスは一瞬黙った後、小さな声で呟く。
《プロウフの野郎だよ。アイツ、いつの間にかお前の身体に意識を潜り込ませてやがった。》
「へ?」
あの時、世界を作り変えるために龍香を遠ざけ、カノープスが我が身を捧げようとしたその時。
いきなり彼の肩を何者かの手が掴み、そのまま後ろへと放り投げられた。
「うおっ!?」
彼が尻餅をつきながらも、顔を上げるとそこには白の怪物、プロウフが立っていた。
「プロウフ!お前何故ここに!?」
カノープスの問いに、プロウフはフフッと笑い。
「貴方ならこうするだろうと思っていましてね。消える直前に私の意識を潜り込ませていたんですよ。」
プロウフの出現にカノープスは警戒する。
「お前っ、まさか横取りを…!」
「しませんよそんな無粋な真似は。それに今の私はガワだけ復元して力はありませんし。」
「なら何故…!」
カノープスの問いにプロウフは肩を竦める。表情に変化は見えないが、カノープスは何故か彼がどことなく笑っているように見えた。
「貴方は生きなくてはならない。」
プロウフの背後の光がより一層強くなると同時に彼の身体はひび割れていく。
「彼女を巻き込んだ責任を取って貴方はこれからも彼女の側で生きていかなければならない……これは私なりの、仕返しですよ。」
「プロウフ、お前……」
プロウフの身体が光に呑まれる。崩壊する寸前、プロウフの声がカノープスに聞こえる。
「──頼みましたよ。」
その声と一際輝く光を最後にカノープスの意識は暗転した。
《チィッ》
だが天願は咄嗟に“タイラントブレイド”を盾にしてそれを弾く。
《クソガキがぁ。調子に乗るなよっ!!天願!》
「ッ」
天願が斧を振るう。振るわれたそれを龍香はまたもやギリギリで回避するが、斧は勢いそのまま地面へと炸裂する。
そしてその瞬間地面が割れ、凄じい衝撃波が彼女を襲う。
「うっ、わぁ…!!」
あまりに強いその衝撃に龍香の身体は吹っ飛んで、地面を転がる。
《この程度の衝撃波でも脆弱な人間の子供の身体には応えるだろう。》
「ちっ」
得意げにカノープスが笑う。だが身体のあちこちに擦り傷を負いながらも龍香は立ち上がる。
その目は些かも闘志は衰えておらず、それどころか。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
大声で彼女は叫ぶと、天願に向かってくる。
《馬鹿なガキがっ!もうお前に勝ち目なぞない!》
天願はまたもや武器を振るう。龍香は避けるが、地面に直撃した衝撃波でまたもや吹き飛ばされる。
だが龍香は少し呻くが、またもや立ち上がる。
「はぁっ、はぁっ……!!」
龍香は拳を振り上げて天願へと向かう。
「なん、で?アイツは……立ち向かえるんだ…?」
何度も吹き飛ばされながらも立ち上がる彼女を見て黒衣が思わず声を上げる。
勝ち目なんて万に一つもない。側から見ればただの自殺行為でしかない。
だが、それでも彼女は立ち上がり続ける。
何度吹き飛ばしても倒れない彼女の諦めない執念のようなものに、絶対的優位であるはずの天願は段々と恐怖を覚える。
「な、んで!向かってくるの!?今の私と龍香さんじゃ、天と地ほどの力の差があるのに!絶対勝てないのよ!?のんな、馬鹿な事……!」
龍香の真っ直ぐな瞳が彼女を射抜く。鬼気迫るその顔に天願の顔が引き攣る。
《馬鹿!怯えるな!お前が絶対有利なんだぞ!?コイツは何をしたってお前には勝てない!お前には俺が絶対的な力を……!》
そう言った瞬間、大女郎蜘蛛達の攻撃を捌いていた龍姫が口を開く。
「馬鹿ね。力を得るだけなら誰でも出来るわ。剣でも銃でも虫でも、その辺のクソガキでも。……そう、ただ得るだけならね。」
「何を言ってるザマスか!?」
女郎蜘蛛はそう言うと鋭い爪のついた脚を前に向け、回転しながら龍姫へと迫る。
「“回転蜘蛛牡丹”!!」
「“征服王光葬送”!!」
負けじと龍姫の放った光の大剣がぶつかり合う。互いの攻撃で大女郎蜘蛛は吹っ飛び、大剣は砕け散る。
「強くなった力に対して心が追いついてないのよ。信念がない。デカくても隙だらけの力じゃ、本来の力を発揮出来ない。」
ぜぇぜぇと肩で息をして、傷だらけになりながらも立ち上がる龍香。
それを見た天願が叫ぶ。
「何でっ、龍香さんは立ち上がれるの!?力も何もないのに!」
「私には一緒に生きていきたい友達がいる…!この世界で一生懸命生きていく約束がある!力があってもなくても関係ない!これが!私のやりたいことだから!」
またもや衝撃波が彼女を襲う。しかし今度は地に足をつけて踏ん張ると、よろめきながらも龍香はその場に留まる。
「私は絶対諦めない!」
「!」
龍香の振るう拳が天願に当たる。勿論彼女には全然効かない。痛くもない。だが、その一撃を受けた天願はよろけて尻餅をついてしまう。
「……!」
「はぁっ、はぁっ……!」
肩で息をする彼女を、天願は尻餅をついたまま呆然と見つめる。
《チィッ……!》
カノープスが苛立ちのままに言葉を吐き捨てたその瞬間、ドゴォンと音がして、その音がした方を振り向くと、猛烈に打ち合うシェーンとシャドウマン、黒鳥に追いかけ回されるむらサメが飛び込んでくる。
「中々、やるっ!」
「ひぇーっ!!取り敢えず連れてきたでぇっ!めっちゃヤバいけどっ!」
「シェーンさんっ!むらサメちゃん!」
さらに背後からアリックスの血の針の雨攻撃を受けながらも何とか回避しながらこちらへ向かってくるデヴァとその小脇に抱えられたきゅーばんの姿も見える。
「おーい!なんとか連れて来たよ!」
「龍香ちゃん!」
「デヴァさん!きゅーばんちゃん!」
今度は赤羽と打ち合いながらこちらに流れ込んでくるエフィと、巨大な蛇の口から逃げ続けるのじゃロリ猫の姿が。
「連れてきたわよ!」
「出来ればささっとやってくれ!」
「エフィさん!のじゃさん!」
「役者は揃った、ってところかしらね!」
皆が集合したのを確認すると、龍姫はニヤリと笑って三つの光刃を周りに纏わせ、三人から無理矢理距離を取らせると同時に全身の眼の装飾が大きく見開かれる。
「くっ、まさかあの停止光線!?」
それを見たアリックス達がゾッとするが、龍姫はニヤリと口角を吊り上げ。
「いや、それよりももっと面白いことよ。龍香!」
「はいっ!」
龍姫に呼びかけられた龍香はすぅ、と息を吸うと叫ぶ。
「雪花ちゃんはこの前のプールの授業の時着替えのパンツを忘れた!黒鳥さんはお尻に黒子がある!赤羽さんは珈琲を砂糖とか牛乳を沢山入れないと飲めない!月乃助さんは部屋がホントに汚い!お兄ちゃんたちはその……洗濯物を私のと一緒に洗わないで!!」
「「「「「「!!!??」」」」」」
突然の爆弾発言に洗脳された六人全員が固まる。それと同時に龍姫の全身の眼が光を放つ。
「征服王ノ威光!!」
辺り一面を激しい光が包み込む。それは一瞬のことで光はすぐに晴れる。
「……どうなった?」
誰かが呟く。洗脳された六人は固まっていたが、しばらくするとツカツカと雪花が龍香の方に近づく。
そして思い切りその胸倉を掴む。──顔を羞恥で真っ赤にして。
「あ、アンタなんて事を大声で言うのよっ!!二人だけの秘密って言ったでしょっ!!」
「い、いやぁ。そうだけど、これは雪花ちゃんを元に戻す為仕方なく、って言うか……」
「……雪花アンタもしかしてあのプールの後全部の授業ノーパンで受けたんか…?」
「水着をある程度乾かしてその上から制服を着てたわよ!!気持ち悪くてしょうがなかったけどっ!!」
ちょっと引くむらサメに雪花が叫ぶ。さらに見れば洗脳されていた他の面々も気まずそうに攻撃を取り止めて、相手から離れる。
「その、龍香……」
「さっきの発言は……」
龍賢と龍斗が何か妙に落ち込みながら龍香に尋ねる。それに気づいた龍香は慌てて。
「ち、違うよ!お兄ちゃん達の秘密が咄嗟に思い浮かばなかったから、その、ビックリするかなぁっ、って!嘘ついちゃった!」
「う、嘘か。そうか……。」
龍香の説明にどことなく安堵する二人。さらに黒鳥と赤羽も龍香に駆け寄ってくる。
「……龍香ちゃん。あんまりそう言うのは大声で言うもんじゃないと思うんだけど。」
「…言っとくけど、私珈琲飲めるから。アレは、その…そう言う気分だっただけだから。」
若干怒ってる風の二人に気圧されながらも龍香は気づく。
「あれ?皆私の事、覚えてる?」
龍香の言葉に全員が顔を見合わせる。
「…確かに、皆私達を覚えてるわね。」
そんな中、カノープスは正気に戻った六人を見て驚きの声を上げる。
《な、んだと……!?何故、我の書き換えが…!》
「ふっ、残念ね。私がそれをさらに書き換えたのよ。」
龍姫が笑みを浮かべながらそう言う。
「作戦通り、皆戻ったみたいですね。」
きゅーばんの言葉に他の面々も頷く。作戦──それは龍姫の“征服王ノ威光”によるさらなる洗脳の上書き。そのためにバラバラに配置されていた六人を誘導して一箇所に集めたのだ。
「ま、確かに正面からアンタの洗脳を上書きすることは出来ないけど……ま、くだらない事で動揺して精神が不安定になっている時なら別よ。」
《ぐ、うぅ…!》
歯噛みをするカノープス。龍姫は振り返ると六人に言う。
「どう?特別サービスで記憶も蘇らせたんだけど。私に言う事あるんじゃない?」
龍姫の言葉に雪花、黒鳥、赤羽と月乃助は不機嫌そうに顔を顰め。
「誰がアンタに感謝するか。」
「私、貴方に一回殺されてるから。これでおあいこよ。」
「右に同じ。恩着せがましく言わないで目玉野郎。」
「妹とピーコック殺しといてよく言えたな君。」
吐き捨てるように恨み言を言うと四人はそっぽを向く。前の世界でやらかした事がやらかした事なので、険悪な雰囲気になりつつも龍香が慌ててフォローに入る。
「で、でも!今回はお姉ちゃんも私と一緒に協力してくれたし、守ってくれたから!改心したんだよ!ね?」
龍香が必死にフォローするものの、四人の視線は依然冷たいままだ。
「つれないわねぇ。」
なんて龍姫が肩をすくめていると、何故か肩を震わせながら龍姫を見る弟二人が。
「な、何よ……」
「いや、その。あんだけ傍若無人だった姉さんがそんな事をするなんて……」
「なんて言うか感動したって言うか……」
「……アンタ達ねぇ。って言うか龍斗。アンタを殺したの私なんだけど。恨み言の一つもない訳?」
龍姫の問いに、龍斗は。
「まぁ、確かに結衣さんを殺したのは思うところはあるけど……けど、彼女も生き返ってるし、何より姉さんとこうしてまた話せて嬉しいよ。」
龍斗の言葉に龍姫は少し驚いたように目を丸くするが、取り繕うように笑うと。
「はっ……我が弟ながらとんだお人好しね。」
正気を取り戻したらしい彼らを見てアリックス達はカノープス側に一旦集まる。
「あぁ〜〜……眷属ゥ〜……」
「そんなに気に入っていたんですの?」
「……どうするザマスか?何かいきなりこっちが人数不利になったザマス。」
《チィッ…!!奴らが寝返ろうと!シャドウマン!!》
「はいよっ!今回は大サービスだ!!」
カノープスの言葉と共にシャドウマンが地面に手をつけると地面一杯に黒い影が沼の如く拡がり、その中から三体の怪物が姿を見せる。
「ふしゃるるるるる………」
「ヒャァッハッハッハッハッ」
「フフフ……」
全員影のように黒くなっているが、一体は六つの目を持つ醜悪な多足の龍、一体は悪魔のようなツノと翼を生やし、お腹には涎を垂らす凶悪な口がある少女、一体はかつて異世界にて龍香と肩を並べて戦ったモノクロの翼を持ち、鳥類のような脚を持った少女。
三体の怪物がそれぞれ姿を見せ、龍香達と相対する。
「再会の感動を分かち合うのも良いが、どうやら奴さん達は許してくれんみたいじゃのう。」
のじゃロリ猫の言葉に全員が臨戦態勢を取る。雪花は龍香を後ろへとやると。
「龍香、アンタは下がっていなさい。ここまで、ご苦労だったわね。見直したわ。」
「そうだ。後はお兄ちゃん達に任せておけ。」
「……うん。」
龍香が下がると同時に全員が動く。敵味方入れ乱れた乱戦に突入し、あちこちで斬撃と爆発が巻き起こる。
「蝙蝠君!君の相手はこの私だッ!」
「チィッ!邪魔するんじゃないわよっ!」
アリックスと月乃助が空中でかち合う。
「まさか姉弟三人で並び立つ日が来るなんて、ね。」
「俺たち姉弟の力、見せてやろうぜ!」
「あぁ!」
「ふんっ!三人に増えたところで!私は絶対倒せないザマス!!」
龍姫、龍斗、龍賢の三人が大女郎蜘蛛に挑みかかる。
「さっきは斬りかかって悪かったわね。」
「別に、気にしてない。それより早く目の前の敵をどうにかしましょう。」
「ええっ、さっさと終わらせましょう!」
「ハハァっ!終わらせられるかなっ!!」
赤羽とエフィの前にシャドウアナザーアンコが立ちはだかり、剣を構える。
「てぇあっ!!」
「美味しそうな蜥蜴さんと鳥さんねぇっ!!食べてあげたいわぁっ!」
「悪いけど私達、食べられるつもりはないわよっ!」
デヴァと黒鳥の前にお腹から涎を垂らしながら、シャドウソブリーヌが二人を捕食せんと向かってくる。
「おいおい偽物とは言えコイツはちょいと厳しいのぉ……」
「安心せぇウチもおる……と言いたいけど、えらくけったいなモンが出てきたなぁ……」
「ふしゅるるるるる……」
珍しく冷や汗を浮かべるのじゃロリ猫とむらサメを見下ろすようにシャドウしろうねりがおどろおどろしく唸る。
「決着をつけるぞ!」
「望むところよ!」
互いに構え、シェーンとシャドウマンがかち合う。
「あーあ、しっちゃかめっちゃか……面倒ねぇ。」
「さぁて、蛇女。アンタの相手はこの私よ。」
「微力だけど、手伝うよ!」
姦姦蛇螺の前にチェーンソーブレイド“マタンIII”を構えた雪花ときゅーばんが立つ。
皆がぶつかり合い、爆発や剣戟の音があちこちで響く中、黒衣に肩を貸されながら龍香は戦線を離脱しようと走る。
「ちょっと、アンタ傷だらけだけど大丈夫なの!?」
「ごめんね。助けに来たのに助けてもらっちゃって。」
「…!別に、アンタに借りを作るのが、癪なだけよ!ほら、さっさと走る!言っとくけど私あんな怪物達に巻き込まれるなんてごめんなんだか──」
黒衣がプイッとそっぽを向きながらもそう言いかけた瞬間、二人の背後の地面が爆発し、爆風な二人を襲う。
「「きゃあああああああ!!?」」
爆風に押され、二人が倒れる。痛む身体を押さえながら、起き上がり振り返ると、そこには怒り心頭と言った具合の天願がいた。
「……黒衣さん。今度は、私から龍香さんを奪うつもり?いつも、いつも貴方は私から……!!」
「ち、違うわよ!別に私紫水さんとは…!」
「待ってて!龍香さん!私が貴方を──!!」
天願が斧を構えて二人に向かってくる。威圧され、動けない黒衣を庇うように龍香が前に出る。
「させないっ!天願さん、貴方にそんなことは──!」
天願は龍香が前に出て驚いたような顔をする。どうやらまさか龍香が前に出るとは思ってもみなかったらしい。
《好都合だッ!》
天願は斧を振るう勢いを緩める事が出来ず、その刃が龍香へ向かう。
龍香がかわせば、黒衣に当たってしまう。だから龍香は回避出来ない。
(やばいっ、これは死ん──)
回避の出来ない迫り来る死に龍香が目を逸らせず、見つめていたその時だった。
龍香と刃に挟まるように何かが飛んでくる。その何かは刃に当たると同時に紫色の光を放つ。
「何ッ?」
ガキィンッと音が鳴り、天願の刃が弾かれる。それと同時にその何か、は龍香の元へと飛んでくる。
その何かを手に取った龍香はそれを見て思わず息を呑む。胸から湧き上がる感情に言葉を詰まらせる彼女にそれは語りかける。
《よぉ。久しぶりだな龍香。随分と元気でやってるみたいだな。》
「カノ……プス?」
震える声で尋ねるように言葉を漏らす彼女は手元にいるカノープスを見つめる。
《おうよ。久々過ぎて忘れちま》
「ていっ。」
《あ痛ァッ!?》
喋るカノープスを遮って、龍香は彼にチョップを食らわせる。
そして龍香はジトっとした瞳で睨みながら言う。
「カノープス……生きててくれたのは嬉しいけど、最後の最後で私にした事、忘れてないからね?」
睨まれた彼はしどろもどろになりながらも言葉を返す。
《い、いや、アレは誰かが身代わりになる必要があったからやっただけで……》
「じゃあ何でカノープスはここにいるの?」
龍香の問いにカノープスは一瞬黙った後、小さな声で呟く。
《プロウフの野郎だよ。アイツ、いつの間にかお前の身体に意識を潜り込ませてやがった。》
「へ?」
あの時、世界を作り変えるために龍香を遠ざけ、カノープスが我が身を捧げようとしたその時。
いきなり彼の肩を何者かの手が掴み、そのまま後ろへと放り投げられた。
「うおっ!?」
彼が尻餅をつきながらも、顔を上げるとそこには白の怪物、プロウフが立っていた。
「プロウフ!お前何故ここに!?」
カノープスの問いに、プロウフはフフッと笑い。
「貴方ならこうするだろうと思っていましてね。消える直前に私の意識を潜り込ませていたんですよ。」
プロウフの出現にカノープスは警戒する。
「お前っ、まさか横取りを…!」
「しませんよそんな無粋な真似は。それに今の私はガワだけ復元して力はありませんし。」
「なら何故…!」
カノープスの問いにプロウフは肩を竦める。表情に変化は見えないが、カノープスは何故か彼がどことなく笑っているように見えた。
「貴方は生きなくてはならない。」
プロウフの背後の光がより一層強くなると同時に彼の身体はひび割れていく。
「彼女を巻き込んだ責任を取って貴方はこれからも彼女の側で生きていかなければならない……これは私なりの、仕返しですよ。」
「プロウフ、お前……」
プロウフの身体が光に呑まれる。崩壊する寸前、プロウフの声がカノープスに聞こえる。
「──頼みましたよ。」
その声と一際輝く光を最後にカノープスの意識は暗転した。
《──って訳だ。》
カノープスの言葉に龍香は驚いたような顔をする。
「……プロウフが。」
かつての宿敵の行いに龍香が複雑な思いを馳せていると、カノープスが少し申し訳なさそうに。
《……あん時は悪かったな。俺へのケジメのためにお前を最後に話しちまって。すまん。》
謝る彼を見て、龍香はジッと彼を見るとふいっ、と顔を背ける。
「だめ。許してあげない。」
《んなっ》
カノープスが愕然としている中、龍香はポツリと語る。
「……だから、もう私を置いてどっかいかないでよね。またやったら今度はお兄ちゃんに言いつけるから。」
そう言うと、龍香は再びカノープスに向き直る。その顔は笑顔だったが、目の端に涙が浮かんでいた。
それを見たカノープスは。
《あぁ。分かった。約束だ。もうお前を置いていったりしねぇよ。》
そう答える。龍香はコクリ、と頷くと涙を拭きいて天願に向き直る。
「…早速だけど、行くよカノープス!!」
《おうっ!行こうぜ相棒!!》
龍香はカノープスを頭につけ、叫ぶ。
《「ダイノフォーゼ!!」》
次の瞬間彼女の後ろから地面を食い破り、紫色の恐竜が現れる。
「な、なによアンタも!?」
黒衣が驚く中、恐竜は咆哮すると大きく口を開けて、龍香に喰らいつく。
「やっぱ食べられた!?」
そして次の瞬間食らいついた恐竜の身体が光と共に砕け散る。
そこには恐竜の骨のような鎧と紫のラインの入った黒のドレスを纏った龍香がいた。
《暴虐不尽!ティラノカラー!!》
その姿を見た天願は眼を丸くし、驚く。
「そ、の姿は──」
変身した龍香は戦斧“タイラントアックス”を取り出すと構える。
「さぁ!久々にいくよカノープス!!」
カノープスの言葉に龍香は驚いたような顔をする。
「……プロウフが。」
かつての宿敵の行いに龍香が複雑な思いを馳せていると、カノープスが少し申し訳なさそうに。
《……あん時は悪かったな。俺へのケジメのためにお前を最後に話しちまって。すまん。》
謝る彼を見て、龍香はジッと彼を見るとふいっ、と顔を背ける。
「だめ。許してあげない。」
《んなっ》
カノープスが愕然としている中、龍香はポツリと語る。
「……だから、もう私を置いてどっかいかないでよね。またやったら今度はお兄ちゃんに言いつけるから。」
そう言うと、龍香は再びカノープスに向き直る。その顔は笑顔だったが、目の端に涙が浮かんでいた。
それを見たカノープスは。
《あぁ。分かった。約束だ。もうお前を置いていったりしねぇよ。》
そう答える。龍香はコクリ、と頷くと涙を拭きいて天願に向き直る。
「…早速だけど、行くよカノープス!!」
《おうっ!行こうぜ相棒!!》
龍香はカノープスを頭につけ、叫ぶ。
《「ダイノフォーゼ!!」》
次の瞬間彼女の後ろから地面を食い破り、紫色の恐竜が現れる。
「な、なによアンタも!?」
黒衣が驚く中、恐竜は咆哮すると大きく口を開けて、龍香に喰らいつく。
「やっぱ食べられた!?」
そして次の瞬間食らいついた恐竜の身体が光と共に砕け散る。
そこには恐竜の骨のような鎧と紫のラインの入った黒のドレスを纏った龍香がいた。
《暴虐不尽!ティラノカラー!!》
その姿を見た天願は眼を丸くし、驚く。
「そ、の姿は──」
変身した龍香は戦斧“タイラントアックス”を取り出すと構える。
「さぁ!久々にいくよカノープス!!」
To be continued…
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(続編や派生作品が有れば、なければ項目ごと削除でもおk)